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『一人一人、順番に…』

ぼふっ という音を立てて、お兄ちゃんの布団に頭から倒れ込んでしまった。
この部屋に入った瞬間から、まるで睡眠薬を盛られたみたいに、頭の中に靄が掛かって…

「す、は〜〜〜」
布団の布に鼻を埋めて、そのまま胸一杯に息を吸いこむ。
さっきまで自分が寝ていたのに、さらにまた違う匂いがする気がした。

……お兄ちゃんの、匂い? なぜか胸の熱くなるニオイ……


くんくん…… 改めて布団の匂いを嗅いでみた。
……違う。 この匂いだけじゃない。
これよりも、もっと濃くて、もっと熱くなれる、そんなニオイがする…
それが、体を熱くさせちゃってる… どこかな…

ずるずると…マタタビに当てられた猫みたいに…お腹を上にして布団から床へと移動した。

…ふと目に入った小さなクズカゴ。
がさごそとクズカゴを漁って…それらしい物を見つけた。

「これ、かな…?」
そこにあった丸められたティッシュの塊。 それを掴み上げ、鼻に近づけてみた。


「す〜〜、げほっけほ…! あ、これだぁ…♥」
匂いを嗅いだら、ちょっとむせてしまった。
それくらい、濃く、強い匂いを、そのティッシュの塊は発していた。
しかし同時に、その匂いを発火点にして、胸の中に仕込まれたガソリンが一気に発火してもいた。

「でもなんだろなぁコレ… すんすん…」
再びベッドに寝ころんで、そのまま匂いを嗅ぎ続ける。

なんとも表現しがたい匂い…
まるで腐った食品のような、お兄ちゃんの脇の匂いの凝縮品のような、
鼻にツンとくる刺激と、脳に甘く薫る感覚……

そしてソレについてわかることは、きっとお兄ちゃんに関係していることと、
それに反応して、さっきよりも熱く潤っている自分の体だった……



「あ〜〜〜う〜〜〜」
俺は熱い風呂の中で、身を寒くさせる罪悪感と戦っていた。

「アイツで、抜いちまった……」
そりゃあ確かに、俺は妹スキーだし、エロ本も兄妹モノが好みだが、
だからといって、本当の妹に手を出すほど血迷ってはいない…とは思っていた。

しかし……


「……。」
浴槽の中で揺らめく自分の下半身に目を向ける。
一度処理をしてからそう時間が経っていないのに、もう勃起をしている…
目で確認しなくてもわかってはいたが…

「明らかに、おかしいよな…」
俺のベッドで妹の胸を見てから、脱衣所で風呂上がりの姿を見てから、
…妹のパンツで射精してから。

自らの欲望が留められない。
いや、今まで溜め込められていた何かが、
それをきっかけにして溢れ出してきたような…… いまも、妹を思い浮かべただけで……


「あいつ、なにしてんだ…」
それは、いま何をしているのか、という意味であり、
あの時、何をしていたのか、という疑問でもあった。

布団で、胸もアソコも丸出しで、
寝相が悪かった、にしては……やけに大胆な格好で……

いやいや、あれはきっと本当に寝相が悪かっただけだよ。
言い聞かせるように、手で湯を掬って顔を洗うようにかける。

……でなきゃ、他にどう説明が付くんだよ……
ぽたぽたと顔から落ちる雫は、何の答えのきっかけにもならなかった。



「んは、んは、んはぁ…」
吸って吐く鼻息も荒く、喉が透明な喘ぎをあげ始めている。

「すぅ、すぅ… いはぁぁ…!」
鼻に押し当てられた紙の塊が、少女の体を限りなく燃え上がらせていた。

「んん… んんん…!」
おかしい、おかしいよ…
なんでこんなに熱くなるの… なんでこんなに気持ちよくなるのぉ…

声を押し殺しながら目の前にある脂肪の塊を掴んだ。


「んく…」
いつの間にか、こんなに大きくなってて…
大きいほど感度が鈍いって言われてるけど… そんなこと全然ない。

「あ、はぁぁ…」
乳首を摘んでも、肉の部分を揉んでも、充分な快感が奔る。
イヤらしいほどに、乳首が立ち上がって…

も、もし、こんなので…… お兄ちゃんに、されちゃったら……!!
「んん〜〜〜!」
脳裏にお兄ちゃんを思い浮かべた瞬間、電気に打たれたみたいに体が海老反っていた……



「あ〜〜〜〜…………」
いかん、ウダウダ考えてたらのぼせてきちゃったぜ…
ぐったりと火照る体を湯船から脱出させる。

「う〜〜〜〜…………」
のべ〜〜〜 と体を這いずって蛇口の元へと向かった。

「うぐんぐ…」
蛇口から水を出して水分補給……

…ついでに頭でも洗うか。 へばる体を起こし、椅子に座り込んだ。
もう、勃起はしていなかった。


「あ〜〜、は〜〜……」
荒い吐息と、バクバクと波打って揺れる心臓の鼓動が、豊かな乳房を揺れさせていた。

また、お兄ちゃんでシちゃった…
こんな事してて、いつお兄ちゃんが部屋に戻ってくるか…わかんないのに…
もしいま戻ってきて、また見付かっちゃったら……!

胸の中のドキドキがちっとも治まっていかない。むしろ更に、もう一度高まっていく…

やっぱり… お兄ちゃんのこと…… だから……


「あれ…?」
鼻に貼り付いた紙屑。 それが剥がすときに少しだけ糸を引いていた。
自分の汗ではないし… 鼻水のような、でもなにか違う質感と匂いの…

「なに、かな… コレ…」

コレが… コレの匂いが… 身体を… 狂わせて…




ふと頭の中に適合する物が浮かんだ
でも何なのかそれ自体は思い出せない。 ただ、それを知っている、という感覚だけ。

「なん、だっけ…」
確か、確か、お兄ちゃんが持ってるエロ本の中に……

「え〜と、え〜〜と…」
模索するように、あれでもないこれでもないとエロ本を引きずり出し、めくっていく。

…それにしても、
「これも、これも… 兄妹ものばっかりだぁ。」
どの漫画でも、ひたすら兄と妹がセックスをしていた。



風呂上がりや寝込みを兄に襲われる妹。
学校帰りや町中で妹に露骨な挑発をされる兄。
緊縛されて、口もアソコもお尻も兄の精液で汚される妹。
彼女の居る兄を襲って寝取ってしまう妹。
自分の快楽のために、妹の膣内に射精をして妊娠させてしまった兄…

「どれも、どれも…」
なぜか自分とお兄ちゃんに当てはめてしまって、
まるで自分が物語の登場人物になって、
今から兄に犯されてしまう妹になってしまうんじゃないかって……

そう思うたびに、熱い液体が身体の内側から滲み出てくるのを感じていた。



「ああもう、熱い…!」
汗に濡れた服が肌にまとわりつく感じがして、思いきりよく服を脱ぎ捨ててしまう。
ブラは私服に着替えたときに外していたので、あっという間にパンツ一枚の姿になっていた。

「ふう… ええ、と… はぁはぁ…」
片手をパンツの中に入れて熱い雫を漏らしている処へと触れさせる。
そうしてもう片方の手で本をめくり、次々と兄妹達のセックスを眺めていく。

「どれ… どれも、すごい…」
表面を擦るだけだった指が穴の奥へと入り込み、一本が二本、二本が三本にと本数も増えて、
ぬかるむ壁を掻き回し、さらに雫を掻き出させていた。



「うがぁあああああああああ」
イライラとする気持ちが、指が頭皮を突き破って脳を掻き回してしまいたい気分にさせる。

「ぐぅぅぅうううう」
勢いよく頭に湯をかけ、気分はまるで禊ぎをしているよう。

「ふぅ…………」
……ようやく気分が落ち着いたような気がする。

そうは言っても俺は聖人などではないので、まだわだかまりは残ってはいたが…



とにかくあれは、あいつの寝相が悪かっただけ!
俺も、ただ気の迷いが生じているだけ!

世は事も無し!家庭内平穏!!

……そうだよ、現実に兄が妹に、妹が兄に欲情してるなんて
   少なくとも、俺達にそれがあってはいけない……

俺は、あいつの兄で… あいつは俺の、妹… なんだから……



「はぁはぁ… あ、あった…!」
エロマンガをめくる指がついに止まった。

興奮しすぎてすっかり忘れかけていたが、
ようやく目的の物を見つけて、探していた案件を思い出すことが出来た。
このティッシュの塊がなんなのか、それがついにわかる…

「でも、これって……」
そこに書かれていた内容は……



兄のオナニーの使用済みティッシュの塊をゴミ箱から取りだして、その匂いでオナニーする妹。
その現場を兄に見付かってしまって、関係を迫られてしまう。

抵抗していた妹だったが、兄の陰茎を目の前に突きつけられた瞬間に態度が緩んでしまった。
その匂いに惹かれるかのように、自分から兄の男根を口にしてしまう妹。
そしてそのまま強引に頭を動かされ、そこから出た精液を…飲まされてしまった。

「ああ…」 そんなのって、そんなこと、あり得ないよ…



生臭い精液の香りを直に味合わされ、呆然としてしまう妹。
「もっと欲しいのか?」という兄の言葉にも、そのまま頷いてしまう。

「そんなのって…」 この妹、ヘンタイなんだ…

乱暴に犯されながらも、悦んだ表情で喘ぎ続ける妹。
果ては兄の精液を膣内射精でも味合わされ、完全に絶頂してしまう。

そして最後のコマには…
兄の精液まみれになって、その虜となってしまった妹が、描かれていた……



「〜 〜 〜 〜

 あ゛〜〜〜〜」

風呂の後で飲む一杯の牛乳の味は、そりゃあもう格別だ。
ほこほこと煙を上げる裸体に当たる涼風も気持ちがいい。

パンツ一丁でくつろいでいると、母が俺を呼んだ。
……もうすぐ晩飯だから、妹を連れてこいとの事だった。

…………一抹の、そして巨大なる不安が胸をよぎる。

いやいやいや、あんな事がもう一度あってたまるか。
ようやく気を静められたというのに……
妙に、胸が高鳴っていくなぁ。 はははは……




本を取り落として、傍らに置いていたティッシュの塊を凝視する。

「じゃ、じゃあ、これ、これ、は……」

これは……兄の精液! 生臭い匂いも、それと符合する。

それを嗅いで、興奮してた……! このエロマンガの妹のように……!!



「ヘ、ヘンタイだよ! そんな、せ、せいえきで興奮しちゃうだなんて……」
しかもそれは血の繋がった兄のもので。
その嫌悪したい感覚が、たまらなく気持ちよくて。

「妹なのに…お兄ちゃんの精液で欲情する、ヘンタイ…!!」
だけど…熱くなる体は少しも収まりを見せようとはせず、
むしろ油を注がれた炎のように燃え上がりを増していく。

「うぁ、うあああぁぁ……」
膣奥に指し込まれた指が壁を痛いほどに引っ掻いていた瞬間。
今日何度目かの絶頂の波動が身体を貫通していた。




……なんで自分の部屋にいないんだろうな〜〜……

まさか、もしかして、俺の、部屋に……

いやいやいやいやいや、きっと外出してるんだ。

玄関に靴を確かめに行こう。
まず可能性を確認して、それから推論の立証を、だよ。


まず俺の部屋を一見してみれば済むのに、何故だか入り難いとです……




兄の部屋で、兄の布団で、兄の匂いで、兄の精液で、

発情して、オナニーをして、イっちゃう……ヘンタイの、妹。

「あ〜〜… あぁぁぁ……」

自分がそういう存在であったという新たな認識に、
軽い嫌悪感と一緒に、とてもとても深い絶頂感を、感じてしまっていた。



「あ… 片づけなきゃ…」
パンツだけを身につけて、びっしょりと汗にまみれた身体の周りには、
数冊のエロ本が散らばったままになっていた。

「バレ、ちゃう……」
これでは明らかに… オナニーしていた事がわかってしまう。

さっきも、胸もアソコも丸出しで寝ていた妹が、
今度こそ兄の部屋で何をしていたのかが、明確にわかってしまうのだ。

…………それも、面白いかもしれない。 そんな真っ黒い思いが全身を包んでいく。



「お兄ちゃん… おにい、ちゃん……」
もう一度、兄の精液が染みこんだティッシュを鼻に当てた。

「はぁぁ…」
汗でふやけて、中の生臭い匂いはさらにきつくなっている。
その匂いで、発情してしまう自分を…兄はどう思うんだろうか…

「んん……」
自分の中に広がる感情は…
ただの欲情なのだろうか、それとも歪んだ恋慕なのだろうか…
次に兄が目の前に現れたときに、はっきりとわかるのかもしれない。




父さん、母さん、妹さん……

…………またしても、たわわに実った白桃と、
     白い和紙にぽつりと浮かぶ水墨画の草むらが見えます…………