突然の土砂降り
その雨から追われるように偶然入った店の中、
まるで俺を待ってたかのような、満面の笑顔。
赤い髪のまるで太陽の花のようなあの子を一目見たとき、俺は初めて共にいたい存在やと思った。
プランツ・ドール
彼 ら にミルクとたっぷりの
愛
情を
〜 赤い髪のお姫様 〜
+010:たとえ雨でも嵐の日でも+
その日、締め切りギリギリまで延ばしていた小説の短編がようやっと書き終わり
ほっと息を付いた俺は、あまりにも悲惨な冷蔵庫の中を補充をする為にの街へ出かけた。
ほんで、帰り道。いきなりの夕立に降られてしもた。
買い物袋で両手がふさがってるこないな状態で、しかも傘なんか持ってきてへんよ……。
そないな思いとは裏腹に、雨はどんどん強くなってくる。
今更ではあるが雨宿りするか。
「ひゃ〜!あかんわ、服どころか買い物の中身までぐしょぐしょやないか」
とりあえず一番最初に目についた店の軒下に入った後、本日の戦利品を確かめたが、
ビニールモノならまだしも箱に入ってるようなもんは、ほぼ壊滅状態。
まあ、中身さえ無事ならばどーでもええけど。
やらなんやらと自分に言い聞かせながら、もうあえて袋の中を見るのはやめにする。
はあ。せやけど、雨は暫くやみそうもないな。
このままここにおっても埒があかん上に、風邪でもひいてしまいそうや。
「いっそ、このまま走って帰った方がええんか」
ブツブツと独り言を漏らしながら、そんな風に考えていたときだった。
突如、後ろから襲ってきたドン!ちゅう大きな音に、俺は振り返った。
するとそこには、別嬪の人形たちが並んでいるショーウインドーに、
赤い髪のえらい可愛いらしい子供が両手を貼り付けてこっちを見とった。
「なんや? ここの店の子供かいな?」
その大きな瞳に魅入られるように、俺はその子を見つめた。
するとその子はじっと俺を見ていたかと思うと
次の瞬間、まるで太陽のように満面の笑みを浮かべた。
その笑顔があまりにもまぶしくて、俺はもっていた買い物を思わず落としてしもた。
……ああ、コレで卵も全滅決定や。
その後、その子に導かれるように店に入った俺は、
雨にぐっしょり濡れた姿に驚いた店主に着替えを貸してもらい、
今はその子と一緒に、店主の出してくれた茶をすすりながら元の服が乾くのを待っている。
まあ、その子が飲んどるんはミルクやけどな。
「いやぁ、急に降られて。ほんま助かりましたわ」
「いえいえ。今乾燥にかけておりますので、しばらくすれば乾くと思いますよ」
そないな会話を交わしながら、美味いお茶で冷えた体を温める。
はぁ、やっと血の気が通った気分や。
などと和んでいると、突然服のすそがくいくいと引っ張られた。
見ると、今まで大人しくミルクを飲んでたはずのあの子が、服の裾をぎゅっと掴んでいる。
「ん? どないしたん?」
そう笑いかけた俺に、にこっと笑い返して手を差し出してきた。
……ん、コレは抱っこせいちゅうことか?
お望みなら何でもしましょ、お姫さん!
俺はその子を抱き上げて、膝の上にちょこんと座らせる。
するとその子は嬉しそうに擦り寄ってきおった。
「なんや、ホンマに可愛い子やな〜」
と、あかんあかん。つい顔が緩んでしもた。
しかしせっかく引き締めた頬も、この子を見ると緩んできてまう。
赤い髪に大きな赤い瞳、ぷっくりした白い肌に色ずくピンクの頬。
赤とピンクで華やかに纏められた、中華風の着物がよう似合っとる。
はぁ、世の中にはこんな可愛い子がおるんやなぁ。
「ふふふ。ガクトがお気に召しましたか?」
「おお、ガクトいうんか? 可愛ええ名前やわ〜」
俺が名前を呼んだとたん、ガクトが嬉しそうに首に抱きついて来て頬にすりついてきた。
すりすりすりすり。それはまさに天使の頬ずり。
…………あああああ、あかん!このままやと犯罪の道に進んでしまいそうや。
「ちなみに男の子ですよ」
「そうなんか!?」
嘘やろ? そんな信じられへん!こないに、こないにもの美少女なのに!
……いや、まあでもそんなことええか。どっちにしろ可愛いのには違いないんやし。
「この子は、ココの子なんですか?」
「ええ、まあそんなところですね」
ふむ、店主の弟さんといったところか。しかし似てへんけどな。
「お客様はプランツドールというものをご存知ですか?」
「ん? ああ……噂ぐらいは」
なんでもそのプランツいう人形のために、身上をつぶした人間がいっぱいいるとか。
などと言ったら、店主さん笑いながらひっそりと眉間に皺を寄せてしもた。
いや、俺やて悪気があっって言ったわけやないんけど。
俺も数回、業界のパーティーとかでお偉いさんが連れてるのを見たことがあるくらいや。
連れてる奴が、鼻高々に自慢しとったのも覚えとる。
なんや自分がプランツに選ばれたのが、偉い嬉しかったらしくてな。
けど、
いやぁ、どれも別嬪さんだったのはよう覚えとる!
ちょうど、今ここにならんどる人形達みたいにな。
「って待ちい。てことは、もしかしなくとも」
「お察しが早くて助かります」
にっこり。
そんな表現が一番似合う笑顔を浮かべた。
要は、アレか。ここはそのプランツの店なんか。
なるほど、確かにどの人形も別嬪や。ってつまり、もしかしなくともこの子も?
膝の上に座っているガクトを、ついまじまじ眺める。
すると、再び意識を向けてもらったのがよほど嬉しかったのか、
ガクトが満面の笑みを浮かべる。
そしてまたミルクを飲みだした。
ミルク……なるほど。
「この子もプランツ、なんやな?」
「さようでございます」
お買い得な一品でございますよ、そう言って店主は続けた。
この毛並み、艶。これほどのものに、なかなかお目にかかれるものではありません。
なにしろ名人の称号を持つ職人が、丹精こめて育てあげました人形でございますから。
確かにそれは、門外漢の俺でも分かる。
艶やかに光る髪も、白い肌も、引き込まれるような瞳も。
こんな可愛い子が家でずっとそばにいてくれたらどないに幸せやろか…
でも…
とそんな風に揺れ動いてるのが分かったのか、ガクトが俺のほうをじっと見つめてきた。
「ん?どないした?」
ああ思わず猫なで声がでてしもうた、いやしょうがない、うん!しょうがない!!
そしてガクトはそん挙動不審な俺ににっこりと最高の笑顔を…!!
ぶはっ!!ちょっまちい!はっ鼻血がっ鼻血がでるって!!!
「あの、お客様実は…」
そんなあまりに挙動不審な俺に対して、店主は真剣な顔で切り出してきた。
その内容は、
一度目覚めたプランツは、気に入った客以外には目もくれなくなってしまうらしい。
「ですからガクトは、お客様がお求めになってくださらない限り、
どこにも売れない商品になってしまったのです」
果てには、そのまま枯れてしまうことすら有り得る、と。
そう聞かされて、平常でいられる人間がいられるだろうか?
いや、おらへん!!いていいわけがない!
こんな天上から舞い降りてきよったみたいなこの子が、俺が、俺が!!(ココ!ココ、強調どころやで?)
買わん限り、枯れてしまうやなんて!!
じっとガクトを見つめると、ガクトは首に巻きつきながら、嬉しそうにはしゃぎ出した。
あああ、ちょっと待ってや。うれしいけどな?
うれしいんやけど、でもさすがにそれは首が絞まるわ……。
「…店主」
「ちなみに、ローンも承っておりますが?」
「買った!!」
とどめやった…
いや無理やって、あないな笑顔見せられたら!!
「…ちなみにお値段は?」
「コレくらいに」
「!!?!!」
「せっせめてコレくらいに」
「いえいえい、これでもかなり勉強してますから」
「いや!でもあとコレくらい!!」
「いえいえ」
「笑ってへんでそこを何とか〜〜〜」
と思わず目が落ちてしまいそうになった会話があったちゅうことは…まあ秘密に…
しかし初めて体験したわ、目が飛び出るちゅう感覚。いや、つーかアレは飛び出るやない。
目が落ちたわ、驚きのあまり。
てか、真面目にメガネにヒビはいってへんやろか?
ともかくこうして俺は、晴れてガクトを手にいれることとなった。
まあ、来世までこのローンを払い続けへんといけなくなりよったがな!
でもとりあえず俺は、ふんだくれるだけおまけをふんだくった!
関西人、舐めんといてや!
外は雨が上がり、ええ天気。
虹まで出て、俺たちの門出を祝ってくれてるみたいや。
そして俺は片手に買い物、もう片方の手にこの赤い髪のお姫さんの小さな手をとり、
俺たちへの家へと帰る。
「行こか?ガクト」
笑いかけた俺に、満面の笑みを返してくれるガクト。
……あああ、もう!ホンマになんでこんなにカワイイんかな、この子はっ!!
ほんと、お前のためやったら俺は死ぬ気で本書くで!
ずっと一緒にいような〜!
…せやけど、とりあえずまだ犯罪者だけにはなりとうないな……うん。
あとがき
とりあえず忍足については色々とごめんなさい(何
性格が変態になるわやっぱりロリコンだわ方言は全然めちゃくちゃだし、
てか本気で関西弁が分からん!!!誰か教えてくれ――!!(おい
方言は好きだけど難しいね・・・
彼らについてはいろんなエピソードが生まれては消え生まれては消え(おい
それでもどうも忍足が変態になるのは避けられないようで・・・(こら
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プランツ参考「食卓のミルク」「スノウホワイト」