この部屋はある意味『おまけ』みたいな要素の部屋です・・・
今回本編を描くにあたって下書きの文章を書いたのですが、まあ折角書いたし乗せるかと思い、
とある方に頼んで(いや小説のときはいつも頼んでるんですけどね)添削していただき、直しを入れUP!しました部屋です(何
なんで漫画本編のネタバレになります。
実際には少し変わっては行くとは思いますが、大筋はこんな感じです。
なんで先にこっちを読んで最後まで話を見ちゃっても良し、
本編描き終わるまで待って(いつになるやら・・・)から読んでも良し、
その辺はご自由にどうぞです〜〜
ある意味漫画では描けないところを書いてたり、ここで書けない所漫画で描いてたりしてます(苦笑
まあどっちも楽しんでいただけたら幸いです〜v

ではOKなかたはどうぞ







+
01:世界 +

+ 02:輝石 +

+ 03:水鏡 +

+ 04:歌姫 +

+ 05:守人 +

+ 06:契約 +

+ 07:指先 +

+ 08:月光 +

+ 09:腕輪 +

+ 10:軌跡 +









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+02:輝石+



古めかしい佇まい。ここは知る人ぞ知る店。

本来ならば、俺なんぞには一切関わりのない店なのだが……。


そう思うと俺は数日前の出来事へ、少しの間、記憶を飛ばした。



「プランツドールを……ですか?」

「そう、今回の展示品のモデルにですよ」

怪訝さが染み出た自分の声に、上司が大仰に頷く。

「しかしプランツとは……、今回は宝石や輝石などの展示会とショーでは?」

「だからこそ、です。あくまでも商品への付加価値とイメージの為の問題ですから」

それに、宝石で着飾ったプランツはさぞかし美しいでしょう?と上司は続けた。
例え、その人形が目が開けていないモノであったとしても。



こうして俺は、今件のプロジェクトの会場設営の為のモデルに、

どうしてもプランツドールが必要だと主張する重役にせっつかれて店の前にいる。

――つまり、この都市で唯一プランツドールを扱っている、この店の前に。


プランツが欲しいのならば自分達で手に入れればいいとも思うのだが、そこは会社組織の悲しい仕組みとやらだ。
上役には逆らえない

しかし幾ら世間に疎いと言われ続けた俺でさえ、プランツのことは知っている。

何でも、人形は波長の合う者に出会うまで眠っているのだとか。さらに、それは上等な人形になればなるほど、その傾向が顕著だとも。


レンタルは出来ないというのだが、上役は
「どうしてもだ!なんなら購入してもかまわない!」

との主張して譲らなかった為、見に行くだけならばという理由で足を向けたのだった。

こうして、俺は店の中へと入っていく。

数分後に出会うことになる、あの美しく蒼い瞳の人形のことなど想像も出来ずに。








<手塚編でした〜>





















+03:水鏡+



まず、店に着いた俺は、様々なプランツを見せてもらった。

そのどれもが精巧で、これが作られたものなのか……と感心させられるものばかりである。

展示もケースの中、椅子に凭れかかっていたり、水鏡にその身を映しているものなど、
それぞれプランツにふさわしいよう、工夫を凝らしたものばかりだ。

店主にレンタルないし購入の旨を伝えたのだが、

「申し訳御座いません。プランツはこの子たちが達が気に入ったお客様以外の方にはお売りできませんので」

と言葉こそ柔らかいものの、取り付くしまもなくやんわり断られてしまった。

ならば今まで購入された人を紹介してもらうだけでも、とも思ったのだが、それもすげなく断られてしまう。


上司にどう報告するか、悩んでいたところ、店の主人に、

「もしお客様に合うプランツがいましたら、そちらの方をご購入ください」

と進められた、が。
「俺と合うプランツ……ですか?」

とてもじゃないが、そんなプランツがいるとは思えない。

プランツはとても高価だ。確かに、俺も収入は決して少なくはない。多少の無理をすれば購入は出来るだろう。
ただし、あくまで一般的なプランツに限ってのことだが。


しかし、その維持費を含め、育てられるかどうかの自信は皆無だ。
特に愛で育てられるかなど……何より俺などを気に入るプランツなど、存在するものなのだろうか?

逡巡していると、店主はにっこり笑って、
「是非、ご覧頂きたいものがあるのですよ」と俺を店の奥へといざなった。


少し迷ったものの、俺は付いていった。

この先に何よりも大切なものがあるような。そんな不確かな予感に駆られながら――。








<手塚視点第二段〜>





















+04:歌姫+



その日「プランツを見せて欲しい」との予約があった。

一応レンタル等はお断りしているとは伝えておいたが、見にくる分には構わないとも伝えてある。

企業が宣伝の為、プランツをレンタルしたがる例は多い。
そしてまた、その中でプランツが主人を見つけることも少なくない。


今回もそうなるのかもしれない。そう思っていたのは確かだった。

そして予感は、確信といえるほど強くなっている。


名工の中の名作と呼び声も高く、歌うプランツの最高傑作とまで言われた『ケイゴ』
そのケイゴの纏う空気があの電話を受けてから数日、明らかに異彩だった。

この面倒見の良い、少し(?)我侭なプランツの歌声が聴けなくなるのかと思うと寂しい気もしたが、

『ケイゴ』がずっと待ち望んでいた主人に出会える歓びに比べたら、些細なものだ。



「君は、笑いながら誰よりも寂しがっていたか……」


プランツ達の上に立ち、皆を纏めていた、誰よりも気高い彼。

今は見ることが出来ない、蒼い瞳を秘めた美しい顔を見ながら、俺はそう呟いた。




そうして約束の時間、きっかりを違えずに現れたのは仏頂面の真面目そうな青年。

この堅実そうな人ならば、きっとケイゴも幸せになれるだろう。
彼の幸せを心の底から願いつつ、 あの我侭に振り回されることになるだろうこの人に、 俺は僅かに苦笑しつつ、ケイゴの元に案内する。
でも、少し出会いを遅らせるぐらいの、意地悪は許されるでしょう?








<店の主人四月一日視点>





















+05:守人+



主人に連れられ、入っていった店の奥は、さらに奇妙な造りになっていた。

守人のような重厚な扉の奥に、それぞれカーテンで区切られた部屋と、広いオープンスペース。

ずっと眠りについているプランツに、このようなテラスが必要なのかと店主に尋ねてみた。

すると店主は
「このスペースにいるプランツ達は少し特別なのです」
そう微笑むのみ。

結局何が特別なのかは教えてはもらえなかったのだが。

「ここにあるのは、すべて同じ人間によって作られたプランツたちなのです」

「そうなんですか」

突然、店主が喋りはじめた。
しかも気のせいか、言葉を重ねるにつれだんだん顔が険しくなっているような?

「そう!アイツ、腕はピカ一のクセに、なんであんなにも性格が悪いのか……ッ!!」

「…………」

「百目鬼〜〜!!!」

暫くの間黙って見守っていたが、結局主人は怒りが頂点に達したらしい。

しかし、百目鬼とは、聞き覚えがある名前だ。

確か、若いながらも様々な名作を作りだすことで有名なプランツドールの名匠だったか……。


そう記憶を辿っていると、ふと鼻をくすぐる豊潤なバラの香りに気がつく。

出所を求め視線をめぐらせると、ある紫のカーテンの部屋に辿り着く。

俺は惹かれるようにその部屋へと近づき、そしてゆっくりとカーテンを開けた。


甘いバラの香りがの満たす清楚な部屋に、一つのベット。

そのベットに座る、蒼い瞳の泣き黒子の、少年とも青年とも付かない一人のプランツ。

彼は、驚きのあまり言葉も出ない俺に、美しい微笑と声でもって言った。
「はじめまして。俺のマスター」








<最初の跡部視点を手塚から>





















+06:契約+



俺様の名は『ケイゴ』だ。



俺の腕に巻きついて離れない、このプランツは自分の名前を誇らしげにそう教えてくれた。

あの後店主はは、ニコニコしながら店の奥からお茶を運び、今はこのオープンスペースにいる。

「どうぞ。ここのオリジナルのお茶です」

「ああ、すまない……」

「四月一日〜!俺は砂糖菓子だ」

「はいはい」

プランツと店主との間ではにこやかに会話が成り立っているようだったが、俺は一向に付いていけていなかった。

「つまり、なんなんだ?」

そう呟くと、ケイゴという名前のそのプランツは、呆れたように俺を見つめてきた。

「あん? テメー、人の話聞いてなかったのかよ?」

……ずいぶんと口の悪いプランツだ。
そもそもプランツというのは、基本的に喋らないものなのではなかっただろうか?


「だから特別なのですよ。彼ら『百目鬼静』の手で作られたプランツ達は」


俺の疑問に笑いながら、店主が答える。
曰く、


彼らは基本であるプランツドールとは少し違い、いわば改良種のようなものに当たるらしい。

ある一定時間ならば、主人と出会わなくとも目覚め、ミルクを飲み、砂糖菓子を食べる。
さらには驚くことに自在に言葉を操り、自ら考え動き、遊び、時には悪戯すらするのだという。

プランツの性別は勿論のこと、大きさも幼少から成体まで様々らしい。



「……それでこの性格なのか」

「あーん? 何だ、その言い方は?」


こんな良い性格の奴なんていねえだろ?とケイゴは愉快そうに笑いながら言ってきた。

確かにイイ性格してそうだな、と返すと皮肉に気づいたらしく、テーブルの下で足を踏んできた。
力はそれなりに強いらしい。
「ほらほら。ケイゴも嬉しいからって、そんなにはしゃがない」

店主は苦笑しながらプランツを窘めるが、コレのどこをどう見たらそう思えるのか、今度一度・・・と言わず何度でもじっくり話し合ってみたいものだ。


「それでは、手塚様。この『ケイゴ』との契約でよろしいですね?」

「何?」

「何だその返事は? 嬉しそうにハイって言えよな、お前」


そう言われても、状況が全く掴めないのだが。


「ですから、ケイゴは貴方を『主人』と認めた。
『主人』である貴方がケイゴを買わなければ、ケイゴは枯れてしまいます」

「枯れる?」

「死んじまうってことだよ」

あっけらかんとケイゴの口から出た言葉に、暫し言葉を失う。

どうやら、俺の置かれた事態は思っていたよりイロイロと大変なものらしい――。








<俺様何様跡部様のケイゴでした〜〜>





















+07:指先+



「死んじまうってことだよ」


口からサラリと出た言葉だった。
プランツにとって、主人と共にあることこそ最大の幸せだ。
その主人に買われなかった……つまり『選ばれなかった』プランツは、当然愛を失い枯れる。

どのプランツも本能で知り、そして何より恐れていること。

当然俺だって枯れるのは嫌だ。当たり前だろ?
何故、こんなにも美しい俺様が枯れなければならない?


けれど今、それ以上に怖いのはこいつと別れることだった。
このまま二度と会えない。
ああ、この恐怖こそが、プランツの枯れるという心なのだろう。

分かってんのかテメー? お前、俺様の名前すら呼んですらいないんだぞ?

……まあ、ソレは俺もだけどな。


指先で摘んだ細工の細かい砂糖菓子を口に含みながら、唖然としてる俺の主人となる奴を見上げた。

ほんとに仏頂面だなコイツ。人生楽しみなさそうだぞ、お前?

ああ、そういえば名前はなんていうんだろうか。『手塚』……下の名前はまだ聞いてない。


「なあ、そういやお前の名前はなんていうんだ?」



知りたい。そして呼びたい。そして俺の名前も呼んでくれよ。
その低い声で『ケイゴ』と……。








<跡部視線で書くとどうも物語が進まなくて困る・・・>



































+09:腕輪+



「では、コチラが向こう一か月分のミルクと、砂糖菓子になります。
ご要望ならば、香り玉もお付けいたしますが?」

「いえ、とりあえずはコレで。また必要になったら連絡をする」

「わかりました。――ああ、そうだ。コレは、私どもからのプレゼントです」

そういって、店主が赤と青の小さな石のついた細い腕輪をくれた。
それはケイゴに対する餞別なのだろう。なるほど、ケイゴに良く似合いそうだ。


プランツとその他生活品とで、合計の金額は恐ろしい額になってしまったが、もともと大して趣味のない人間なので、貯蓄はある。

「その歳で、爺むさいことこの上ない」と同僚の不二には散々に言われていたが、今となっては溜めておいて良かったと痛感する。


そもそも、こんな莫大な会計になったのはケイゴが、
それアレは嫌だとか、こっちの方がいいだのと、イロイロ注文を付けたからだ。

最も、我侭を素直に聞き入れてしまう自分に少し驚いてもいるのだが。

「サンキュー、手塚!」

そんな言葉と共に向けられる笑顔を見ると、つい何でもしてやりたい。そう思ってしまう。不思議な感覚だった。

コレも、俗に言うプランツ破産とやらにあたるのだろうか?
と暫し思考を飛ばしていたが、ふと、あることに気づく。

「どうして『手塚』なんだ?」

「あん?」

「呼び名だ。なぜ苗字なのだ?」

そう。ついさっき名前を教え、呼んだばかりなのに、呼び名が『手塚』なのか。

「いや、特に意味はないが……なんとなくだな」

「……そうか」

特に咎める理由もないので引き下がったが、俺は内心かなり残念なようだ。

「じゃあ、行こうか。ケイゴ」

「ああ。よろしくな手塚」


早くまた『国光』と呼んではくれないものだろうか。








<なんだかんだでメロメロな手塚でした〜〜>





















+10:軌跡+



『国光』


その名を呼ぶと、心がふわりと温かくなる気がする。

俺は、口には出さずに、けれど何度も何度も心の中でその名を呟いていた。

でも、実際に名前で呼ぶのは……くすぐったいような、もったいないような。
初めて味わう、そんな不思議な気分だ。

だからこそ、今は『手塚』と呼んでやろう。名前を呼ぶのは、コイツの仏頂面を壊す時だ。



その後、国光と一緒に生活品を選ぶ。
本当は香り玉も欲しいところだが、俺様は優しいからな。

ご主人様の財布事情というのを考えてやったわけだ。
それに俺はポプリドールじゃないしな。でもアレ、旨いんだよな。

やっぱり、次は買ってもらうとするか。


そんな風に国光と共に並んでいると、ふと店の仲間達のことが頭をよぎった。

あいつら、俺がいなくなっても大丈夫だろうか?
ガクトや長太郎なんて泣き虫だし、リョーマは相変わらず生意気だ。

でも、まあ幸村がいるならば大丈夫だろうと思い直す。
アイツは飴とムチの使い方が上手い。
……

ああ、最後にアイツらにも会いたかった……いや、いいか。
また、国光に連れてきてもらえばいいだけのことだ。



こうして俺は四月一日に見送られ、国光に連れられて、生み出されてから長い時を過ごした店を出た。

これから始まる、俺たち二人の軌跡を作るために。








<手塚とケイゴの出会い編でした〜〜>