『忙しくも暖かな、僕らの日々』



―――――――――大切なもの、ありますか?



夕暮れの匂いは好きだ。
誰もいない静かな教室、放課後の清浄な空気。
黒板やチョークの臭いに階段に響く足音…遠くで聞こえる鐘の音。
当たり前のような毎日。それでも決して同じである日はありえない日常。
俺『四月一日君尋』は生きている。



今日、俺はご機嫌だった。
「いやぁ久しぶりだな〜〜〜。バイトが休みなんて!!!」
怪しげ〜なお店を開いてる怪しげ〜な俺のバイト先の主、侑子さんが昨日
『あっ四月一日、明日はバイトいいわ〜、ちょっ〜と神器作らなくいけなくて〜泊り込みなるかもしれないのよ〜』
と相変わらず訳の分からないことをほざいてくださいましたので、本日はバイトがお・や ・す・み(はーと)

あー今日は自分のために何をしよう。
えっと結構たまっているアイロンがけと、疎かになっている部屋の雑巾がけと、
行きたくてもタイミングが合わなかったスーパーの処分品セールと…。

「って、せっかくの休みなのにこんなんかい!!」
「また何一人で百面相してんだ、お前」

げは!
こっ、この声は…。

一応予想はしていたが、俺は恐る恐る声のした後ろの方を振り返ってみた。
「てか、何でこんな時間までいるんだ? きょうは暇人か?」

やっぱり!!
このいちいち!わざわざ!癪に触る言い方しかできん、天敵にしてたぶん最大のライバル 百目鬼静!!
『静』なんちゅー可愛い名前が似合わんこのふてぶてしさ、いっつも無駄に命令調なの がさらにむかつくこの男!!
お前の名前なんぞ太郎で十分だ!!て、それじゃ太郎の人がかわいそうってか!はは!
…いや待て。それより、こいつこそなんでこんなとこにいるんだ?

「お前こそ、なんでこんなとこにいるんだよ?」
とりあえず素直に疑問をぶつけてみた。
まだ部活終わってねぇ時間だし、忘れ物か?
「あ? お前が見えたから来てみた」

……………………。
はい?
今なんて言いやがりましたかこの人?なんっの悪びれもなく、さらりと。
俺の聞き間違いか?
いやむしろそうであってほしい。というかそうであってくれ…。

「…で、なんでこんな所にいるんだ? 忘れ物か?」
「だから、お前が見えたから」

……………………。

「なんでこんな所で油売ってんだ? そもそもお前部活は?」
「今日は自主練だ。休むのも練習の内だって言われてな」

ふむ。
確かに最近のこいつはオーバーワーク気味だったしな…って、なんでそんなこと俺が思わなくちゃならんのだ!!
あ〜!!もういい知らん!こいつと一緒にいると俺が振り回されるだけだ!

「そうか。それじゃあ、俺は帰るから」
うん、さっさと帰るに限る。
早くしないとスーパーのタイムセールも終わっちまうしな。
「お前、暇人なんだろう?」
「暇人じゃないわ!!やることだっていっぱいあるっつーの!!」
…ったく!ホントいちいちむかつく奴だ。
今まさに帰ろうと歩き出そうとしたとこなのに、またこいつに向き合っちまったじゃねえか。
「四月一日」
「あん?」
なんなんだよもう。せっかく今まさに帰ろうと(略)
悔しいから背中ごしで聞いちゃる。ぜってー振り向いてやらねー。

「キムチ鍋が食いたい」
「は?」

しまった振り返っちまった!!
いや、まて、そんなことより今こいつなんつった?

「弁当に鍋は無理か?」
「っあたりまえだろうが!どう考えても物理的に不可能だ!!」

…こいつはアホか?
いっつも人のことアホアホ言ってるくせに、実は自分が一番アホなんじゃねえか?

「じゃあ、しょうがねぇから今日はお前のとこでキムチ鍋な」

「なんでそうなる!!!
てかお前家族は!夕飯は!!そもそも、なんで俺がお前の夕飯まで面倒見なきゃいけないんだ!?」

て、あっ!!こいつうるさいって顔で耳ふさいでやがる!!ちくしょー!!
結構本気でムカついたので、俺は無理やり耳から手をひっぺがしてさっきとおんなじ台詞を耳元で怒鳴ってやった。
ケケケ、眉間にしわよってやがる。うん少しは溜飲下がったかな?
さてちょっとはスッキリしたところで、今度こそ帰るとするか。

「今日は誰も家にいない」
…今日の特売はなんだったかな〜。

「今日は満月だ」
……そうだ、もうそろそろトイレットペーパーも切れるんだよな!安くなってねぇかな!

「材料費は出す」
「仕方ねぇな」

まぁここまで言われたら、ちょっとぐらい優しくしてやらんこともない。
けっして材料費につられたわけじゃないからな!
「…単純」
「何か言ったかテメェ!」
「いや別に」

嘘だ。今明らかに俺を見て笑ったくせに、白々しい。
…ふっ、いやまあいい。こいつがスポンサーならば思いっきり良いものを買い揃えてやろう。
えーと、鍋はどこにしまったかなー。一人じゃそうそう鍋なんかしねえし。
やっぱ鍋は土鍋だろ!あと蓮華とー小皿は陶器でー。


既に今夜の鍋に思いを馳せていた俺は気づかなかった。
百目鬼が俺の背中を見ながら楽しそうに微笑んでいたことなんて。
でもこれからも、そんなこと知る必要なんてない。
だってそんなモン俺達には必要ないから。


空はそろそろ日が落ちて、夜の青さが広がりだすだろう。
百目鬼の言ったとおりきっと満月が明るく夜道を照らすだろう。
さあスーパーに食材を買いに行こう。
ついでにトイレットペーパー安くなってないかチェックしとかなきゃな!
こんな日常、そんな日常。
いつもとはちょっと違うけど、結構平和で。実は結構楽しい。



「百目鬼、ほら置いてくぞ!お前は今日の財布なんだからな!」
「へいへい」
あきれたような百目鬼の声。
これも結構良くある日常。



きっと明日も『ありきたり』で実は波乱万丈な日常が待ってるだろうけど、
とりあえず今は今夜の鍋のことだけ考えておこう。


キムチ鍋には何入れようかな!















・・・・いいのだろうか初小説がこれで・・・
てかこれ百四?そもそも小説?
ただの文字の羅列のような気がするのは私の気のせいだろうか・・・
えっと・・・気のせいだといいな〜




戻る


そういえば
おまけ↓


バカップル?