かるがる釣りざお
ドラえもん:さあ、もう一息だ。よし。
のび太:ドラえもん、まだ。
ドラえもん:あとすこし。
のび太:そんなに道具を一生懸命磨いてどうすんのさ。
ドラえもん:そういいますけどね、道具の点検整備はのび太くんのためにしてるんだよ。もし、故障でもしてたり、整備不良だったりしたら、どうするの。
のび太:わかったよ。先に行って練習してるから、終わったら必ず来てよ。
ジャイアン:おう、のび太、見物していけよ。
スネ夫:カッコいいだろう。新しく買ったラジコンだぞ。すげえだろう。
ジャイアン:そして、ここが世界一過酷なサーキットってわけさ。
のび太:へえ。
スネ夫:おい、のび太。今日だけは特別にただで見せてあげるから、応援しろよ。
のび太:うん。うん。
ジャイアン:ほれ、スタート。
のび太:わあ、すごい。
スネ夫:それ、いけ。
のび太:いいなあ。
スネ夫:でも、貸さないよ。
ジャイアン:のび太は壊すからな。
のび太:壊さないように使うから。
男:こら!
ジャイアン:逃げろ。
スネ夫:待ってよ。
のび太:ねえ、ど、どうしたの。
男:やい、空き箱をちらかしたのはおまえか。空き箱をおもちゃにするなって言ったろうが。
のび太:ぼ、ぼ、ぼ、ぼくじゃありません。
男:今度やったら、承知しないからな。さっさと元に戻しておけ。いいな。
のび太:ぼ、僕じゃないってば。なんで、僕が片付けなくちゃいけないんだ。冗談じゃないよ。こんな重いの。
ドラえもん:のび太くん。
のび太:手伝ってよ、ドラえもん。
ドラえもん:あれ?どうしたの。
のび太:ジャイアンとスネ夫がね。
ドラえもん:それはひどい話だ。
のび太:それで、僕一人で片付ける羽目になったんだ。
ドラえもん:よし、これを使おう。かるがる釣りざお!
のび太:ドラえもん、遊んでる場合じゃないよ。
ドラえもん:違うよ。この釣りざおは、魚を釣るんじゃなくて重いものを楽に持ち上げるためのものなんだ。ほら、ちっとも重くないよ。のび太くんもやってごらんよ。
のび太:わあ、本当だ。よーし。
ドラえもん:ほら、終わったぞ。
のび太:ありがとう、ドラえもん。これでもう叱られないね。ふふふ。
雷さん:おい、そこの君たち、おーい、ここだ。
ドラえもん・のび太:雷さんだ。
ドラえもん:な、な、な、何でしょうか。
のび太:ぼ、ぼく、僕たち、まだボールなげをしていません、今日は。
雷さん:そういうことで呼んだのではない。いやまことにすまんが、ちょっと頼みたいことがあってな。
のび太:僕たちにですか。へえ、きれいにしてるんですね。
雷さん:おだてるんじゃない。
ドラえもん:で、どれを動かすんです。
雷さん:この冷蔵庫じゃ。木箱を片付けた要領で頼むよ。
のび太:いいですよ。
ドラえもん:ようし、そのまま後へ。よいしょっと。
雷さん:おお、あった、あった。
のび太:財布を落としたんですか。
雷さん:すまんな。
ドラえもん:戻すよ。のび太くん。
雷さん:あ、待った。わしにやらせてくれ。
ドラえもん:あ、どうぞ、どうぞ。
雷さん:ほお、なるほど、楽じゃな。
のび太:戻しますよ。
ドラえもん:どうですか。
雷さん:いやあ、子供に戻ったようで、実に愉快だ。
ドラえもん:雷さんって結構かわいいとこがあるんだね。
のび太:本当だね。お礼とはいえ、雷さんにジュースをもらった子なんていないよね。
ドラえもん:いない、いない。ふふふふ。のび太くん、空き缶はくずかごでしょう。わあ、ひどいもんだね。
のび太:ねえ、ドラえもん、かるがる釣りざおで片付けようよ。
ドラえもん:さすがのび太くん。
先生:の、のびくん。
のび太:あ、先生、こんにちは。
先生:いや、じつにいい物を見せてもらった。のびくんがごみ置き場の掃除だなんて。
のび太:ちらかってれば当然です。
先生:お、そうだ、ご褒美といってはなんだが。
のび太:わあ、やった、やった。
ドラえもん:よかったね、のび太くん、明日の宿題はなしだなんて、みんなに感謝してもらわなくちゃ。なんだ、ドラえもん。
ドラえもん:あ、あ、あ、これはおもしろいや。自分で自分をもちあげられるんだ。
のび太:前には進まないのかな。
ドラえもん:こうすれば、ほら、進んだ。
のび太:ドラえもん、このまましずかちゃんちまで飛んでいこうよ。
ドラえもん:オッケー。
ジャイアン:なんだ、あれは?
のび太:ラジコンよりこっちのほうがずっと楽しいよ〜だ。
ジャイアン:おい、スネ夫、俺たちも貸してもらおうぜ。
スネ夫:うん、貸してもらおう、貸してもらおう。
のび太:しずかちゃん。
静香:ごめんなさい。いまママと片づけしてて。
のび太:おばさん、僕たちに任せてください。
静香の母:あら、でも、重いわよ、これ。
のび太:大丈夫です、これがあるから。
ドラえもん:行くよ。のび太くん。
のび太:うん。このままごみ置き場に直行だ。
静香:どうもありがとう。おやつでもどう?
のび太:ぼくたち、ジュースをのんだばっかりなんだよ。空で遊んでからにしよう。
静香:空で?
のび太:これを使ってね。
ジャイアン:おい、のび太、俺たちも仲間に入れろ。
のび太:いやだね。
ジャイアン:なんだって。
ドラえもん:全部で3本しかないんだもん。
ジャイアン:3本あれば十分。俺とスネ夫で2本。お前らは1本でいいだろう。
ドラえもん:あ、だめだよ、だめだよ。そんな。
のび太:返せよ。
ジャイアン:悔しかったら取り返してみろ。
スネ夫:取り返してみろ。
のび太:ひどい。
ドラえもん:1本じゃどうしようもないよ。
のび太:ドラえもん、タケコプターで追いかけようよ。
ドラえもん:調子が悪そうだったから、点検に出しちゃったんだ。
のび太:そんな。じゃどうすればいいんだよ。
ドラえもん:う〜ん。あ、そうだ。あれを使おう。
のび太:あれって?
ドラえもん:ふっふっふ。ま、任してよ。
のび太:空き地の土管とは、考えたね。
ドラえもん:のび太くんたちもバランスとって。あ、いたぞ。
のび太:待て!
ジャイアン:あいつらだ。
スネ夫:にげろ。
ジャイアン:うわぁ!助けてくれ。
のび太:本当の釣りざおに助けられるなんて、あのふたりらしいねえ。
ドラえもん:これで次からは仲良く遊ぶだろう。
ジャイアン:早く助けて。
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