ラジコンアンテナ
静香:のび太さん、その調子よ。
ジャイアン:のび太、もう一息だぞ。もう一息で二重とびができそうだぞ。
のび太:よし、せーのー。はい、わあ。
ジャイアン:だめだな、のび太は。ちょっと褒めるとすぐこれだからな。
静香:でも、本当にもう一息よ。のび太さん、がんばって。
のび太:ありがとう、しずかちゃん。
スネ夫:やあ。
のび太:スネ夫。
スネ夫:じゃーん。
ジャイアン:ひゃあ、すげえ。
のび太:カッコいい。
静香:どうしたの、それ。
スネ夫:いとこがつくったラジコンさ。
いとこ:これから湖で進水式をやるんだ。
スネ夫:一緒に行きたい人、手をあげて。じゃ、しずかちゃんとジャイアン、車に乗って。
のび太:あの、ぼ、ぼくは?
スネ夫:あいにく、この車、四人乗りなんだよね。じゃね。
のび太:ええ、そんな。
スネ夫:のび太、またな。バイバイ。
のび太:ちぇっ。なんだい、なんだい。くっ。あんなもん、ちっともうらやましくなんかないや。もっとすごいラジコンを、ドラえもんが出してくれないかな。ドラえもん。
ドラえもん:ないよ、ラジコンなんて。
のび太:そんな、ラジコンほしい、ラジコン、ラジコンほしいよ。ほしい。ラジコン。ほしい。
ドラえもん:しょうがないな。
のび太:出してくれるの。
ドラえもん:ラジコンアンテナ。このアンテナをつけると、動くものなら何でもラジコンになるんだ。なにか、動くものない?
のび太:動くものね。あ、そうだ。う〜んと、確かこの辺に、あった。ミニカーでもいいの。
ドラえもん:もちろん。
のび太:ようし。
ドラえもん:はい、これが操縦機だよ。
のび太:よし、スイッチオン。わあ、動いた、動いた。わ、本当だ。ラジコンになっちゃった。
ドラえもん:よし、それじゃ、僕と競争しよう。それ、いけ。負けるな。
のび太:勝った。勝った。
ドラえもん:どう。これで気が済んだでしょう。
のび太:ん、でも、やっぱりスネ夫のみたいに大きなラジコンがほしい。
ドラえもん:もう、ぜいたくだな。
のび太の母:動くもの?
のび太:おもちゃの車でも船でも何でもいいんだ。
のび太の母:そうね。車、車、車、あ〜、うちの家計簿は?
のび太:家計簿?
のび太の母:今月も火の車よ。
ドラえもん:あららら。
のび太:う〜ん、確か、ここに。何かなかったかな。小さいときの。あった。
ドラえもん:へえ。これなら乗って遊べるね。
のび太:うん、えいっと。じゃ、ドラえもん、頼むよ。
ドラえもん:それでは、発車します。
のび太:出発!わ〜い。もっと早くね、早く、早く、早く。
ドラえもん:よ〜し、いくぞ。
のび太:いけ、いけ、いけ。
ドラえもん:へえ、のび太くん、これ本物の車じゃない。
のび太:もう何日もここに乗り捨てられているんだ。
ドラえもん:でも、これはまずいんじゃないかな。
のび太:ちょっとだけなら、平気だよ。
ドラえもん:う〜ん、本当にちょっとだけだよ。
のび太:うん。よ〜し、出発!あああ、動いた。動いた。ヤッホー。
ドラえもん:のび太くん、道路に出じゃだめだよ。
のび太:大丈夫、大丈夫。わーいわーい、すごいぞ。
ドラえもん:のび太くん、あんまりスピードをださないように。
のび太:平気、平気。
警官:あ〜あ。ん?ちょっと、ちょっときみ。待ちなさい!
のび太:なんですか。
警官:だめ、だめだよ。子供が車を運転しちゃ。
のび太:こ、これ、ラジコンですけど。
警官:は?ラジコン?
のび太:はい、これが操縦機です。はい、前進。はい、バック。はい、前輪あげてウイリー。はい、バック。はい、ストップ。ね。
警官:うん、しかし。
のび太:子供がラジコンをうごしちゃいけないんですか?
警官:いや、そんなことは。でも、ちょっと、これは大きすぎるよ。
のび太:ラジコンは小さくなくちゃだめなんですか?
警官:いやあ、そんなことは。しかし、その。
のび太:かまわなければ、僕、行きますけれど。
ドラえもん:のび太くん、のび太くん。もうそのぐらいにしといたら、車を動かすのはやめようって言ってるの。
のび太:どうして。
ドラえもん:もし、事故でも起こすと大変だよ。それに。
のび太:そうだね。やめとこうか。
ドラえもん:うん、それがいいよ。
のび太:おまわりさん、そのラジコン、あげます。
警官:あ?
のび太:とはいったけど、なんかいいものないかな〜。う〜ん。ん?あ、飛行機だ。
ドラえもん・のび太:よいしょ、あら。
のび太:ドラえもん。これじゃ。
ドラえもん:大丈夫だって。動くものなら何だってラジコンになるって言ったじゃないか。じゃ、いくよ。のび太くん。
のび太:うん。
ドラえもん:よし、発進。
のび太:じゃ、行って来るね。わあ、飛んだ、飛んだ。わーい。ドラえもん、おもいっきり飛び回ろうよ。
ドラえもん:じゃ、いくよ。
のび太:うん。出発!それー。
ドラえもん:どう?のび太くん。
のび太:最高。やっぱりラジコンは飛行機が一番だ。
ジャイアン:へえ、カッコいいな。
スネ夫:へへへ。でしょ。はは。
静香:まるで本物みたいだ。
ジャイアン:スネ夫、今度は、俺に貸せよ。
スネ夫:え?
ジャイアン:いいだろう。貸せよ。
スネ夫:ん、うん。で、でも、ジャイアン、あまり無茶をしないでよ。
ジャイアン:わかってるって。よし。この、この。
スネ夫:ああ、ジャイアン。だめだよ。
ジャイアン:うるさいな。それ、左旋回だ。それ。
いとこ:ちょっときみ。
スネ夫:ジャ、ジャイアン。
ジャイアン:ありゃ、ありゃ、あれ?この、この、この。
いとこ:どんどん向こうへ行っちゃうぞ。
スネ夫:あ、ジャイアン。
ジャイアン:あ、あららら、俺、知らね。
スネ夫:あ。そ、そんな。こ、この、この。だめ、戻ってこない。
いとこ:君が無茶をしたから、壊れちゃったんだぞ。
スネ夫:ひどいよ。ジャイアン。
ジャイアン:そ、そ、そ、そんなこといったって。
スネ夫:戻ってこないよ、ほら。
ドラえもん:スネ夫くんたちだ。
のび太:おい。
静香:のび太さんとドラちゃんだわ。
のび太:みんな、どうしたの?
静香:ラジコンが故障して船が戻ってこないの。
スネ夫:ほら。
のび太:ドラえもん。よし、じゃ、行くよ。
静香:がんばって。
スネ夫:頼むよ。もう、のび太は、何を、もう。ん、遅いな。あ、ラジコンだ!いいぞ、いいぞ、もどってきた。戻ってきた。よかった。
ドラえもん:よかったね。戻ってきて。
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