報告と小論文
レポートは、大きく、報告と小論文とに分けることができる。
報告は、実用文の一種で、特定の相手(上司や先生など報告を書くように要求した人であることが多い)に事実を伝えるために書かれるものである。【参考→報告とは?】
小論文は、文字通り、小さな(=短い)論文のことである。【参考→小論文とは?】
報告と小論文の違い
報告は、調査や実験に基づいて事実やデータを報告するものである。したがって、報告では記述の正確さが重要になる。【参考→報告とは?】
小論文は、論文と同じく、理論に基づき自分独自の主張を論理的に述べるものである。したがって、小論文では見解の独創性が重要になる。【参考→小論文とは?】
- 報告(ほうこく)
- 事実を記述するもの・記述の正確さが重要
- 小論文(しょうろんぶん)
- 意見を主張するもの・見解の独創性が重要
報告・小論文と作文の違い
石原千秋は、次のように述べている。
冷たいようだが、大学のレポートでは人間としての君たちを知ろうとは思ってはいない。知りたいのは、君たちの思考である。だから、感想文では大学のレポートにはなり得ないのだ。…大学のレポートは基本的に君たちの「体験」を書く必要はない。(石原2006:67f.)
レポートと作文とは異なるものである。レポートと作文の大きな違いは、レポートでは(報告でも小論文でも)経験や体験を書く必要がないということである。また、レポートは、(報告でも小論文でも)「客観性」が必要だという点でも、作文と異なるものである。
レポート(報告・小論文)と作文(感想文・意見文)との違いは、以下の表のように整理できる。
報告、論文、作文の比較
| 自分の考え じぶんのかんがえ | 客観性 きゃっかんせい | 論理性 ろんりせい | 独自性 どくじせい | 根拠となるもの こんきょとなるもの |
報告 (ほうこく) | | 必要 | 必要 | なくても良い | 調査・実験 |
小論文 (しょうろんぶん) | 必要 | 必要 | 必要 | 必要 | 理論 |
作文(さくぶん) 〈感想文〉 | 必要 | | | あった方が良い | 経験や体験 |
作文(さくぶん) 〈意見文〉 | 必要 | | 必要 | あった方が良い | 経験や体験 |
レポートのうち、小論文と作文との違いは、論文と作文の違いと同じである。論文と作文の違いについては、〔論文とは?〕で説明している。【→論文とは?】
報告と作文の違い
ここでは、報告と作文の違いを説明する。
まず、報告は、事実やデータを記述するものであるから、自分の意見や考えよりも、事実やデータの方が重要である。この点で、報告は作文や論文とは異なるものである。
また、報告には、内容の独自性がなければならないわけではない。報告は、事実やデータを正確に記述していれば良いのである。もちろん、事実をまとめる視点に独自性のある報告には、高い評価が与えられるだろう。しかし、報告に必要な独自性は、あくまでも視点の独自性である。作文のように書き手の主観の独自性が求められるのではない。
ただ、発展的な報告では、意見や評価が求められることもある。しかし、事実に対する意見や評価も書く場合にも、独自性が必要とされるわけではない。報告で重要なのは、あくまでも記述の正確さと客観性である。意見や評価を書く場合にも、できるだけ客観的なものを書いた方がよい。報告では、主観的な評価や感想は極力慎むべきである。