HVACSIM+は米国商務省の旧NBS(National
Bureau of Standards、国家標準局)で開発された空調システムシミュレーションプログラムである。その名前はHeating
Ventilation and Air Condition system SIMulation + other systemという意味からつけられた。その名前の命名から、本シミュレーションプログラムの主旨は空調システムをそれと関連するもの(建物、自動制御装置、空調システムに対する影響を持つ他の要素あるいはシステム)にリンクして、それらのシステム間の動的な関係をシミュレートするものであることがわかる。
NBSは1988年に国家標準技術研究所(National
Institute of Standard and Technology)に改名され、略称はNISTである。HVACSIM+はNISTに引き続いて管理されている。
HVACSIM+の開発は米国エネルギー省(U.
S. Department of Energy)と米国海軍土木研究所(U.
S. Naval Civil Engineering Laboratory)の支援を得て、米国のWisconsin大学Madison校のソーラーエネルギー研究所により開発された動的シミュレーションプログラムTRNSYSの良い所を吸収して行われた。
HVACSIM+は米国政府の資金助成で作られたものであり、以下を明確に理解する者にのみ使用が認められる。
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HVACSIM+の中の、またはHVACSIM+と関連して供給される情報およびデータを、いかなる目的で使用する場合も、その精度、完成度、信頼性、利用価値、適合性について、米国政府はいかなる保証もしない。
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米国政府は、HVACSIM+の使用によって生じたいかなる結果についても、何者に対しても責任を負わない。
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米国政府はHVACSIM+の所有権を主張しないが、このプログラムは米国政府に帰属する。故に、VACSIM+を使用する者は、このプログラムに対するあらゆる所有権を主張しないこと。
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HVACSIM+を第三者に示す場合は、米国政府所有のプログラムであることを明確にすることに合意する。
日本では、1987年に名古屋大学の中原信生教授がNBSより入手した。1990年に名古屋大学工学部建築学科の中原研究室にて、HVACSIM+の気象データ処理部分を日本の空調負荷計算シミュレーションプログラムHASPの標準年気象データに対応できるように修正され、その使用が始まった。1993年同研究室は流体ネットワーク計算モジュールをHVACSIM+に導入すると伴に、大量のデバッグを行い、その結果HVACSIM+の性能は大きく引き上げられた。その後、中原研究室を中心に二つの委員会作業(住宅・建築
省エネルギー機構
BEMS委員会
HVACSIM+WG、空気調和・衛生工学会
蓄熱最適化委員会 動的シミュレーション評価WG)において多くの計算モジュールが追加され、HVACSIM+
Version 8.0(J)としてまとめられた。Ver8.1(J)はVer8.0(J)の何ヶ所にデバッグを行い、その上でさらに計算モジュールを追加したものである。
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