HVACSIM+の構造

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 (1) 全体構成

HVACSIM+は一つのメインプログラムMODSIMと幾つかの前処理プログラム、後処理プログラムで構成される。前処理はメインプログラムMODSIM用の入力データファイルを用意するもの、後処理プログラムはメインプログラムMODSIMの出力データファイルを表計算などのアプリケーションソフトで扱い易いフォーマットに変換する為のものである。

 1.1 HVACSIM+プログラムの入出力関係

 

(2) モデル定義ファイル

1.1HVACSIM+に含まれるプログラムとデータファイルの流れを図式化したものである。前処理ファイルのうち、モデル定義ファイルはMODSIMを実行させるとき不可欠のデータファイルである。このファイルにはシミュレートするシステムの構成、各物理量のつなぎ、各ユニットの特性、シミュレーション入出力などが記述されている。このモデル定義ファイルは二段階で作られる。まずHVACGENという対話式システム構成プログラムでシミュレーションを記述するワークファイルを生成する。ワークファイルはHVACSIM+のユニット構造定義に準じるもので、HVACSIM+に慣れたユーザーであれば、直接このファイルを編集して、システムの構成を変更することができる。HVACGENはユーザーを支援して、システムの構成を入力する為のものである。ユーザーはHVACGENを使って、システムの構成、コンポーネントの特性、境界変数、出力変数などを作成あるいは変更する。HVACGENはワークファイルを生成する際、コンポーネントモデルの情報が入ったデータファイル「typar.dat」を参照する。

その後、SLIMCONというフォーマット変換プログラムにてワークファイルをチェックしてメインプログラムMODSIMで読めるフォーマットのモデル定義ファイルに変換する。モデル定義ファイルはMODSIMの数値計算構造定義に準じるデータファイルで、一般ユーザはその中身を理解するのは非常に難しい。

 (3) ビジュアルモデリングツール

日本では、HVACGENの操作性を改良するために、ビジュアルモデリングツールが開発されている。ビジュアルモデリングツールはユーザの画像イメージでのシステム構成、リンク作業により、自動的にシステムの構成、各物理量のつなぎなどの作業を行って、モデル定義ファイルの作業ファイルを生成するものである。この開発によってHVACSIM+の使用はより簡単になり、シミュレーションの成功率が大幅に上がり、シミュレーション構築の所用時間も大幅に短縮される。

 (4) 境界変数ファイル

HVACSIM+には二種類の境界条件が設置されている。一種類は時間独立性境界条件で、もう一種類は時間依存性境界条件である。時間独立性境界条件とは初期値を保持したまま、シミュレーション時間によって変化しないものである。時間依存性境界条件とは状態変数がシミュレーション時間によって変化するものである。境界変数ファイルは各時間の各物理量の変化規律を記述したデータファイルである。境界変数ファイルは作成する為のプログラムがHVACSIM+パッケージに含まれていないので、一般的なテキストファイルエディタなど作成、編集する必要がある。

(5) 気象データファイル

シミュレーションに建物が絡んでいる場合は、気象条件のデータファイルおよび多層構造体用の熱伝導の熱伝達関数のデータファイルも用意しなくてはならない。気象データファイルは建物の熱負荷に影響を与える外部気象データファイルで、特殊な境界変数ファイルである。このファイルはRDTAPECRWDTAの二つの前処理プログラムでオリジナル気象データから、必要な気象データの部分を選び出して、メインプログラムMODSIMで読めるデータファイルに変換する。オリジナル気象データがない場合、あるいは気象データの情報が欠けている場合には、CRWDTAプログラムにより設計用最大負荷日の気象データファイルを生成する。名古屋大学での修正により日本の空調負荷計算プログラムHASPの標準年気象データファイルも読み込めるようになった。

 (6) 熱伝達関数ファイル

熱伝達関数ファイルは建物の多層構造体の熱伝達関数を記述するデータファイルである。このファイルはCTFGENという建物構造体熱伝達関数計算の前処理プログラムで作成される。フロントエンドルーチンを除き、CTFGENのメインルーチンはWaltonTARPプログラムからの抜粋である。このプログラムを使って建築材料の熱的特性(厚さ、熱伝導率、密度、比熱、熱抵抗)をデータバンクファイル「therm.dat」に入力し、対話式操作で多層構造体を組み立てることができる。原則的に、HVACSIM+では任意の建物熱伝達関数の時間インターバルは任意であるが、伝達関数の係数の個数の制限により、重構造の壁体では時間インターバルが制限される。CTFGENでは伝達関数計算失敗の警報が出るが、最小時間インターバルの提示はされないので経験的に時間インターバルを設定する必要がある。

 (7) 初期条件ファイル

初期条件ファイルはシミュレーションのスタート状態の記述ファイルである。HVACSIM+は二種類の初期状態でのスタートが可能である。一つはモデル定義ファイルに記述された初期状態からのスタートで、これは初めてシミュレーションを行うときに使われる方法である。もう一つは初期条件ファイルに記述された状態からのスタートである。後者での初期条件ファイルには前回のシミュレーション終了時に於ける状態が記録されている。この初期条件ファイルを使って、前回のシミュレーションの終了状態からシミュレーションを引き続き実行することができる。

 (8) メインプログラム(MODSIM)

MODSIMプログラムはHVACSIM+の中核にあたる。MODSIMは、モデル定義ファイル、熱伝達関数ファイル、気象データファイル、の各ファイルを呼び出す。図1.2のとおり、MODSIMはメインドライブプログラムおよび入力/出力操作、ブロックと状態変数の状態の制御、硬い連立常微分方程式の積分、連立非線形代数方程式系の処理、HVACシステムのコンポーネントモデル、制御、建物モデル、支援ユーティリティなどの、数々のサブプログラムから成り立っている。

MODSIM実行開始時、端末上から対話式にシミュレーション制御入力データを入力できる。シミュレーションが正しく完了すると、3つのデータファイルができ上がる:要約出力ファイル、出力データファイル、最終状態データファイルである。

最終状態ファイルはシミュレーション終了したときのシステムの状態を記述するものである。シミュレーションの終了時刻から引き続きシミュレーションをする時、最終状態ファイルの名称を変えておくと、MODSIMへの初期条件ファイルとして使うことができるので、シミュレーション終了時刻の状態から次の新しいシミュレーションを開始できる。

 

1.2 MODSIMの構造

 

(9) 流体ネットワークモデル

バージョン7.0HVACSIM+のメインプログラムMODSIMでは、小流量時の計算において数値計算上の問題でシミュレーションがうまく行かない場合があった。そのため、日本の名古屋大学( 穎心、当時特別研究員として滞在)と英国のLoughborough工科大学(P. Haves)は異なる手法でそれを改良した。名古屋大学では流体ネットワーク計算ルーチンを導入して、小流量計算と逆流計算の対応を改良した。Loughborough工科大学は小流量領域に線形内挿の計算を導入して、小流量領域にある数値計算の問題を改良した。この二つの改良はHVACSIM+の応用という観点から重要な改良となっている。バージョン8.0(J)は日本での改良方法に基づいたものである。

(10) 出力ファイル

MODSIMは3つのデータファイル出力する:最終状態データファイル、出力データファイル、要約出力ファイルである。

最終状態ファイルはシミュレーション終了したときのシステムの状態を記述するものである。シミュレーションの終了時刻から引き続きシミュレーションをする時、最終状態ファイルの名称を変えておくと、MODSIMへの初期条件ファイルとして使うことができるので、シミュレーション終了時刻の状態から次の新しいシミュレーションを開始できる。

出力データファイルはシミュレーション結果を記述するテキストファイルである。MODSIMではシステム構築のときに指定された出力インターバルで指定された出力変数をこのファイルに書き込む。このファイルはシミュレーションの目的ファイルとも言え、SORTSBという後処理プログラムにより、表計算ソフトウェア(ExcelLotus123など)で読めるフォーマットにソートすることができる。HVACSIM+パッケージはSORTSBでソートした出力結果をグラフ形式で表示するプログラムを持っていない。

要約出力ファイルはシステム構築データとシミュレーション結果がテキスト形式で記述されたファイルである。このファイルは異なる形でモデル定義ファイルと出力データファイルに記述(記録)した情報を記述する。

  


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