雪の石畳の路……

Summer Edition

第十一話 秋に向かって……



=裏夜景に誓う気持ち=

「……はぁ」

 勇斗は吐き出すため息に対して穂波の小さな肩は過敏なほどの反応を示す。

 ……あのなぁ、別に俺はこの場で理性を失うほど非常識な人間じゃないぞ? 何もそんなに避けなくったっていいじゃないか……。

 カップル風呂の入り口はいくつかに別れていて、入っている湯船の入り口にはバスタオルがかけられており、ブッキングを避けるようになっているようだ。

 なんだかラブホテルのようだな……なんていうことを考えていたら余計変な気持ちになりそうだ……平常心平常心。

 勇斗は自分の頬をつねり上げ、首を持ち上げてくる邪な心と戦っている。

「アッ先輩、あそこが空いているみたいです……よ?」

 穂波の指差す場所には、他の場所と違いバスタオルがかかっておらず、その一角には人のいる気配は無い。

「おっ、おう、そのようだな」

 勇斗は無意味に気合を入れながら、その場所に向かって歩いてゆき、それに穂波はしおらしくついて歩いてくる。

 な、何を緊張しているんだよ……別に本当にこの中でそんな事をするわけじゃあないし……ましてや、相手は穂波なんだ……、だぁ〜、変な事考えちまったじゃねぇかぁ〜!

 勇斗は煩悩を振り払うかのように頭を振るが、煩悩はなかなか振り払われずに、代わりに振りすぎた事により貧血のようなめまいに襲われる。

「どうしたんですか先輩」

 穂波がよろめく勇斗の胸にそって手を触れると、まるでそこを中心に動悸が全身を回っていくようだ。

「な、なんでもないよ……風呂に入る前にのぼせたかぁ? あは……あはは」

 引きつった不器用な微笑を浮かべる勇斗の表情は、恐らく知らない人間が見ればすぐにその場から逃げ出すであろう表情を浮かべているが、目の前にいる女の子はそんなことも臆した様子も見せずに、純粋な笑顔を勇斗に対し向けてくる。

「エヘ、変な先輩?」

 ニッコリと微笑む穂波は、どこか落ち着いたようで、優しい笑顔を勇斗に向ける。

 おう! きっと変だぜ、何でこんなにドキドキしているのか自分でもわからねぇ……。

「……変だな……なんだか俺も」

 穂波の指先もかすかに震えているのが勇斗の胸を通じて感じる。



「ヘェ、なんていうこと無いなぁ……ただちょっと狭いかな?」

 もう少し淫靡な雰囲気を想像していた勇斗は、なんでもないその浴槽を見て、少しがっかりした顔になる。

「ハイ……家のお風呂より少し大きいぐらいですかね? 何でこれがカップル風呂なんでしょうか……」

 穂波の横顔も、気のせいなのかがっかりしたようにも受け取れるような表情を浮かべ、その小さな湯船を見つめている。

「まったくだ、こんな小さな湯船に入るんだったら自宅の風呂に入った方がいいだろうに……」

 勇斗がそこまで言うと、先に視線をあげていた穂波が声をあげる。

「わぁ……綺麗」

 その台詞に触発されるように勇斗も視線を上げる。

「へぇ、これが……」

「ハイ、裏夜景ですね?」

 二人の視線の先には、夕闇に溶け込もうとしている函館山を正面に、市内の光が瞬き始め、空との隙間には茜色の線が割り込んでいる。

「函館山からの夜景も綺麗だけれど、こっちもなかなかいいよね?」

 ため息をつきながらその景色を見つめる穂波の横で勇斗も思わずため息をつきながら、その景色に見とれていると、勇斗の肩の先にチラリと見える穂波の白い小さな肩が小刻みに震えているのが見える。

「穂波寒いんじゃないか? 温まったといってもこれだけ気温が落ちてくると少し冷えるから、湯船に浸かった方がいいよ」

 勇斗に促され頷きながら穂波はその小さな湯船に浸かる。

「? 先輩は入らないんですか?」

 湯船の中から穂波が勇斗の顔を見上げてくるが、ただでさえ日本人の平均身長を軽く超えているほどの勇斗と二人ではいるにはその湯船は小さいようだ。

「いや、俺まで入っちゃうと狭いだろ? 穂波一人で景色を楽しみながら入るといいよ」

 勇斗は視線を逸らしながら穂波にそういうが、その台詞を訊きながらも穂波の手が勇斗の手を握り締めてくる。

「でも、先輩の身体も冷たくなっています、いくら夏とはいえ、もう秋口なんですから風邪をひいちゃいます……そのぉ〜、あたし平気ですから、は……入ってください」

 穂波の蚊の泣くような声は、さっきまでと違い雑音の少ないこの場所では勇斗の耳にしっかりと入ってくる。

「お……おう……なんだぁ……じゃあ入るから」

 変に気合を入れながら、湯船の空いているスペースに足を入れる勇斗、その足先からはお湯の暖かさがジンワリと全身に行渡るような気がする。

「……どうぞ……」

 隣ではなるべく身体を縮こませようとしている穂波が、湯あたりしたかのように真っ赤な顔をしてその成り行きを見守っている。

「はぁ〜ぁ……」

 肩まで浸かると勇斗の口からは、無意識に大きなため息が漏れる。

 正直言うと体が冷えていたんだろうなぁ、こうやって浸かると温泉の暖かさが体中に行渡って最高の気分だぁ。

「クス、先輩ったら、やっぱりおじさんくさいですよ?」

 そのため息に穂波の緊張も解けたのであろう、穂波の顔に笑顔が戻る。

「そうか?」

「ハイ、あんまりおじさんくさいと嫌われますよ?」

「だれに?」

「えぇ〜っと……」

 そんな会話をしていると不意に勇斗の肩に、温泉の暖かさとは違う暖かさと、すべすべと言う形容詞が当てはまりそうな物が当たり、二人の間に再び緊張が流れる。

 穂波の肩が、俺の肩に……洋服越しなら何度もあるけれど、肌と肌があたるというのはちょっと……照れくさいものだなぁ……。

 勇斗は穂波と目線を合わせないように、視線を泳がせる。

「先輩は、東京に行った時寂しかったですか?」

 思いもよらなかった穂波の質問に対し、勇斗はそれの意味を理解するのに少し時間がかかってしまった。



「……そうだなぁ……寂しかった……な」

 ふと、勇斗の頭にあの日の函館空港での事が思い出された。

 確か、東京に旅立つ時、穂波は空港まで見送りに来てくれた、他にも後輩たちが来てくれていたが、何より穂波が来てくれたと言う事が嬉しかった。

「……向こうに行っても元気でいてください……」

 既に、その時の穂波の両目は涙で潤み、湛えきれない物は頬を伝っていた。そうして、その涙は俺の選択に疑問符を投げかけるには十分な物であり、すぐにでもやり直したいと言う衝動に駆られるほどだったが……。

「先輩の事を、あたしはずっと待っています……」

 涙を拭いながら穂波は俺の顔を見上げ、微笑んでくれた、きっと穂波にとっても苦渋の決断だったのであろう、その後、いろいろな人との挨拶を、穂波は遠くからずっと見守っていてくれた、その様子はまるで俺の姿を焼き付けるかのようだったと直子が教えてくれた。

『東京行き……』

 空港内に放送が鳴り響くと同じくして、穂波が珍しく人並みを書き分けて俺の元に走ってきてくれた事は覚えている……そうして……。

「先輩、ずっと連絡します……だから忘れないでください」

 その一言に、俺の胸の中の何かがぎゅっと握り締められたようなそんな感覚に陥り、気がつけば、飛行機の中では堪えきれないで涙が出た覚えがある。


「やっぱり寂しいですか……あたしずっと東京に憧れていたんです」

 穂波はお湯に肩までつかり、遠い目をしながら、闇に包まれてゆく津軽海峡を見つめており、その視線をたどるように勇斗の視線もそちらに向く。

「憧れていた?」

 既に墨汁を流したような黒色に変化し始めたその海峡には、イカ釣り船の点す漁火が、転々と点き始め、函館の夜景を演出し始めていた。

「ハイ……毎日のように大森浜に行ったり、立待岬に行ったりして、先輩のいる本州を眺めていました」

 穂波の視線は今でも津軽海峡を越え、本州を見据えているようにまっすぐだった。

「毎日……かぁ」

 その台詞に、勇斗の気持ちが揺さぶられる。

 俺が向こうにいた四年間ずっと本州を見据えていたのか、この娘は……。

「ハイ、何日かはサボった事ありますけれど、ほとんど毎日見ていましたよ?」

 苦笑いを浮かべながら穂波が勇斗の事を見ると、ちょうど穂波を見ていた勇斗の視線とかち合い、互いの瞳にお互いの姿が写る。

「……あの本州に、先輩がいる……東京の空の下に先輩がいるって思うと、行きたいと言う気持ちが募って……でも、結局行けませんでした……あたし意気地がないんです」

 穂波はそう言いながら勇斗から視線をはずす。

「お母さんが勇斗さんのお義父さと結婚すると言う話をはじめて聞いたとき、あたしどうしていいかわからなくなっちゃって、先輩が彼氏じゃなくって……お義兄さんになっちゃうなんて、信じられなかったし、すぐに受け止める事ができませんでした」

 バシャッと穂波は自分の顔に手ですくったお湯をかける。

「でも、お母さんは今までずっと一人であたしたちを育ててくれた、そんなお母さんが幸せになってもらうのが、せめてもの親孝行、あたしには彼氏じゃなくなるかもしれないけれど先輩がいる、でも、お母さんからお義父さんを取ったら何も残らない……そんな自分のわがままでお母さんの寂しそうな顔を見たくない……だからあたしはお母さんの再婚に賛成した、その時のお母さんの幸せそうな顔は一生忘れないと思います」

 ニッコリと微笑む穂波の表情は少し複雑なような気もする。

 親父が言っていたのはその事なのか……寂しそうな穂波の顔と、悲しそうな穂乃美さんの顔、確かに見たくないよな。

「だから、先輩とあたしは……兄妹……なんですよね?」

 微笑む瞳からは大粒の涙がこぼれ落ちる……。

 そうだ、穂乃美さんに子供ができたといって喜んだものの、これで純粋に二つの家の血がつながったことになる……穂波も俺と同じ気持ちだったらしい、でも……。

「穂波……」

 勇斗は穂波の白い肩をそっと抱きしめ、自分に寄せる。

「せ、先輩?」

 その瞬間硬かった穂波の肩は徐々に勇斗の力に従うように、その肩を待たれかけてくる。

「俺も同じ事を考えたよ……穂乃美さんの妊娠はめでたい事だし、それを認めないつもりもない、むしろ歓迎したいんだ……でも、二つの家の血がそこでつながる……今までみたいなぬるま湯の生活ではない……現実だけを見なければいけないんだ」

 勇斗は、煌めく市内の明かりのある一点だけを見つめ、穂波に向かって話す。

「……現実?」

 勇斗の肩にもたれながら、穂波は勇斗の顔を覗き込んでくるが、勇斗はその顔を見ようとはせず、一点に見ていた光が空に上がることを確認する。

「そう……兄妹という事だけを見るしか出来ない」

 勇斗のその一言に、穂波は再び視線を湯面に落とす。

「現実……」

 呟く穂波の小さな肩は、震えている。

「でも、二人の最終形が果たしてそこなのかな?」

「最終……形?」

「そう、気持ちのつながっている二人が最後に目指すゴール……」

 勇斗のその一言に穂波の身体は過敏なほどに反応し、今までの照れを忘れたかのようにその顔は勇斗の事を正面に見る。

「先輩……それって……」

 その穂波の顔は見る見るうちに赤く染まり、のぼせていると勘違いしそうな顔色になる。

 お前の出した回答はきっと俺の出した回答と同じだと思うよ……。

「……今の状況で満足するつもりは無い、でも、今のこの状況は一種恵まれているのかもしれないな? その最終形に俺は限りなく近い形のような気がする」

 勇斗の優しい視線が、目を潤ませている穂波の姿を捉える。

「そう……そうですよね? あたしも今の生活に満足しています、それ以上の事を望もうとは思いません……だって、あの時の頃に比べれば、まるで天と地の差があるようです……今ではあたしの隣には先輩……勇斗……さんがいて、一緒に朝御飯を食べて、一緒にお店の事で悩んで、一緒に喜んで、一緒に悲しんで……でも、一緒にあなたがいてくれる……あたしは一人じゃない、あなたが近くにいてくれるから……だからあたしは……安心できる……あなたが近くにいてくれるだけで……」

 嗚咽をこぼしながら穂波は勇斗の胸に顔を埋める。

「良かった……穂波も同じ気持ちでいてくれて……」

「勇斗さん……」

 穂波から先輩という言葉が消えた、それは勇斗に取って喜ばしいことであるが……。

「……穂波、さんは必要ないよ……呼び捨てでかまわない」

 勇斗のその一言に、穂波は躊躇し、はにかんだ様な表情を浮かべるが、コホンと咳払いをひとつすると、まっすぐ勇斗の顔を見つめる。

「……勇斗」

 二人の距離が徐々に近づき、やがてその距離はゼロになる。

「……裏夜景のジンクスが叶えばいいな?」

「……エヘ、きっと……絶対叶いますよ」

 二人の視線の先には、幻想的な漁火が漆黒の海に浮かび、まるで、二人の決意を祝福するように瞬いている。



=エピローグ=

「ん? なんだ?」

 九月も半ばになり、客足の鈍ったお店の中で暇つぶしにと、勇斗はお店のパソコンを開き『ほっかいどうスクエアー』のホームページを開くと、お店の名前の色が変わっており、マウスをそこにもっていくと指のマークが出て、まるでそこを押せといわんばかりになっている。

「どうかしましたか?」

 やはり暇なのであろう穂波が勇斗と同じようにパソコンのディスプレーを覗き込んでくる。

「いや……ほら、うちの店の所……青くなっているべ? 何なんだ?」

 勇斗が少し慌てたようにいうと、穂波はクスッと微笑みながらそのマウスを勇斗から取り上げ、慣れた手付きで操作を始める。

「勇斗さん、これは、リンクが張られているという意味ですよ……でもなんで?」

 マウスを操作する穂波は、最近やっと勇斗の事を『先輩』ではなく『勇斗さん』に変わってきた、しかし、さんが取れる事はなく、なかなか進展する感じではない。

「りんく? なんだそれ」

 勇斗の一言に穂波はがっくりとうなだれ、顔をあげた時には苦笑いを満面に浮かべていた。

「勇斗さん……リンクと言うのは、そのホームページにつながっていますよという意味なんですよ……ってうちのお店にホームページなんて無かったですよねぇ? そんな知識がある人がこのお店の関係者にいるわけないし……誰が作ったのかしら……」

 怪訝な表情を浮かべる穂波は、無言でそこをクリックしていいかという表情を勇斗に対して向け、それを勇斗は了承する。

 カチッ……。

 軽やかなクリック音がしたかと思うと、その画面は少し悩んだ上に、仕方がねぇなぁといった感じでそのリンク先を開いてゆき、その先に広がったページには、

『Welcome To すばる! このお店は、お客さんのお土産と、お客さんへのお土産(思い出)を提供するお店です!』

 そんなキャッチフレーズが大げさなまでにそのディスプレーを飾る。

「な、何だぁ……こんなホームページ見たこと無いぞ?」

 画面に浮かび上がっているのはお店の画像を中心に、穂波であろう、かわいらしくデフォルメされた女の子のイラストと、明らかに勇斗であろう目つきの悪い男の子が揺れている。

「いつの間に?」

 穂波も驚いた様子でそのディスプレーを眺めているが、店先から聞こえる声でその謎が全て解き明かされる。

「うぉ〜い」

 ……親父か……間違いなくこの男が犯人だな!

 顔を上げるのも面倒くさいといった感じで勇斗は視線だけその声の主に向けると、そこにはニコニコ顔の穂乃美と、なぜだかそこにいる直子、そしてその二人と共に鉄平がニカッという笑顔を浮かべている。

「お母さん? 大丈夫なの?」

 穂乃美は既に子供をはらんで四ヶ月、まだそれほどお腹は目立たないものの、最近ではお店には顔を出さず、自宅にいるのが常になっていた。

「うん、たまにはお店にも顔を出さないと」

 相変わらずニコニコ顔の穂乃美に対し、穂波はホッとしたような顔をしていた。

「今日は勇斗に紹介したい人がいてな……このお店の救世主になってくれると思うぞ?」

 鉄平は相変わらずニカニカしており、その顔は勇斗の心の中にある攻撃本能を刺激する。

「きゅうせいしゅ? なんだそれは」

 勇斗の疑問に対し鉄平は大げさに両手を広げ、やれやれと首を横に振る。

 ……この親父ぃ……夜の一人歩きには注意したほうが良いと今度伝えておこう、そうでもしないと、俺が背後からヤッてしまいそうだ。

 引きつる頬の筋肉をなだめるように勇斗はこめかみに指を当てそこを揉み解す。

「フム、このたび穂乃美さんがご懐妊され、それに伴い仕入等の業務から一時的に離れて静養していただく事になった、それに伴い一部の業務を一葉君にお願いする事になってな、それではお店の人手が足りないであろうと言う事もありアルバイトを雇う事にした」

 鉄平の前口上の途中で勇斗はそっぽを向き、店先にいる人影に気がつく。

「それは彼女の事か?」

 勇斗はその人物の事を知っており、うなだれるように手を額に当てる。

「うむ、既に知り合いらしいから紹介は割愛するが、彼女の凄い所は……」

「ホームページの作成に関してはピカイチ、恐らくこの辺の個人商店のホームページのほとんどを彼女が手がけたといっても過言ではないわね? 最近では一般企業からも声がかかるほどみたいで、彼女の手がけたホームページは必ずヒットするといっても良い、くわえてイラストも可愛らしく、自身のホームページは日に千ヒットすることもあるほどなの」

 鉄平の台詞を奪うかのごとく、店先にいる女の子の隣でニッコリと直子が自身を褒めているような口調で説明する。

「……じゃあ、あのホームページは……」

 呆気に取られていた穂波が、やっとの思いで口を開きその彼女の姿を見ると、彼女もニッコリと微笑み、耳の上でまとめられた髪の毛が揺れる。

「ハイ、この前皆さんにあった時のイメージでイラストにさせてもらいました、お店は直子先輩から資料をお借りして……差し出がましいとは思ったんですけれど、皆さん良い人ばかりで、すぐに作っちゃいました、これからもバイトとしてですけれど、よろしくお願いします」

 ボンボンでまとめられている髪の毛を大きく揺らしながら頭を下げるのは真央だった。

「と言うわけで、一葉君はここに住みながらになるが、お店ではなくうちに来て事務関係を手伝ってもらい、真央君は学校終了後このお店に来てもらうことになったのでよろしく」

 よろしくって……。

うなだれる勇斗の頬を既に秋風に変わった函館の風が優しく撫でて行く。



秋編(Autumn Edition)に続く……