作 keen
それは、まだ暑い日ざしが降り注ぐ夏の日のこと。
私―――朝比奈京子は、夏休みを利用して行った撮影旅行を無事に終え、付き合ってくれた物好きな彼と、北見の野付牛公園を二人で散歩していた私は、彼のその優しさの所為なのか、孤独と猜疑心でいっぱいになった心の内を涙と共に彼に解き放ってしまった。
「……ねぇ、何でなの?私は映画を創りたいだけなのに…何でこんな辛い思いをしなくちゃいけないの?」
彼なら―――優しい彼ならきっと解ってくれると思ったから。
「アイツらなんて……みんな敵よ!邪魔者よっ!」
だけど……
「決めつけるのは、良くないよ」
彼はもの悲しそうに言って、かぶりを振った。
「どうして?仲間じゃなけりゃ敵でしょ!」
私がそう言い返すと、彼は瞳に込めた悲しみをより一層に深くして、私を見つめる。
「違うの?」
訳が解らなかった。
「何で私が責められなきゃならないのよ!」
私は被害者なのに……
「…苦しんでいるのは……私なのに……」
私はその場にしゃがみ込み、不覚にも泣き出してしまう。
どうしてなの?
彼は味方のはずなのに……どうしてそんなことを言うの?
そんな彼は、私が泣き止むまでずっとそばにいて、見守ってくれていた。
それは、嬉しくもありすさんだ心を解きほぐしていったが、それと同時に、彼がどうしてあんな悲しそうな目をして、あんなことを言ったのかがますます解らなくなっていった。