一人だけのパラダイス

飲み会帰りの、金曜日の夜
いつもの一つ前の駅で降りた
鈍行しか止まらない駅だ
そこは、人気のない倉庫街

駅前のコンビニの照明だけが眩しい
つまみとビールを、店員に渡す
街灯だけが、生きている街へ
一人だけのパラダイスの始まりだ

一人だけのパラダイス
飲み足りない、そして、少し歩きたい
一人だけのパラダイス
彼女もいない、金曜日の夜

倉庫街の間に、レンガ造りの運河
運河沿いに、ずーと歩いて行く
停泊中の船から、小さな波音
「変な男が来たわよ」と、聞こえる

運河に街灯が、ゆらめいている
黒いゆらめきが、「こちらへどうぞ」と僕を誘う
モーツアルトの「摩笛」「夜の女王」が横切った
運河を抜けた所に、タクシーが止まっていた

一人だけのパラダイスからの解脱だ



■書始−17/09/17:曲無。 ◇「一人だけのパラダイス」、どんな楽園(パラダイス)?一人でも楽しいの?と、
つっこみが入りそうな表題。でも、東京で働いている時は、似たような金曜日がよくありました。孤独な男ですネ。
「飲み会」にも、楽しいのと、そうでないのがあります、中途半端な酔い方です。「いつもの一つ前の駅で降りた」、
ここが「一人だけのパラダイス」の入口です、本来降りる駅が近づいた時に、頭に「お誘い」の声がありました。

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