平成21年5月5日
横浜 根岸

(レポート: GT)
GW前にM先生から「近場でピクニック感覚で釣りをしよう」

という誘いがあった。

思えば、それがM先生からの過酷な釣りへのインビテーションだった。

今回は「近場で」という事なので、「根岸」に決まった。

行き先を決める段階でM先生から「熱海」と、

ドコが近場なのかわからない場所の案も出たが

「根岸」で勘弁してもらい、日程は5/5に決まった。

だが、天気予報では雨だと知っていたので不安だった。
当日は案の定、M先生を迎えに行く時から雨がパラついていた。迎えに行く前にM先生に

「雨降ってますけど」

とメールしたが、

「とりあえず来いや!!」

と脅迫めいた返信があった。釣具屋で餌を買い、釣り場に昼前に到着したが、

人が多く釣りをする場所が限られていた。なんとか妥協できる場所に入り、釣りを開始した。

M先生は「隣のファミリーの少年に黒鯛をプレゼントするぞ!!」とやる気満々だった。

釣り開始直後、自分の仕掛けにアタリがあった。

似たようなアタリが2,3回続いた後にあわせてみるものの、のらない。

続けて、同じようなアタリがあったのであわせをいれると、今度はのったもののバラしてしまった。

この開始直後のやりとりが今回の釣りで一番のチャンスだったと思う。

一方、M先生には開始からまったくアタリがないようで

「我慢の釣りだ」

と呟いていた。

しばらくすると、雨が強く降ってきた。またしばらくすると、ますます雨が強く降り、風も吹いてきた。

雨、風共に強くなり、かなり厳しいコンディションの中、M先生は我慢の釣りを続けている。

自分もかなり濡れ、弱音を吐きたい気分だったが我慢した。

M先生が雨で釣りを中止する人物ではないと知っているので、

下着まで濡れても良いように今回はレインウェアの下に海パンをはいてきた。

ずぶ濡れになりながら釣りをすること2時間、体が体温を維持しようと小刻みに震え始めた。

まだ、M先生は我慢の釣りを続けている。アタリすらない様子。

ずぶ濡れになりながら釣りをすること3時間、台風のような風雨にさらされ続けた結果、

腕の感覚がなくなってきた。

ここで、M先生が動いた。

「撤収か?」

と心の中で期待した。でも、M先生はこう言った

「休憩」と、

そして車の中に入っていった…

自分は、ずぶ濡れになりながら魚のいる気配もない「プール開き前の学校のプール」

のような根岸湾で釣りを続けた。まわりにいた釣り人も、大雨のためほとんど撤収していった。

そんな中、何故だろうか?誰もいない場所で一人、大雨の中で釣りをしていると、

釣りをしている自分に対して自問自答を繰り返し始めるのである。

「GWなのに、なんで大雨の中で釣りをしているんだ俺は?」

「GWの横浜で、横浜開港150周年開国博に行かないで、

なんで根岸湾で大雨にうたれながら釣りをしているんだ俺は?」

「そもそも、こんな大雨だったら横浜開港150周年開国博だって行かないのに、

なんで根岸湾で釣りをしているんだ俺は?」

と…
しまいには自分の置かれている状況が段々と可笑しくなってきて笑いをこらえるようになり、

笑いによる体の震えなのか、寒さによる体の震えなのかよくわからなくなってきていた。

さらに、おかしな事を考えるようになった。「そうだ、せっかくだからGWにしかできない事をしよう。」

「このまま大雨の中、自分が黙って釣りを続けたら、

M先生が何時頃に「帰ろう」と言い出すのか実験してみよう。」と…

もはや、自分にとって魚が釣れる釣れないという事はどうでもよかった。

M先生が休憩しはじめてから1時間ぐらいたってからであろうか、車の中で休憩しているM先生に聞いてみた。

「M先生、いつまで釣りしますか?」

いつもの助六弁当の海苔巻きを食べながらM先生はこう言いました。

「釣れるまで。」

その答えを聞いた時、自分の中で何かが壊れる音がした…。

おかしくなっていた僕は、この会話のやりとりをこういった風に受けとめた。

被告人GT「M裁判官、僕の刑はなんですか?」

M裁判官「被告人GTを『大雨の根岸の刑』に処す。」

M裁判官「懲役:魚を釣るまで」

ハンマーの音「ドンドン」

M裁判官「閉廷します。」

弁護士がいない被告人GTは、M裁判官のいわれるがままの刑を受けることを決めた。

『大雨の根岸の刑』をうけ、大雨の中で釣りを続けているとM先生が車から出てきた。

そして、M先生がこう言いました。

「よし、良い場所があいたんで、そっちで釣りしようか!!」

自分の想像を遥かに超えた内容の発言だった。

根岸の常連が

撤退するぐらいの

大雨の中

まだまだ

雨にうたれ続けよう

というのだ。

愕然とした。

その後、1時間半ぐらい大雨の中で粘ったが二人ともチャンスはこなかった。

最後はM先生に「もう限界です。」と伝えた。

そして今回の釣りは幕を閉じた。

振り返ってみると今回の釣りは、ピクニックではなく、むしろ修行のようなものだった。

雨にうたれ続けると人は惨めな気持ちになり、しだいに狂わせる危険性がある事を知った。

そしてなによりも、忍耐力がつく経験ができた。

人として成長できたと思う。

「根岸」を去る時、昔やっていた釣り番組の台詞がふと頭をよぎった。

「水・光・風・人・愛 この地球での幾万の出会い、幾千の縁に感謝して、今日もまた千夜釣行」

-終-
【管理人Aの証言】
その昔、真冬の茨城で48時間ルアーを投げさせられました・・・。

【バリの証言】
真冬の本牧ふ頭で、ジーパン一枚で延々とルアーを投げられていました。

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