Site Adventure
I. Watamine / O.Watase
2026
夜闇を一頭の馬が奔っていた。駆っているのは一人の騎士。そして、その背にしがみ付く姫君の姿。二人の後方では戦火に燃える王都が赤々と夜空を照らし、立ち上る煙はまるで魔物のように馬を追って流れてくる。
「ああ、なんてこと……都の人々が……」
「アイシャ様、今は何よりも貴女が生き延びることをお考えください。このバジャー、命に代えても貴女様をお守りいたします」
俺の名はバジャー。このマールバハール王国に仕える騎士だ。マールバハールは“書の血族”と呼ばれるまじない師の系譜を持つ王族と、それを助ける“刃の血族”たちが力を合わせ、7代にわたってこの地に栄えてきた。だが今夜それも危ぶまれている。刃の血族を束ねる将軍が反旗を翻したのだ。
俺はまじないの一つも使えぬただの男で、祖先も誰だかわかりゃしない。この国の片田舎の寂れた村で生まれた。おそらく血筋でいうなら刃の者のほうが近しいに違いないとは思っていたが、そんなふうに考えるのも今日限りだ。俺は王家に忠誠を誓った騎士。裏切り者と一緒にされるのはごめんだ。
王都に火を放った反乱軍は、混乱に乗じて王宮へと攻め上った……王の命令を受けた俺は、王の一人娘であるアイシャ姫を逃すために馬を奔らせているのだ。心のどこかでは、敵の一人も倒さずに何が騎士かと思わないではないが、王家の血筋を護ることの重大さもわかる。何より王直々の勅命だった。俺に選択肢はなかった。
「西へ向かえ。カルルームへな。代々よしみを結んできたあの国の王ならば、きっと姫を匿ってくれるだろう。そして伝えてくれ。マールバハールは、我ら書の血族は卑劣なる輩になど決して屈さぬ。どうか援軍を送ってくれと」
王弟バルサザール様の助言に従い、俺は渦巻く黒煙を振り切り国境へと馬を駆った。姫が震えているのを背に感じながら……。
あの夜から三日。俺と姫は隣国カルルームとの国境である氷霧の森に入っていた。これだけ離れればそうそう追っ手が現れることもないだろう……俺は馬から降り、アイシャ姫だけを乗せて手綱を引いて歩く。ここまで良くもってくれたが、これ以上無理をさせては馬がつぶれてしまう。
「もう少しの辛抱です。この霧が我々を隠してくれます……じきにカルルームに入れるでしょう」
この森を包む霧は冷たい。俺は馬の鼻先に布をかぶせてやった。俺も姫も、厚手の外套をはおり、頭からフードをかぶっていた。外套の襟を立て、口元を覆う。それでもここに長くいれば、冷気に肺をやられてしまう……姫のためにも、早く国境を越えたかった。
しかし敵は甘くはなかった。深い氷霧の中、霜を踏みしだく一頭ならぬ蹄の音が響いてきたのだ。すぐに馬に飛び乗り、走らせようとしたが……馬はもう限界だった。ほんの数歩で脚が折れ、俺と姫の体が地面に投げ出される。冷たい霧の中を追っ手が迫る中、俺は急いで姫を助け起こした。
「このまま真っすぐ行ってください! 俺はここに残り、敵を食い止めます」
「でも!」
「俺のことはいいから早く! 奴らが来る!」
それでも姫は動かなかった。無理もない、何の不自由もなく育った温室の蘭が、一夜にして全てを失ったのだ。自分ではどうしていいのかわからないに違いない。
だが、そうではなかった。王都を出た時と同じ瞳で彼女は俺を見ていた。戦に巻き込まれた民を気づかう、あの眼差しだった。俺はその目を見返し、答えた。
「……俺はこれでも王に認められた騎士です。マールバハールのために命を懸けることが我が使命。大丈夫、すぐに追いつきます」
遠ざかる姫の姿を霧が包むのを見届けてから、剣を抜き未だ見ぬ敵を待つ。程なく白い氷霧をかきわけて馬に乗った三人の騎士の姿が現れた。いずれも外套と頭巾に覆われて顔は見えなかったが、その鎧には刃の血族の紋章が描かれている。奴らは俺の馬が倒れているのを見ると布の奥で笑みを浮かべ、馬を降りずに手にした剣の切っ先を向けてきた。「姫はどこだ?」
返答代わりに、俺は馬の脚へと斬りかかった。瞬く間に三頭の馬が崩れ落ちる。二人の騎士はそれに巻き込まれて地面に倒れこんだが、残る一人は素早く馬の背から飛び降り、俺の前に立っていた。倒れた馬に巻き込まれて苦し気に呻く二人を脇に、俺たちはにらみ合った。
一瞬の間をおいて剣閃が交わり、双方の頭巾が切り裂かれる。氷霧の中、晒された敵の顔は剣士らしからぬ優男だった。
「やはりバジャーか……その武勇、よく聞いているよ。同じ王家の騎士として、前々から手合わせ願いと思っていたんだ……」
奴は手首を返し、剣で風を切った。「……こんな形になるとは思いもよらなかったがね」
俺も、奴もそれ以上はもう何も言わなかった。俺たちは無言で斬りあった。敵の腕も相当なものだったが、俺に言わせればまだ甘い。さらに数合刃を合わせると、奴は分が悪いと悟ったらしく、顔に似合わぬ声で怒鳴った。
「いつまで寝てる! お前ら、さっさと姫を追え!」
俺の注意が一瞬、二人の騎士たちへと逸れる。それが命運の尽きだった。その隙を見逃すような相手ではなかった。
視界がぐるりと回り、悔し気な表情を浮かべている敵の手の中で、剣が赤く濡れているのが上下逆さまに見えた。そして眼前に地面が迫り……そのあとは光射さぬ漆黒の闇へと落ちていく感覚だけが残った。
“大丈夫、すぐに追いつきます”
護るべき姫との約束すら守れず、使命半ばで潰えた騎士。俺の物語はここで終わるはずだった……

この物語について
使命を果たすこと叶わず敵の刃に倒れた騎士バジャー。この物語は彼の死から始まります。ここまでの出来事はすでに歴史に刻まれてしまいましたが、この先の未来はまだ定まっていません。内乱によって混乱に陥ったマールバハールはどうなってしまうのでしょうか。彼を死に追いやった刃の血族の騎士のその後、そしてアイシャ姫が無事なのかどうかもわかりません……。ただ一つ言えるのは、今ならまだ未来は揺れ動いているということです。
読者である貴方は、死せるバジャーとなって物語を読み進めることになります。事あるごとに、どのような行動をとるべきかを考え、決定しなければなりません。そして、その判断によって物語は変貌していきます。つまり、未来は貴方の手に委ねられているのです!
騎士バジャーは死してなお数奇な運命を辿ることになるでしょう……その結末がいかなるものか、どうか貴方の手で確かめてみてください。
選択肢とパラグラフ
この物語は普通の小説とは異なり、パラグラフと呼ばれる、それぞれの番号を振られた断章群によって構成されています。各パラフラフの末尾には選択肢があり、貴方がバジャーとして次に取る行動を選ぶことができます。それぞれの選択肢には行き先として別のパラグラフ番号が指定されており、物語の続きは該当するパラグラフへ進むことで読むことができるようになっています。つまり、普通の小説のように順繰りにページをめくっていくのではなく、本のあちらこちらへと飛びながら読み進めるというわけです。
また、パラグラフによっては末尾で分岐することなく、ただ次のパラグラフが一つだけ指定されている場合や、バジャーの状態によって進むべきパラグラフが決められていることもあります。その都度、文中の指示に従って行動してください。
戦闘と武器
死んでしまったとはいえ、バジャーは誇り高き騎士です。武器を振るう必要があれば、いつでも戦う心づもりはできています。
物語の途中で戦闘が発生した場合には、その都度相手の戦力が数値で提示されます。これはバジャーの力量と比べた時の相手の腕前です。ですから、バジャー自身の戦力は数値としては示されることはありません。体力の概念もありません。多くの戦闘では、一度のやりとりで決着がつくことになります。
戦い方は以下の通りです。
●ステップ1
バジャーの戦力が確定したら、ステップ2へ進んでください。
ただし、「1」が出たときにはファンブル扱いとなり、自動的に負けとなってしまいます。これは「6」が出た後の、追加のサイコロを振った時でも同様です。とにかく「1」が出たら負けが確定してしまうのです。このように不運に見舞われてしまったときには、ステップ2を飛ばしてステップ3へ進んでください。
●ステップ2
双方の戦力を比べます。数が大きいほうが勝ち、少ないほうが負けます。
同点だった場合には、バジャーの勝ちとなります。
●ステップ3
勝敗が決まりましたら、その都度指示がありますのでそれに従ってください。
旅路において、新たな武器を見つけることもあるでしょう。武器によっては、ステップ1で確定した戦力にボーナス点を足すことができることもあります。得られるボーナスは武器によって異なりますので、入手時にその内容をメモしておくようにしてください。
命運値
騎士バジャーが持つステータスは、命運値と呼ばれるもの一つのみとなります。
冒険の開始時における命運値は12です。
冒険中、危難に見舞われる度「命運値を消費する」かどうかの選択を迫られることになるでしょう。命運値を消費することで致命的な危機を退けることができますが、あえて不運を受け入れることも可能です。ただし、その場合は冒険の継続が不可能になってしまうこともあるかもしれません。とはいえ、全ての場面で幸運にすがっていては、遠からず命運が尽きてしまうでしょう。
状況を見極め、適切な判断――あるいは賭けか――を下すことが求められます。もしも命運値が0になってしまったら、最早それ以上の不運を躱すことができません。その時には最悪の事態が起きないよう祈りながら、運命に身を委ねる他ないのです。
戦闘における命運値消費
命運値は戦闘でも使用することができます。
敗北が確定してしまった時でも、命運値を1消費することで、再び敵に挑むことができます。この方法を使うことで、勝利を得るまで何度でも再戦することが可能です。
同様に、命運値1と引き換えに、サイコロの出目が「1」だった時に、降り直すこともできます。「6」が出た後に「1」を出した時など――天国から地獄へとはこのこと――には大いなる助けとなるでしょう。
状態の記録
物語の進行とともに、バジャーを取り巻く状況は随時変化していきます。命運点の変動は常に記録してください。
また、バジャーの状態が変わったときには、その都度「~覚えておくこと」あるいは「~を忘れずに」という指示がありますので、これもきちんと記録しておいてください。
武器や道具を手に入れた時も同様です。旅の仲間が増えたり、あるいは別れたりすることもあるでしょう。それら全てが、物語へと影響を与えていくのです。
ここまでの説明を呑み込めているのならば、物語の続きを紐解く準備が整ったと言えるでしょう。
これより先、氷霧の森で討ち取られてしまったバジャーは貴方自身です。1へ進み、彼の第二の物語を始めましょう……

……どのぐらい経ったのだろう。何もない空間をただ揺蕩っている。何も見えない。何も聞こえない。完全な暗闇と静寂が俺を包んでいた。
このまま、どこまでもどこまでも流れていくのだろう……だが、何かが聞こえてきたような気がした。誰の声だろうか……確かに、聞き覚えのない女の声がどこか遠くから流れてくるのだ。
汝、我が声に応えよ
アルクィール・ルグナイル・エステバーニャ
我が声、我が名に応じてその瞼を開け
どこか離れた所にぼんやりとした光が灯り、暗闇が切り裂かれたような気がした。声は光のほうから響いてくる……
俺は、手を伸ばした。
260へ進め。

扉を開けて中に入る。こじんまりとした部屋だが、調度品は立派なものだ。左手の壁に大きな額がかかっている。男女を描いた肖像画だったが、その顔には見覚えがあった……アイシャ姫だ。
絵をじっくりと見てみるのならば93へ進め。
時間を無駄にせずに先へと進むのなら、338へ。

「違うぜ旦那」
チャダルが俺が進もうとした方向ではダメだと言い出した。奴は自信ありげにこっちだと道を指差す。
チャダルのあとをついていくのであれば366へ進め。
自分の判断を信じて進むのなら100へ。

使った分の命運値を減らしておくこと。
賭けた命運値が……

「国境近くには氷霧の森が広がっておる。肺も凍る難所じゃよ……そんな布切れでは命がもたんじゃろう」
老婆は身にまとった布の中から、一枚の外套を取り出した。「こいつなら、肺を冷気から守ることができる……着ていくがいい。なに、ただの年寄りの気まぐれさ。お代はいらないよ」
ライラは礼を言うと、外套を身にまとった。ピンで留められていた金属製の飾りが光る。
「おや……てっきりなくしたと思っておったが、そんなところに付けたままにしておったとは……。よいよい、それもお主にやろう。本物のまじないがかかった、幸運のお守りじゃ」
ライラは老婆に頭を下げて再び礼を重ね、それから俺のほうを向いて言った。「バジャー、これは貴方の頭にして」
「バジャー……? そこの端に隠れている御仁はバジャーという名かね」
俺の名を聞いた老婆が、物映さぬ瞳でこっちを見た。「ワシがまだ小娘じゃったころ、同じ名前の騎士様に憧れていたよ。残念なことに、あの戦で命を落とされたというが……彼が生きてさえいてくれたら、ここまで刃の血族が横暴にふるまうこともなかったろうに。
この国では珍しい名前ではないが……もしも本当にあのバジャーの霊なら、きっとお主の身を護り切ってくれるだろうて」
お守りは吠え猛る神獣の顔を象ったもので、120年前の王都では多くの者が身に着けていた……。
頭が幸運のお守りになったことを忘れずに、254へ進め。

倒れたファファスタスに構わず、俺はライラの元へ駆け寄った。頼む、生きていてくれ……!
チャダルが一緒にいるのなら、98へ。いないのであれば182へ進め。

「俺っちは裏から行くつもりだよ……台所につながる勝手口があってね。メシがたんまりあるんだ」
俺はチャダルと共に裏手へ回った。料理を取りに来た宿の女将が、客がいる大部屋へと戻るのをチャダルに確かめさせてから、扉を開けて目立たない程度に隙間を作る。慎重に鉄兜をくぐらせ、俺たちは誰もいない台所へと忍び込んだ。
ごった返している台所を見渡す……旨そうなシチューの大鍋がかかっている暖炉がある。それは結構なことだったが、奥へ続く扉は一つだけで、その向こう側からは客が酒を酌み交わしている声が聞こえてくる。食堂を通らずに宿泊部屋へは行けないらしい。
「当てが外れたね、旦那」チャダルは早速食料を物色しはじめた。「俺っちのほうは大漁間違いなしだぜ。見てくれよ」
その時、不意に扉が開いた。聞こえてくる酔っぱらいの声がひときわ大きくなったが、次の瞬間悲鳴にかき消される。女将が追加の酒を取りにやってきたのだ! 彼女の眼には、山盛りに積み重ねられた干し肉――それと、一個の鉄兜――が浮かんでいる異常な光景が映っていたはずだ。
「……騒霊だよ! 誰か来ておくれ!」
客たちがどよめき、酒場の中が一気に騒がしくなる。俺は咄嗟にシチューの鍋を蹴飛ばした。ひっくり返った中身で炉の火が消え、台所が白い煙で満たされる。チャダルも抱えていた肉を投げつけ、俺たちは二人して裏口から逃げだした。
「確かに亡霊だった、間違いない!」
「夕方見かけたローブの男、ありゃ王都からわざわざ退魔師が来てたってか……けどよ、今亡霊が出たんなら、こいつは仕留めそこなったちゅうことか?」
夜の村はちょっとした騒ぎとなり、詰所からも兵隊たちが何事かと駆け付けた。俺たちはライラを連れてこっそりと離れるのが精いっぱいで、亡霊騒ぎがどうなったか確かめる余裕などはなかった……
「こんなつもりじゃなかったんだけどな」
村はずれの辻で、チャダルはしゅんとしていた。だがそれでも、どさくさに紛れてある程度の食料を盗んでこれたのは幸いだった。
村のほうでは松明を持った連中が周りの闇を照らしているのが見える。早いところここを離れたほうがよさそうだ。
「けど俺っち、騒ぎの中でいいことも聞いたんだよ。王都から来た退魔師はどこだって喚いてた奴がいてさ、おおかた北に帰ったんだろうって誰かが怒鳴ってたよ」
となると……氷霧の森を経てカルルームへ向かうなら、北へ向かうことになる。俺がかつてアイシャ姫を逃した道に出るには、先ずは王都の近くまで行かなければならないからだ。そうするなら438へ進め。
やはり行き先を変え、ライラの生まれ故郷を目指したほうがいいと思うなら、行き先は380だ。

ようやく東の空が白じむ頃、周りの草の背が低くなってきた。粘つくような嫌な空気も、既にあらかた流れ消えている。朝日の最初の一条が古戦場を照らし、北には王都を囲む城壁が幅広く続いているのが朝霧の中に見えた。呪われた古戦場を通過したのだ。
俺の“頭”がアミュレットであるのなら262へ進め。
そうではなく、別の品であるならば198へ。

そうだ。ライラさえ無事なら、俺は戦い続けることができる。憎き刃の血族に復讐するためにも、まずはライラの安全を確保しなければならない。
「とにかく、一刻も早くこの塔から出ることだ。退魔師協会とかいう連中に嗅ぎ付けられてるからな。送り込んだ刺客が戻らんとあれば、奴らも次の手を打ってくるだろう」
俺は二人を急き立て、塔から出ようと促したが、チャダルは大広間の物色を始めていた。
「ちょっとまってくれよ、旦那。このまま外に出たらいろいろと面倒だぜ。もうちょいまともな頭にしねぇといけねぇし……いい武器だって必要だろ? それに嬢ちゃんは俺たちと違って生きてるんだからな。このままじゃ風邪ひいちまう」
奴は分厚いカーテン、それから部屋の隅にあった甲冑一式と三日月刀を指さした。
「嬢ちゃん、夜はこいつに包まるといい。それから旦那、こっちのほうが今あんたが使ってるのよりも上物だと思うぜ」
確かに斧は先程の戦いでボロボロだ。だが俺は、チャダルが薦める三日月刀よりも、床に落ちている短刀のほうが気になっていた。敵が使っていた、霊体をも斬れる刃だ。
「なるほど……それも悪くないね」短刀に手を伸ばす俺を見てチャダルが口笛を吹いた。
霊的な品ゆえだからだろうか。短刀は手から零れ落ちようとはしなかった。これなら、特に集中することなく扱える。小さく目立たないのも大きな利点だ。
除霊の短刀を武器として使う場合、残念ながら戦力にボーナスを加えることはできない。だが亡霊を相手にするときには、きっと有利に働くだろう。
チャダルお薦めの三日月刀はちょっとした業物だ。こちらは戦力に2を加えることができる。どちらかを武器として選べ。二つとも持っていくことはできない。
そしてもう一つ、チャダルが甲冑一式から拝借してきた兜だが、これまでの“頭”とは馴染み方が断然違うようだ。こいつは装飾用ではなく、正真正銘戦いのために作られたものに違いない。騎士として戦いに生きていた俺とは相性がいいようだ。俺が武具の具合を確かめている間に、ライラも布を適当な大きさに切って身にまとっていた。手ごろな紐を使って腰のところで縛りつけ、どこかで見つけてきたのか背負い袋を調べている。
「これならきっと外でも寒くないわ。ありがとう、チャダル。ベルトが片方壊れてたけど……こうすれば背負い袋もなんとか持っていけそうね」
俺やチャダルとは違い、ライラは生身の人間だ。亡霊のように身一つでどこへでもいうわけにはいかない。壊れた背負い袋は横向きになって、彼女の小さな身体の脇に収まっていた。多少、物が取り出しにくいかもしれないが、旅に必要な物を持ち運ぶには十分だろう。
広間に暗殺者が現れたときはあんなにもまばゆく差し込んでいた光だったが、外に出てみれば、それは満月の明かりだった。夜空を冷たい風が吹いている。ライラが囚われていた塔は、チャダルが言っていたとおり、ツタに覆われた陰気な石の塊だった。
外の様子は二人の間で常々話題にあがっていたのだろう。チャダルがそこらに生えている螺子くれた木や、妙な形の岩をライラに紹介している。ライラもそれら一つ一つにうなずきながら、久しぶりの外界に興奮しているようだ。
頭が鉄兜になったことを忘れずに、415へ進め。

下から登ってきた階段を背に回廊を突き当りまで進んでいくと、右手の壁に扉があるのがわかった。以前ライラを解放したとき、ここは通っただろうか? 塔の造りを思いだしながら、俺はこのまま進むべきかどうか考えた。
回廊を戻り、もう一つの道を進むのなら251へ。
目の前の扉を開けて中へ入るのなら445へ。

「悪いが、覚えていないな」俺がそう言うと、奴は視線を床に落とした。
「俺っちさ、まじない師のとこに盗みに入って捕まっちたんだ。こんな刺青入れられて……真っ赤に燃えて、死ぬほど痛かった……けど、役人に引き渡された記憶は無ぇ。とはいえ、この様だ。間違いなく死んじまってると思うんだけどよ」
男がもぞりと身を起こした。てっきり壁に埋まっているのだと思っていたが、そうではなかった。その身体は大きく削れて存在していなかったのだ。
「俺っちがもう死んでいて、魂だけなんだとしたら……失くしちまった部分が持って行っちまってる記憶がきっとあるんだろって思うのさ……思ったんだけどな」
その時、大きな鐘の音が一つ鳴り響いた。
TOLLING
鐘が鳴った回数を記録しておくこと。これで1回追加だ。
チャダルは再びユーフォミアの中に身をうずめた。もう話しかけても、ろくに反応を返してこない。
351へ。

不意に頭に言葉が響く……ライラの師、ファファスタスの声だ。
「我らが書の王宮に無事着けたようじゃな……玉座の間に通じる扉はいくつかあるが、貴殿が開くべきはただ一つ。大いなる国土を冒涜する忌々しき扉だ。鍵も正しきものを選ばねばならん。それは不遜にも、このマールバハールの全てを知ったと思いあがった男の手にある。よいか、それ以外の鍵は全て破滅への導き手じゃ……努々忘れるでないぞ」
老人の声はそこで途切れ、それ以上は何も聞こえなくなった。
120へ進め。

BATTLE 
もしも使っている武器が除霊の短刀であるならば、効果は絶大だ。この戦いにおいては、戦力に3を足すことができる。
サイコロを一つ振れ。そして武器などから得られる戦力ボーナスを加える。
出目が「6」であれば、さらにサイコロを振って加算せよ。
(ただし、「1」が出た時点で自動的に敗北となってしまう)
得られた値と、敵の戦力を比べよ。同点以上であれば勝利だ。
敗北を喫した場合でも、命運点を1消費することで再挑戦できる。
決してあきらめることなかれ。
見事、勝利したのなら183へ進んでよい。
惜しくも敗れたのであれば76へ。

王都から休みもせずに進み、レザニアへ着く。山間の村を見下ろす山の中に隠された秘密の部屋がある。かつて奴と出会った、あの場所だ。
チャダルが一緒にいるのであれば379へ進め。一人でここに来たのであれば151へ。

やがて砂嵐は弱まってきた。どうやら常に強風が吹き荒れているというわけではないらしい。多少まともになってきた視界に、何か緑色の塊が映る。近づいてみると、それは汚れた水をたたえた小さなオアシスだった。だが、何かがおかしい……よく見れば、ここで力尽きたのか、四つ脚の獣らしき白骨と化した亡骸があちこちに見える。毒が含まれているのかもしれない。
“頭”が酒瓶、仮面、あるいはカルルームの像であるのなら190へ進め。
そのいずれでもないのであれば、この先進む方向を決めなければならない。
オアシスの西側をまわって行くのなら497へ。東側を進むのならば275へ。それぞれ進め。

俺は目を開いた。満天の星空が広がっている……どうやら意識をなくしていたようだ。
俺は一体……? 痛む頭に手をやる。髪に触れる感触が記憶を呼び覚ます。俺は跳ね起きた。ライラはもういない。それにこの頭は……!
今や、騎士バジャーは五体満足だ。首に切れ目などない。本来の頭が乗っている。全ての感覚が戻ってきている。今までとは違い、身体のきれに違和感も残っていない。最初からこの状態だったなら、不覚をとることもなかったろう。
「……マールバハールへ戻らねば」
本来の頭を取り戻したことを忘れずに。
今後「頭が何か」と聞かれた場合には、全ての選択肢を無視してその時いるパラグラフから50を引いたパラグラフへ進むこと。
今は、490へ進め。

復活の儀式が中途半端だったのだろう。ファファスタスの切り札だったはずの魔導兵だが、その動きは鈍くぎこちない。しかし……俺の消耗はそれ以上だった。これ以上は持ちこたえられないと思ったその時、魔導兵の動きが止まった。玄室にライラの声が響く。
「マールバハールの死せる王たちを護りし者よ……お前の目覚めは不当な呼びかけによるもの。今は再び眠りにつき、その時を待つがよい!」
476へ。

使った分の命運値を減らしておくこと。
賭けた命運値が……

こいつはチャダルだ。レザニアで行方知れずになっていたが、こんなところで囚われていたとは。だが何か違和感がある……そうだ、竜の刺青が顔の右側にあるのだ。俺が知るチャダルの竜は左側に施されていたはずだ。
俺が逡巡していると、奴は目を開けた。
「誰だ、俺っちの眠りを邪魔する奴は……?」そして俺の姿を見て目をぱちくりとさせた。
「こらまた随分とへんてこな旦那だね。どうしたい、どっかで頭を無くしちまったのかい?」
どうやら俺が知るチャダルではないようだが、その言葉遣いや仕草は奴そっくりだ。
358へ進め。

「まあ、不便だとは思うがよ……こればかりは仕方ないやね。落ちても割れないような頑丈な頭がありゃ、多少の無茶は何とかなるかもしれけどな。とりあえず、今は俺っちがついて行ってやっから心配すんなよ」
チャダルはそう言って、無事に鉄格子を超えた俺の肩をたたいた。亡霊同士だと触れられるらしい。
ライラが軽く手を振った。「戻ってきたら色々教えてね……私、塔の中のこともよく知らないから」
「お前、何も教えてないのか? さっきも外から戻ってきたんだろう?」
チャダルを問いただすと、奴は肩をすくめて正面の壁をこつこつとつついた。
「壁から直接出入りしてるのさ……その方が楽だしよ。塔の外壁にはツタが絡んでて上り下りも簡単なんだ。だから俺っち、塔の中のことはよく知らねぇ。
まあ、旦那は廊下に出るほうがいいね。ツタ登りも得意じゃなさそうだし、そもそもの話、壁を超えるにゃ首を置いていかなけりゃなんねぇし」
塔の中にライラを閉じ込めている牢の鍵があるとは思わないのかと言いかけて、俺は黙った。こちら側から見て初めてわかったが、錠の鍵穴が塞がれていたのだ。溶かした金属が流し込まれていて、これではたとえ鍵があったとしてもどうにもなるまい。
俺は改めて、自分をこの世に再び呼び戻した小さなまじない師を格子越しに見やった。こんな年端もいかない子どもが受ける仕打ちだろうか。これも書の血族が、戦に負けたからだというのか……
256へ進め。

やがて通路が交差している場所へ出た。ここも空間が設けられていて、中心には一体の像が立っていた。やはりこの塚の中心の方を向いているようだ……。この像を調べてみるのであれば292へ進め。
像に用がないのであれば、先へ進むとしよう。広間で交わる通路は垂直に交差しているのではなく、妙に角度がついている。
像からみて右手手前へ延びる通路を進むのであれば229へ。
左手手前の通路を選ぶなら58へ。
右手奥へ行ってみるならば285へ。
あるいは残された道を選び、左手奥へ向かうならば177へ。

鍵穴に紅玉の鍵を滑り込ませ、回してみる。カチリと小さな音が通路に響いた。
406へ進め。

……こうして、一人の少女がマールバハールから亡命を果たした。
カルルームの人々はこう噂したという。マールバハールから伝え聞く話では、その少女は幼いながらもまじないに長けており、亡霊たちに護られていたらしい。一説には、かつてマールバハールを治めていたという書の血族の末裔だと言われるが……しかし彼女は人目を避けて姿を消し、その後については何もわかっていない。
後年になって、マールバハールでは復讐に燃え立つ書の血族の生き残りが再び玉座を取り戻し、その勢いを駆って周辺地域へと兵を繰り出した。カルルーム史で言う「魔道戦役」だ。
戦役初期にはマールバハールの新たなる武力、魔道兵なる存在がカルルーム辺境都市や村々を襲い、多くの命が失われた。その時の生き残りの証言とされている記録の中には、一人の魔女がマールバハールの侵攻を食い止めたという話が散見される。彼女に付き従う一人の騎士――カルルーム辺境地域の特産物である、ギャッポカボチャを頭に据えた首無しの亡霊――が隣国の尖兵を食い止め、被害を抑えたというのだ。その後、体勢を立て直したカルルーム軍が反撃に転じたことは歴史が物語る事実だ。真偽のほどはわからないが、もしも件の魔女とギャッポカボチャの騎士が実在したのであれば、全ては彼女たちの働きがあってこそだったのかもしれない。
東カルルーム地方には今なお、よく熟れたギャッポカボチャに目鼻をくりぬいて作るランタンの伝統が残っている。魔を祓い、家々を護ると信じられているのだ。

彼女の息は徐々に弱く、か細くなっていく。死がもうすぐそこまできている。最早打つ手は残されていない。
死霊術師が死ねば、その亡霊たちもまた消えるさだめ。程なく霊廟は、再び静寂を取り戻すだろう……

ファファスタスは俺に背を向け、再び呪言を唱え始めた。そのしわがれた響きはライラの詠唱と混じり合い、場の空気が震え始める。一刻も早く二人を止めないとマズイことになる……そう直感した俺は祭壇へと走り出すが、少し遅かった。
巨石の表面に細かくまじないの文様が浮き上がり、祭壇全体がぎこちなく動き出す。うずくまるようにしていた手足を伸ばして重い身体を持ち上げ、立ち上がったのだ! 引きちぎられた縄と呪符が舞い散る中、老人の歓喜の笑いがこだまする。まるで玄室全体が大きく震えているようだ!
BATTLE 
サイコロを一つ振れ。そして武器などから得られる戦力ボーナスを加える。
出目が「6」であれば、さらにサイコロを振って加算せよ。
(ただし、「1」が出た時点で自動的に敗北となってしまう)
得られた値と、敵の戦力を比べよ。同点以上であれば勝利だ。
敗北を喫した場合でも、命運点を1消費することで再挑戦できる。
決してあきらめることなかれ。
一回勝っても、まだ勝利とはいかない。あくまで敵の指先からほとばしる霊力を躱せたにすぎない。この敵を下すためには、さらにもう一度戦い、勝たなければならない。
見事勝利を収めたのなら、224へ進んでよい。
負けたのならば、424へ。

詰所から拝借した地図を広げ、月明かりの下で覗き込む。マールバハール王国を描いた真ん中あたりに朱で丸が小さく描かれていて、タマリンドという名の村を囲んでいる。周囲の地形からして、これが今いる場所のようだった。
チャダルが聞いてきた情報――王都は北――を確かめるべく視線を走らせると、はたして王都が描かれていた。その近くから西へと続く街道を辿れば……隣国カルルームへと続く氷霧の森だ。
「これ何かしら……“古戦場跡。夜間の通行は避けるべし”」
ライラが地図の上を指さした。見ると、タマリンドを囲んでいたものと同じ朱で何やら書き込まれている。読み取りにくい走り書きだったが、ライラが読み上げた内容に相違ない。問題はその場所だ。ここから街道を北上した先、王都の手前なのだ。ここを通らねば、カルルームへの街道へ辿り着くことはできない。
まだ亡霊を探しているのか、数本の松明が揺らめいているのが見える。そろそろ動いたほうがよさそうだ。連中の炎が作る暗い影を伝いながら、俺たちは村を迂回して北へと進む。
やがてタマリンドは遠ざかり、喧騒も届かなくなった。灯りはまだ見えていたが、程なく視界から消えるだろう。
263へ進め。

手あたり次第に藪に分け入ってみるが、どこを探してもチャダルはもちろん、馬もいないようだ。ライラをファファスタスに預けてきた今となっては、旅に馬は必要ないが、チャダルがいれば何かと助けになるはずだ……
そこまで考えたところで、俺はふと気づいた。俺はこのアミュレットの力でライラから離れても大丈夫だが、チャダルはそうではない。まじない師から遠く引き離された亡霊は、いかなる状態に陥ってしまうのだろうか……?
とにかくチャダルを探し続けるのであれば、次にあたるべきはレザニアだろう。そうするのなら298へ。
チャダルが見つかったとしても、奴を王都まで連れていけるかどうかわからない。なるたけ早く王都へ行き、ライラと合流することも重要だ。となると、夜の間に進めるだけ進んだほうがいいのではないか? 一人で王都へ向かうべきと考えるのならば、64へ。

行く手から鎧の鳴る音が聞こえてくる。周囲の空気がどんよりと蠢いたと思った瞬間、それは――いや、そいつらは姿を現した。
ボロボロに錆びついた甲冑に身を固めているのは、7体の白骨死体だ。4体は五体満足ですらなかったが、いずれも武器を引きずっている。武器の柄を握り、俺は素早く考えを巡らせた。この実体ある亡者たちに、手持ちの武器は効くのだろうか?
「……後ろからも来やがったみたいだぜ!」チャダルが半ば悲鳴じみた声を上げる。
確かに奴の言う通り、背後からも何者かが近づいてくる音がする。こうなれば、一刻も早く敵を打ち破らなければならない。囲まれてしまったらおしまいだ!
258へ進め。

さて、次はどっちへ向かうべきか……
像からみて右手手前へ延びる通路を選ぶのなら123へ。
左手手前の通路にするのなら86へ。
右手奥へ向かうことにするなら177へ。
残された道を選び、左手奥へ行ってみるなら467へ。

「書に与する我が同胞たちよ、共に敵を討つぞ!」
背後の骨たちへと声高く呼わばり、俺は刃の亡者たちに立ち向かった。騎士として死んだ俺の実体なき身体はかつて纏っていた鎧姿であり、そこには書の血族の紋章が施されている。それに気づいたのだろうか、前方の亡者たちが明らかな敵意を持って押し寄せてきた。繰り出されてきた槍を避けながら一人目を薙ぎ払う。刃を返し、二人目に斬りかかったとき、俺に続くように書の血族たちの槍が突き出される。120年前の屈辱を晴らすかの如く俺たちは戦い、敵を一掃した。
書の亡者たちはその後も俺たちの後をついてきた。まるで俺たちを護衛するかのように。朝日と共に消え失せる宿命なのだとしても、その揺がぬ忠誠心は、確かに死んではいなかった。
8へ進め。

「今後も何かと大変そうだね、旦那」
チャダルは壁の中へと消えた。奴の言う通り、まったくもって、どうにもこの頭は不便でならない。俺は空いている窓がないか探りながら、建物の外壁に沿って歩き出す。
中で酔っぱらいどもが騒いでいるのとは反対側、静かな一角にいい塩梅に空いている窓があった。覗き込んでみると中は短い廊下で、いくつか扉があるがいずれも閉まっている。自分で扉を開けることになりそうだ。
頭がちょうど窓の隙間と同じ高さになるように中腰になりながら、じりじりと壁を抜ける……よし、うまくいった。屋根の下へともぐりこんだ俺は、中に誰もいないことを祈りながら扉を試していった。
しばらくの後、俺は盗んだ外套を窓から外へと滑り落とすことに成功していた。食堂で酒盛りをしているのだろう、誰もいない宿泊部屋の壁にかかっていたものだ。そして、入ってきたときと同じようにして外へと出ようとしたその時、女の悲鳴が上がった。
「……騒霊だよ! 誰か来ておくれ!」
客たちがどよめき、酒場の中が一気に騒がしくなる。チャダルの奴め、しくじりやがった! 頭に衝撃が走り、視界が真っ暗になる。俺もやっちまったらしい。動揺して、窓枠に鉄兜をぶつけてしまったのだ。
前と同じように、カビの匂いが鼻をついた。だが今はそれどころではない。俺は必死に手探りで鉄兜を探した――きっと身体は壁を突き抜けて外に出ているはず。兜が窓の外に転がり落ちていることを祈るばかりだ……あった! 指先に触れたそれらしい物体を掴み、慌てて首の上に乗せる……ぼんやりと光景が戻ってきた。宿屋の裏手だ。すぐそばに盗んだ外套が落ちている。俺はその布をつかむと、素早く暗がりへと転がり込んだ。松明を掲げた村人たちが何事かと起きだして家から出てきている。
夜の村はちょっとした騒ぎとなり、詰所からも兵隊たちが何事かと駆け付けたようだ。
「まさか亡霊が出るなんてな」
「王都からわざわざ退魔師が来ていたんだ、こいつは本物だぜ……けどよ、こいつは仕留めそこなったちゅうことか?」
これ以上騒ぎが大きくなる前に、なんとかしてライラを連れて村から離れなければならない。俺はライラが隠れている場所へと急いだ。
「まぁ、結果的にうまくいったんだからいいじゃねぇか。な?」
村はずれの辻で、チャダルとも落ち合えた。あの騒ぎの中できっちり食料を盗んでくるとは、抜け目のない奴だ。
「あとよ、俺っちいいこと聞いたんだよ。連中の中に王都から越して来たって男がいてさ。そいつが言うには、こっから街道沿いに北へ向かえば王都へ帰れるってぇ話だぜ……」
そこまで言ってから、奴は笑いをこらえられなくなって吹き出した。
「……ダメだ、すまねぇ旦那。いや、その頭は最高だよ。実にいいやつを見つけてきたもんだね」
「そんな笑っちゃダメよ、チャダル。私、この顔好き。だって可愛いもの」
俺の首に乗っているのは、一つの石だった。二人によれば、村の子どもが描いたと思わしき顔がついているという。はたしてどんな顔なのか自分ではわからないが、チャダルが笑い転げ、ライラはお気に召すような“作品”らしい。
さて、これからどうするか。氷霧の森を経てカルルームへ向かうなら、北へ向かうことになる。俺がかつてアイシャ姫を逃そうと馬を走らせた道に出るには、先ずは王都の近くまで行かなければならないからだ。そうするなら438へ進め。
やはり行き先を変え、ライラの生まれ故郷を目指したほうがいいと思うなら、行き先は380だ。
いずれの道を選ぶにせよ、頭が落書きされた石になったことを忘れずに。

俺が絵の前から動けないでいることに気付いたのか、チャダルも姫の肖像画を覗き込んだ。
「へぇ……こりゃまた別嬪さんだね。ちょっと、嬢ちゃんに似てるような気もするな」
髪の長さは異なるものの、やはり似ているように思える。もちろんライラは姫に比べて幼いが、彼女が成長すれば……やはり、彼女は書の血を引いているのかもしれない。何しろ彼女には、まじないの才能があるのだ。
「旦那、そろそろ行こうぜ。いつまでも見とれてないでさ」
俺は思いもがけず再会した姫の姿に心の中で詫びると、先へ進むことにした。
239へ進め。

もう逃れるすべはない。判決は下されたのだ。
奴にとって、俺は重要な捕虜となるだろう……ライラが背いたとき、その意を従わせるための切り札として……

再び地上へ戻った俺たちは、マールバハールを捨てることにした。この国を治める刃の王朝はライラの存在を許さないだろう。ライラとしても、もうこの国に未練などなかった。
「どこへ行こうか、ライラ」そう聞く俺の頭を見返して、彼女は笑った。
「カルルームへ行きましょう、バジャー。その像をお返ししないとね」
あの国境を再び超えるのは骨だが、これで最後だ。無事に隣国へ脱出したら、もう何者にも利用されることなく静かに暮らそう。それで初めて、ライラの人生が始まるのだ。
「これからもよろしくね、バジャー……私の、私だけの騎士でいて欲しいの」
俺は何も言わずうなずいた。そう答えは決まっている。もとより俺は書の血族に仕える騎士。その末裔たる彼女の行き先を見届けることに、何の異議があろうはずもない。

ここは鋭角に通路が曲がる角だ。足元には倒したばかりの敵が倒れているが、わずかに動いているように見える……この宮殿の永遠の守護者として強力なまじないに縛られ、幾度死のうとも解放され得ぬ存在なのかもしれない。急いでこの場を離れたほうがよさそうだと判断し、俺は視線を上げた。
角から見て、左右に二本の通路が伸びている。どちらも暗く、先は見通せない。

BATTLE 
サイコロを一つ振れ。そして武器などから得られる戦力ボーナスを加える。
出目が「6」であれば、さらにサイコロを振って加算せよ。
(ただし、「1」が出た時点で自動的に敗北となってしまう)
得られた値と、敵の戦力を比べよ。同点以上であれば勝利だ。
敗北を喫した場合でも、命運点を1消費することで再挑戦できる。
決してあきらめることなかれ。
勝利を掴んだのであれば、91へ進んでよい。
しかし力及ばず、敗北したのなら……俺は深い一撃を受けてしまう。362へ。

舟は無事だったが、乗っている俺のほうはそうはいかなかった。大きく揺れた勢いで川の流れへと放りだされそうになる……!
“頭”のアミュレットに傷があるならば、387へ進め。傷などないのであれば133へ。

どうやらまた頭が落ちたらしい。不便もいいところだ。
だが、チャダルの奴がどうにしかしてくれるだろう……そう思ってじっとしていると、やがて再び視界が開けた。さて、今度の頭は一体何だ?
「座りのいいモンをと思ったんだけど、いいのが無くってね。でも多少落ちたぐらいじゃ壊れなさそうな頭だぜ。小さな肖像画なんだけどよ……くくっ、描かれてるのは冴えないおっさんだ。気を悪くしないでくれよな」
チャダルが押し殺す笑い声を聞き、一体どんな男の顔なのか気にはなったが……確かにこれなら落ちてすぐに割れてしまうってこともあるまい。
再び鉄格子に斧を叩きつける音を廊下に響かせること十数回、ようやくライラが通れるほどの隙間を作ることができた。斧の刃はだいぶ欠けてしまったが、それでもまだ武器として使えるだろう。
「ありがとう、バジャー」その声は喜びに満ちていた。
「まだ礼は早い。こんなのは最初の一歩にすぎないんだからな……このマールバハールの国全体が、お前の敵なんだろう?」
ライラはうなずき、廊下へと一歩踏み出した。俺たちとはちがってライラが足を下すと積もった埃が舞い上がる。
「下に行く階段はこっちだぜ」
右へと続く廊下の先を見に行っていたチャダルが、曲がり角から呼びかけてきた。
ここからはライラも共に行動することになる。
頭が肖像画になったことを忘れずに、60へ進め。

老いたまじない師の手の中で何かが光った。
「ライラ……我が愛しき弟子よ。こっちへくるがいい」まるで冥府から湧いてくるような声が響く。俺の横でライラがふらりと一歩進んだので、慌てて引き留めた。虚ろな瞳をしていて、明らかに正気ではない。まじないの影響だ!
俺の他にもう一人、そうチャダルがここにいてくれればライラを抑えてもらえたのだが……。虚ろな瞳で、まじない師のところへ進もうとするライラの手を放し、俺は飛び出した。奴を倒せば、ライラにかけられたまじないも消えるはずだ!
だが、俺の動きを見て敵もまた動く。
「……もちろんそう来るであろうな、首無しの騎士。ならばワシはこいつを動かすしかない……なに、不完全な状態でも構わん。邪魔な輩を排除してから、改めて目覚めさせてやる。ライラさえいれば容易いことよ……!」
ファファスタスが再び呪言を吐きだす。それに呼応し、祭壇の丸岩がぎこちなく動き出した。巨石の表面にはじわりとまじないの文様が浮き上がり、うずくまるようにしていた手足を伸ばして、老まじない師と俺の間に割り込んでくる。引きちぎられた縄と呪符が舞い散る中、玄室全体が揺れ動いた。
BATTLE 
サイコロを一つ振れ。そして武器などから得られる戦力ボーナスを加える。
出目が「6」であれば、さらにサイコロを振って加算せよ。
(ただし、「1」が出た時点で自動的に敗北となってしまう)
得られた値と、敵の戦力を比べよ。同点以上であれば勝利だ。
敗北を喫した場合でも、命運点を1消費することで再挑戦できる。
決してあきらめることなかれ。

ろくに身体を動かせずにあがく俺の目の前で、亡霊騎士はライラを捕らえた。くそっ、またしても俺は主を守ることができないのか……!
だが、不思議なことに俺を見下ろす奴の表情に敵意はなかった。
「僕はかつて君の首を刎ねた。名はラシュド……いや、僕の名前などはどうでもいいな。
覚えているかい? 氷霧の森で僕たちは戦った。あの時は僕も若かった……どうしても君に勝ちたかった。だから姫を狙い、君の動揺を誘った……愚かだったよ。あれは僕の負けだ」
ラシュドの腕の中で、ライラは気を失っている。俺を二度倒した男はもう片方の手を自らの身体につっこみ、首壺を取り出した。
「この娘の命は取らないから安心してくれ。ただ、連れていくだけだ。僕を遣わしたまじない師は彼女を何かよからぬ企てに利用するつもりらしい……口惜しいが亡霊として使役される身では、その命令に逆らえない。首無しの亡霊騎士を滅せよという命令も受けているが……」彼は笑みを浮かべると、首壺を地面に落とした。俺の目の前で壺は砕け、収められていた中身が晒される……見覚えのある顔がそこにはあった。これは……これは俺の頭だ!
「……これで君は首無しではなくなった。僕が滅するべき相手はいなくなったわけだ。
バジャー、僕は嬉しいんだ。こうして再び納得のいく決着をつける機会が得られたのだから。今の戦いだって、君はまがい物の頭で挑んでいた……僕はまだ納得していないよ」
俺は薄れゆく意識の中、必死で手を伸ばし……120年前に切り離された頭を掴む。そしてそれを手繰り寄せ……
――追ってくるといい、彼女を取り返しに。そして、今度こそ決着をつけようじゃないか――
奴の声がかすかに聞こえた気がした。
16へ進め。

石室を超え、さらに地中深くへと降りていく。行く手から流れてくる空気に乗って、かすかにまじないの詠唱が聞こえてきた……それは歩を進めるごとにはっきりとしてくる。男――老人と、それて少女の声だ。ファファスタスとライラに違いない。だが……ライラの声には抑揚がまったく感じられないのが気になる。ファファスタスが何らかのまじないで彼女を縛っているのかも知れない。だとすると、彼女を救い出すのは一筋縄ではいきそうにない。
やがて通路の行き止まりに、重そうな石の扉が開け放たれているのが見えた。この向こう側に、二人はいるはずだ。
164へ。

相手の問いには答えず、俺はとどめを刺すべく剣を打ち込んだ。奴もなかなかの使い手だが、最初に入れた一撃は大きかった。傷口から霊気を散らせながらも良く粘ったが、ついに俺の前に崩れ落ちる時が来た。首も無いのに主が敗れたのがわかるのか、馬の存在しない首が悲しげな声でいななく。
「……僕は刃の血族に仕えた騎士だ。まじないに縛られて、いいように使われるなんて気に入らなかった……」奴が呻く。
「すまない……最後の最後で……君の“最強”を護れなかったよ……」
それが奴の最後の言葉だった。最後に誰かの名前を呟いたように聞こえたが、それは風に流れてしまった。崩れ行く霊気の中に、首壺らしき影が見えた気がしたが、すぐにそれも消え失せてしまう。
こいつは俺が件の剣を抜くために王都へ来ているのを知っていた。それに、亡霊を使役できるのはまじない師だけ……俺の脳裏に一つの名前が浮かぶ。
俺はまだ近くにいた首無し馬に飛び乗ると、すぐさま南を目指した。もしもあの男が俺を排除しようとしたのなら……ライラにとって良くないことが起きているに違いない!
首無し馬を手に入れたことを忘れずに、14へ進め。亡霊は風のように走ることができる。それが亡霊の馬となれば、さらに速い。

像は片手に本を抱え、もう片方の腕は前へと突き出されている。その指先は塚の中心の方角を指していた。本の表紙には何やら文字が彫り込まれていて、“新マールバハール法典”と読める。身にまとったローブには、天秤の模様が施されているのがわかった。
鎖を通してある鍵が一本、像の首に掛けられている。鍵には宝石がついているようだ。
何者にも仕えず
ただ、法を掲げるのみ
像が立つ台座には、そう綴られたプレートが取り付けてあった。
鍵をとるのなら50へ進め。
そうしないのならば、次に進む道を決めなければならない。393へ。

ファファスタスは俺の一撃を受け、ローブを翻して退いた。気配を消して近づいていたチャダルがその隙を見逃さず、その背に刃を突き立てる。
「馬鹿な……ワシが、亡霊ごときに後れを取るなど……」
老人は血を吐き、真っ赤になった眼で祭壇のほうを仰ぎ見た。「あと……あと少しで、あの力が我がものとなったのに……」
だが、ライラは未だ操られたまま儀式を進めていく。その唇から流れる呪言が途切れた時、祭壇の丸岩がぎこちなく動き出した。うずくまるようにしていた手足を伸ばし、立ち上がったそいつはまさに魔力の塊だった。まじないの心得の無い俺でもわかるほどだ。引きちぎられた縄と呪符が舞い散る中、玄室全体が大きく震えている!
「あれこそ、我が王家に伝わる魔導兵……マールバハールの守護者……すばらしい……」その掠れた言葉を最後に、ファファスタスは動かなくなった。
465へ進め。

「昔の王様の名前、初めて知ったわ……」
ライラは家系図とタペストリーを見比べながら言った。「タペストリーにあった紋章の場所が、きっと彼らが眠る墓所なんだと思う。そして……先生はきっとそこに向かったはず」
その時、部屋の隅で何かが赤く光を放った。はっとして目を向けた俺たちの視線の先にあったのは、小さな石の塔の模型だった。光はあっという間に部屋を満たすほどに広がり、地獄の業火もかくやという熱気が辺りを包んだ。
――我が主の住まいに忍び込んだ不届き者たちよ!
その許されざる行い……我、ジェリコ・リャマの裁きを受けるがよい――
いずこともなく声が響く。その間にも熱気は強まる一方で、ついにはあちこちで炎が上がり始めた。だが書棚も机も、タペストリーも燃えはしない。その炎は、俺たちだけを灼こうというのだ!
いつの間にか、そいつは部屋の中に姿を現していた。黒いマントを羽織り、手に書物を掲げる様子は明らかに法を司る判事のものだ。しかし不自然に膨れ上がった身体から延びる四肢は螺子くれ、その皮膚はひび割れていた。あまりの熱さに、その異形の姿が歪んでみえる……。だがそれだけではない。マント姿を通じ、うっすらと向こう側が見えた。こいつも亡霊なのだ!
「そこなる少女。名はライラ……間違いないな?」ライラの答えを待たず、奴は口蓋から言葉を吐き続けた。「罪深き書の血を引く者なれど、我が主は御身を所望している。だが傍らの騎士はさにあらず。ここで消えてもらおう」
俺の“頭”が、カルルームの像であるのなら166へ進め。
仮面、あるいは酒瓶であるのなら、494へ。

扉を抜けると、そこは回廊の端だった。右手に道は続いていて、正面と左側の壁は石造りだ。通路をのぞいてみると、少し行ったところに下り階段が見える。足跡は下から上がってきているが、道そのものはもっと続いていて、やはり最後は石壁に突き当たっている。その右側の壁に扉がついており、階段はちょうど通路の中間あたりだ。
「階段は見つかったけど、向こう側にも何かあるかもだな」
そうチャダルが行ったとき、階下から何やら物音が響いてきた。扉が開くような音に続いて、何者かが下の階を歩いている足音がする。
「食事はこんな時間に運ばれてくるのか?」
「いや……こんな夜中になんてのは初めてだな。それにまだメシが来る日じゃねぇはずだぜ」
「あの部屋から出たのがもうバレたのかしら? それとも……考えたくないけど、私を殺しにきたのかも」ライラの顔が蒼白になっている。声も震えているようだ。「だって、囚人っていつかは処刑されるものよね?」
「下を覗いて、確かめる必要があるな。俺が一人で行ってくる。ライラは隠れていろ。チャダル、ライラを頼むぞ」
「気をつけろよ、旦那。亡霊の姿は普通の人間にゃ見えねえが、嬢ちゃんのように霊感持ってる奴が相手なら俺っちたちは丸見えだからな!」
265へ進め。

レザニアを見下ろす山の中。ここに老まじない師の隠れ家はあった。俺たちが以前出会った、あの場所だ。巧妙に隠された入口から中に入ってみたが、人の気配はない。
「先生はどこへ向かったのかしら……そうだ、確か“閉ざされし霊廟”って言っていたわ。何か手がかりが残っていればいいけど」
懸命に記憶を辿りながら、ライラは本棚を調べていく。自分では判断できるわけもないが、俺も何となく関係していそうな物を探す。
机の隅に、小さくたたまれたメモがあった。それに壁には地図のようにも見える古いタペストリーがかかっているが、そいつも妙に気になる……
これらの品を調べる前に、このパラグラフの番号を記録しておくこと。
全て調べ終わったのなら、その時は45へ進め。

「こいつはまた、俺っちそっくりだね」チャダルも驚いているようだ。そう、この男はチャダルに瓜二つなのだ。「……でもよ、こいつの入れ墨は俺っちとは逆なんだな」
確かに、竜の入れ墨は顔の右側にあった。改めてチャダルを見れば、こっちの入れ墨は左目から頬へと走っている。
「誰だ、俺っちの眠りを邪魔する奴は……?」話し声に目を覚ました奴は、チャダルの姿を見て目をぱちくりとさせた。そして聞き慣れた声でぼやく。「こいつは驚いた。俺っちがいるじゃねぇか」
俺たち三人――二人のチャダルと話すのは不思議な気分だ――はお互いのことを探るように会話を重ねていく……これが手の込んだ罠だった場合に備え、ライラのことだけはぼかしながら。
「なるほどねぇ……ところで、そっちの俺っちはよ、記憶が無ぇって言ったな」
「そうさな。死ぬ前のこたぁ、結構曖昧だ。けど、お前の話を聞いててなんとなくわかったぜ。ファファスタスの野郎が俺っちの記憶をこうして切り離しやがったんだ」
「そういうことになるのかねぇ? つまり、お前が知らねぇことを俺っちが握ってるってわけだ……そんな秘密となりゃ、あれしかねぇな」そして声を潜めて続けた。
ファファスタスは人を虜にするまじないを使うという。それは誰であろうと抗うことが許されない強力なまじないで、赤い宝石でできた珠を使って心を奪うというものらしい。
「けど、弱点もある。たった一人しか支配下におけねぇんだ。大勢相手じゃ使えねぇってわけ。
なんで知っているかって? 最後の盗みに入ったとき、奴の魔導書を覗き見したのさ。さんざまじないの品を盗んできたからな。ちぃとは読めたってぇわけだ……奴の本は青い皮で装丁されてる立派なやつだったぜ。そいで、きっとこいつが俺っちがここに閉じ込めている理由なんじゃねぇかな。
自分で言うのもなんだが、俺っちは大盗賊だからよ。流石のまじない師も、俺っちの半分しか捕まえられなかったってこった」
その時、大きな鐘の音が一つ鳴り響いた。
TOLLING
鐘が鳴った回数を記録しておくこと。これで1回追加だ。
「残念だけど、俺っちはこっから動けねぇ。一緒に行って奴に一泡吹かせてやりたいけどな」
乾いた笑みを浮かべるチャダルに、俺がよく知る方のチャダルが言った。「それだけどよ……俺っちたちがもっかい一つになれば、行けるんじゃねぇかな?」
「そいつは思いつかなかった。さすがは俺っちだ。やってみるか?」
二人が手を取り合うと、微かに空気が振動する。二つに分かたれた魂は再び一つとなり、最早そこには一人のチャダルしかいかなった。刺青の竜は二匹になっていた。
「俺っち、全部思い出したよ……死に追いやられた“恨み”ってやつもさ」
「……そいつはファファスタスにぶつけてやればいい。先ずはこの塔から脱出する方法を探そう」
「それなんだけどよ、旦那。この塔にゃ他にも囚われてる魂がわんさかいるぜ……知らねぇはずのことがわかってるって変な気分だな」
チャダルは半ば混乱しているようだ。どうやら、さっきまでここに囚われていた半身の記憶を得たということらしい。
351へ進め。

鋭角に通路が曲がる角にいる。壁と積まれた石のいくつかに何か引っ搔いたような跡がついている。
ここへ来たのが初めての気がするのであれば374へ進んでよい。でなければ、先へ進む道を選ばなければならない。角から見て、左右二つの通路が伸びているが……
右の通路を進むのなら131へ。
左の通路を進むのなら381へ。

鍵には緑色の宝石がついている。
翡翠の鍵を入手したことを覚えておくこと。393へ。
ただし、すでにこの鍵をもっているのであれば、当然ここには何もない。

日は暮れかけているが、まだ明るかった。馬を盗むにはちょっと目立ちすぎる……つまり、何かいい方策を考える時間は十分にあるってことだ。
あの門をどうにかしないと、ここから出ることは難しい。いや、待てよ……何も門を通過する必要はない。俺は馬小屋を離れ、村に侵入したときに通ってきた柵のところへ戻った。木を縄で格子状に括ってある。相当しっかり造られてはいるが、こいつを目立たないように緩めておけば、後で強行突破も可能だろう。
細工をしているうちに辺りは暗くなっていった。明らかに日が落ちてからのほうが体の調子がいい……なるほど、これが亡霊というものか。
それから見張りの隙を見て、俺は再び馬小屋へともぐりこんだ。村の連中は基本的に外に注意を向いていたので、ここまでは容易かった。特に頑丈でタフそうな馬の縄を解いてやる。生きていた頃のようにその背に跨ってみると、馬のほうでも何かを乗せていることに気づいたらしい。最初こそ戸惑っている様子を見せたが、直に言うことを聞くようになった。よし、これならいけそうだ。
俺は他の馬も全て自由にしてやると、選んだ馬を駆り、先に用意しておいた脱出口へと走らせた。馬たちが村の中を走り回る中で見張り番が慌てふためく様を横目に、俺は柵を突き崩して街道を北へと向かった。他の馬たちも次々と空堀を跳び越え、思い思いの方向へと走っていく。村の連中は散り散りになった馬を追うので手一杯だろう……これで大分時間が稼げるはずだ。
「私も乗れそう?」
ライラは馬に乗った俺を見上げながら言った。日が暮れた後、二人もこちらへ向かってきたので、俺たちは街道の途中で再び落ち合っていた。ライラに預けていた武器を返してもらい、再び腰につるす。やはり騎士たるもの、得物を帯びていないと落ちつかない。
さて、ここからが問題だ。馬を操りながら、ライラが落ちないように馬を操らなければならない。激しく走らせるつもりはないが、この先、そうせざる得ない事態もあり得るだろう……。しばらく試行錯誤した挙句、結局三人で馬に乗ることにした。
まず俺が乗り、手綱を握る。ライラが俺に重なるようにしてやはり馬に乗り、最後はチャダルだ。ライラと俺ではだいぶ身長差がある……彼女に“頭”がぶつかることはない。チャダルはライラが落ちないように身体を支える役だ。武器を操ることもおぼつかないチャダルだが、それでもいないよりはましだろう。
馬にかかる加重はわずか一人分、それも子どもの重さのみ。おそらくは亡霊が近くにいるせいであろう、妙な感覚に戸惑っている様子を見せているが、一応のところは俺が操るままに動いてくれている。これならいけそうだ。
とはいえ、南へ戻ってあの村の近くを通るわけにはいかない。ここは北へ戻り、迂回する道を進んで目的地へ向かったほうがいいだろう。馬も手に入ったし、多少の距離なら問題はないはずだ。
208へ進め。

……こうしてさまよい続けて120年たつが、この砂漠で生ける者を見たのははじめてだ
骸骨はライラに気づくと立ち止まり、がらんどうの眼窩でこちらを見た。舌のない口を開き、歯をカチカチさせながら呻く。
ここは君がいるべき場所じゃない……でも北へ抜けるにはもう遠すぎる。ここから先へ進み、右、左だ。間違えるんじゃないよ。それと、オアシスの水は決して飲んではいけない……いいね?
「あなたは……貴方は一体?」ライラが問う。
私はアジム。かつて書の王に刃を突き立て、その報いで死ぬこともできずにさまよい続けている。この国はやはり、まじない師のものだった……私たちは間違っていたのだ……
そして亡者は、再び砂嵐の中へと消えていった。
もしもこの後、オアシスでライラが水を飲んでしまうような事態が起きた時には、そのパラグラフ番号から20を足したパラグラフへ進むことで、最悪の事態を回避することができる。覚えておくこと。
今は、160へ進め。

「……いい勝負だった……僕は、この戦いのために蘇ったんだ……あのバジャーともう一度、決着をつけるために……!」
俺の足元に、ラシュドはうずくまっていた。その傷は深く、霊気の身体の崩壊は止まらなかった。
「やっぱり君は強かった……生涯“最強”を護り抜き、僕が証明したかったことは、正しかったんだ……
……さらばだ、君の勝利を祈る。あの男に引導を」彼の言葉が途切れる。霊廟の通路を吹き抜けた風が、亡霊の残骸を吹き散らしてしまっていた。
俺は先へ進む……振り返りもせずに。
391へ進め。

「バジャー……来てくれたのね」
俺はファファスタスを縛り上げ、奴が持っていた怪しげなまじないの品を全て取り上げながら、ライラと別れた後に何があったかを話してやった……時折、老いたまじない師が何か言いたげに呻いたが、全て無視した。
「……というわけだ。お前の師は、自分のことしか考えちゃいない。お前は道具のように扱われ、ひどい目にあった。こいつを許せるか?」
ファファスタスから目をそらさずに黙って聞いていたライラは俺の話が終わってもしばらく口を開かなかった。彼女なりの答えを紡ぐ言葉を探していたのだろう。
「先生……私は、先生に出会えたことをうれしく思っています。これは偽りのない気持ちです……先生の思いはどうあれ、そのおかげで私はバジャーやチャダルと出会えたのですから。でも、先生の計画には……力を求めることしか考えていない生き方には賛同できません」
最早ファファスタスは何も言わず、瞳も虚ろで彼女の言葉を聞いているのかすらも怪しい。積年の想いを粉砕され、この老人には最早何も残されていないのだ。わずかの間にも目に見えて弱り、その命は尽きようとしている。敵とは言え、哀れな姿だった。
「名を呼んでやるといい……最期だ」ライラははっとして俺の顔を見た。
「私、知らないわ……先生の名前。ファファスタスって、本名じゃないはずよ。刃の血族から逃げながら使ってた名前だもの……」
それでもファファスタスと呼びかけるのなら495へ。
バルサザールと呼びかけるのなら299へ。
アイルカーンと呼びかけるのなら71へ。

使った分の命運値を減らしておくこと。
賭けた命運値が……

「私も貴方たちみたいに、壁を抜けることができればあっという間にここから出られるのに」とライラ。
「そうだなぁ。でもそいつは無理な相談だ……そうなると、こりゃ進める先は一つしかないぜ。なぁ、旦那」チャダルが左手のレンガ壁にある扉を示す。
確かに他に道はないようだ。例の足跡もそっちへと続いている。
305へ。

BATTLE 
もしも武器が除霊の短刀であるならば、効果は絶大だ。この戦いにおいては、戦力に3を足すことができる。
サイコロを一つ振れ。そして武器などから得られる戦力ボーナスを加える。
出目が「6」であれば、さらにサイコロを振って加算せよ。
(ただし、「1」が出た時点で自動的に敗北となってしまう)
得られた値と、敵の戦力を比べよ。同点以上であれば勝利だ。
敗北を喫した場合でも、命運点を1消費することで再挑戦できる。
決してあきらめることなかれ。
見事、勝利したのなら181へ進め。
惜しくも敗れたのであれば76へ。

通路を進んでいくと、不意に暗闇の奥から何かが向かってくるのを感じた。亡霊の気配だ。一瞬の後に大型犬の亡霊――軍によって調教され、戦場で使われるようなやつだ――の姿が現れ、即座に牙を突き立てきた。その瞳は濁りきっていて、死して明らかに狂っている!
BATTLE 
もしも手持ちの武器が除霊の短刀であるならば、効果は絶大だ。この戦いにおいては、戦力に3を足すことができる。そうでない場合には、たとえどんな武器を持っていたとしても実体の無いこの敵には効かない。だが、実体無き霊体の剣――今や俺の身体の一部となって久しい、生前使っていた武器――なら斬りつけることができるので、戦うことは可能だ。
サイコロを一つ振れ。そして武器などから得られる戦力ボーナスを加える。
出目が「6」であれば、さらにサイコロを振って加算せよ。
(ただし、「1」が出た時点で自動的に敗北となってしまう)
得られた値と、敵の戦力を比べよ。同点以上であれば勝利だ。
敗北を喫した場合でも、命運点を1消費することで再挑戦できる。
決してあきらめることなかれ。
勝つことができたのなら、ここから離れることができる。このまま進み続ける(123へ)か、今来た道を戻る(21)かを決めて進め。ただし、負けてしまったのならば69へ行かなければならない。

連中の不意をついて街道に躍り出る。武器はライラに預けてきてあったので、そこらの枝を手折って即興の得物とした。物音に気付いた二人は振り返ったが、間近に物が浮かんでいるという異様な事態にぎょっとして一瞬動きを止める。
俺はその隙を見逃さず枝の一撃を見舞ってやったが、思ったより力が入らない。連中は枝で殴られた部分をさすりながら身構えた。「な、何だこりゃ……?」
今朝ライラが言っていた言葉が脳裏をよぎる。“貴方たちは日の光の中では力が弱くなる”
……くそっ、こういうことか!
「亡霊でも見てるのか、俺たちゃよぉ」
「こんな昼間から出るとはふざけやがって、お化けが怖くて追剥ができるかよ!」
BATTLE 
思うように力が出ないので、この戦いの間は戦力を1減らさなければならない。
サイコロを一つ振れ。そして武器などから得られる戦力ボーナスを加える。
出目が「6」であれば、さらにサイコロを振って加算せよ。
(ただし、「1」が出た時点で自動的に敗北となってしまう)
得られた値と、敵の戦力を比べよ。同点以上であれば勝利だ。
敗北を喫した場合でも、命運点を1消費することで再挑戦できる。
決してあきらめることなかれ。
勝つことができたのなら、200へ進め。
だが負けた場合には、待っている運命はこうだ……連中が手にした鉈が翻ると当時に、首から上に衝撃が走る。俺の“頭”はどこかへ弾き飛ばされてしまう。70へ。

「結構な高さがあるからな、この塔は」チャダルが言った。「でも、ここが最上階なのは間違いねぇ。俺っちしょっちゅう壁から出入りしてっからよ、わかってんだ」
頭が落ちないように抑えながら足跡を辿って螺旋階段を下りていくと、小さな部屋へと出た。ほぼ正方形で窓は無い。塔の角に当たるらしく、二方向が石壁になっている。降りてきた階段は石壁の角にあり、残る二枚の壁はレンガ造りだ。石壁に頭を突っ込んでいたチャダルが、確かにこの向こうは塔の外だと告げる。
「まだ地面よりはてっぺんのほうが近いぜ。嬢ちゃんのいた部屋が一番上だから……塔は4階建てなんじゃねぇかな」
首に乗っかっているのが、陶器の壺や皿などの割れやすい品なら425へ進め。
床に落ちたぐらいじゃ壊れなさそうな“頭”であるなら、行き先は56だ。

使った分の命運値を減らしておくこと。
賭けた命運値が……

国境を守る任についているだけあって、さすがに連中も戦い慣れしているようだ。相手が亡霊だと浮足立ったのも一瞬で、即座に俺の頭に狙いを絞ってきた。あっという間に俺は追い詰められ、頭は打ち落とされてしまう……
俺は何も見えないまま闇雲に武器をふるうが、刃は空を切るばかりで手ごたえは感じられない。ややあって、俺は力が急激に抜けていくのを感じた。もしや、ライラに何かあったのでは……!?
それが最後の思考だった。何もかもが瞬時に消え失せてしまう……

進んでいくと、やがて塚の中心へと向かう扉が現れた。通路はまだ先へと続いている。
扉には冠に突き立てられた剣のレリーフが施されており、鍵穴がある。手をかけてみたが、どうやら鍵がかけられているらしかった。
扉に向かい、右へと通路を進むのなら131へ。
左へ向かうのならば381へ。
合いそうな鍵を持っているのであれば、試してみてもいい。そうするなら455へ進め。

やがて道は橋へと差し掛かった。王都では悠々と静かに流れるエナムも、この山間では激しく水しぶきをあげている。
俺の頭がアミュレットであるのなら、405へ。ただし、そのアミュレットに傷がついているようであれば142へ進め。
別の品であるなら、397へ。

「ここは、神聖な場所なのね。長い間、静かな魔力で満たされていたことがわかる……でも、今は乱れているわ」ライラが言った。「もちろん、私たちが入り込んだのもあるけど……」
そう。この先にはあの老人がいるのだ……その邪な意思をあらわにして。
「先生は間違っている。まじないの力で、マールバハールを壊そうとしている。たとえそれが書の血族のための復讐だとしても、もう120年も前のことだわ。報いを受けるべき者はみんな、もう死んでしまってるのよ……。誰であろうと、大切な人を失って悲しむべきじゃないわ」
チャダルのことか。親を失い、親族に裏切られて、あの冷たい石の塔に閉じ込められたライラにとって奴はかけがえのない、家族に等しい存在だったはずだ。もちろん俺も……そしておそらくは、あのファファスタスでさえも。
「よし、一発殴って爺さんの目を覚ましてやろう」俺はライラの頭をぽんと叩き、霊廟の奥へと踏み出した。
109へ進め。

ファファスタスは俺の一撃を受け、ローブを翻して退いた。気配を消して奴の背後から近づいていたチャダルはその隙を見逃さず、その背に刃を突き立てようとする……しかしファファスタスは老人らしからぬ動きで身を捻った。切り裂かれたのはローブだけだ。
「……騎士らしからぬ卑怯な手じゃな!」息を途切れさせて、老まじない師が呻く。
その時、場の空気が震え始めた。ライラの詠唱は続いていた。彼女を止めないとマズイことになる……! そう直感した俺は祭壇へ向かって走り出すが、少し遅かった。
巨石の表面に細かくまじないの文様が浮き上がり、祭壇全体がぎこちなく動き出す。うずくまるようにしていた手足を伸ばして重い身体を持ち上げ、立ち上がったのだ! 引きちぎられた縄と呪符が舞い散る中、玄室全体が揺れ動く。老まじない師が感極まった声を震わせた。
「あれこそ、我が王家に伝わる魔導兵……マールバハールの守護者じゃよ!」
BATTLE 
サイコロを一つ振れ。そして武器などから得られる戦力ボーナスを加える。
出目が「6」であれば、さらにサイコロを振って加算せよ。
(ただし、「1」が出た時点で自動的に敗北となってしまう)
得られた値と、敵の戦力を比べよ。同点以上であれば勝利だ。
敗北を喫した場合でも、命運点を1消費することで再挑戦できる。
決してあきらめることなかれ。
一回勝っても、まだ勝利とはいかない。あくまで敵の指先からほとばしる霊力を躱せたにすぎない。この敵を下すためには、さらにもう一度戦い、勝たなければならない。
見事勝利を収めたのなら224へ。だが、その前に負けてしまった時には424へ進むことになる。

復活の儀式が中途半端だったのだろう。ファファスタスの切り札だったはずの魔導兵だが、その動きは鈍くぎこちない。魔封じの剣が撃ち込まれるたび、岩の身体から魔力が失われていくのがわかる。何度剣を振るったか数えてはいなかったが……ついに敵は動かなくなった。
「旦那……嬢ちゃんが目を覚ましたぜ」
その時、チャダルが涙ぐむ声が俺の耳に届いた。
476へ進め。

そう、ライラさえ無事なら今の俺は戦い続けることができる。憎き刃の血族に復讐するためにも、何をおいてもライラの安全は確保しなければならない。
「とにかく、一刻も早くこの塔から出ることだ。退魔師協会とかいう連中も送り込んだ刺客が戻らんとあれば、次の手を打ってくるだろう」
俺は二人を急き立て、塔から出ようと促したが、チャダルは大広間の物色を始めていた。
「ちょっとまってくれよ、旦那。このまま外に出たらいろいろと面倒だぜ。もうちょいまともな頭にしねぇと……それに嬢ちゃんは俺たちと違って生きてるんだからな。このままじゃ風邪ひいちまう」
奴は分厚いカーテン、それから部屋の隅にあった甲冑一式と三日月刀を指さした。
「嬢ちゃん、夜はこいつに包まるといい。それから旦那、あんたが腰に下げてる剣は、生前使ってた名残だ……つまり実体がねぇ。亡霊同士なら効くけど、生きてる連中にゃ何の役にも立たねえよ。
騒霊って言ったっけ。物が浮かんだりするやつがあるだろ。あの要領で武器を扱うんだ。腕力じゃなくて、執念の力を使うってわけさ……」
だが俺は、チャダルが薦める三日月刀よりも、床に落ちている短刀のほうが気になっていた。敵が使っていた、霊体をも斬れる刃だ。
「なるほど……それも悪くないね」短刀に手を伸ばす俺を見てチャダルが口笛を吹いた。
霊的な品ゆえだからだろうか。短刀は手から零れ落ちようとはしなかった。これなら、特に集中することなく扱える。小さく目立たないのも大きな利点だ。
除霊の短刀を武器として使う場合、残念ながら戦力にボーナスを加えることはできない。しかし亡霊を相手にするときには、きっと有利に働くだろう。
チャダルお薦めの三日月刀はちょっとした業物だ。こちらは戦力に2を加えることができる。どちらかを選べ。両方持っていくことはできない。
そしてもう一つ。チャダルが甲冑一式から拝借してきた兜だが、これまでの“頭”とは馴染み方が断然違うようだ。こいつは装飾用ではなく、正真正銘戦いのために作られたものに違いない。騎士として戦いに生きていた俺とは相性がいいようだ。俺が武具の具合を確かめている間に、ライラも布を適当な大きさに切って身にまとっていた。手ごろな紐を使って腰のところで縛りつけ、どこかで見つけてきたのか背負い袋を調べている。
「これならきっと外でも寒くないわ。ありがとう、チャダル。ベルトが片方壊れてたけど……こうすれば背負い袋もなんとか持っていけそう」
俺やチャダルとは違い、ライラは生身の人間だ。亡霊のように身一つでどこへでもいうわけにはいかない。肩から掛けられた壊れた背負い袋は、彼女の小さな身体の脇に収まっていた。多少、物が取り出しにくいかもしれないが、旅に必要な物を持ち運ぶには十分だろう。
広間に暗殺者が現れたときはあんなにもまばゆく差し込んでいた光だったが、外に出てみれば、それは満月の明かりだった。夜空を冷たい風が吹いている。ライラが囚われていた塔は、チャダルが言っていたとおり、ツタに覆われた陰気な石の塊だった。
外の様子は二人の間で常々話題にあがっていたのだろう。チャダルがそこらに生えている螺子くれた木や、妙な形の岩をライラに紹介している。ライラもそれら一つ一つにうなずきながら、久しぶりの外界に興奮しているようだ。
頭が鉄兜になったことを忘れずに、415へ進め。

もしも同行者がいるのであれば227へ進め。そうでないのなら、このまま狂える牙と爪によって引き裂かれ続ける他はない。直ぐに頭が外れて何も見えなくなる。音もないままただ身体が抉られ、食いちぎられる感触に苛まれるのだ……だがそれも長くはないだろう。

全てが真っ暗になってしまった。身動きすらできない。
そんな中、はっきりとした声が響いてくるのが聞こえてきた……
……イロハムだって? この国ではわりとよくある名だ。
はっと我に返る。この呪言は知っている。呼ばれる名前こそ違うが、これはライラが俺を呼んだ時のまじない文句ではないか!
すると、どのイロハムだかわからないが、今まさに亡霊が一人蘇ろうとしているのだ。
空気が変わった。何も見えず、そして動けずとも、これまでは存在していなかった人ならぬ者が、近くで息づいているのがわかる。
「我が忠実なる僕、イロハムよ。私の声が聞こえるか……?」
「……聞こえます。我が主よ」
誰だ、この声は……どこかで聞いた覚えがある。
「お前は我が命に従い、あの塔へ向かった。だが、お前は我が呼びかけによって今ここにいる。さあ、答えよ。何があったのだ?」
「主よ……私は貴方様の命令どおり、タマリンドの塔へ向かいました。
そして言いつけの通り、牢から娘を連れ出そうとしたのです……ですが、二人の亡霊に邪魔をされました。首が無い騎士と、竜の刺青の男です……」
首無しの騎士と刺青の男! 明らかに俺とチャダルだ。するとこのイロハムというのは、あの時の退魔師にちがいない。その主となれば……つまり、退魔師協会の長ということだろうか? だが、今行われているのは明らかに死霊術だ。これは一体どういうことだ?
不意に刺客の霊の気配が消え失せた。長い溜息が続く。
「せっかく退魔師を育てたというのに肝心な時に役に立たんとは。しかし状況は掴めた……自ら呼び出した霊を使役し、逃走したに違いない。やはり一筋縄ではいかん娘よ……竜の入れ墨というのはあの時のコソ泥だろうが、首無しの騎士とは一体……? あの戦では多くの命が失われた。おそらくはその一人といったところか。余計なことを」
その時、俺の意識がどこかへ引き上げられるのが分かった。最後に聞こえたのは、苛ついたつぶやきだった。「……我が最強の駒、この男を使う時が来たかもしれぬ」
……視界いっぱいに星空が広がっていた。俺は街道脇に転がっていて、チャダルとライラがのぞき込んでいる。
「やっぱやっちまってたなぁ、バジャーの旦那。けどもう大丈夫だ、嬢ちゃんが新しい頭を用意してくれたからよ」
身を起こしながら頭に手をやると、粗末な木彫りのようだ。指の腹で撫でてやると、小さな木片に稚拙な顔がついているのがわかる。
「お前が彫ったのか? ……ありがとよ。これなら当分心配いらないな」俺はライラから預けていた武器を受け取りながら、その肩を軽くたたいた。「あれから何日たった?」
「旦那が行った次の次の晩だよ。いつまでも戻ってこねぇんで、こりゃ何かあったなってわけでよ。少し急いで来たんだ……だがなんにせよ、無事見つかってよかったぜ」
どうやらあの二人組とは、はちあわせしなかったらしい。俺は頭を失った間のことを二人に話した。ライラが塔から逃げたことは、すでに退魔師協会の知るところと思っていたほうがいい。タマリンドを離れた俺たちがどこへ向かっているのかまでは知られていないはずだから、次の追っ手が現れるまでには多少時間があるだろう。だが、早々に馬を手に入れるに越したことはない。そう結論して俺たちは夜道を進んだ。
やがて、先のほうに松明の明かりが見えてきた。どうやら村に着いたらしい。
頭が木彫りになったことを忘れずに、154へ進め。

思いもがけない名だったのだろう。奴は目を見開いた。
「ライラ……その名を呼んではいかん……! その名は……」声なき声で漏れた叫びが、ファファスタスの最期の言葉となった。
――我を呼ぶのはそなたか? 書の末裔よ――
床へと崩れ落ちた老まじない師の亡骸を越えた先から、その声は聞こえてきた。そう、魔導兵の残骸から発せられていたのだ。倒れた魔導兵の岩の身体が光を帯び、その光はやがて岩から離れて人の形をとった。
――我が名はアイルカーン。かつてこの国を興したまじないの王にして、死して護国の要と己が身を変えし魂。されど今、我はアイルカーンに戻った――
没した後、初代の王はこの霊廟でマールバハールを護るまじないの一部となっていたのだ。しかしライラは、その役目から王を引き離し、俺やチャダルのようにこの世に蘇らせてしまった。
大いなるまじないは消え失せた……歴代の王に受け継がれ、ファファスタスが狂気に身を堕としてまで求めてやまなかった力は、もうどこにも存在していなかった。
444へ進め。

やはりタペストリーは地図だと思われた。書棚からマールバハールの地図を探し出して照らし合わせてみると、どうやら国の南部に広がる砂漠のものらしい。
タペストリーには書の血族の紋章と、いくつもの文字列が織り込まれている。
「……最初のは……アイルカーンかしら。次はわからない。これは……サラヴァイ? そのあとは……ダメね。どれももう糸が切れたり抜けたりで、掠れてしまってるわ」
小さく織り込まれた文字を覗き込んでいたライラがため息をついた。
元のパラグラフで、調べ物の続きを続けよ。

「貴方の頭、ボロボロになっちゃったわね」
そう言われて俺は“頭”に手をやった。奴の剣閃が何度もかすめていたのだろう、確かに大分傷ついているようだ。
「このままじゃ、また戦いになったらきっと壊れちゃうわ……ちょっと待ってて」ライラは道端にあった小さな像のところへ行った。石でできていて、マールバハールでは見たことがない、奇妙な造形をしている。
「この道の守り神なのかも知れないけど……ごめんなさい。今だけどうか私たちに力を貸してください。いつか、きっと戻しに来ます」
彼女はお祈りをしてから、その像を手に取った。どうやら俺の首にすげるつもりらしい……確かに、顔のようにも見えなくはない。
――本来なら許されることではあらねど、汝らの行く先にカルルームの未来も関わっている……今回だけは許そう。
我はカルルームを守りし者。我が現身が一つを、汝らに授けよう――
人ならぬ声が響く。ライラにもその声は届いているようで、彼女の顔には驚きの表情が浮かんでいる。それっきり声はしなくなったが、俺の身体には何か今までにない力が漲っているように感じられた。
「……私、やっぱりマールバハールに戻ろうと思うの」しばらく考え込んでいたライラが言った。
「さっきの声……カルルームの土地神か守護精霊だと思う。マールバハールがこの先、カルルームにとってよくないことをするって予言に聞こえたわ。私たちならそれを止められるかもしれない」彼女の目に新しい決意が宿っているのが見て取れた。
「本当に私が王家の血を引いているのなら、道を踏み外そうとしているマールバハールを正すのは私の役目だわ。それに……チャダルの仇も取りたい」
彼女は俺の顔を見た。俺には異論はない。もとより、ライラがそうしたいのなら最後まで付き合うつもりだった。
「お前の師……ファファスタスを完全に信用するわけじゃないが、奴が持っている情報は必要だ。俺たちがこの先、何を信じて何をするべきかを見定めるためにもな」俺はそう言って立ち上がった。「マールバハールへ戻り、レザニアへ行こう」
271へ進め。
“頭”がカルルームの石像になったことを忘れずに。

俺は黙ってライラとファファスタスのやりとりを聞いていた。確かにこの老人はかつてライラにまじないの手ほどきをしたらしい。そこに嘘は感じられなかった。しかし、時折ファファスタスの視線がこちらに向けられるのが気になる。視線の高さからして、俺の頭――つまり、ライラの家に代々伝わっていたという、このいわくありげな鍵――を意識しているのは間違いがない。はたして、話がひと段落したところでファファスタスは鍵について触れた。
「ところでライラ……この騎士殿の頭だが、この鍵は一体? 見たところ、何らかの魔力が込められているように感じるが」
「これは私の家に受け継がれてきた品です、先生」
ライラは先ほど俺にしたのと同じ説明を繰り返した。要するに何の役に立つのかわからないということだ。ファファスタスは椅子から立ち上がり、一歩俺のほうへ踏み出した。
「どうにも見覚えがある気がする。少し見せてもらえるだろうか……何かわかるかも知れん」
この老人を信じて鍵を調べさせるのなら316へ。彼の申し出を拒絶するのなら283へ。
ライラが何と言うか聞いてみるのなら418へ進め。

不意に光は消え去った。俺は周りの光景が変わっていることに気が付く。様々な物が所狭しと押し込められていた部屋にいたはずだが、俺の視界には騎士の鎧装束がいくつか立ち並ぶだけの、殺風景な空間が広がっている。床も、壁も全てが石造りの広間だ。背後には大きな扉があるが閉ざされている。正面の壁際には螺旋階段があって、どうやら上の階があるらしい。
ここは一体どこだ? 先程の光によって、ここへ送り込まれたのだけは確かなようだが……ともかく脱出しなければなるまい。
まずは扉を試してみると、鍵がかかっているのか開きそうにないことが分かった。
チャダルが一緒にいたはずなら103へ。
自分一人だったなら81へ進め。

亡霊の力とは、想いの力だ。この世に残した未練、無念。死してなお何かを成そうとする意志。亡霊同士が戦えば、より強い想いを抱く者が勝る。
奴の一撃は俺の刃を砕き、そしてこの身に深く食い込んでいた。
「君は何のために戦っている? あの少女の存在は、君にとって死を超えるほどのものだったのか?」
奴は手にした剣の柄を捻った。身体の中から傷を抉られ、俺の半身が爆ぜて崩れた。
「死霊術師に肩入れする愚か者に、負けるわけにはいかないね……奴らは僕たちを利用しているだけだ。マールバハールの騎士たる者、誇りを忘れることなかれ……!」
奴の言葉を聞きながら、俺は自分の身体が傷口から霧散していくのを止めることすらできずにいた。亡霊としての俺を支えるのは無念の想いだ……アイシャ姫ではなく、ライラのために尽くそうとした。そのことがすでに、俺の力を大きく削いでいたのかもしれない。だが、こいつは……こいつの力は……一体何のために戦っているというのだ……?
奴は陽が沈んだ空を見上げた。降りたばかりの帳に星が瞬いている。
「相手が誰であろうと、僕は負けるわけにはいかない……僕は生涯無敗を貫き、衰えを感じた日に自ら命を絶った。ただ一人、僕が負けを認めた騎士バジャー。全ては彼の“最強”を護るためだ。名声が災いして、まじない師に使役される身となったが……僕がすべきは一つしかない。不敗を貫くことさ……」
奴がもう一度俺に視線を向けた時、もう俺の身体はこの世に残っていなかった。その言葉を最後まで聞くこともできなかった……

使った分の命運値を減らしておくこと。
賭けた命運値が……

「しゃあねぇ、俺っちが奴らの馬を驚かしてやるよ……このままじゃ見つかっちまうし、何もしないよりゃマシだろ」
チャダルが意を決して動く。騎士たちの目にチャダルが映ることはないが、気配に敏感な馬は別だ。亡霊の存在を感じて落ち着きをなくしているのがわかる。騎士たちも馬の制御に気を取られはじめた。
今なら一気にここを駆け抜けることもできるかもしれない――馬がいるなら、の話だが――そうするのであれば252へ。
馬がいない、あるいは今動くのはまだ危険だと考えるのなら、193へ進め。

ファファスタスは俺の一撃を受け、ローブを翻して退いた。そしてチャダルがライラに近づいているのに気づく。
「くくく……なるほど、悪くない作戦よな。だが、無駄というもの……ワシのまじないは、亡霊ごときが呼びかけたところで解けるようなものではないわ!」
その言葉通り、チャダルの必死の呼びかけにもかかわらず、操られたライラは儀式を進めていく。その唇から流れる呪言が途切れた時、祭壇の丸岩がぎこちなく動き出した。うずくまるようにしていた手足を伸ばし、立ち上がったそいつはまさに魔力の塊だった。まじないの心得の無い俺でもわかるほどだ。体躯の表面に細かくまじないの文様が浮き上がり、玄室全体がそいつのせいで揺れ動いている!
「あれこそ、マールバハールの守護者……我が王家に伝わる魔導兵よ」
引きちぎられた縄と呪符が舞い散る中、玄室全体が揺れ動く。老まじない師が感極まった声を震わせた。
383へ進め。

「ここなら、いけるんじゃねぇか?」深い霧の中で、チャダルが上を見上げながら言った。
頭上にはそれなりに太い枝の影が広がっている。確かにこの枝を伝っていけば、塁壁を超えることができそうだ。ライラも無言でうなずく。
立ち込める氷霧のせいで、枝も冷たく凍っている。俺とチャダルでライラの身体を支えつつ、どうにか塁壁を超えることができた。
……ここはもうマールバハールではない。隣国カルルームの地だ!
443へ進め。

不思議なことに、俺はここを知っているような気がしてならなかった。進めそうな唯一の道――螺旋階段へと向かう途中で、ふと気づく。この広間は以前、退魔師と戦った場所……つまり、俺がライラに呼び出されて復活したあの塔の中ではないのか?
俺は例の光に包まれる直前に見つけた塔の模型のことを思い出していた。俺はあの中に閉じ込められたのではないだろうか?
119へ。

その時、唸りとも悲鳴とも聞こえるような音が響いた。剣に異変が起きた時の警鐘だろうか? だとしたら、程なく敵がここへ押し寄せるだろう……その前に脱出しなければならない。外に出てしまえば夜の闇に紛れることは容易い。そのまま王都からもおさらばできるだろう。そのためには、最短距離を戻る必要がある!
ここから石塚の入口までの間に、回廊が交わる場所が何か所あっただろうか?
記憶が正しければ、迷うことなく真っすぐ戻ることができるはず……
1箇所のはずだ 169へ。
2箇所だったはず 320へ。
いや、3箇所だ 100へ。

ファファスタス、いやバルサザールの眉がわずかに上がった。乾いた声がこぼれだす。
「……最後にその名で呼ばれたのはいつだったか……兄と一族を売り、あの連中に見せかけだけとは言え膝をついた屈辱の日々。ワシは死んだと見せかけ、名を捨て、顔を捨てて一介の世捨て人となったのだ……。何を犠牲にしてでも、王家に伝わる力を手にしたかった……」
「お前は王族だ。元々その資格を持っていたはずだ。なのに、何故、国を売るようなマネをした?」
俺は死に瀕した老人を問いただした。この男のせいで、あの戦いが引き起こされ、アイシャ姫をはじめとする多く者が望まぬ死を押し付けられたのだ。
バルサザールは引きつった笑いを浮かべて答えた。
「ワシには、王家の血は半分しか流れておらなんだ……ワシを生んだのは王妃ではなく、父が気まぐれに選んだ、一夜限りの女だった……幼き頃は何も知らなかった。若かりし日々には根も葉もない中傷だと言い聞かせてきた。だが、まじない師としての才能が全てを語っておった……だが、兄は本当に信じてなかったのだろう。でなければ、まずワシを疑ったはず……兄は、ワシが望むものを全て持っていた王は、最後までワシが裏切者とは気づかずに果てた……」
バルサザールは大きくせき込み、自らの血で衣を染める。「……まじない師の頂点たる家に育ったにもかかわらず、その力を得ることが叶わぬ……こんな無慈悲なる絶望があろうか。ワシは誰にも力を渡したくなかった……だから、刃の将軍――あの権力に餓えた愚か者――を唆し、反乱へと導いた。他の後継者を根絶やしにするために……」
「もういい!」姫の無念、屈辱を想い、俺は叫んでいた。しかし奴は話し続けた。
「そして王家の血を我がものとするため、姪を、兄の娘を妻に求めたのだ……! ワシとアイシャの子であれば、マールバハールの遺産を手にすることができるとな!」
無意識のうちに俺の手に握られた刃が動き、奴を貫く。
「……くく…見事なまでに“書の騎士”だな……じゃが、ワシがいなければライラは……」
その後はもう聞き取れなかった。口中にあふれた血がごぼごぼと音を立てるだけになり、すぐに静かになった。
191へ進め。

「こいつはやべぇよ旦那。いったん引き返そうぜ」
先のほうを心配そうに見ていたチャダルが言う。なにを弱音をと思ったが、奴が指さす先を見て俺も考えを改めた。そこには巨大な魚が何匹も水面から跳ね上がる姿があったのだ!
俺たちは亡霊だ。魚に食われて死ぬということはない。だが、俺の“頭”には実体がある。しかもこのアミュレットはライラとの絆でもあるのだ。万が一こいつが跳ね飛ばされでもしたら、俺が失うのは視界だけでは済まない。主であるまじない師の力を絶たれた亡霊に、いったい何ができるだろう。
俺たちは魚を刺激しないようにそろりそろりと引き返す。湖へと川が注ぎこむ場所まで戻るには時間がかかったが、ここは無事に済んだことを喜ぶべきだ。この先、湖を大きく迂回することになるが、王都へ無事にたどり着くことが肝要なのだ。
俺たちは旅を続け、数日後には湖沼地帯を超えた。今や雄大な大河となったエナムは、かつて王都にいた120年前と何も変わっていないようだ。
川沿いを北へ北へと進んでいくと、やがて彼方におぼろげながら王都の影が見えてくる。時刻は夜明け、店の準備を始める商人や、道を急ぐ旅人たちで街も活気づくころだ。
480へ。

鋭い軌跡を描く奴の剣先をかいくぐり、俺は手にした武器を繰り出した。その刃は敵の鎧と――首無しの馬の身体を切り裂く。馬が暴れ、相手もろともに倒れた。
奴に一太刀入れることはできたが、まだ敵を仕留めるところまでは行っていない……動かなくなった馬の横で、奴は立ち上がった。その目は怒りに満ちている。
「この僕に傷をつけるとは……! さぞ名のある騎士だったに違いない。だが、僕も負けるわけにはいかなくてね」
一瞬にして空気が震える。奴はその傷から霊気を散らしながら、最後の力を乗せた一撃を繰り出してきた!
BATTLE 
もしも握っている武器が除霊の短刀であるならば、効果は絶大だ。この戦いにおいては、戦力に3を足すことができる。
サイコロを一つ振れ。そして武器などから得られる戦力ボーナスを加える。
出目が「6」であれば、さらにサイコロを振って加算せよ。
(ただし、「1」が出た時点で自動的に敗北となってしまう)
得られた値と、敵の戦力を比べよ。同点以上であれば勝利だ。
敗北を喫した場合でも、命運点を1消費することで再挑戦できる。
決してあきらめることなかれ。
勝利したのであれば183へ進んでよい。
不運にも敗北したのなら……76へ。

進んでいくと、やがて塚の中心へと向かう扉が現れた。通路はまだ先へと続いている。
扉には首切り台に突き立てられた剣のレリーフが施されており、鍵穴があった。試してみたが、やはり開かない。
扉に向かい、右へと通路を進むのなら242へ
左へ向かうのならば131へ
合いそうな鍵を持っているのであれば、試してみてもいい。そうするなら146へ進め。

「なあ、もしかして……例の爺さん、ファファスタスって言ったっけか? 俺っちは会ってねぇけど、そいつが怪しいんじゃねぇか?」チャダルがだしぬけに言った。ライラが驚いた様子で返す。
「でも、先生は死霊術を使えないはず……昔、私に教えてくれた時、自分には使えないって言っていたもの。最後に会ったときだって、死霊術は王家の血を引く者しか使えないって……」
「そうなのかい? じゃぁ違うのかもな。けど……なんか怪しいって思えちまってよ。本当は使えるのに、隠してるってことはないのかい?」
「それは……確かなことは言えないけど、でもまさか……」
俺は黙って二人の会話を聞いていた。もしもチャダルの予感通り、亡霊の追手を差し向けてきたのはファファスタスだとしたなら、奴もまた王家の生き残りだということになる……
360へ進め。

騎士たちは辺りを伺っていたが、馬が妙に落ち着きを無くしているだけと判断したらしい。程なく先へ――俺たちがやって来た方角へと馬を走らせ始めた。その姿はあっという間に霧の中に消え、蹄の音が遠ざかる。こっちとしてはやっと息をつくことができるというものだ。
これで、少なくとも騎士が三人は関所から離れているのは確実だ。多少なりとも手薄になっている今のうちに向かったほうが得策かもしれない。俺たちは先を急ぐことにした。
237へ進め。

「ここでじっとしていろ。すぐに戻る」
ライラが小さくうなずく。彼女を物陰に残し、俺とチャダルは酒場へと向かった。
「旦那も酒場へ行くのかい?」チャダルの問いに俺は答えた。「あの大きさなら、宿も兼ねているだろう。旅の宿泊客がいれば、そいつはきっと外套を持っているに違いない……過酷な旅に耐えうるやつをな」
酒場へ近づくにつれ、次第に声が聴きとれるようになってくる。どうやら客は相当酔っぱらっているらしい。
「おう、女将。酒が足りねぇ……料理もだ!」
「ったく、どんだけ飲み食いすれば気が済むんだい? ……そういや最近パンの減りが早いんだけど、お前さんたち、まさか盗み食いしているんじゃないだろうね!」
壁に頭を突っ込んで中を探っていたチャダルは、首を引っこ抜いて言った。
「うまそうなシチューがあったぜ……野菜と肉がトロトロになってら。けど、持ち歩くにはむいてねぇわな……」
奴とは違って、俺の頭は実体のある借りものだ。中に入るには、この鉄兜を通せる場所を探すか、扉を開けるなりして隙間を作るしかない。
空いている窓を探すなら31へ。自分で頭を通す隙間を作るつもりなら7へ、それぞれ進め。

やがて通路が交差している場所へ出た。ちょっとした広間になっている中心には一体の像が立っていた。この塚の中心、つまりを玉座があるはずの場所の方を向いているようだ。この像を調べてみるのであれば43へ進め。
像に用がないのであれば、移動するしかない。広間で交わる通路は垂直に交差しているのではなく、妙に角度がついている。
像からみて右手手前へ延びる通路を進むのなら496へ。
左手手前へ進む道を選ぶならば229へ。
右手奥なら439へ。
あるいは左手奥にするのなら285へ。

戦いは何合にも及んだ。お互い亡霊であるため、疲れ知らずだ。先に隙を見せたほうが負ける……文字通り魂を削るような戦いだった。その均衡を破ったのは、戦いから離れて見ていたチャダルだった。「何を手間取ってんだ……なんとかしてくれよ、バジャーの旦那!」
瞬間、気を取られたのかわずかに鈍った奴の剣先をかいくぐり、俺は手にした武器を繰り出した。その刃は敵の鎧を貫き、奴は態勢を崩して地面へと落ちる。
一太刀入れることはできたが、まだ敵を仕留めるところまでは行っていない……いななく馬を横に、奴は立ち上がった。その顔は驚愕に満ちているが、その理由は不覚を取ったことではなかった。
「バジャーだって!? 本当に君なのか……!」
俺もまた、こいつのことを知っていた。これだけ刃を交えればいやでも思い出す。あの時の、氷霧の森で俺の首を切り落とした男だ!
「お前も……誰かに呼び出されたのか……」
「あの時、僕はアイシャ姫を狙うよう仲間に合図した。君の首を取りはしたが、あれは実力じゃない。君の動きは明らかに鈍っていた……姫に気を取られたってわけだ。僕が騎士バジャーよりも優れた剣士であることを証明する機会は永遠に失われた。皆は僕の腕を褒め称えたが、なんの慰めにもなりはしかなったよ。そうではないことをよく知っていたからね」
「そんなことはどうでもいい! 誰がお前を呼び戻した? そして、なぜ俺を狙う!?」
だが、奴は俺を無視して続けた。
「僕はあれから、死ぬまで不敗を貫いたよ。最期は剣の衰えを感じる歳になって、自刃したんだ。それまでの間に多くの決闘を重ね、その全てに勝利した……バジャー、君の“最強”を護るためにね。だってそうだろ? 君が最強でなくちゃならない。僕が勝てなかったのは君だけなんだ。
亡霊となって使役されるなんて屈辱も、もうどうでもいい。逆に感謝でいっぱいだよ! さあ、今度こそ決着をつけよう!」
奴のおしゃべりに付き合う余裕は無かった。俺は無言で剣を繰り出し続ける。最初に入れた一撃が与えた傷は深く、さらに数合武器を交えた後、奴はついに崩れ落ちた。
「……消える前に吐いてもらおうか、誰がお前を遣わした?」
奴は崩れかけた身体で呻きながら、唇をまげて笑った。「さすがだよ、バジャー……いいだろう、教えよう。それは……」
そこまで言いかけた時、不意に奴の身体が砕け始めた。霊気の霧散が早まり、風に流されていく。
「……最後まで僕を縛り続けるってわけだ。バルサザール……!」
それが最後だった。奴が残した名に俺は驚く。バルサザール……それはかつて俺が仕えた、王の弟の名だった。
217へ進め。

結局その後は何事もないまま、夜が明けた。ライラが眠れそうな場所を探し、俺とチャダルはライラの護衛と、周囲の見回りを交代でこなした。
そいつを見つけたのは、俺が道の先を探りに出ていたときだった。かすかないななきが確かに聞こえたのだ。こんなところに野生馬がいるとは考えにくいが、もしもいるのならばこいつは是非とも捕まえたい。俺は草の中を突き進み、馬と思しき姿を探す……見つけた!
近づいていくと、馬のほうでも違和感を感じとったのか、辺りを探るような仕草を見せた。頭を落とさないよう気を付けながら一気に飛び掛かる。馬は見えない乗り手を振り落とそうと暴れたが、昔やっていたように足で腹を軽く蹴ってやると、おとなしくなった。どうやらこいつは軍馬の訓練を受けたことがあるようだ。どこかの兵舎から脱走したまま、野生化していたのかもしれない。
鞍も鐙もないが、馬の首に手を当てて――実体の無いこの身だが――どうにか言うことをきかせていく。俺はゆっくりとライラが寝ている場所へと戻った。チャダルは馬を連れてきた俺を見て驚いたが、すぐに縄を探しに行った。確かに、せめて手綱がないとこいつに乗って旅をするのは難しいだろう。
目を覚ましたライラは驚いたようだ。起きてみれば、そばに馬がいたのだから当然かもしれない。
しばらく試行錯誤した挙句、結局三人で馬に乗って出発することになった。まず俺が乗り、手綱を握る。ライラが俺に重なるようにしてやはり馬に跨り、最後はチャダルが尻に乗っかった。ライラは背が低いので、彼女に俺の“頭”がぶつかることはない。チャダルはライラが落ちないように身体を支える役だ。武器を操ることもおぼつかないチャダルだが、それでもいないよりはましだろう。
馬は一人の少女と二人の亡霊を乗せているわけだが、加重はわずか一人分、それも子どもの重さのみだ。これならライラに無理をかけることなく、旅を続けられるだろう。
208へ進め。

ここに描かれたアイシャ姫の姿は、かつて氷霧の森で別れたときからそう時が経っていないように見えた。囚われの身となった後に絵は描かれたらしく、姫の表情には生気がない。
隣に描かれている男にも見覚えがあった。120年前の戦で敗れた最後の書の王……その弟君だ。名前はバルサザール。姫を隣国へ逃せと俺に命じた男。その男が、描かれているのだ。
その時、大きな鐘の音が鳴り響いた。
TOLLING
鐘が鳴った回数を記録しておくこと。ここでは1回追加となる。
鐘の音に追い立てられるように、俺は絵の前を離れた。何か悪い予感がする。
ここから先へ進む道は一つしかない。部屋の南壁についている扉だ。
338へ進め。

右へと折れている通路の先には、下へと向かう階段があるのが見える。足跡――薄汚れた泥の跡――が階下へと続いている。ここへ食事の桶を運んだ者がつけていったと見える。
この階段を下りるなら60へ。
その前に通路の反対側を調べておこうというのなら139へ進め。

俺は一人、山の斜面を下って行く。木々の間を抜けながらレザニアを迂回し、チャダルと別れた場所へと向かう。だが、例の大樹のところへ戻ってみても、奴の姿が見えないではないか。馬も同じくだ。
俺はぐるりと辺りを見渡した。ここはレザニアから出ている唯一の道だ。きっと馬が人目につかないよう、移動したに違いない。あるいは……馬がレザニアの者に見つかってしまったのだろうか?
近くの茂みを覗いてみるのなら27へ進め。
レザニアを探してみるのなら298へ。

像は見事な髭を蓄えた壮年の男性のもので、刃の紋章がついた豪華なマントを身に着け、頭には王冠を戴いている。片手を前へ突き出し、塚の中心の方角を指していた。台座にはプレートがはめ込まれており、そこにはこうあった。
この名前は知っている。かつての主君に仕えていた刃の将軍……許されざる裏切者だ。昔、会見したこともあるが、この像とは腹回りが全く違った。後世に自分の姿を遺すにあたり、自覚のあった欠点を覆い隠そうとしたに違いない。
鎖を通してある鍵が一本、裏切り者の首に掛けられている。その鍵には宝石がついているようだ。
鍵をとるのなら107へ。
そうしないのならば、次に進む道を決めなければならない。29へ進め。

氷霧の森……カルルームへの道……そして三人の追手……
……だめだ、よく思い出せない。確かに聞いたことがある声だと思ったが、それもあやふやになってくる。
211へ。

「よう……旦那。勝ったのかい? 嬢ちゃんなら何とか無事だぜ……」
俺が戦っている間、チャダルが懸命にライラを介抱してくれていた。しかし、そう言って笑う奴の身体は今や薄くなり、消えかけていた。
「俺っちは戦いじゃあんま役に立たねぇけど……嬢ちゃんのためなら何だってできるんだ……」その声もまた、擦れている。
「俺っちも旦那も、嬢ちゃんのまじないがあったからこそ、今こうしてるだろ……?
それって、つまり俺っちの魂は、嬢ちゃんのものでもあるってことじゃねぇかな……だったらよ、嬢ちゃんに返すことだって……」
俺にはまじないのことはわからない。チャダルだって同じだろう。だが奴は自らの意思で事を成そうとしていた。
「……ん… 私、何を……?」
チャダルの想いが通じたのだろう。しばらくしてライラは意識を取り戻した。そこにはまじないの影響は見えなかった。いつもの、彼女の眼だ。だが……チャダルはライラの命を繋ぐことと引き換えに、消えてしまっていた。
その時、かすかな呻き声が聞こえてきた。振り向くと、血だまりの中でファファスタスの指がわずかに動いているのが見えた。奴もまた、まだ生きていたのだ……!
54へ進め。

何日かが過ぎた夜、行く手に霧で霞む森が見えてきた。忘れようもない……かつて俺が命を失った地、氷霧の森だ。
俺の“頭”が鉄兜ならば189へ。それ以外の品ならば223へ。
それぞれ進め。

どこかで道を間違えたに違いなかった。
脱出する道が見いだせないまま、警報の響きが大きくなっていく。押しつぶされそうだ……!
377へ進め。

家系図の中に“バルサザール”の名を見つけた俺は、目を疑った。かつて仕えた王の弟がここにその名があるのは問題がない。だが、その伴侶として“アイシャ”の名があったのだ!
同名の別人ではない。その“アイシャ”は夫“バルサザール”の兄の娘となっている。確かに俺が護ること叶わなかった、あのアイシャ姫なのだ。120年前……あの戦いの後に、一体何があったというのだろうか……?
元のパラグラフで調べ物の続きをするために戻ってもいいし、457で、他の名前を探してもいい。

瞬時に視界を遮る一切が消えうせ、舟が開けた前方――中空へ投げ出される。咄嗟に“頭”を抑える手に力を籠めるが、流石はファファスタスのまじないがかかった舟だ。一瞬の後には流れ落ちる水に沿って、ゆっくりと空中を降下しはじめた。周りを流れ落ちる水が舟を追い越して滝壺と消えていく。程なく舟は衝撃も軽く着水し、滝の轟音を背後に再びエナムを進みだした。
しばらくするうちに流れは穏やかになってくる。気が付けばもう平野に出ており、振り返るとレザニアがあった山地が遥か背後にそびえていた。急流を乗り越え、俺は安堵して行く先へと視線を向ける。まだ王都までは遠いが、数日のうちには着けるだろう。
やがてエナム川は湖沼地帯へと入っていった。まじないがかかった舟は波一つない水面をすべるように進んでいく。緩慢となっていた水の流れが再び感じられるようになり、もう少しで湖を抜けようというその時、水面下に巨大な魚の影が横切るのが見えた。もしもあいつが襲ってきたなら、こんな小さな舟の上では逃げ場はない……
さらに命運値を1消費するのなら347へ進むことができる。だが、そうしないのであれば、サイコロを一つ振る必要がある。出た目が「6」だったのなら、347へ行ってよい。その他の目だった時には、覚悟を決めて……430へ。

チャダルは鍵を調べていたが、その表情を見れば、うまくいっていないことは明らかだった。
「……だめだね。こいつは俺の専門外だ。まじないだよ」
扉から離れながらチャダルは言った。「ただ、この外には何もありゃしねぇのは確かだね。どういうまじないかはわからんねぇけど、俺っちたちここに閉じ込められたんだ。なんでか壁抜けもできねぇしよ」
壁や床に手を突っ込んでみようしたが、確かに奴の言う通りうまくいかない。王都の石塚のように何かしらの対処がされているとなると、行ける場所はあの螺旋階段のみということになる……。
「旦那、それより気づいたんだけどよ……ここ、あれじゃねぇか? 嬢ちゃんが閉じ込められてた、あの塔」
言われてみれば、確かにこの広間は以前、退魔師の男と戦った場所のように思える。
俺は例の光に包まれる直前に見つけた塔の模型のことを思い出していた。俺たちはあの中に閉じ込められたのではないか?
119へ。

「……そうです。おっしゃる通り、この場には私の味方が二人います」
「それはつまり、お主が書の血族であるということになるが……」ライラの答えを聞いた老婆は片方の眉を吊り上げた。チャダルが不安げな視線を俺とライラに向ける中、ライラは静かに言った。「……そうかもしれません」
くっくと老婆が声を殺して笑い始めた。咄嗟に武器に手をやるが、何もない! 武器をライラに預けていたことを思い出し、俺は一人毒づく。
「安心せい。お主をマールバハールの兵に突き出そうというのではない。ただ、懐かしゅうてな。ワシはまじないとは縁のない、ただの商売人じゃが……昔から亡霊を見ることができたんじゃ。近頃は退魔師なる連中のせいか、めっきり見なくなったがの。……たしかに、二人おるようじゃな」場が一気に緩み、和んだ空気になった。
「おばあさん、彼らが見えるの?」
「ワシのまなこは、とうの昔にろくに見えなくなってしもうたが……今でも心の目は開いておる。実に良き絆じゃの。二人がお主を守ろうとしておるのがよぉく判るでな。
良いものを見せてもらった礼に、一つ教えてやろう。お主はカルルームへ抜けようとしておると聞いた。偽りではあるまい。じゃが、国境には堅固な関がある。駐屯する騎士どもは亡霊を見ることはできぬ。だが、あそこには件の退魔師も、少ない人数ながらおるのだ。除霊の術を修めた輩ゆえ、友を失いたくなくば、関を避けたほうが賢明といえるじゃろう」
そして、老婆は抜け穴のことを語った。彼女がまだ子どもだったころ、やはり商隊を率いていた父親から教えてもらったという道のことを。
「こんな大掛かりな商隊では使いようがないが、お主のような子どもであれば十分通れる道じゃよ。じゃが、よく探さないと見つからないからのぅ……忘れるでないよ」
今後、氷霧の森に入ったら、二つの国を人知れず繋ぐ抜け道――洞穴を探すことができる。その時は、パラグラフ番号に30を足した先のパラグラフへ進むといい。「街道を外れ、老婆に聞いた話を思い出しつつ」という出だしで始まっているはずだ。しかし、今はまだその時ではない。390へ。

「……バジャーか。覚えているぞ……我が娘、アイシャを任されながら……」
王は俺の頭を見て呻いた。
「だが、責めはすまい。身内、それも我が弟が裏切っていようなどとは、この私でさえ見抜けなかったのだ。奴の命令に従い、カルルームヘ向かったお前に非はない……全ては、我が瞳の曇りがゆえであろう」
大きなため息をつくと、王は続けた。
「見たところお前は囚人ではないようだ……ここは魂の監獄だというのに。なればこそ、お前に頼みたいことがある。聞いてくれるか?」俺はうなずく。
「我が蒙昧なる弟、バルサザールは書の血族を刃の輩へと売り渡した……。奴にとって、私の存在が邪魔だったのだ。代々の王に伝わる、究極のまじないを欲していたからな。だがそれは誰にでも扱えるまじないではない。たとえ王であっても、資質の及ばぬ者もいたほどのものなのだ。
バルサザールはその力を揮うことを夢見た……そして兄である私を排し、書の血族を統べる者になろうとしたのだ。忌々しいことに、その目論見は成功した。まじない師ではない刃の血族に偽りの王座を与え、その力を後ろ盾に優れたまじない師たちを捕らえては殺した。そうして生き残った書の血族の中で、最も力を持つ存在となったのだ。
愚かではあるが、奴は周到だった。万が一、己の力量が足りなかった時のことを考え、刃の血族に与する褒美として我が娘を求めた……より濃い血を持つ子を成し、己が傀儡とすることを目論んでいたのだ。その後、奴は自らの名を塗りつぶし、死を装い自由となって久しい。そして刃の血族の監視を潜り抜け、ついに野望を達しようとしている……」
徐々に牢の中が熱くなってきた。床のあちこちから炎が噴き出し始める。
「バジャー! 叶うならば、お前に託したい……!
究極のまじないとは、初代王……マールバハールを打ち建てた大いなるまじない師の魂を組み込んだ魔導兵だ。未だ戦乱止まぬ時代に、護国のためと造られたものだが……奴がその力を手にしたならば、何をしでかすかわからぬ! 我が愚弟を――」
王の言葉が途切れた。燃え盛る炎が全てを吞み込んでしまったのだ。
458へ進め。

ライラは未だまじないの支配下にあった。彼女は師が命じるままに、かつて己が施した死霊術を解き始めた……。
それは時間のかかる行為だったが、力を奪われた俺には為すすべがない。老人の勝ち誇った笑みと、無表情のまま絆をほどいていくライラの姿を見せつけられる無念の中、俺は再び死の忘却へと落ちていく……

黒く光沢のある宝石が、鍵にはついている。
黒瑪瑙の鍵を入手したことを覚えておくこと。29へ進め。
ただし、すでにこの鍵をもっているのであれば、当然ここには何もない。

骸骨は俺の頭に気づくと立ち止まり、がらんどうの眼窩でこちらを見た。舌の無い口を開き、歯をカチカチさせながら呻く。
……こうしてさまよい続けて120年たつが、君みたいなのははじめてだ
同じ骨のともがらのよしみだ……教えてあげる。この先を右、左だ。いいね?
それだけを言い残し、亡者は再び砂嵐の中へと消えていった。
160へ進め。

石室を超え、さらに地中深くへと降りていく。行く手から流れてくる空気に乗って、かすかにまじないの詠唱が聞こえてきた……それは歩を進めるごとにはっきりとしてくる。男――老人の声だ。
「先生だわ……でも、焦っているみたい。まじないがうまくいっていないのかも」
確かにファファスタスの声は、心なしか震えているようだ。時折毒づいているようにも聞こえる。
やがて通路の行き止まりに、重そうな石の扉が開け放たれているのが見えた。この向こう側に、奴はいる。
498へ進め。

「おいっ、バジャーの旦那。俺っちを無視するなよ! 最期はヘマやって縛り首とはいえ、天下に知られた怪盗なんだぞ……!」
不満げにわめく小男の亡霊――チャダルの声を背に鉄格子へ向かう。奴がさっき壁から現れたみたいに、俺にだってここをすり抜けることができるはず……ライラをここから連れ出すにせよ、刃の連中相手に復讐するにせよ、まずはこの部屋から出なければ話にならない。
鉄格子をすり抜けようと踏み出した途端、目の前が真っ暗になる。しまった! 俺の胴体には首壺が乗っていたのだった。実体を持つ壺は鉄格子を通り抜けられなかったのだ……
……墓場のカビ臭い香りが鼻を突く。ここはどこだ? 先ほどまでいた塔の中ではないようだ。試しに首を動かしてみようとしたが、どうにもならない。狭い場所に押し込められているらしい。頬のあたりに確かに何か冷たい物が当たっているのがわかる。手足はと言えば、こちらは確かに動かせているようだ。わけが分からない……
……不意に視界が開けた。チャダルの声が再び聞こえてきた。
「旦那ぁ、ちょいと不注意すぎるぜ。あんたの頭は、ある意味じゃもうあんたのモンじゃないんだ。気を付けないと、またやらかすぜ?」
足元には割れた壺の破片が散らかっていた。俺は廊下に出ていて、振り返ると鉄格子越しにライラがくすくす笑っていた。「その頭も悪くないわ」
言われて俺は手を頭にもっていった。これは何だ? と言おうとしたが、声が出ない。どうやら薄い陶器でできた物体らしく、先ほどまでとは違って叩いても音は響かなかった。
「そんなことしたら割れちまうよ、旦那。目と耳の具合はどうだい?」
チャダルの手には筆が握られている。「即興で皿に顔を描いたんだ。ちょっとまっててくれな……今、口も描いてやっから」
筆が顔をなでる感触がして、俺は口が利けるようになった。
「……ありがとよ。首壺のほうがまだマシだったぜ」
頭が皿であることを忘れずに、20へ進め。

「騎士らしからぬ武器だが……今の僕らには極めて有効だ。腹立たしいことにね。誇りを捨ててまでも勝利を求める……君は正しいよ、バジャー」
BATTLE 
除霊の短刀の効果は絶大だ。戦力に3を足すことができる。
サイコロを一つ振れ。そして武器などから得られる戦力ボーナスを加える。
出目が「6」であれば、さらにサイコロを振って加算せよ。
(ただし、「1」が出た時点で自動的に敗北となってしまう)
得られた値と、敵の戦力を比べよ。同点以上であれば勝利だ。
敗北を喫した場合でも、命運点を1消費することで再挑戦できる。
決してあきらめることなかれ。

橋の下へもぐりこんでみると、そこには手漕ぎ舟が岸へと引き上げられていた。
「寝るにはおあつらえ向きじゃねぇか? 嬢ちゃんもずっと地べたに寝てたんじゃ、体調をくずしちまうぜ」
チャダルはそう言って笑ったが、どうだろう。持ち主が昼間に来ないとも限らない。そうなったら面倒なことになる。
「大丈夫だって、よく見てみろよ旦那。手漕ぎ舟のくせにオールがねぇだろ。つまり、こいつはもう誰も使っちゃいねぇってわけだ」
「でも待って。それにしては綺麗すぎない? ……それに、何かまじないがかかってるみたいだわ」
ライラが怪訝そうな表情を浮かべる。
俺が命を落とした戦いの後、王座を力で奪った刃の血族は、報復を恐れたはず。それがゆえに、まじないの技を持つ者は迫害されたのではなかったか。ライラはこの舟にはまじないの力を感じるという。彼女のまじない師としての感覚を信じるならば……つまりこいつは破壊を免れた古い舟ということになる。あるいは、実は生き延びていたまじない師の手で新しく作られたか……
「とにかく、私にはここが安全とは思えないわ」
寝る当人がこう言うのならば、これはもう決定だ。ここで休むのはやめて、安心できる場所を探すべきだろう。
137へ進め。

生きていた頃の記憶を手繰る。そうだ、アイシャ姫を連れて隣国へ逃れろとの命令は、この男から下されたものだった……そしてあの追手たちはまるで、姫の行き先を知っていたかのように現れたのだ。
湧きあがった疑念はみるみる膨らみ、抑えることもままならない。俺は首を失った像に背を向けた。
像からみて右手手前へ延びる通路を進むのなら63へ。
左手手前へ進む道を選ぶのなら496へ。
あるいは右手奥なら49へ。
残る道は左手奥だ。これを進むなら120へ。

奴は俺の顔を見て驚きの表情を浮かべた。しかしそれはすぐに歪んだ笑みへと変わる。
「そうか……お前か。まさか、よりによってお前だったとはな……」
どうやら俺のことを知っているらしい。つまり、こいつは120年前のあの時も生きていたということになる……!
何者かと聞いてみるのなら132へ進め。
誰であろうと敵には違いない。すぐさま攻撃に移るのであれば25へ。

夜風に吹かれながらタマリンドへと続く街道を戻る。あの村には兵隊が常駐していたようだから、きっとどこかに馬もいるだろう。だが、あの村では騒ぎを起こしてきたばかりだ。それにライラが塔から逃げ出したことも発覚しているはず……あまり近づかないほうが賢明のように思える。
追手がかかってないことを確かめた俺たちは地図を開き、多少遠回りになっても南へ向かう路を探した。使われなくなって久しい旧街道があるようなので実際に見に行ってみると、半ば草に埋もれているのがわかった。この様子だと、先々で獣と出くわしたとしても不思議ではない。
多少の危険はあるだろうがタマリンドへ戻り、馬を調達しようというのなら486へ。
このまま旧街道を進むのなら150へ。

「嬢ちゃんだけどよ……ありゃきっと、まじないで縛られてるぜ」とチャダル。
それが聞こえたのか、老まじない師は歪んだ笑みを浮かべた。
「その通り……目端が利くようだな。じゃが、もう儀式はほぼ完了している……あとは、この娘が呪言を唱え終わるのを待つばかりだ。その間に、ワシは貴様らを排除するとしよう」
ファファスタスが迫ってくる。強力なまじない師という正体を隠す必要もない今となっては、その一歩にすら力が満ちているのが感じられる。決して老人と侮ることはできない。
「こいつは俺が食い止める……お前はその間に……」俺の言葉にチャダルは頷いた。
BATTLE 
サイコロを一つ振れ。そして武器などから得られる戦力ボーナスを加える。
出目が「6」であれば、さらにサイコロを振って加算せよ。
(ただし、「1」が出た時点で自動的に敗北となってしまう)
得られた値と、敵の戦力を比べよ。同点以上であれば勝利だ。
敗北を喫した場合でも、命運点を1消費することで再挑戦できる。
決してあきらめることなかれ。
俺が敵を引き付けている間、チャダルは独自に動くことができる。だがそれも、俺が負けた時にはファファスタスに邪魔されてしまうだろう。そうなってしまったときは471へ。
勝った時には、チャダルもまた見事課せられた仕事を成功させる。チャダルに頼んでいたのが……
ライラの呪言を止めさせようとしていたのなら79へ。
ファファスタスの隙をついて一撃を喰らわせようとしていたのなら66へ。
ファファスタスから何かを盗ませようとしていたのなら355へ。

ライラは意を決した様子でうなずいた。俺たちの腹積もりは決まった。憎き刃の血族どもを相手に戦うのだ。ファファスタスもまた、感極まったといった様子で大きくうなずく。
「そうと決まれば、すぐにでも動かねばならん……! 先ずはワシがこれまでにつかんだことを全て話そう」
彼は古い地図を取り出してきてテーブルの上に広げた。この国、マールバハールが描かれている。端には地図作成者のものと思わしき名が記されており、その傍らには制作年も書かれていた。200年前、つまり俺が生まれるよりもはるか前、書の王朝時代のものだ。
「この国の南の果てに、人も寄り付かぬ砂漠がある。厳しい地で、常に砂塵が吹き荒れておるのだ。そのため入り込んだ者は皆、死ぬまで彷徨い続けるという。
だが、ここには王家の墓が隠されているのだ。代々、書の王が死ぬとその後継者が自ら砂漠へ赴き、先王を葬った。マールバハールの知られざる伝統だ。王家には、砂漠を抜ける道が伝わっていたに違いないが……ライラが己の血筋について知らされていなかったことからして、残念ながらその伝承は途絶えていると考えるべきじゃな」
ここでファファスタスは俺の方を向いた。「しかし……霊廟を開くための鍵は、受け継がれていた」
ハッとしてライラも俺を見る――いや、彼女が見ているのは俺の“頭”だった。
ファファスタスが手を伸ばしてくる……それから視界が消えうせた。いつものように、埃っぽい暗闇が広がる……
……いや、何かがいつもとは違う。俺の首がどこか狭い場所に押し込められていて、身動き一つできないのは変わらないが、明らかに揺れているのだ。この振動はよく知っている……馬だ。俺の首を入れた何かが、馬に揺られている!
不機嫌そうな声がかすかに聞こえた。男のようだが……馬の蹄が地面を蹴る音でよく聞き取れない。やがて視界が再び闇に溶け……ランプの灯りに照らされたファファスタスの隠れ家が戻ってきた。
「頭を失うと、光と音までもが失われるとは知らなかった。いきなりですまなかった」
そう詫びるファファスタスの手には、例の鍵があった。すると今、俺の首に乗っているのはなんだ? 手で探ってみると、どうやら小さな金属の彫像のようだった。
ライラが俺の“顔”をのぞき込んでいる。「先生の物なんだけど、一時お借りしたの。私が見える? 声は聞こえてるかしら?」
そこへ俺たちのやりとりを無視してファファスタスが割り込んできた。例の鍵を手に興奮しているようだ。
「これがワシの思った通りの品であれば……うまくすれば、刃の血族から国を取り戻すことができるかもしれん。もしもそうなればだ、ライラ。お前が女王ということになる」
その言葉にライラは心底驚いているようだが……確かに彼女にはどこかアイシャ姫の面影がある。ファファスタスの言っていることもあながちおかしくはなく思えた。
「書の血族が王座を追われたのは120年も前の話だ。運よく生き延びた者も、己の素性は隠そうとしただろう。わが子を護るため、あえて何も伝えなかったこともあったに違いない。お前の両親……おそらく父親であろうが、己に流れる血について何も知らなかったとしても、不思議ではない」
ライラは老人の言葉に驚き、何かに思いふけっていたが、やがて唇を開いた。
「……それで、その鍵が霊廟を開くものだったとして……先生、教えてください。そこには一体、何があるのですか?」
地図へ再び視線を落として問いかけるライラに、ファファスタスは力強く答える。
「書の王家にのみ伝わる、究極のまじないだよ。いや、まじないを超えた、本物の魔術だ。その力を使えば、我らが祖の玉座に居座る偽りの王を廃することができる……。誤った目的のために使われぬよう、死せる代々の王たちがその番人となっているというが、此度は咎められることはあるまい」
究極のまじない……魔術。そんな力があるのなら、なぜあの夜、王は使わなかったのだろうか。俺が思い浮かべたその問いを感じ取ったのか、ファファスタスがこちらを見る。
「この魔術のことは王家の限られた者しか知らぬ秘伝だったのだ。120年前のあの忌まわしき戦では悲しいかな、王には先祖の墓まで出向く時間はなかった……刃の血族どもの計画は周到で、王は何もできなかったのだろう。だが、奴らもまた大いなる魔術のことは知らなかった。もし知られていたのなら、とうの昔に墓は荒らされ、全ては灰燼に帰していただろう。我々には、奴らに突き立てる復讐の刃は残されていなかったはずだ」
「……そんな昔の秘密を、なぜ先生は知っているの?」
「当時生き延びた者たちは一族の秘密が漏れぬよう、あらゆる記録を持ち出した。敵の動きが早く持ち出せぬ場合は、やむを得ず焼却したのだ。王都を焼いた炎が、ワシらの秘密を守ってくれたのは皮肉なことだが……。とにかく、ワシは長年そうやって密かに伝えられた情報を調べてきた。もちろん簒奪者どもに一矢報いるためだ。そして今、そのための準備がほぼ整いつつある!」
321へ進め。

二人はやがてあきらめたらしく、街道へと戻っていく。連中が向かうずっと先にはライラとチャダルがいるわけだが……俺がここまで来た速さを考えると、あそこまで人の足でたどり着くにはまだまだ時間がかかるだろう。
今は面倒事を避け、先に村へ行くことにするのなら392へ。もしも、帰りにまた遭遇することがあれば、そこで改めて対処を考えるのも手だ。
憂いは残したくない。この場で背後から二人に襲い掛かるなら59へ。

螺旋階段を登り、上の階へと踏み入れる。やはり間違いない、ここはあの塔と同じ造りをしている。見覚えのある回廊が左右へとのびているのだ。一瞬見ただけだが、確かにあの模型はライラが閉じ込められていた塔そっくりだった。奴のまじないなのだ。どうにかして脱出する手段を見つけなければ……
その時、大きな鐘の音が塔の外で響き渡った。
TOLLING
鐘が鳴った回数を記録しておくこと。ここでは1回だ。
回廊を左へいくのであれば10へ進め。右へ進むのなら251へ。

鋭角に通路が曲がる角だ。その角にあたる北壁にはここへ侵入したときに使った入口があり、冷たい夜の空気がかすかに流れ込んでいた。しかし目的を達していない今、ここから出ていくわけにはいかない。
ヒカリゴケの放つ淡い燐光が、塚の中をぼんやりと照らしている。ここからは左右二本の通路が南へと伸びているが……
右の通路を進むのなら381へ。
左の通路を進むのなら90へ。

ライラの体力が心配だったが、俺たちは慎重に夜道を進むことにした。食用になる木の実や山菜を取りながら十分に休息をとりつつ三日が過ぎ、その晩遅くには行く手に松明の明かりが見えてきた。どうやら件の村に着いたようだ。 154へ。

手持ちの武器はあるだろうか? 実体ある得物を所持していた場合には、呻き声一つたてることなく、相手は息絶える。
だがこの手に武器ないのであれば、残念ながらこいつの命を奪うことはできない。霊体の剣は同じ亡霊は斬ることができるが、生きている者相手には効かないのだ。
いずれにせよ、206へ進め。

進んでいくと、やがて塚の中心へと向かう扉が現れた。通路はまだ先へと続いている。
扉の表面には何かを削ったような跡が大きく残り、扉と石壁の隙間は漆喰で固められていた。鍵穴も漆喰が流し込まれてふさがれており、こいつを開けることは不可能と思える……
扉に向かい、右へと通路を進むのなら21へ。
左へ向かうのならば242へ。

声の主を探してみるが、誰もいない。その時、かすかに老女の姿が浮かび上がってきた。彼女は斧に貫かれ、壁に張り付けにされていたのだ。
「ここはバルサザール様に逆らった者の魂が閉じ込めた牢獄。ワシ以外にも多くの者が捕えられておる……自由を与えられているように見えるが、一体何者じゃ?」
彼女は俺の鎧についていた紋章を見て、書に与する者かと聞いてきた。そうだと答えると、老婆はうなずいた。
「ワシはバルサザール様に雇われた産婆じゃった。あの御方は戦のあとにお若い奥様をお迎えになっての。お子様ができたんじゃ……双子じゃった。しかしながら酷い状態での。片方の子は死んでおった。今一人は何とか生きておったが、長くはもつまいと思われた。奥様も血を多く失ってしまっていたが、そのお顔は満足そうじゃったよ」
老婆が咳き込み、その姿が再び薄れてきた。彼女は苦し気に漏らす。「……バルサザール様がお怒りじゃ。ワシにしゃべるなと言うておる……」
奥方の名を訊ねるのであれば348へ進め。
その女性と、生きていた子どもがその後どうなったのかを聞きたければ、286へ。

こいつはレザニアで行方知れずになっていたチャダルだ。こんなところで囚われていたとは。だが何か違和感がある……そうだ、竜の入れ墨が顔の右側にあるのだ。俺が知るチャダルの竜は左側に施されていたはずだ。
俺が逡巡していると、奴は目を開けた。
「誰だ、俺っちの眠りを邪魔するやつは……?」そして俺の姿を見て目をぱちくりとさせた。
「へえ、書の騎士様とはめずらしいね。何かご主人様の機嫌を損なうようなこと、やらかしちまったのかい?」
どうやら俺が知るチャダルではないようだが、その言葉遣いや仕草は奴そっくりだ。
“奴”とは誰のことか聞いてみるのなら238へ進め。彼自身のことを聞いてみるのなら358へ。

村から離れるにつれ、チャダルを苦しめていた痛みも軽くなってきたようだ。竜の刺青が発する熱も引いたらしく、その色は見慣れた黒に、そして形を保てなくなっていた頭もどうやら元通りになっている。
「俺っち、死んじまうかと思ったよ……けど、よく考えたらもうとっくの昔に死んでるわな。亡霊が“死ぬ”ってのは、この世から跡形もなく消えちまうみたいな、そんな感じなのかもしんねぇ」
レザニアから道を下り、川にかかる橋が見えてきたところでチャダルが再び口を開いた。
「……結局、嬢ちゃんは先生とやらに会えたのかい?」
俺がファファスタスのことを説明してやると、チャダルはあきれたように言った。
「そいつぁずいぶんと夢想家の爺さんだなぁ。いくらものすごいまじないが伝わっていたって、それだけで国全部を敵に回して勝てるなんて俺っちには思えねえよ……嬢ちゃんも思い切ったもんだ。それで旦那、あんたもその企てに乗ったってわけだな」
チャダルはしばらく考えてから、意を決した様子で続けた。
「嬢ちゃんがそうしたいってのなら、しょうがねぇ。俺っちも協力するしかねぇか。……だがよ、旦那はそのアミュレットの力で嬢ちゃんと繋がってるとして、俺っちはどうなるんだろうな?」
一瞬、奴の指先がわずかに動くのを感じた。やめろと叫ぼうとしたが、かつて名うての盗賊だったというのは伊達ではなかったようだ。咄嗟に身をかわそうとしたが、その前に視界は奪われてしまった。
……俺の“首”はいつも通り、狭い場所に押し込められていた。身動き一つできないのも同じくだが、どうも揺さぶられているようだ。こいつはきついぞと思っていると、すぐに目の前が開けた。文句を言おうとしたが、奴め気まずそうにしゅんとしている。アミュレットを俺の首に戻す前に何があったのか問いただしても返事はない。指をアミュレットに伸ばして確かめてみると、ひっかいたような傷ができている!
「すまねぇ……まさか旦那が反応するなんて思ってなくてよ。急に動いたもんだから、指で弾く形になっちまって、その……すっ飛んでいっちまったんだ。そんで、ちょうど落ちたとこに運悪く岩があってさ……けど信じてくれよ。ちょいと見てみたかっただけなんだ」
仕込んだライラの髪が無事であることを確かめ、俺は安堵の息をつく。
「お前の腕の程はわかった……だが、今度からは一言断ってくれ。
こいつは俺の頭になっているとはいえ、別に名が彫られているなどというわけじゃない。おそらくだが、お前にも影響はあるはずだ……あまり離れれなければ、きっと大丈夫だろう」
アミュレットに傷がついたことを忘れずに、64へ進め。

使った分の命運値を減らしておくこと。
賭けた命運値が……
2以上であったのならば、411へ。
1以下だった場合は473へ。

馬を急かして関所から離れようとした瞬間、背後から空気を切り裂く音が響く。弓だ!
俺は咄嗟に馬を返し、手綱を引き上げた。馬は後ろ脚で立ち上がり、矢を浴びる。かわいそうだが、他に手はなかった。亡霊の身体ではライラの盾になることもできないのだ。苦痛にいななきながら馬が倒れる。投げ出されたライラを助け起こし、凍てつく霧の中を走りだす。
街道を外れて木々の中にまぎれこんだ時、瀕死の馬を調べる兵士たちの声が聞こえてきた。連中に見つからないように気を付けながら、少しずつ慎重に西へと向かう。
219へ。

“頭”として戴いているのがカルルームの像であるなら65へ進め。
それ以外の品であるなら423へ。

除霊の短刀……月夜の刺客……亡霊……
思い出した! この声は……いつか頭を無くしたときに聞いた、あの死霊術師のものではないか?
俺はあの時聞いた声を鮮明に思いだそうとした……くそっ、確信は持てない。
あの男は退魔師の霊を呼び出していた。あのとき、交わされていた会話は……そうだ、あの退魔師はライラを連れて行こうとしていたのだ。彼女を求めていたのは……もしかしたら目の前にいるこの老人かもしれない……
211へ。

やがて通路が交差している場所へ出た。手狭ではあるが広間になっていて、ここでも中心に一体の像が立っている。男性の像で、この塚の中心の方を向いているようだ。この像を調べてみるのであれば326へ進め。
像に用がないのであれば、ここにいてもしかたない。広間で交わる通路は垂直に交差しているのではなく、妙に角度がついている。
像からみて右手手前へ延びる通路を選ぶのなら86へ。
左手手前へ進む道にするのならば63へ。
右手奥へ行ってみるなら467へ。
あるいは左手奥へ進むならば49へ。

奴は返事を濁した。「ワシが知るバジャーという男は、我ら書の血族に忠実な騎士だったがな……今となっては、そんなことはどうでもいい。ワシの邪魔をするような騎士など、もう必要ない!」
25へ進め。

ただ、冷たい水の中を沈んでいく……既に視界は失われていた。こんな状況でも生きていた頃の感覚が残っているのか、やけに身体が重い。これはきっと鎧の重さだ……。やがて何かゴツゴツとしたものが半身に当たるのがわかった。川底だろうか……全ては闇の中だ。何もかもが憶測でしかない。
……俺の頭――おそらくは本来の――はどこか暗い場所に閉じ込められていた。大きく揺られているようだ。こんな中途半端な状態が続くのは苦痛以外の何物でもない。
どのぐらいこうしていただろうか……不意に一条の光が差し込み、俺の顔を照らす。狭い口からの光はすぐに消えたが、その代わりに俺を見下ろす目が現れた。ここは壺か何かの中で、誰かが覗き込んでいる!
「……バジャー、まさか本当に君だったとはね」
衝撃とともに一気に世界が開けた。俺の首を収めていた首壺が地面に落ちて割れたのだ。だが俺は生首の状態で転がり、目の前に立つ一人の騎士を見上げることしかできない。
「書の騎士バジャー。君は僕にとって、ついに届かなかった剣士だった……せっかく蘇ったというのに、なんてザマなんだ。これじゃ剣を交えることもできない」
嘆くように呟く相手の声には聞き覚えがあった。いや、もっと若い声だった……そうだ、この男はかつて俺の首をはねた、あの時の追手の騎士だ! しかしあれから120年が経っているはず。つまりこいつは……俺は声を絞り出した。
「お前も……誰かに呼び出されたのか……。何故、俺の首を持っている?」
「あの時、氷霧の森で、僕はアイシャ姫を狙うよう仲間に合図した。結果、君の首を取りはしたが……あれは実力じゃない。君の動きは明らかに鈍っていた……姫に気を取られたってわけだ。
僕が騎士バジャーよりも優れた剣士であることを証明する機会は永遠に失われた。皆は僕の腕を褒め称えたが、なんの慰めにもなりはしかなったよ。ほかでもない僕自身が、そうではないことをよく知っていたからね」
「そんなことはどうでもいい……お前の目的はなんだ? 誰のために働いている!?」
奴は俺を無視して続けた。
「それから僕は、死ぬまで不敗を貫いたよ。剣の衰えを感じる歳になって、自刃したんだ。それまでの間に多くの決闘を重ね、その全てに勝利した……君の最強を護るためにね。だってそうだろ? 君が最強でなくちゃならない。僕が勝てなかったのは君だけなんだから。
今こうして亡霊となって使役されるなんて屈辱も、君が相手だと知って感謝に変わったんだ。それなのに……首だけだなんて、酷い再会だよ。だけど、それも僕のせいだ。僕が君をずっと首壺に入れていたから……すまない、バジャー。本当に……」
俺の言葉には一切耳を貸さず、奴は剣を抜いた。
「……尊敬する騎士がこんな姿でいることに僕は耐えられない。さようなら、バジャー……」刃が風を切る音とともに再び闇が全てを包み……そして……

南へ向かう途中、打ち捨てられた廃村で俺が拾っていたのはジョッキだった。王都では普通に見ることができるジョッキだ。頭のでかい寸詰まりな戦士像になっていて、妙に愛嬌のある顔をしている。兜の端から酒を飲むのだ。こんなものでも、十分“頭”としては役に立つ。
頭がジョッキになったことを忘れずに、481へ進め。

「ここは神聖な場所なんだわ……長い間、静かな魔力で満たされていたことが感じ取れるの。でも、今は乱れてしまっている」ライラが口を開いた。「私たちが入り込んだのもあるけど……」
「この先にいるぜ……間違いねぇ」と、チャダルが継ぐ。その顔に走る入れ墨は赤く燃えていた。
「今度は俺っちも戦う……もう二度と逃げやしねぇよ」
そう。この先にはあの老人がいるのだ。おそらくは邪な意思を最早隠そうともせずに。
「先生は間違っている。刃の血族だけじゃなくって、今のマールバハールを壊そうとしている。新たな恨みが生まれるだけだわ。まじないは、そんなことのために使うべきじゃないと思う……!」
109へ進め。

南へと向かいながら、俺はあの亡霊騎士ラシュドのことを思い出していた。今度こそ決着を――そう奴は言っていた。ラシュドはあの老まじない師の支配下にある……戦いは避けられないだろう。気を引き締めなければならない。 481へ。

道は次第に山合いに入っていく。これなら道から少し分け入れば、そうそう見つかることもなさそうだ。程なくいい感じの岩が見つかったので、ここで今日は休むことにする。チャダルの子守歌を聞きながら、馬も目を閉じた。俺はいざというときはすぐにライラを起こせるように彼女のそばを離れず、通る者がいないかどうか道を窺うことにした。
……特に道を行く者もあらわれないまま、日が暮れた。
ライラと馬を起こし、再び先を急ぐ。地図が間違っていなければ、今宵のうちに目的地に着けるだろう。
270へ。

ここまで言うことを聞いてきた馬が、霊廟の中へと入ることは頑なに拒む。広さ的には十分行けそうなのだが……しばらくなだめたりしていたがやはりダメだ。仕方がない。ここに置いていくしかない。
馬を放ち、改めて霊廟の入口に立つ。この中に、ライラがいるはずだ……おそらくはファファスタスの手中に落ちているだろう。こちらは首根っこを押さえられているも同然だ。どうにかしてライラを奪い返さねば、一方的にやられてしまう可能性が高い。奴と戦うときは、うまく立ち回らなければならない。
400へ進め。

通路が左へと折れ曲がっているところまで来た。先をのぞき込んで見ると、少し行ったところで行き止まりになっているようだ。明かりもない暗がりだが、もしかしたら何かあるかもしれない。
反対側へ続く通路を行ってみるなら461へ。このまま行き止まりまで進むつもりなら290へ進め。

ライラは意を決した様子でうなずいた。俺たちの腹積もりは決まった。憎き刃の血族どもを相手に戦うのだ。ファファスタスもまた、感極まったといった様子で大きくうなずく。
「そうと決まれば、すぐにでも動かねばならん……! 先ずはワシがこれまでにつかんだことを全て話そう」
彼は古い地図を取り出してきてテーブルの上に広げた。この国、マールバハールが描かれている。端には地図作成者のものと思わしき名が記されており、その傍らには制作年も書かれていた。200年前、つまり俺が生まれるよりもはるか前、書の王朝時代のものだ。
「この国の南の果てに、人も寄り付かぬ砂漠がある。厳しい地で、常に砂塵が吹き荒れておるのだ。そのため入り込んだ者は皆、死ぬまで彷徨い続けるという。
だが、ここには王家の墓が隠されているのだ。代々、書の王が死ぬとその後継者が自ら砂漠へ赴き、先王を葬った。マールバハールの知られざる伝統だ。王家には、砂漠を抜ける道が伝わっていたに違いないが……ライラが己の血筋について知らされていなかったことからして、残念ながらその伝承は途絶えていると考えるべきじゃ」
ここでファファスタスは例の鍵を地図の上、砂漠の位置に置いた。「しかし……霊廟を開くための鍵は、確かに受け継がれていた」
「霊廟には何があるのですか?」地図の一点を見ながら問いかけるライラに、ファファスタスは少し間をおいてから、しかし力強く答える。
「書の王家にのみ伝わる、究極のまじないだ。いや、まじないを超えた、本物の魔術だ。その力を使えば、我らが祖の玉座に居座る偽りの王を廃することができる……。誤った目的のために使われぬよう、死んだ代々の王たちがその番人となっているというが、此度は咎められることはあるまい」
究極のまじない……魔術。そんな力があるのなら、なぜあの夜、王は使わなかったのだろうか。俺が思い浮かべたその問いを感じ取ったのか、ファファスタスがこちらを見る。
「この魔術のことは王家の限られた者しか知らぬ秘伝だったのだ。120年前のあの忌まわしき戦では悲しいかな、王には先祖の墓まで出向く時間はなかった……刃の血族どもの計画は周到で、王は何もできなかったのだろう。だが、奴らもまた大いなる魔術のことは知らなかった。もし知られていたのなら、とうの昔に墓は荒らされ、全ては灰燼に帰していただろう。我々には、奴らに突き立てる復讐の刃は残されていなかったはずだ」
「……そんな昔の秘密を、なぜ先生は知っているの?」
「当時生き延びた者たちは一族の秘密が漏れぬよう、あらゆる記録を持ち出した。敵の動きが早く持ち出せぬ場合は、やむを得ず焼却したのだ。王都を焼いた炎が、ワシらの秘密を守ってくれたのは皮肉なことだが……。とにかく、ワシは長年そうやって密かに伝えられた情報を調べてきた。もちろん簒奪者どもに一矢報いるためだ。そして今、そのための準備がほぼ整いつつある!」
321へ進め。

「その剣なら……僕を縛るこのまじないをも断ち切ることができるかもしれない。
だがっ! そのために敗北を受け入れるなどとは思うな。そんなことは、僕の誇りが許さない……!」
BATTLE 
サイコロを一つ振れ。そして武器などから得られる戦力ボーナスを加える。
出目が「6」であれば、さらにサイコロを振って加算せよ。
(ただし、「1」が出た時点で自動的に敗北となってしまう)
得られた値と、敵の戦力を比べよ。同点以上であれば勝利だ。
敗北を喫した場合でも、命運点を1消費することで再挑戦できる。
決してあきらめることなかれ。

ファファスタスの言葉が思い返される。“レザニアを出て少し行ったところにある橋の下に、ワシの舟がある”
橋の下へもぐりこんでみると、確かに舟はあった。
亡霊は風のように速く動けるが、道に迷う危険はある。主街道を外れることなく北へ向かえば間違いなく王都へ着けるだろう。だが、それには問題があった……なにしろ、俺の“頭”は目立つ。集落は避けて進まねばならない。そうなると細かい道を行くことになるが……土地勘がないため、絶対に迷わないとは言い切れない。面倒なことになる恐れはどうしても残る。
一方、もしも川の流れに沿って行くならば、王都まで迷うことなく一直線だ。しかし亡霊の身ではあるが、俺は生前の感覚に縛られている。舟無しに川を行くことは難しい……間近で見るエナムはさすが上流だけあって流れが速い。舟で下るとなれば、“頭”の喪失にはよほど気を付けなければならないだろう。チャダルが何とかしてくれれば助かるかもしれないが、かといって奴に頼り切るのも危険な気がする。
「なあ、旦那。ファファスタスって奴は“まじないのかかった舟”って言ったんだろ? だったらよ、どんな流れでも安定するって可能性もあるぜ」
俺が悩んでいるのを察し、チャダルが言った。なるほど……確かにそうかもしれない。
舟でエナムを下るのであれば354へ。
そうではなく、陸路で王都を目指すことにするのなら340へ進め。

「書の王が残した力……これからもずっとここで眠り続けるべきだわ」
ライラは霊廟の扉を閉じ、まじないでそれを封じた。「……ちゃんと鍵掛けのまじないを使えるようにならないと」
あれほど俺たちを苦しめた砂嵐も収まっていて、陽炎に揺らぐ砂の地平の先に、マールバハール中部の山々が見えていた。
「レザニアに戻りましょう。あそこなら、先生が残した魔導書があるはず。私はまじない師として、もっと力をつけないといけない」
彼女は自分が進むべき道を見つけたのだ。そこには強い意志があった。
それからは……そうだな。マールバハール史上でも稀な力を持つまじない師へと成長したライラと、その従者――もちろん俺のことだ――は、刃の血族の追跡をあしらいながらこの国で暮らしたというわけだ。霊廟に残された力の番人として。
ライラもずいぶん年を取った……彼女は死ぬ前に霊廟に眠るあの力を解き、自然の有様へ、あるがままへと戻すつもりらしい。それが、“最後のまじない師”としての責務と考えているようだ……その時、俺もまた無へと還ることになるのだろう。
今となっては、かつて俺を縛っていた悔いは残っていない。ライラがつないでくれた第二の生は、俺を救ってくれたのだ……

奴はほくそ笑んでいたにちがいない。そして、その声には嘲笑の響きがあっただろう。「亡霊相手に、退魔師が後れを取ると思うな……!」
奴は俺を嬲り尽くし……完全にこの世から消し去ってしまった。

階下をのぞき込む。下の階の天井は高く、どうやら地上階らしい。四方の壁は全て石造りの大広間となっている。大扉は開け放たれ、差し込んだ光で闇が凝縮されたように、左右に深い影ができていた。流れ込んできた空気が積もった埃を渦と巻きあげる中、一人の男が立っているのが見える。そいつはゆっくりと確かめるように広間を見渡し、やがて螺旋階段へと歩き出した。その手に桶は無い。食事を運んできたわけではないのだ。
その時、俺は既に階下に降りて影の中に身を潜めていた。こいつが何者であるかはわからないが、ライラに用があるのだけは間違いがない。ライラは書の血族のものと思しき力を持っているがゆえに囚われている……この男が、刃の血族の刺客である可能性は捨てきれなかった。
「例の娘は……最上階か」二階を見上げ、男が眉を顰める。
「そうか、幼いながらにまじない師だったな。死霊使いってわけだ……自分としては立場上、亡霊を放っておくわけにはいかないな」
視線の先にチャダルを捉えたのだろう、奴は唇を曲げて笑い、懐から短刀を取り出した。こいつ、亡霊を見ることができるようだ!
敵はチャダルに気を取られている。影の中から強襲するなら207へ進め。
奴が階段を上り始めるのを待ち、背後から襲うつもりなら228へ。

どの鍵を使うか?
当然だが、持っていない鍵は使うことはできない。

BATTLE 
サイコロを一つ振れ。そして武器などから得られる戦力ボーナスを加える。
出目が「6」であれば、さらにサイコロを振って加算せよ。
(ただし、「1」が出た時点で自動的に敗北となってしまう)
得られた値と、敵の戦力を比べよ。同点以上であれば勝利だ。
敗北を喫した場合でも、命運点を1消費することで再挑戦できる。
決してあきらめることなかれ。
勝利を掴んだのであれば245へ進んでよい。
力及ばず、敗北したのなら……323へ。

今現在、同行者がいるのであれば349へ進め。そうでないのなら、暗闇の中で落ちた頭を探すことしかできない。だがそれもわずかの間だけだ。敵が一声呻き、足元に転がった俺の頭を踏み砕いてしまったのだ! 通路にその絶望の響きが飲み込まれていくが、俺にはそれすらも聞くことができない。失われた頭を探して閉ざされた宮殿を手探りで彷徨うことしかできないのだ……
こうなってはもう打つ手はない。いずれ侵入者に気づいた退魔師によって発見され、祓われてしまう運命だろう。遅かれ早かれ、その時は必ず来る……

巻物には何やら書かれているが、かなりの崩し文字だ。俺には、まるでのたうつミミズのようにしか見えない。
「“砂の海”……“右”ええと、それから…“右、左と進むべし”……かな?
しっかしひでえ字だ。わざとだな、こいつぁ」
チャダルがにやりと笑った。「旦那、こいつは砂漠で進まなきゃなんねぇ道順だと思うぜ」
元のパラグラフで、調べ物の続きを続けよ。

さすがにこの道を進むもの好きはいないと見え、人の気配は全く無い。だが、ライラに害をなすような夜行性の獣に出会わないとは限らない。
そう考えていた矢先にガサリと音がしたので身構えたが、何かが草をかき分けて逃げていったらしかった。亡霊の気配が奴らにも伝わるのか、それとも俺の“頭”が不自然に宙に浮いているのが原因かはわからないが……
今の俺の頭が鉄兜だったなら92へ。それ以外の品なら322へ進め。

巧妙に隠された入口から中に入ってみたが、人の気配はない。奴はライラを伴い、南へ向かったはずだ。懸命に記憶を辿る。南の砂漠……王家の霊廟。たしかそう言っていた。しかし、あの老人が明かした全てが真実とは限らない。何しろ奴は、ライラから俺とチャダルを引き離そうとしていたのだから。
何か手がかりになりそうなものがないかと探っていると、机の隅に小さくたたまれたメモがあった。それに壁には地図のようにも見える古いタペストリーがかかっているが、こいつも妙に気になる……
これらの品を調べる前に、このパラグラフの番号を記録しておくこと。
全て調べ終わったのなら、その時は194へ進め。

素早くその場に伏せる。念のため鉄兜が道端の草に隠れるようにと這いつくばりながら動いてみたが、完全に人目につかないようにするのは難しかった。やがて連中がやってきて、立ち止まる。
「何だ? 兜が転がってるぜ」
「こんなもん、普通落としたりはしねぇだろ……誰かが兵士を襲ったってことか?」
一人の男が身をかがめ、手を伸ばしてきた。「いやいや、兵に手を出すのはマズイだろ……村長にどやされるぜ」
兜を取られないように手で押さえようというのなら336へ。怪しまれることを避け、成り行きにまかせるのなら70へ。

死んだ者を蘇らせる、まじないの話を聞いたことがある。とはいえ目の前の幼い少女がまじない師とは思えないが……この場所に他に人の姿はない。それに、さっきこいつは何と言った? 首がなんだって?
「……お前が俺をこの世に呼び戻したというのか?」
口を開いた俺は、自分の声に驚いた。まるで壷に頭を突っ込んで喚いたかのように、頭の中を反響がこだましている。
「大声をあげないほうがいいわ……貴方、頭の代わりに首壺を乗せてるのよ」
首壺? 処刑後に首を収めるための壺だと? この小娘、よりによってそれが俺の頭になっていると言いやがった。確かに様式としては顔を模しているが、縁起でもない。そんな俺の憤慨をよそに、彼女は続けた。
「120年前の戦争で、貴方は首を斬られて死んだみたいね。そんな姿で現れたから驚いたわ……貴方の頭、どこいっちゃったのかしら。
とにかく、そのままじゃ不便そうだったから、この部屋にあった首壺を乗っけてみたの。話ができるようになったみたいだし、よかったわ」
心のうちに沸いた怒りの感情は砂に撒いた水のように消えていった。そうだ。思い出した……俺はあの時、追っ手の刃にかかり、首を取られて死んだのだ。しかし、120年だと? そんなに経っているとは思えなかったが、死者の感覚などあてにはならないのかもしれない。
「姫は……アイシャ様はどうなった?」俺は少女に尋ねた。
「アイシャ姫は、刃の血族に捕まった……当時の記録に残されていたから、確かだと思うわ。戦いで手柄を立てた誰だかと結婚させられて、それから若くして死んだみたい。今は刃の血族がこの国を治めている……書の血族から王座を奪ってね」
俺はかりそめの頭に手をやった。卑劣極まりない刃の血族どもも許せないが、それよりも自分自身に怒りがこみ上げてくる。この不甲斐なき騎士は今や亡霊となり、しかも首を失ったままときている。だが、こうして世に戻ったからには……俺が望むことはただ一つだった。
「礼を言わねばなるまい……贖罪の機会を得たわけだからな。正直、この頭にはむかついたが、こいつがなければ今の話を聞くこともできなかっただろう」
彼女は俺の言葉を聞いて微笑んだようだった。
「貴方は確かに、あのバジャーみたいね。アイシャ姫の話を聞いてこんなに怒っているんだもの。私はライラって名前。これでも死霊使いよ」
361へ進め。

「ちょいと待ってくれ、何だいありゃぁ」
村堺の垣根が見えてきたところで、チャダルが驚いて言った。確かにこれは、村というよりは砦に近い。見るからに頑丈な柵にぐるりと囲まれ、閉ざされた門には物見の櫓がついている。
「ずいぶんと物々しいな……どう見ても普通の村じゃないぜ。けどよ、これなら馬もいそうだな。ここはひとつ、俺っちが様子を見てくるよ。旦那はここで嬢ちゃんを護っててくれ。その頭じゃ忍び込むのも一苦労ってもんだろ」
道脇の岩陰に身を潜めていた俺たちのところへ、奴はすぐに戻ってきた。
「やっぱり馬はいたぜ。だけど門は固く閉ざされているし、夜警もいる。村の連中もどうも殺気立ってるというか……要するに、馬を盗むのは難しそうってことだ」
首尾よく馬を連れてこられたとしても、こんな村の近くでは見つかったら全てがおじゃんだ。ライラを乗せるのに失敗ないとはかぎらない。そもそも俺自身からして、亡霊になってからは馬に乗ったことはないのだ。
危ない橋は渡らないほうがいい。俺たちは村の見張りに見つからないように、来た道を引き返すことにした。
115へ。

牢の鍵は開いていた。中へ入ると、そこはやはりかつてライラによってこの世に呼び戻された場所だった。だが少女の姿はない。代わりに囚われているのは壮年の男性で、頭には冠を抱いている。そう、かつて俺が仕えた書の血族の王がそこにいた……豪華な玉座に半ば埋め込まれた状態で。
「このような牢獄を訪れるのは何者だ……裏切られ、国を奪われ、死してなお醜態をさらす様を笑いに来たか?」王が呻く。
今の俺の“頭”は何だろうか?
アミュレットであるのなら459へ、それ以外の品である場合には163へ進め。

呻き声一つたてることなく、相手は息絶えた。274へ。

夜が更けていくのに従い、王都の喧騒もゆっくりと静まっていく。やがて酒場の灯りが消され、最後の酔っ払いが衛兵に追われるようにして姿を消した。
王宮の場所ははっきりと覚えている。俺は静まり返った道を、巡回しているであろう夜警に気を付けながら進んでいった。
頭になっているアミュレットに傷があるのならば491へ進め。傷物でないのなら312へ。

亡者たちと入り乱れながら武器を振るい、確実にその人数を減らしていく。生前、仮にも名をはせた騎士である俺と、おそらくは雑兵であったろう奴らの力量の差は歴然としていた。しかしこの地には120年前の怨念が渦巻いているのだ……。
戦いの空気に引き寄せられるように、次々と新たな亡者が姿を現す。足元に散る倒した敵の残骸までもが地を覆うように蠢いている。その砕けた骨を踏みしめながら、奴らは延々と押し寄せてくる……
……俺はするべきことを見誤っていた。そうだ、この手にある刃を突き立てるべき相手は誰か。目の前の憎き刃の血族どもだ!
我が同胞たちよ、俺に続け! 王都を取り戻すのだ!
首を失った騎士が一人、戦いに再び身を投じていた。あれから120年もの時が過ぎていることも、ライラのことも、何もかも忘れて、ただ怒りに突き動かされるままに。古戦場に染み渡った怨念に侵され、夜な夜な戦い続ける亡者が一人増えたというわけだ……

やがて夜は更けるが、門の守りは固いままだ。ついに東の空が白み、朝がやってきた。商いのために王都に入ろうとする者や、道を急ぐ旅人たちの姿が増えてくる。夜警の者が交代すると同時に、門は開かれた。
262へ。

この砂嵐が、いつか止むということがあるのだろうか……? 王家の霊廟には選ばれた者しか辿り着けないのではないか? 吹き荒れる風は何も答えてはくれない。
247へ。

連中に見つからないよう祈るが、奴らもやましい身なのだろう。どうにも用心深いようだ。茂みへと分け入り、地面に転がっている鉄兜に気付く。
「なんでこんなところに兜が?」
「普通落とすもんじゃねぇよな……」
このまま捨て置いてほしかったが、そうはいかなかった。奴らは兜を拾い上げ――つまり、俺の“頭”はもぎ取られてしまった。
70へ進め。

いつしか炎は消えており、立っている場所も既に塔の中ではなかった……あの隠れ家だ。件の塔の模型は壊れていた。そこには最早、まじないの力は残っていない。
186へ。

「首無しの騎士、それも亡霊とは。あの戦いで私のために倒れた者は多い……お前もその一人かもしれんな。先ほどの暴言は忘れてくれ。我が身を笑っておろうなど……忠実なる騎士にかけるべき言葉ではなかった」
俺の頭を見ながら王は続けた。
「見たところお前は囚人ではないようだ……ここは魂の監獄だというのに。なればこそ、お前に頼みたいことがある。聞いてくれるか?」俺はうなずく。
王の言葉を遮るように、鐘の音が響いた。
TOLLING
鐘が鳴った回数を1つ追加せよ。
ここまでに、鐘の音が5回以上鳴っているのであれば……不意に炎が立ち上る。458へ。
4回以下なら222へ進め。

精巧な浮彫が施された石の扉の影から窺ってみると、その奥は巨大な玄室のようだった。正直、王家の墓とはいえ地下にこれほどの空間があるとは思わなかった。ここまで降りてくる間にも見た魔法の灯りによって照らされているが、炎の大きさは桁違いだ。四つの隅に設置された巨大な鼎の上で、赤々と燃えている。
玄室の中心には、球体に削り出された巨大な岩塊からなる祭壇があり、縦横に張り巡らされた縄には数えきれないほどの呪符が連なっている。びっしり黒々とまじないの文句を書き付けたローブを身に着け、祭壇の前でこちらに背を向けて呪言を唱えているのがファファスタスだろう。その傍らには子どもらしき背丈の、やはり同じようなローブを被った姿がある。ライラだ!
二人の声は玄室に響き渡っており、その一語一語ごとに四方の炎が不自然に揺らめく。呪符もそのたびに共鳴していて、何かのまじないが進んでいるのは間違いない。ゆっくりと作戦を練っている時間はなさそうだ。
俺の“頭”となっているのは何だろうか?
アミュレットならば452へ進め。それ以外の品であるのなら268へ。

「……ん… 私、何を……バジャー……?」悪い予感を拭い去る声と共に、ライラが意識を取り戻す。そこにはまじないの影響は見えない。いつもの、彼女の眼だ。
お前はファファスタスに操られて……と言いかけて、俺は振り返った。そうだ、奴を放っておくわけにはいかない。同時に岩のこすれる音が玄室にこだまする。ファファスタスが再び守護者を動かそうとしているのだ。だが既に二度も倒されたせいだろう、立ち上がることすらままならない様子だ。半狂乱になった老人が喚いている。
――不完全なまじないとは哀れだな。しかし、このまじないが完全な形で成されていたら、この国はおろか近隣に至るまで焦土と化しただろう。我がカルルームの地も災禍に巻き込まれる運命だった……だがそれも最早実現には至らぬ――
俺の頭に収まっている異国の像から内なる声が響く。そして――確証はない。だが、俺は確かにそう感じた――最後の一押しをした。魔導兵の巨体がごろりと転がる……どこか不自然に。次いで、その下敷きとなった狂えるまじない師の断末魔が玄室を満たした。
34へ進め。

その時、俺の口が勝手に言葉を発した。この像を首に乗せた時に響いたあの声だ。
――異国の道理で、我を裁けると思うな――
たしかにこいつはカルルームの守護霊だったのかもしれない。ならば、マールバハールの法に縛られるいわれはない。そして、この“頭”を奉じる俺もまた、裁かれることもあるまい!
494へ進め。

「ちょっと待って。先生のところへ行く前に寄りたい場所があるの」
夜を待ち、レザニアに入ったところでライラが言った。彼女が先に立ち、人気のない道を静かに進んで行くと、やがて一軒の古い家へとたどり着く。
「何だこりゃ……?」
「待って。貴方たちは触れちゃダメ。これ、退魔の呪符だわ」
ライラの声に、チャダルが伸ばしかけていた指を引っ込める。家には何重にもロープがかけられていて、そのロープのあちこちに札が何枚もついていたのだった。ライラの言う通り、これが退魔の呪符だというのなら、これをやったのは退魔師協会に違いない。
「人間には害はないはず……たとえまじない師だとしても、中でまじないを使わなければ大丈夫」
彼女はそう言って、ロープをくぐった。「バジャー、チャダル。貴方たちはここで待ってて」
村の様子をうかがいながら待つ。しばらくすると彼女は家から出てきた。心なしか青ざめている。「……無いわ」
何がと聞き返そうとしたが、彼女はそれよりも早く言葉を続けた。
「ここは私が育った家なの。何に使うのかわからなかったけど、鍵が代々受け継がれていたの……でも、無いのよ。隠してあったのに……」
「ファファスタスか?」
「私が王家の血を引いてることを先生は知ってた……あの鍵もきっと先生がいう“禁断のまじない”に関係あるんだわ」
本当に奴が盗んだのか。それもあの男の隠れ家行ってみればわかるかもしれない。
「けどよ」チャダルが口をはさむ。「俺っちが思うに、その爺さんもう居ねえぜ。だって前と違って、この刺青が熱くならねぇもんよ」
243へ進め。

やがて、光が届かぬ前方の闇の中から一人の騎士が姿を現した。忘れもしない男だ。
「……君はいつまでその首壺を乗っけているんだ? せっかく返してやったのにさ」
俺は進む足を止めることなく、武器を抜き放つ。奴――かつて俺を二度も負かした騎士、ラシュドの亡霊は俺の殺気を真っ向から受けながら、笑みを浮かべた。
「戦う気はあるようだね……うれしいよ、バジャー。けどね、僕が望むのはそんな仮の頭をのせてる君じゃない。お互い万全の状態で、悔いのない戦いがしたいんだ」
奴の手の中で武器が翻る。一瞬の後、俺の“頭”は砕かれていた……しかし、視界は途切れなかった。音も消えなかった。壺の中身がそのまま俺の首の上に収まったのだ。
今や、騎士バジャーは五体満足だ。首に切れ目などない。120年前に奪われて以来、永い間首壺の中に納まっていた俺の頭だった。全ての感覚が戻ってきている……万全だったあの頃の感覚だ!
本来の頭を取り戻したことを忘れずに。
今後「頭が何か」と聞かれた場合、その時いるパラグラフから50を引いたパラグラフへ進むこと。
だが、今は目の前の敵に集中する時だ!
この手にある武器は何か?
これらの武器ではなく、己の一部でもある実体なき剣で戦いに挑むこともできる。その場合は335へ進め。

積石の回廊を足早に進む。果たして、すぐに外へ続く入口へと到達した。450へ進め。
ただし、石塚の入り口で退魔師を殺していたのならば244へ。

あとは脱出するだけだ。あまりもたもたしていると、異変を察して衛兵どもが押し寄せてくるかもしれない。この塚の入口は一つだけだった。あそこを塞がれてしまってはおしまいだ。俺は剣を手に急いで玉座の間を離れ、通路へと出た。
ところで、持ってきた剣の握りの具合は申し分ない。こいつは武器としても一級品だ。魔封じの剣を使う間は、今後の戦いにおいて戦力に3を足すことができる。
残念だが、今までもっていた武器は持っていくことができない。だが、それを補って十分な武器のはずだ。
82へ進め。

タマリンドから北上する道をとって数日。次第に見覚えのある峰々が東に迫ってきていた。やがて王都がある平原の南端へと辿り着いた俺の脳裏に、死ぬ前の記憶がよみがえってくる。王都が炎上する直前、ここで大規模な衝突があったはずだった。
行く手に広がる空は夜だというのに微かに明るい。あの下に懐かしき王都が――今は裏切り者どもの血を引く輩が支配している都が――があるのだ。そして、この平原から西へ向かえば隣国カルルームへと至るはずだった。120年前、アイシャ姫を連れて馬を奔らせた道だ。
そして今、亡霊となったからこそよくわかることがある。この平原では、夜な夜なあの戦いで死んだ戦士たちの霊が蠢いている……死霊術師に呼び出された亡霊ではない。ただただ無念と執念によってこの世に繋ぎ留められている、最早霊とも言えぬような存在だ。耳をすませば、夜の冷たい風に乗ってくるのは鉄が打ち合う音と断末魔の声。彼らはここで、今なお戦い続けているのだ。
亡者たちが戦う中を進むのなら187へ。夜が明けるのを待って、昼に移動するべきと考えるのであれば456へ。それぞれ進め。

徐々に奴らの声がはっきりとしてきた。どうやら古戦場の浄化を進めている退魔師と、その護衛を務める二人の騎士のようだ。
「またあったぜ。こいつはどっちの亡骸だ? 刃か? それとも書か?」
「どっちでも大差ねぇよ。おいっ、さっさと鎮めてやってくれ」
「ちょっと待ってくれ……そう急かさないでくれよ。鎮魂の儀もそんな簡単じゃないんだ……」
投げやりで不満を隠そうとしない声だ。連中にとっても乗り気な仕事ではないらしい。
「しかし、我らがご先祖も盛大にやったもんだ。120年たっても霊障の始末がおいつかないとはな」
「それだけ書の連中があがいたってことさ。まったく、面倒残しやがってよ」
近くで退魔師が除霊を行っているのだろう。こっちまで力を奪われるような感覚に襲われる。
だが、幸いなことに奴らはそれ以上近づいてこなかった。こちらとすれ違うように離れていく。王都を中心に円を描くように少しづつ浄化範囲を広げているのかもしれない。
草をかき分けながら不平をこぼす声が遠ざかっていき、やがて何も聞こえなくなった。十分に距離が開いたと確信し、再び進むことにする。
221へ進め。

ラシュドの言葉を信じるのであれば、この中には俺の斬り離された首が納められているように思える……。しかし罠である可能性も十分ある。今、他にはまともな“頭”になりそうな物が無い以上、首壺を失うような賭けは禁物だろう。
“頭”が首壺になったことを忘れずに、14へ。

今、俺の首には何が乗っているだろうか?
まじないの仮面なら、246へ。
魔除けの仮面なら、196へ。それぞれ進め。

強い香りを放つ植物をかき分けてみると、葉の影に隠れるようにして眠っている一人の男の姿が現れた。半ば壁に埋まっており、茂るユーフォミアもその身体から芽吹いている。だが、何よりも驚かされたのは……この男に見覚えがあることだった。
今現在、俺の“頭”となっているのは何だろうか?
首壺かアミュレットであるのなら19へ。
それ以外の品、あるいはアミュレットであっても傷物だった場合には48へ進め。

BATTLE 
サイコロを一つ振れ。そして武器などから得られる戦力ボーナスを加える。
出目が「6」であれば、さらにサイコロを振って加算せよ。
(ただし、「1」が出た時点で自動的に敗北となってしまう)
得られた値と、敵の戦力を比べよ。同点以上であれば勝利だ。
敗北を喫した場合でも、命運点を1消費することで再挑戦できる。
決してあきらめることなかれ。
勝利を掴んだのであれば、245へ進んでよい。
しかし力及ばず、敗北したのなら……俺は深い一撃を受けてしまう。362へ。

通路が鋭角に曲がっている角へ出た。角から見て、左右二つの通路が伸びている。
右の通路を進むのなら21へ。
左の通路を進むのなら242へ。

俺は咄嗟に首に乗っている壺を叩き落した。縁起でもない!
同時に視界は真っ暗になり、ライラの姿も、部屋の光景も全てが掻き消える。音も聞こえなくなり、完全な静寂が辺りを支配した。
……墓場のカビ臭い香りが鼻を突く。喉に埃が絡んでいるのがわかる。首がないというのにどういうことだ……? 試しに首を動かしてみようとしたが、どうにもならない。俺の頭がとうの昔に失われてしまっているからだろうと思ったが、どうやらそうではないらしい。狭い場所に押し込められているようだ。頬のあたりに確かに何か冷たい物が当たっているのがわかる。その一方で手足はと言えば、こちらもまた、確かに動かせる……わけが分からない。
……混乱していると、やがて視界がぼんやりと戻ってきた。先ほどの部屋だ。
「たとえ首壺だとしても、頭がないよりはましだと思ったんだけど」
再びライラの声が聞こえた。
「ごめんなさい、バジャー。でも、ここには首壺ぐらいしか頭になりそうなものがなかったの。これが最後の一つだから、今度は割らないで……落ち着いて欲しいのだけれど」
361へ。

「じゃぁ、ちょっくら行ってくるぜ。俺っち馬には乗れねぇけど、連れてくるだけならできる気がすっからよ」
そういってチャダルは一人、街道を先へと進んでいった。亡霊は人間とは違って身軽だ。あっという間にその姿は見えなくなった。
少々不安は残るが、ダメで元々というものだろう。たとえ馬は無理だったとしても、街道や村の様子がわかるだけでも十分役には立つ。脇で寝息を立てるライラを見ながら、俺はその場でうずくまった。茂みの中から街道を見ていると、やがて二人の旅人が通りかかった……いや、旅人を装っているが追剥の類に違いない。背負った荷は旅をしているには軽く、腰に下げた鉈は大仰だ。
「しかし本当に獲物が居やがらねぇな。このままじゃタマリンドに着いちまうぜ」
「あそこにゃ兵士がいるよな……もう戻ろう。仕方ねぇよ」
二人は踵を返し、元来た方――チャダルが探りに行った方角――へと戻っていった。「村長にどやされちまうな。手ぶらじゃよ」
どうやらろくな村ではないようだ。あの連中にライラが見つからなかったのは幸いだった。
449へ進め。

「いまだにワシが渡したものを使っているとは……とんだ間抜けよな!」
俺の“頭”を見た老人が笑みを浮かべ、口の中で何か呟く。その瞬間、俺の視界はどす黒い瘴気で覆われた。くそっ、何か仕掛けられていたらしい。力が抜けていく……!
今後ファファスタスを倒すまでの間、戦力から3を引かなければならない。
396へ進め。

奴はその言葉通り、決してライラを狙うような素振りは見せなかった。だがその剣筋は確かで、気を抜けば一気に畳みかけられてしまうだろう。しかし俺とてかつて武勇で知られた騎士だ。決して劣りはしない。十何合も打ち合ったころ、奴は興奮しながら言い放った。
「……素晴らしい! 頭を失ってなおこれほどの鋭さとはね。君ほどの使い手を倒せたのなら、彼の“最強”はより確かなものとなるだろう……! 君が五体満足だったなら、この決闘にはもっともっと意味があったろうに、残念だよ!」
命のやり取りの最中に饒舌な奴だ。俺は無言で武器を振るい続けた。亡霊は生きている人間とは違い、息切れするということはない……だが、俺にあって奴には無いものがあった。近くにいるまじない師、俺をこの世に繋ぎとめているライラの力が、俺には常に流れ込んでいたのだ。徐々に俺の刃は奴を圧倒していき、ついに敵の身体に深々と突き刺さった。
「……僕は刃の血族に仕えた騎士だ。まじないに縛られて、いいように使われるなんて気に入らなかった……それが敗因か……」地面に倒れこみ、傷から霊気を霧散させながら奴が呻く。
「すまない……最後の最後で……君の“最強”を護れなかったよ……」
それが奴の最後の言葉だった。最後に誰かの名前を呟いたように聞こえたが、それは風に流れてしまった。崩れ行く霊気の中に、首壺らしき影が見えた気がしたが、すぐにそれも消え失せてしまう。
俺の“頭”がまじないの仮面、あるいは犬頭の酒瓶なら73へ進め。
それ以外の品だったのなら、454へ。

ライラは辛うじて息をしていたが、今にも息絶えてしまいそうだ……吐いた血が床に溜まり、ローブが赤く染まっている。
命運値を1消費することができれば、彼女の命は助かるかもしれない。そうするのなら331へ。
それができない、あるいはライラの生命力に賭けるのであれば24へ進め。

「馬鹿な……! 僕を超えるだと……」
大きく身体を抉られて奴が呻く。その傷を与えたのは、俺の得物だ。刃に乗せられた俺の想いが敵のそれに打ち勝ったのだ。傷口はなおも広がり、奴の身体を霧散させていく。崩れ行く霊気の中に、首壺らしき影が見えた気がした。
「すまない……最後の最後で……君の“最強”を護れなかったよ……」
それが奴の最後の言葉だった。最後に誰かの名前を呟いたように聞こえたが、全ては風に流れて消えてしまった。
「あいつよ、もしかしたら“無敗”のラシュドだったんじゃねぇかな?」
その夜、チャダルは興奮冷めやらぬ様子で言った。
「数多の決闘で負け無しの、見た目麗しき騎士でよ。なんでか知らねぇけど首壺を大事にいつも持ち歩いていたっていう……俺っちが生まれたころにはもう死んじまってたから、聞きかじった話だけどさ。そうだ、旦那が命を落とした例の反乱にも関わっていたはずだぜ。刃の血族に与した騎士で、最後は年老いて弱っちくなる前に自殺したってよ。いくら負けたくないからって何も死ぬこたねぇじゃねえかって、俺っち思ったもんさ」
「……そんなに強い騎士を、蘇らせた誰かがいるってことよね」
そう、奴はライラを狙っていた。名のある騎士に追わせたということは、ライラに護衛――つまり俺たち――が付いていることが知られていたという可能性もある……一体何者だ?
「私と同じ、死霊術が使えるまじない師のはずだけど……先生が言っていたとおりなら、王族の生き残りがいることになる。私の他に、まだ隠れている王族が……」
俺はうろたえるライラを見ながら考えた。書の王家の生き残りがいるのは確かかもしれない。だが、なぜライラが狙われるのだろうか……?
俺の“頭”になっているのは仮面だろうか? もしもそうなら360へ進め。
別の物が首にすげられているのであれば、87へ。

息を潜め、天に運を任せる。どうか、見つかってくれるなよ……!
俺の“頭”がアミュレットであるのなら172へ進め。
そうではないなら、311へ。

「できるだけ遠くへ離れ、隠れていろ!」だが、ライラは首を振った。
「ダメっ、私から離れたら貴方の力は弱くなってしまう!」
その間にも奴は距離を詰めてきた。もう間に合わない。俺は意を決して亡霊騎士のほうへ向き直った。奴は首無し馬を俺たちの前で止める。
「……娘を守りつつ戦おうというのか。だが、安心したまえ。僕は同じ過ちは繰り返さない……かつて同じように他人を護ろうとした騎士がいた。僕はまだ若く、また愚かしいことに思いあがってもいた。僕は彼の首を取ったが、それは卑怯な手段によるものだったのさ。僕は残りの生涯を、恥に苛まれながら過ごしたよ……。
すまないね。君たちには関係ない話だった。信じてもらえるかはわからないが、その子を狙うことはしないと誓おう」
奴はそういうと、剣を抜いた。その優雅ともいえる動きを見ていると、繋がっていないはずの首が疼く。そうか、こいつは……俺の首を切り落とした優男だ。あの時の刃の騎士までもが亡霊となって、相まみえることになろうとは。
「……関所に亡霊が一人いただろう。そいつはどうした?」
「ふむ。先程確かに一人亡霊を斬り伏せた……そうか、お前たちの仲間だったのか。どうやって娘を連れて国境を越えたのかと思っていたが、うまいことやったものだね」
「……チャダル!」ライラが押し殺した悲鳴を漏らした。
こいつを倒すべき理由が増えた。俺もまた、腰に下げた剣を抜き放つ。これ以上、言葉のやり取りは無用だった。
この一太刀に、命運値をいくつ賭けるか?
1でも、それ以上でも構わない。0でもよい。ただし、残っていない分は使うことはできない。
敵の刃は目前に迫っている。判断に費やせるのは一瞬だ。決めたら18へ進め。

一刻も早くファファスタスを追わねばならない。奴は南へと――代々の書の王が眠るという霊廟へ向かったはずだった。そして、それは砂漠を越えた先にある。
レザニアを後に、南へと急ぐ。ファファスタスは既に何日も前に出立したはずだ。残された時間は少ない。
マールバハールの南部辺境に広がる砂漠については以前聞いたことがあった。常に砂塵が吹き荒れ、踏み入った者を砂に巻くという。霊廟を護るためだと考えれば、それ自体がまじないの産物である可能性も高い。危険な道行きになるだろうが、それでも挑まなければならない。
今、俺が“頭”として使っているのは何だろうか?
アミュレットであるのなら440へ。首壺であるならば136へ。その他の品であるなら481へ。それぞれ進め。

時折雲によってさえぎられる月明りの中を、平原全体がざわざわと音を立てて波打つ。揺れる草をわき目に進んでいると、街道から外れたが最後、二度と戻ってこれなくなるような気がしてくる。
さて、俺の“頭”はいったい何だろうか?
鉄兜、あるいは落書きされた石であるのなら282へ。
アミュレットであるのなら324へ。ただし、アミュレットに傷がついている場合には28へ進まなくてはならない。
そのいずれでもない品であるなら、259へ。それぞれ進め。

確かに俺はライラのまじないによってこの世に戻ってきた。ならば、俺たちは一蓮托生ってわけだ。この事実は認めなければなるまい。次の刺客が来る前に、ライラを連れてここから出る必要がある。しかし、どうやって彼女をあの牢から出せばいいのか?
そのとき、刺客の持ち物を探っていたチャダルが声を上げた。
「見つけたぜ、旦那……大当たりだ」
それは小さな金鋸だった。見た目よりもよく切れる品らしい。奴はライラを殺すためにやってきた。つまり、鉄格子を何とかして牢に入る必要があったというわけだ。
「ありがとう……バジャー。それにチャダルも。やっと、ここから出れる」
鉄の格子を一本切るだけで、小さなライラが通る隙間を作ることができた。廊下へと出たライラは年相応の笑顔を見せていたが、俺たちが刺客と戦ったことを話すと、その明るさは失せてしまう。
「大丈夫だ。お前の言う通り、俺たちは敵を同じくしている。そして、お前が死ねば俺も恨みを晴らせない。だから、お前を守ってやる……これからは、俺がお前の騎士となろう」
以後、ライラも共に行動することになる。68へ進め。

森に入ると、ひんやりとした霧が辺りに立ち込め始めた。この森の名の由来となった氷霧だ。これに肺をやられて命を落とした者は数知れず、それゆえに交通の難所でもあり、隣国との国境となったというわけだ。
「旦那……嬢ちゃんの様子がおかしい!」慌てたようなチャダルの言葉にはっとなり、ライラの様子を見る。彼女は小さい身体を震わせ、白い息を吐いていた。その息はたちまち凍り付き、彼女の顔に霜となって降りている。なんてことだ!
迂闊だった。俺は以前この森へ入ったことがあったというのに……彼女が身に着けていた布だけでは足りなかったのだ。
ライラは俺たちのほうを見て、何か言おうと唇を開いた。だが、霜の薄片を身体の上に落とすだけで声は出てこない。涙がたちまち凍り付き、その目が曇った氷におおわれる。俺の意識も彼女の命とともに散っていく。真っ白になったライラの弱弱しい唇の動きが、俺が見た最後の情景となった……
“よわくてごめんなさい”
俺はこの森で、二度も大切な者を失った。何者をも護れぬ騎士。それがこの俺、バジャーなのだ……

「水……水があるわ」ライラが朦朧とした様子で呟く。
無理もない。渇くこともない亡霊ならともかく、彼女は命ある身でずっと砂にまかれ続けてきたのだ……
オアシスの西側をまわって行くのなら497へ。東側を進むのならば275へ。
ただし、ここへ来るのが二度目なら216へ進まなくてはならない。

「さようなら、先生……」ライラが老人の亡骸の前で呟く。それは悼みの言葉ではなかった。真に師と決別する、その決意の表れだった。
「……行きましょう。ここは私がいるべき場所じゃない」彼女は一言そう呟くと、踵を返して地上へと戻る道を歩みだした。
今、三人でいるのなら389へ進め。
自分とライラだけしかいないのなら365へ。

敵の攻撃は、俺の身体を確実に蝕んでいく。
勇猛さで名を馳せたはずの、このバジャーがなんて様だ!
やはり、命運値を1消費するべきと考えなおすのならば、369へ進むことができる。どうしてもそうしないのなら、144へ進め。

連中の馬が急に暴れだした。騎士の一人が地面に投げ出され、残る二人も慌てて馬を落ち着かせようと必死になっている。チャダルの奴め、どうも馬の目に土でもかけたらしい。
ようやくのことで馬をなだめた彼らは、やがて先へ――俺たちが来た方角へと馬を走らせ始めた。蹄の音が遠ざかっていく。
これで少なくとも騎士三人は関所から離れているというわけだ。多少なりとも手薄になっている今のうちに向かったほうが得策かもしれない。俺たちは先を急ぐことにした。
「どうだい、うまいことやってやったろ?」やがてチャダルが追い付いてくる。してやったりとばかりの得意顔だ。
237へ進め。

他にめぼしいものはないと思ったその時、部屋の隅で何かが赤く光を放った。はっとして目を向けた俺の視線の先にあったのは、小さな石の塔の模型だ。どこかでみたような形をしている……。
浮かんだ疑問の答えを見つける間もなく、光はあっという間に部屋を満たすほどに広がった。地獄の業火もかくやという熱気が辺りを包む。
75へ進め。

狭い地中の隙間を、“頭”と武器を這わせるようにしながら進んでいく。身体の半ばが埋まった形になって、もがき続けるのは心地よい体験とは言い難い。俺の前には、やはり身を屈めているライラの姿がある。小柄な彼女は、この洞穴でも身体が引っかかることもなく進んでいけるようだ。
「もう少しだぜ、嬢ちゃん。そろそろ外の光が見えてくるからよ」
先を行くチャダルの声が聞こえた。実体を全く持っていない奴にとっては、いくら狭かろうと何の問題もない。だから、先行して安全を確認する役にうってつけだった。チャダルの先導がなかったら、この暗い穴をいつまで続くかわからないまま進まなければならなかったはずだ。
再び外の月明りの中へと出た俺たちは、背後の木々の間の向こう側にかすかに長く横に伸びる影が見えるのを確かめた。おそらく、国境に築かれた防塁だろう。つまり、今いるここはもう隣国カルルームの領内ということになる。あとは、マールバハールの国境警備兵に気付かれないように森から離れればいい。
443へ進め。

「悪いな、ライラ。お前の師を信用しないわけじゃないが……万一ということもありうる。ここは万全を期したい」
ライラもうなずいた。
「気にしないで、バジャー。私から見ても先生は……その、ちょっとおかしかったと思う。きっと、狂気が先生にとりついたんだわ」
「……お、ここに悪くねぇもんがあるぜ」
チャダルが橋のたもとに落ちていた酒瓶を拾い上げた。見ると、確かに老人の顔らしき意匠が凝らされている。逆さにして振ってみたが、何も零れ落ちてはこない。
「きっと旅の安全を祈って川に捧げられたお酒だわ。このあたりには、そういう風習があるの」
「そりゃ、縁起いいじゃねぇか。こいつにしちまいなよ、旦那」
俺は仮面を川に投げ込み、代わりに仲間が見つけた“頭”を戴くことにした。
頭が翁面の酒瓶になったことを忘れずに、64へ。

……墓場のカビ臭い香りが鼻を突いた。ここはどこだ? 先ほどまでいた塔の中ではないようだ。試しに首を動かしてみようとしたが、どうにもならない。狭い場所に押し込められているらしい。頬のあたりに確かに何か冷たい物が当たっているのがわかる。手足はと言えば、こちらは確かに動かせているようだが……不思議と存在感が希薄な気がする。
……不意に視界が開けた。チャダルの声が聞こえる。
「そんなに暴れないでくれって……まったく、旦那の頭はちと不便だね。せめて座りのいいモンをと思ったんだがよ……けど、多少落ちたぐらいじゃ壊れなさそうな頭があったぜ」
俺の首に乗っているのは、小さな額縁だった。どうやら肖像画らしい。確かにこれなら、落ちてすぐに壊れてしまうってこともないだろう。
再び鉄格子に斧を叩きつける音を廊下に響かせること十数回、ライラが通れるほどの隙間を作ることができた。斧の刃はだいぶ欠けてしまったが、それでもまだ十分武器としては使える。
「ありがとう、バジャー」その声は喜びに満ちていた。
「まだ礼は早い。こんなのは最初の一歩にすぎないんだからな……このマールバハールの国全体が、お前の敵なんだろう?」
ライラはうなずき、廊下へと一歩踏み出した。俺たちとはちがってライラが足を下すと積もった埃が舞い上がる。
「下に行く階段はこっちだぜ」
右へと続く廊下の先を見に行っていたチャダルが、曲がり角から呼びかけてきた。
ここからはライラも共に行動することになる。
頭が肖像画になったことを忘れずに、60へ進め。

俺は馬の首を西へ返した。やがて王都が背後へと消えていく。
あの時はここから国境まで三日かかった。そして氷霧の森へ入ったところで追手に捕まってしまったわけだが、今回こそは……その時、俺の考えを遮るようにチャダルが言った。
「なあ、旦那。さっきから後ろばっか気にしてるみてぇだけどよ、追手よりも国境の関所をどうやって抜けるかを考えるべきなんじゃねぇかな……」
関所だと? そんなものがあるなど初耳だ。俺の様子を見てとったのか、ライラが教えてくれた。
「あの戦いの後、カルルームとの間に関所が作られたの」
そうか……120年前、今少しで王女を取り逃がしそうになった刃の血族は、マールバハールの王座を簒奪した後、まず国境を固めたというわけだ。俺が死んだ後の世を知る二人が語ったところによれば、氷霧の森には堅固な塁壁と関所が築かれているという。確かにチャダルの言う通り、背後よりも行く手に立ちふさがる困難に気を向けたほうがよさそうだった。
「カルルームとマールバハールを行きかう商人はいないのか?」
「俺っち、生きてたころにカルルームから来たって商人と話したことがある。なんでも国境で法外な税を取られるって聞いたぜ。持ってる荷も細かく調べられるってよ」
どうやら簡単に通してはもらえないらしい。どうにか関所を超える方法を探さなければならない。
日が暮れたころ、街道の先に何本もの篝火が立てられているのが見えてきた。円形に並んでおり、馬車やテントが朧げな明かりに照らし出されている。
「ありゃぁ、商隊だ……結構な規模だぜ。この道にいるんだからカルルームへ行くのか、でなけりゃあっちから来たかだな。何か役に立つ話が聞けるかもしれねぇ、寄ってみるのもありだぜ」
「俺たちは亡霊だってことを忘れるなよ、ライラ一人で話をさせるつもりか?」
やり取りを聞いていたライラは、俺のほうを見上げて言った。「私なら大丈夫。今は情報が大事だと思う……行きましょう」
商隊のキャンプへ向かうのなら333へ進め。
ライラが一人で旅をしているという体で話をしなければならない。疑われる危険は避けるべきだと主張するのであれば、二人も聞き入れてくれる。その場合は99へ。

復讐に狂った、まじない師の断末魔の声が玄室を満たす。奴はついに、望んでやまなかった力を手にすることなく果てた。
「さようなら、先生……」ライラが師の亡骸の前で呟く。それは悼みの言葉ではなかった。真に師と決別する、その決意の表れだった。
「……行きましょう。ここは私がいるべき場所じゃない」彼女は一言そう呟くと、踵を返して地上へと続く道を歩みだした。
チャダルが一緒にいるのなら500へ進め。
チャダルはいないのなら143へ。

やがて行く手に村が見えてきた。ずいぶんと物々しい造りだ。門は堅固でぐるりと柵で囲われ、物見やぐらが立っている。近づいて見れば空堀まで備わっていて、これはちょっとした砦といっても過言ではない。
“頭”が目立たぬように腹ばいになり、誰にも見られていないのを確かめつつ柵へと近づく。柵の隙間から頭を通し、俺は村の中へと潜り込んだ。村人たちもどこか殺伐としていて、気質は兵士のそれに近い。程なく馬小屋は見つかったが、その隣の建物はどう見ても武器庫だ。明らかに土を耕しているような連中ではない。
馬を盗むには、固く閉ざされた門をどうにかして開けなければならない……しかし、この村の様子ではそれも難しそうだ。
ここで馬を手に入れるのはあきらめるのなら、仲間が潜んでいる茂みまで戻るとしよう……407へ。何とか方法はないか考えるのであれば、51へ進め。

砂嵐は激しく、少し離れた場所はもう見えない。まっすぐ進んでいるつもりだが、確実なことはもうわからなくなって久しい。
首無し馬に乗っていないのであれば、命運値を1減らさなければならない。未だ天運に見放されていないのであれば、まだ歩を進めることができるが、もしもここで命運値が尽きてしまったのなら319へ進むこと。
吹き付けてくる砂塵に立ち向かって進んでいると、やがて巨大な影が現れた。風化して奇妙にねじくれた石の柱が建っているのだ。どれほどの時間を砂に削られ続ければ、こんな姿になるというのだろうか……?
石の柱の右側を進むのならば451へ。左側を進むのなら375へ進め。

ファファスタスは俺の一撃を受け、ローブを翻して退いた。気配を消して近づいていたチャダルがその隙を見逃さず、背後から飛び掛かる。しかし……
「そんなことだろうと思っておったわ、このコソ泥目が!」
瞬時に振り返った老まじない師は杖を振りかざし、チャダルを打ち据えた。情けない声をあげながらチャダルは床を転がっていく。
「ダメだ……こいつ、そんなもん持ってねぇよ!」
俺たちが戦っている間にも、ライラは未だ操られたまま儀式を進めていく。その唇から流れる呪言が途切れた時、祭壇の丸岩がぎこちなく動き出した。うずくまるようにしていた手足を伸ばし、立ち上がったそいつはまさに魔力の塊だった。まじないの心得の無い俺でもわかるほどだ。この玄室全体が揺れ動いている!
「あれこそ、我が王家に伝わる魔導兵……マールバハールの守護者よ」ファファスタスが感極まった声を震わせた。
465へ進め。

馬が見つからないよう祈りながら、木に繋ぐ。万全を期すため、本当は殺すべきだったが、これにはライラが強く反対した。チャダルと二人で説得したが、彼女は頑として譲らなかった。
「頼むから、騒がないでくれよ」
別れ際にそう言ってはみたが……しばらくすると、背後の霧の中から一声だけいななくのが聞こえてきた。俺たちは音を立てないよう気を付けながら、霧の中を急ぐ。関所の兵士たちに気づかれたかもしれない。
80へ進め。

数日の後には、あの石の塔が近くに建つタマリンドへと近づいていた。流石に亡霊騒ぎも落ち着いてはいるだろうが、わざわざ首を突っ込むことはない。ここは迂回するに限る。
171へ進め。

「黙っててごめんなさい、バジャー」
俺たちの会話を聞きつけただろう。上階からライラは降りてきた。
「だますつもりはなかったの。でも貴方、蘇ったばっかりだったから……色々慣れてもらってから話すつもりだったのよ」
チャダルが心配そうに俺たちの顔を見ている。ライラの申し訳なさそうな様子に、俺はため息をついて答えた。
「わかった……俺たちは一蓮托生ってわけだ。まじないで魂が繋がってるんだ、仕方がない。お前の言う通り、俺たちは敵を同じくしている。そしてお前が死ねば、俺も恨みを晴らせない。だから、お前を守ってやる……これからは、俺がお前の騎士だ」
9へ。

詰所の奥に、塚の中へと続く通路があった。先を覗いてみると、内部にも石が詰め込まれているのが見える。最早かつての栄華はどこにも感じられない。
目指すは玉座の間。記憶が確かなら、宮殿の中心にあったはずだ。
「早いとこ済ませようぜ、旦那。時間をかけると面倒なことになる予感がするしよ」
確かに、急ぐに越したことはない。俺たちは次の衛兵たちが来る前に入口へと身を滑り込ませた。
439へ進め。

俺は腰の剣を抜き放ち、暗がりの中から一撃を繰り出した。完全に不意を突いたと思ったが、剣は奴の体をすり抜けてしまう。
「それじゃダメだ……何か武器を!」チャダルが上階から声を荒げる。男は今や、俺のほうを向いて短刀を構えていた。
「ふざけた頭をしているな……実体なき刃で俺を殺せると思ったか?」
奴の手で短刀が閃き、一瞬にして俺は暗闇に叩き落された。物音ひとつしない静寂なる闇だ。一撃で俺の頭が奪われたに違いない。
俺は手にした得物を振り回したが手ごたえは全く無い。逆に次々と切りつけられる感触が身体に走っていく。あの短刀、亡霊を切ることができるのか!
このままでは敵のなすがままだ。命運値を1消費し、この不運を切り抜けるより他はない。369へ進め。
そうしないのなら192へ行くしかない。

昼間は人里を避けて隠れながら十分に休息し、月が出ている間に馬での旅を続ける。二晩も経つと、ライラは馬の背でうまくバランスを取りながら力を抜くコツをつかんだらしい。おかげで少し馬の脚を速めることができるようになった。逆にチャダルは揺られ続けることにどうにも我慢がならなかったらしく、ライラが乗馬に慣れてきたのをいいことに馬から離れていた。実に晴れ晴れとした顔をして、鳴りを潜めていた軽口が戻ってきている。
「亡霊がよ、馬に乗るなんてのはやっぱ自然じゃねぇよな。どうせなら馬も亡霊じゃなきゃ恰好がつかねぇってもんだ」
「私抜きで旅をすることがあったら、そのいいと思うわ……今度、馬の霊も呼んでみようかしら」
ライラの言葉を聞いてチャダルは慌ててもごもご言った。「や、そんなことはしなくていいってことよ、嬢ちゃん。亡霊はその気になりゃ風のように動けるからよ、馬なんて……」
ライラはくすっと笑った。
「チャダルは馬が苦手なのね。でも、この子が昼間休めるようにしてくれてるでしょう? いつもありがとう、助かってる」
「こいつ、なんでか俺っちの歌に反応すっからよ……試しに子守歌を聞かせてみたら、よーく寝てくれてさ」
二人のやり取りを聞きながら馬を進めていた俺も、ここで口をはさんだ。
「おかげで、昼夜逆転しているにも関わらずこいつも潰れずに済んでいる。だが、いつまでも無茶が続くわけじゃない……。ライラ、お前もだ。早い所、落ち着けるといいんだがな」
ライラは黙ってうなずいた。このまま何事もなければ、あと数日もすれば彼女の故郷、レザニアにたどり着けるはずだ。
やがて遥か行く手に峰々が姿を現した。道の左手から水が流れる音が聞こえるようになり、程なく川岸へと出る。道はここで川に沿って曲がり、俺たちも流れをさかのぼる形になる。こうしてしばらく上流へ行けば、目的地に辿り着けるというわけだ。
空が白じんできた。そろそろ休む場所を探さなければならない。ちょうど、この先で道は川を超えるところだ……橋の下も悪くない。
今日はここで休むことにするのなら112へ。だが橋の下では、道行く者に見つかるかもしれない。もう少し先まで進んで、より適した場所を探すなら137へ進め。

頭部が失われているので、これが誰の姿なのかはわからないが、身に着けている衣装には見覚えがある。地位の高い貴族、あるいは王族のもので、120年前によく見られたものだ。台座に取り付けられたプレートを見て俺は目を疑った。
この名前には憶えがある。かつての主君、悲運に倒れたマールバハール王の弟君だ。まだ生きていたころ、会ったことがある……あの戦いのときも、俺は彼の命令を受けて動いたのだ。言われてみれば、確かに像の体格は王弟殿に似ている。そしてその名の下に、乱暴な文字が彫り付けられていた。明らかに後から付け加えられたものだった。
刃の友……まさか、王の弟ともあろうものが? だが、この男の像が確かにここにあり、寝返ったと記されている。それだけではない。このプレートによれば、後に刃の血族をも裏切ったという。像の首が無いのも、おそらくそのせいなのだろう。
もしも同行者がいるのであれば403へ進め。一人でここにいるのなら113へ。

まじないがかかった舟は無事だったが、やはり乗り手にもまじないの心得が必要だったらしい。滝の中腹で舟は大きくかしぎ、俺は虚空へと放りだされてしまった!
“頭”のアミュレットに傷があるなら387へ。傷などないのであれば133へ進め。

ライラとファファスタス。二人のまじない師の語らいは続いた。やがて話題はライラの今後の身の振り方へと移っていく。
「この国を出れば、確かに刃の血族もお前に手を出しにくくなる……だが、隣国カルルームは書の血族を匿ってはくれんだろう。書の血族が王座を追われたとき、同盟もまた失われたのだ。今日、カルルームの王は忌まわしき簒奪者と語らっている。だがそれを責めることはできん。今やこのマールバハールを治めているのは、刃の血族なのだからな」
「ただ、隠れて生きていければいい……この国が安全でないのなら、他へ行くのも選択肢の一つと考えているだけです。カルルームに助けを求める気はありません」
ファファスタスはしばらく黙っていたが、やがて口を開いた。
「もしもお前がただのまじない師であったなら、ワシも引き留めはせん……だが、お前は我らが一族の悲願に繋がる、希望の灯足りえる存在だ。ワシは常々この国を正したいと思って生きてきた……そう、そうでなければ隠れながら生き永らえる意味などありはしないではないか。
ライラ、はっきり言おう。ワシはお前がここに残ることを望んでいる。代々書の血族に伝わっていたはずの、禁断のまじないを探す手伝いをしてもらいたいのだ。そして、そのまじないを用い、マールバハールからあの裏切り者どもを消し去ることができたら……!」
老人の言葉に狂気めいたものが混じってきた。自らの血筋を知ってからはどこかうろたえていたライラも、師の姿を見て我に返ったようだ。彼女は俺のほうをじっと見据え、囁いた。「……貴方はどう思う?」
さあ、どう答えたものか……。この狂える書の血族の生き残りの申し出を受け、この国をライラが危険無く暮らせるように変えていくべきだろうか? それとも……?
俺の恨みを晴らすこともできる。ファファスタスの計画に乗るべきと答えるのであれば295へ。
マールバハール全てを敵に回すのは危険すぎる。それにこの男を信用できるかわからない。やはり隣国へ落ち延びるのがよいと答えるのなら325へ進め。

開いていた扉の隙間から出てみると、そこは回廊の端だった。左手に道は続いていて、正面と右側の壁は石造りだ。通路をのぞいてみると、少し行ったところに下り階段が見える。道そのものはもっと先まで続いていて、やはり石壁に突き当たっている。その左側の壁に扉があり、階段はちょうど中間あたりにあるようだ。
「降りる階段は見つかったけど、俺っちたちが通ってきた道は嬢ちゃんには無理だ。ここは向こう側へ行って、普通に上り階段まで続く道を探してみたほうがいいんじゃねぇか?」
チャダルの言葉に頷いたとき、階下から何やら物音が響いてきた。扉が開くような音に続いて、何者かが下の階を歩いている足音がする。
「ライラの食事はこんな時間に運ばれてくるのか?」
「いや……こんな夜中になんてのは初めてだな。それにまだメシが来る日じゃねぇはずだぜ」
俺たちは顔を見合わせた。どうやら奴も同意見のようだ。
「下を覗いて、確かめる必要があるな」
「亡霊の姿は普通の人間にゃ見えねえ。だが、嬢ちゃんのように霊感持ってる奴が相手なら俺っちたちは丸見えだ。気をつけてくれよ」
145へ進め。

ライラは意を決した様子でうなずいた。俺たちの腹積もりは決まった。憎き刃の血族どもを相手に戦うのだ。ファファスタスもまた、感極まったといった様子で大きくうなずく。
「そうと決まれば、すぐにでも動かねばならん……! 先ずはワシがこれまでにつかんだことを全て話そう」
彼は古い地図を取り出してきてテーブルの上に広げた。この国、マールバハールが描かれている。端には地図作成者のものと思わしき名が記されており、その傍らには制作年も書かれていた。200年前、つまり俺が生まれるよりもはるか前、書の王朝時代のものだ。
「この国の南の果てに、人も寄り付かぬ砂漠がある。厳しい地で、常に砂塵が吹き荒れておるのだ。そのため入り込んだ者は皆、死ぬまで彷徨い続けるという。
だが、ここには王家の墓が隠されているのだ。代々、書の王が死ぬとその後継者が自ら砂漠へ赴き、先王を葬った。マールバハールの知られざる伝統だ。王家には、砂漠を抜ける道が伝わっていたに違いないが……ライラが己の血筋について知らされていなかったことからして、残念ながらその伝承は途絶えていると考えるべきじゃな。それに、霊廟を開くための鍵もまた失われた……我々は、これらを見つけ出さねばならん」
「霊廟には何があるのですか?」地図の一点を見ながら問いかけるライラに、ファファスタスは少し間をおいてから、しかし力強く答える。
「書の王家にのみ伝わる、究極のまじないだよ。いや、まじないを超えた、本物の魔術だ。その力を使うことができれば、我らが祖の玉座に居座る偽りの王を廃せるだろう……。誤った目的のために使われぬよう、死せる代々の王たちがその番人となっているというが、此度は咎められることはあるまい」
究極のまじない……魔術。そんな力があるのなら、なぜあの夜、王は使わなかったのだろうか。俺が思い浮かべたその問いを感じ取ったのか、ファファスタスがこちらを見る。
「この魔術のことは王家の限られた者しか知らぬ秘伝だったのだ。120年前のあの忌まわしき戦では悲しいかな、王には先祖の墓まで出向く時間はなかった……刃の血族どもの計画は周到で、王は何もできなかったのだろう。だが、奴らもまた大いなる魔術のことは知らなかった。もし知られていたのなら、とうの昔に墓は荒らされ、全ては灰燼に帰していただろう。我々には、奴らに突き立てる復讐の刃は残されていなかったはずだ」
「……そんな昔の秘密を、なぜ先生は知っているの?」
「当時生き延びた者たちは一族の秘密が漏れぬよう、あらゆる記録を持ち出した。敵の動きが早く持ち出せぬ場合は、やむを得ず焼却したのだ。王都を焼いた炎が、ワシらの秘密を守ってくれたのは皮肉なことだが……。とにかく、ワシは長年そうやって密かに伝えられた情報を調べてきた。もちろん簒奪者どもに一矢報いるためだ。そして今、そのための準備がほぼ整いつつある。あとは鍵があれば……」
ファファスタスはそこで言葉を切った。隠れ家の中に沈黙が流れる。
やがて、ライラが意を決したように言った。
「それ、もしかしたらレザニアに……私の家にあるかも知れません」ファファスタスの眉が上がる。
「代々伝わっていたの。何に使うのか誰も知らなかったけど……。普段は隠してあったんです。誰にも渡しちゃいけないって。私……捕まった時も、そのままにしておくほうが見つからないだろうって思って……」
ファファスタスは静かに、弟子に告げた。
「ワシは時折レザニアに出向いていたから知っているが、お前の家は今もそのまま放置されている。もしも、それがワシの思った通りの品であれば……刃の血族から国を取り戻すことができるかもしれん。もしもそうなればだ、ライラ。お前が女王ということになる」
その言葉にライラは心底驚いているようだが……確かに彼女にはどこかアイシャ姫の面影がある。ファファスタスの言っていることもあながちおかしくはなく思えた。
「書の血族が王座を追われたのは120年も前の話だ。運よく生き延びた者も、己の素性は隠そうとしただろう。わが子を護るため、あえて何も伝えなかったこともあったに違いない。お前の両親……おそらく父親であろうが、己に流れる血について何も知らなかったとしても、不思議ではない。……もう朝が近づいている。日が暮れて村人たちが寝静まり次第、鍵を取りに行こう」
321へ進め。

よくぞ聞いてくれたとばかりに、そいつはウキウキしながら答えた。
「俺っちはチャダル。世に知られた大盗賊ってやつさ……もっとも、最期は捕まって縛り首になっちまったけどさ。例の宝石が王の冠から盗まれた事件、あれやったのは俺っちなんだぜ」
悪いが聞いたことがないと言ってやると、奴め、しゅんとしちまった。
「……そうかい。知らないってか。そいつは残念だな」
「貴方が活躍してた頃にはもう、彼は死んでたのよ」
ライラの指摘にチャダルはぱっと顔を輝かせた。
「おっとぉ、そうだった! あんた、バジャーだったっけね。天下無双で名高い騎士ラシュドが生涯の強敵と認めたツワモノだ。あんたら騎士たちの話を寝物語に育ったんだぜ。そりゃあ、俺っちのことを知ってるわきゃないよな」
ラシュドなる騎士に覚えはないが、自分の名は死後も伝わっていたということらしい……汚名でなければいいのだが。
472へ進め。

ライラを守りながら物影に入り、チャダルが酒場のほうへ向かっていくのを確かめる。歩調は浮き浮きと、小躍りしているようだ……完全に村人たちをなめ切っている。少し不安にならざるを得ない。
だが奴も、さすがに正面から扉を開けて入るような真似はしないらしい。壁に頭を突っ込んで中の様子を覗いている。しばらくするとチャダルの姿は建物の裏手へと回っていき、見えなくなった。
「……大丈夫かしら?」ライラが心配そうに呟く。俺はうなずき返した。
俺たちは二人して物影から出ないように気を付けながら、こっそりと酒場へ近づいていった。次第に聴きとれるようになってきた声からは、客が確かに酔っぱらっているらしいことがわかる。
「おう、女将。酒が足りねぇ……料理もだ!」
「ったく、どんだけ飲み食いすれば気が済むんだい? もう夜中だよ! まあ、出すもん出してくれるならいいけどさ。ちょっと待ってな……そういや最近パンの減りが早いんだよ。お前さんたち、盗み食いしているんじゃないだろうね!」そして、女の悲鳴が続いた。
何事かと客たちがどよめく声がして、酒場の中が一気に騒がしくなる。おそらくはチャダルが瓶でも落としたか投げたのだろう。何かが割れる音がして、手にした布をなびかせながら奴が酒場から――それも正面の扉だ――飛び出してくるのが見えた。その後を追って道へ酔っ払いどもが、おぼつかない足取りで出てきてわめき立てている。無理もない。食材と外套が突如浮かんで扉を押し開き、店から飛び出したのだ。夜の村はちょっとした騒ぎとなり、少し離れた詰所から兵隊たちも何事かと駆け付けてきた。
「確かに亡霊の仕業だ! 間違いない。夕べの男、本物の退魔師だったのかよ!?」
「王都からわざわざ退魔師が来たってか……けどよ、こいつは仕留めそこなったちゅうことか?」
背後の会話は気になるが、今はライラを連れて離れなければならない。残念だが、亡霊騒ぎがどうなったか確かめる余裕などはなかった……
「厚手のいい外套だったんだ。宿泊客の旅人が着てたやつでさ」
村はずれの辻で、チャダルはしゅんとしながら言った。一応食料は十分盗んでこれたのだが、バタバタとなびいて目立つ外套は村の連中を振り切るために捨てざるを得なかったという。その判断は正しかっただろう。ライラを奴らの目に触れさせるわけにはいかない。外套はまた、別途どこかで調達すればいい。
村のほうでは松明を持った連中が周りの闇を照らしているのが見える。早いところここを離れたほうがよさそうだ。
「俺っちヘマしちまったけど、いいことも聞いてきたぜ。王都から越して来たって男がいてさ。そいつが言うには、こっから街道沿いに北へ向かえば王都へ帰れるってぇ話だ」
つまり、氷霧の森を経てカルルームへ向かうなら、北へ向かうことになる……俺がかつてアイシャ姫を逃した道に出るには、先ずは王都の近くまで行かなければならないからだ。そうするなら438へ。
やはり行き先を変え、ライラの生まれ故郷を目指したほうがいいと思うなら380へ進め。

ライラが水辺へと近づいていく。
「やめろ! この水は毒だぞ!」俺はライラを止めようとしたが、すでに彼女は限界だった。幼い身には、この砂漠は過酷すぎたのだ。いずれにせよ、死からは逃れられない……毒の水でないことを祈るしかない。
彼女は残る力を振り絞って水に手を入れ、やっとのことで一口飲み下す。
そして眠りに落ち……二度と目覚めなかった。主を失った亡霊にできることなど何もありはしない。ただ、彼女の命と共に消えるだけだ……

「あいつ、最後なんて言ったんだ?」奴が完全に消えてしまうと、チャダルが恐る恐る近づいてくる。混乱しつつ、俺は頭――借り物の頭だが――を整理した。
こいつは俺が剣を抜くために王都へ来ているのを知っていた。それに、亡霊を使役できるまじない師といえば……つまり、書の王族だ。王弟であるバルサザールならば王家の者しか使えないという死霊術を使っても何らおかしくはない。もしも120年前の人間がひそかに生き延びていたとしたら……俺の脳裏に別の名前が浮かぶ。あの男が俺を排除しようと目論んだのなら……ライラにとって良くないことが起きているに違いない!
俺はまだ近くにいた首無し馬に飛び乗る。
「おいっ、どうしたんだよ旦那? ……おいてかないでくれぇ!」慌てたチャダルも飛びついてくる。すぐに俺は南へと馬を走らせた。
首無し馬を手に入れたことを忘れずに、14へ進め。亡霊は風のように走ることができる。それが亡霊の馬となれば、さらに速い。

巻物には何やら書かれているが、かなりの崩し文字だ。俺には、まるでのたうつミミズのようにしか見えない。
「“砂の海”……“右”それから…“右、左と進むべし”
そう書いてある気がするんだけど、確かじゃないわ。でも、これは先生が書いたものだと思う。他にもこんな、うねうね字のメモをみたことがあるから」
元のパラグラフへ戻り、調べ物の続きへ戻れ。

やがて霧は薄くなっていき、ライラが吐く息も白い輝きを失っていく。ついに視界が開け、俺たちの目に、マールバハールよりも山がちな大地が広がっているのが映る。まだ国境から十分に離れたとは言い難いが、ともかく危険は去った。ここではもう、ライラを捕らえようとする命令は効力を失っているはずだ。
“頭”が仮面か、あるいは酒瓶の類の場合は370へ進め。
それ以外の品であるのなら、23へ。

「いまだにワシが渡したものを使っているとは……愚かだな!」
俺の“頭”を見た老人が笑みを浮かべ、口の中で何か呟く。その瞬間、俺の視界はどす黒い瘴気で覆われた。くそっ、何か仕掛けられていたらしい。力が抜けていく……!
今後ファファスタスを倒すまでの間、戦力から3を引かなければならない。
414へ進め。

やがて日が落ちて暗くなってきた頃、周りの草の背が低くなってきた。昇ってきた月が古戦場を照らし、北には王都を囲む城壁の影が幅広く続いているのが見える。
俺の“頭”がアミュレットであるのなら372へ進め。
そうではなく、別の品であるならば198へ。

「我が蒙昧なる弟、バルサザールは書の血族を刃の輩へと売り渡した……。奴にとって、私の存在は邪魔だったのだ。代々の王に伝わる、究極のまじないを欲していたからな。だがそれは誰にでも扱えるまじないではない。たとえ王として歴史に名を刻んだ者であっても、資質の及ばぬ例もあったほどのものなのだ。
バルサザールはその力を揮うことを夢見た……そして兄である私を排し、書の血族を統べる者になろうとしたのだ。忌々しいことに、その目論見は成功した。まじない師ではない刃の血族に偽りの王座を与え、その力を後ろ盾に優れたまじない師たちを捕らえては殺した。そうして生き残った書の血族の中で、最も力を持つ存在となったのだ。
愚かではあるが、奴は周到だった。万が一、己の力量が足りなかった時のことを考え、刃の血族に与する褒美として我が娘を求めた……より濃い血を持つ子を成し、己が傀儡とすることを目論んでいたのだ。その後、奴は自らの名を塗りつぶし、死を装い自由となって久しい。そして刃の血族の監視を潜り抜け、ついに野望を達しようとしている……」
徐々に牢の中が熱くなってきた。床のあちこちから炎が噴き出し始める。
「究極のまじないとは、初代王……マールバハールを打ち建てた大いなるまじない師の魂を組み込んだ魔導兵だ。未だ戦乱止まぬ時代に、護国のためと造られたものだが……奴がその力を手にしたならば、何をしでかすかわからぬ!
お前が誰かは知らぬ。だが、誰でもよい。どうかバルサザールを――」
王の言葉が途切れた。燃え盛る炎が全てを吞み込んでしまったのだ。
458へ進め。

「ライラ、大丈夫か?」
森に入ると、ひんやりとした霧が辺りに立ち込め始めた。この森の名の由来となった氷霧だ。これに肺をやられて命を落とした者は数知れず、それゆえに交通の難所でもあり、隣国との国境となったというわけだ。
ライラは身にまとった外套の襟を顔まで引き上げ、無言でうなずく。そうだ、それでいい。下手に口を開くと、ろくなことにならない。
行く手を霧が覆う中、俺たちは街道を進み続けた。
427へ。

「馬鹿な……ただの亡霊が、何故ここまでの力を……」
ファファスタスが目を血走らせて呻く。「だが、王の血を引く者がいる限り、魔導兵は何度でも蘇るのだ!」
奴が命じるままに、操られたままのライラがまじないの言葉を吐き出す。その声は虚ろでしわがれており、生命力が感じられない。長い時間に渡る儀式の影響で消耗しきっているのだ。
ライラの声に呼応して、倒したはずの敵が再び起き上がってきた。だが、その動きは先程とは違いぎこちなく鈍い。さしもの魔導兵も、力を取り戻すには時間がかかるようだ。
BATTLE 
サイコロを一つ振れ。そして武器などから得られる戦力ボーナスを加える。
出目が「6」であれば、さらにサイコロを振って加算せよ。
(ただし、「1」が出た時点で自動的に敗北となってしまう)
得られた値と、敵の戦力を比べよ。同点以上であれば勝利だ。
敗北を喫した場合でも、命運点を1消費することで再挑戦できる。
決してあきらめることなかれ。

地割れの底へと降りられそうな場所は程なく見つかった。霊廟と思わしき入口へとたどり着き、様子を窺う……生き物の気配は無いようだ。明かりもなく、数歩先は闇に溶け込んでいる。だが、ここで立ち止まっていてもただ時を浪費するだけだ。一歩中へ踏み込んだ瞬間、奥へと続く通路の両側に炎が並び、傾斜のある通路がまっすぐに地中へと続いている様が浮かび上がった。
首無し馬を……

「素晴らしい……! 僕は、この戦いのために蘇ったんだ! あのバジャーともう一度、決着をつけるために!」
ラシュドが吠える。奴の剣撃は一合ごとに強くなっていく。この戦いそのものにかける執念の強さ。それが全てを決めた。
俺の身体を形作っている霊気はずだずだにされ、最早意識を保つことさえ難しくなっていた。無論、俺とて奴の身体を何度も抉ったのだが、それでも先に武器を振るえなくなってしまったのはこっちのほうだった。
「僕もすぐに君の後を追うよ……もう、未練などひとかけらもないからね……」
そしてラシュドが剣を構えるのが見え……その先はもう、俺には伺い知ることすらできぬ闇の中だ。

「旦那ぁ、あぶねぇっ!」チャダルが叫び、間に割って入ってきた。狂犬が奴に気を取られた一瞬の隙に、武器を叩き込む。犬の姿は大きく崩れ、そのまま霧散していった。
「こんな場所に亡霊の番犬かよ……どうなってんだ? この国じゃ、まじないは御法度だってのに」
どうやら噛まれたらしく、チャダルの腕の一部が破れて崩れていた。だが俺たちは実体なき亡霊だ。元の状態に戻るには多少の時間はかかるだろうが、この傷で消えてしまうということはないだろう。
それよりも、チャダルの言葉が気になる。刃の奴らは、まじないと書の血族を徹底的に封殺したはず……この王宮だってそうだ。だが、そうなると誰があの犬をここに放ったのだろうか。
思案している俺をチャダルが促す。
「……そろそろ行こうぜ。こんなところ、一刻も早くおさらばしてぇよ」
このまま進み続けるのなら123へ。
今来た道を戻るのなら21へ。

身をひそめながら奴が階段を上りはじめるのをじっと待つ。チャダルも俺の思惑に気づいたらしい。何かと男に話しかけて注意を引きはじめた。
「あんた何しに来たんだ? こんな打ち捨てられた塔に用でもあるのか? ……さては盗人だな。残念だがここにゃ何も残っちゃいねぇよ。俺っちが全部盗っちまったからな!」
「ここにライラという小娘がいるはずだ……お前は娘に使役されている亡霊だろう。わかっているぞ」
奴の意識は完全にチャダルに向いている。俺は影から躍り出て、螺旋階段の下から駆け上がり、一気に剣を抜いて繰り出した。だが、刺客の男もすぐに俺の存在気づき、身をひねる。その身のこなしは見事であったが……ここは足場の悪い螺旋階段だ。体勢を崩したところを一押ししてやると、奴の身体は手すりを乗り越えて床へと落ちていった。短い悲鳴に続いて、石の床に肉が叩きつけられる音が響く。
「生きてた頃と同じに考えてちゃダメだぜ、旦那」チャダルは身を乗り出して下の様子を確かめながら言った。
「あんたの剣にゃ実体がねぇ。そいつで斬れるのは、俺っちたちと同じ亡霊だけだぜ」
420へ進め。

進んでいくと、やがて塚の中心へと向かう扉が現れた。通路はまだ先へと続いている。
妙な形の図形に突き立てられた剣のレリーフが施されている扉で、鍵穴がついている。開かないかどうか試してみたが、やはりダメだった……その時になって俺は気が付いた。剣が突き立てられているのは、このマールバハールの国土を象った図案ではないか!
扉に向かい、右へと通路を進むのなら90へ。
左へ向かうのならば21へ。
合いそうな鍵を持っているのであれば、試してみてもいい。そうするなら240へ進め。

「これは……アイシャ姫を描いたものなの?」
ライラが言った。俺は絵を見つめたまま、その前から動けないでいた。俺は返事をせずただ頷いた。チャダルもやってきて、絵を覗き込む。
「こりゃまた別嬪さんだね。ちょっと、嬢ちゃんに似てるような気もするな」
「そうかしら……どう思う、バジャー?」
俺は改めてライラの横顔を見た。やはり似ている。もちろん姫に比べて幼いが、年相応に成長したとすれば……。やはり彼女は書の血を引いているのかもしれない。何しろ彼女には、まじないの才能があるのだ。
俺が黙って考え込んでいると、ライラはぽつりと言った。
「バジャーにとって姫は大事な人よね。私と似てるなんて言われて、気を悪くしてなければいいのだけれど」
思いもがけず再会した姫の姿に心の中で詫び、俺は二人と先へ進む。
46へ進め。

「ちょっと待って。先生のところへ行く前に寄りたい場所があるの」
夜を待ち、レザニアに入ったところでライラが言った。彼女が先に立ち、人気のない道を静かに進んで行くと、やがて一軒の古い家へとたどり着く。
「これは……まじないの札か?」
「待って。貴方は触れちゃダメ。これ、退魔の呪符だわ」
ライラの声に、伸ばしかけていた指を引っ込める。家には何重にもロープがかけられていて、そのロープのあちこちに札が何枚もついているのだ。ライラの言う通り退魔の札だというのなら、これをやったのは退魔師協会に違いない。
「人間には害はないはず……たとえまじない師だとしても、中でまじないを使わなければ大丈夫」
彼女はそう言って、ロープをくぐった。「バジャー、貴方はここで待ってて」
俺は村の様子をうかがいながら待つ。しばらくすると彼女は家から出てきた。心なしか青ざめているように見える。「……無いわ」
何がと聞き返そうとしたが、彼女はそれよりも早く言葉を続けた。
「ここは私が育った家なの。何に使うのかわからなかったけど、鍵が代々受け継がれていたのよ……でも、無いの。隠してあったのに……」
「ファファスタスか?」
「……私が王家の血を引いてることを先生は知ってた。あの鍵もきっと先生がいう“禁断のまじない”に関係あるんだわ」
本当に奴が盗んだのか。それもあの男の隠れ家行ってみればわかるかもしれない。
47へ進め。

奴の手で短刀が閃き、一瞬にして俺は暗闇に叩き落されてしまう。物音ひとつしない静寂なる闇だ。一撃で俺の“頭”が奪われたに違いない。
俺は手にした得物を振り回したが手ごたえは全く無い。逆に次々と切りつけられる感触が身体に走っていく。あの短刀、亡霊を斬ることができるのか!
144へ。

ライラの生まれた村というのは、小さな集落のようだった。レザニアというらしいが、少なくとも俺は聞いた覚えがない。チャダルも同じように知らないという顔をしている。
「困ったわ……私はここがどこだか知らないの。連れてこられたとき、目隠しされてたから」
「村の手前に兵隊どもの詰所があるんだけど、そこなら詳しい地図があるかもだぜ」とチャダル。
「嬢ちゃん、地図を見りゃ、故郷の位置はわかるかい?」
「レザニアって書かれている場所を探せばいいのよね……近くの川とか山の形も手掛かりになるし。多分、わかると思う」
詰所は極めて簡素な造りの小屋だった。夜警の者が一人、戸口の前で眠そうに目をこすっているが、おそらく建物の中にもう一人は交代要員がいるだろう。
「どうせ食料も要るんだ。俺っち、ちょっと村まで行って騒ぎを起こしてくっからよ。そしたらきっと兵隊たちも来ると思うんだ。奴らが出払ったら、嬢ちゃんと旦那が漁りに入る。それでどうだい?」
俺とは違い、チャダルには人目に付く“備品”が無い。きっとうまくやれると言って、奴は村へと向かった。さて、うまくいくだろうか……?
はたしてしばらくすると、村のほうが騒がしくなった。女の悲鳴や酔っ払いどものわめく声が風に乗り、かすかにここまで聞こえてくる。詰所でぼんやりと立っていた兵士も何事かと村のほうに顔を向けた。村人が一人詰所まで走ってきて、何やら訴えている……中からもう一人兵隊が姿を現し、三人で村のほうへと姿を消した。
まだ兵が残っていたら面倒なことになる……俺はライラを残し、一人詰所へと近づいた。扉は閉まっていたが、鍵はかかっていない。武器を握る要領で取っ手を掴んで扉をわずかに開き、隙間を作る。中には誰もいなかった。ライラに大丈夫だと合図をして、俺は中へ入った。
乱雑に散らかった部屋だ。飲みかけの酒が残ったジョッキに、賭博用のカード。ここの連中は模範的な兵士とは言えないようだ。これなら地図が一枚消えていても、すぐには発覚しないだろう……だが、肝心の地図はどこだ?
「村のほう、大騒ぎになってきてるみたい。村の人たちが大勢起きだしてるわ」
遅れて入ってきたライラが言った。チャダルの奴め、調子に乗ったのか下手を打ったのかわからないが、早いところ村から離れたほうが良さそうだ。俺とライラは手分けして地図や旅に必要になりそうな品を探し始めた。
「メシをさ、たんまり盗んだんだけど」
村はずれの辻で、そう言いながらしゅんとしているチャダルの手に食料はなかった。村の連中を振り切るために手放さざるを得なかったという。その判断は正しかっただろう。ライラを奴らの目に触れさせるわけにはいかない。だが幸いにも、俺たちの方で兵士用の保存食を拝借できていた。当分は何とかなる。
「俺っちヘマしちまったけど、いいことも聞いてきたぜ。宿に王都から越して来たって男がいてさ。酒飲みながら言ってたんだ……こっから街道沿いに北へ向かえば王都へ帰れるってよ」
そんなことは既に地図を見てわかっている。俺は調子に乗ってきたチャダルを一睨みして黙らせた。
当初の予定通り、ライラの生まれ故郷――レザニアを目指すなら318へ進め。
北へ向かい、氷霧の森を経てカルルームへ行くこともできそうだ。俺がかつてアイシャ姫を逃した道を辿ることになるが……そうするのなら、進む先は438になる。

いつだったか、確かにチャダルがそう言っていたようなおぼえがある。そう告げると、チャダルそっくりの男はうなずいた。
「俺っち、まじない師のとこに盗みに入って捕まっちまったんだ。それで、こんな刺青入れられちまってよ。……真っ赤に燃えて、死ぬほど痛ぇんだ。けど、役人に引き渡された記憶は無ぇ。とはいえ、こんな身体だ。間違いなく死んじまってると思うんだけどよ」
男がもぞりと身を起こした。てっきり壁に埋まっているのだと思っていたが、そうではなかった。その部分は大きく削れて存在していなかったのだ。
「俺っちがもう死んでいて、魂だけの存在だとしたら……なくしちまった部分が持って行っちまってる記憶があるはずだって思うのさ」
「……そういや、縛り首になったと言っていた気がするな」俺はチャダルとの会話を思い出そうとしながら言った。
チャダルの半身が頷いた。
「旦那が言っていたファファスタスってのは、きっと俺っちを捕らえたまじない師に違いねぇ。旦那は奴と一戦交えるつもりと見た。だから、いいことを教えてやるよ……
奴は人を虜にするまじないを使う。そいつは誰であろうと抗うことが許されねぇっていう、ひでぇまじないさ。赤い宝石でできた珠を使って、心を奪っちまうんだけど弱点もある。たった一人しか支配下におけねぇんだ。大勢相手じゃ使えねぇのさ。
なんで知っているかって? 盗みに入ったとき、奴の魔導書を覗き見してやってね。それまであちこちで、まじないの品を盗んできたからな。ちぃとは読めたのさ……。奴の本は青い皮で装丁されてる立派なやつだったぜ。そいで、それが俺っちがここに閉じ込めている理由ってわけだ。
自分で言うのもなんだが、俺っちは大盗賊だからよ。流石のまじない師も、俺っちの半分しか捕まえられなかったってこった」
その時、大きな鐘の音が一つ鳴り響いた。
TOLLING
鐘が鳴った回数を記録しておくこと。これで1回追加だ。
「残念だけど、こっから動けねぇんだ。もう半分の俺っちの縁もあるし、本当なら一緒に奴に一泡吹かせてやりたいけど……そいつは旦那に任せるさ」
351へ進め。

異形の亡霊が声にならない叫び声をあげる。炎が大きく揺らめき、殺意が押し寄せる。それに呼応するかのようにアミュレットがどす黒い瘴気を上げた。動きが鈍くなっていることに気づいて、俺は毒づいた。やはりファファスタスは敵だ……何か仕込まれている!
BATTLE 
これまでに鐘が鳴った回数に2を加えろ。それが敵の戦力となる。
もしも武器が除霊の短刀であるならば、効果は絶大だ。この戦いにおいては、戦力に3を足すことができる。
サイコロを一つ振れ。そして武器などから得られる戦力ボーナスを加える。
出目が「6」であれば、さらにサイコロを振って加算せよ。
(ただし、「1」が出た時点で自動的に敗北となってしまう)
得られた値と、敵の戦力を比べよ。同点以上であれば勝利だ。
敗北を喫した場合でも、命運点を1消費することで再挑戦できる。
決してあきらめることなかれ。
この窮地において、見事敵を倒せたのならば345へ。力及ばず屈するのであれば、249へ進め。

アジムと名乗った亡者の言葉を思い出したライラは、渇きに負けまいと手の水を砂へと落とした。毒の水は砂にしみこみ、あっというまに乾いてしまう。
オアシスの西側をまわって行くのなら497へ。東側を進むのならば275へ。選んで進め。

やがて前方の霧の中に、塁壁と思しき影が浮かんでくる。さて、如何にこの難所を超えるべきか。
ここは国境だ。警戒はこちら側ではなく、どちらかといえば隣国カルルームに対する備えを重視しているはずだ。こちらには亡霊が二人いる。うまく立ち回れば守衛たちの不意を突き、連中が事態を把握する前に何とかすることができるかもしれない。
正面から攻略するつもりならば276へ進め。
塁壁に沿って関所から離れ、頃合いを見て乗り越えようというのなら、474へ。

「そりゃ旦那、もちろん俺っちをここに閉じ込めたまじない師のことさ」男は続けた。
「旦那だって、そいつのせいでここにいるんじゃねぇのかい? ここは奴にとって都合の悪い魂を閉じ込めておくための監獄なんだからよ」
358へ進め。

扉を抜けると、そこは回廊の端だった。右手へと道は続いていて、正面と左側の壁は石造りだ。通路をのぞいてみると、少し行ったところに下り階段が見える。足跡は下から上がってきているが、道そのものはもっと続いていて、やはり最後は石壁に突き当たっている。その右側の壁に扉がついており、階段はちょうど中間あたりに位置していた。
「階段は見つかったけど、向こう側にも何かあるかもだなぁ」
そうチャダルが行ったとき、階下から何やら物音が響いてきた。扉が開くような音だ。
「ライラの食事はこんな時間に運ばれてくるのか?」俺はライラの部屋にあった桶を思い出した。
「いや……こんな夜中になんてのは初めてだな。それにまだメシの来る日じゃねぇはずだぜ」
俺たちは顔を見合わせた。どうやら奴も同意見のようだ。
「下を覗いて、確かめる必要があるな」
「亡霊の姿は普通の人間にゃ見えねえ。だが、嬢ちゃんのように霊感持ってる奴が相手なら俺っちたちは丸見えだ……時々いるんだ。気をつけてくれよ」
145へ進め。

どの鍵を使うか?
当然だが、持っていない鍵は使うことはできない。

牢の前を通り過ぎようとすると、中から呻き声が漏れてきた。男の声だ。ライラではない。しかし、この声には聞き覚えがある……!
やはり牢の中を覗いてみるのなら155へ進め。
回廊の先を確かめることを優先するのであれば、437へ。

やがて通路が交差している場所へ出た。狭いながらも広間になっていて、やはり中心に一体の像が立っている。この塚の中心の方を向いているこの像を調べてみるのであれば、96へ進め。
像に用がないのであれば、進む道を選ぶ必要がある。広間で交わる通路は垂直に交差しているのではなく、妙に角度がついている。
像からみて右手手前へ延びる通路を選ぶのなら123へ。
左手手前の通路にするのなら86へ。
右手奥へ向かうことにするなら177へ。
残された道を選び、左手奥へ行ってみるなら467へ。

レザニアを見下ろす山の中。ここに老まじない師の隠れ家はあった。俺たちが以前出会った、あの場所だ。チャダルも感心しきりの、巧妙に隠された入口から中に入ってみたが人の気配はなかった。
「先生はどこへ向かったのかしら……そうだ、確か“閉ざされし霊廟”って言っていたわ。何か手がかりが残っていればいいけど」
懸命に記憶を辿りながら、ライラが本棚を調べていく。自分では判断できるわけもないが、俺も何となく関係していそうな物を探す。
机の隅に、小さくたたまれたメモがあった。それに壁には地図のようにも見える古いタペストリーがかかっているが、そいつが妙に気になる……
「おっ? この棚、隠し戸があるぜ……ほら、開いた」チャダルが声を上げた。そこには古い羊皮紙の巻物が収められていた。
これらの品を調べる前に、このパラグラフの番号を記録しておくこと。
全て調べ終わったのなら、その時は45へ進め。

だが、そこまでだった。始末した番人の死体が奴らに見つかっていたのだ……
377へ。

鋭い軌跡を描く奴の剣先をかいくぐり、俺は手にした武器を繰り出した。その刃は敵の鎧を貫き、敵は体勢を崩して地面へと落ちた。
奴に一太刀入れることはできたが、まだ敵を仕留めるところまでは行っていない……慄く馬を横に、奴は立ち上がった。
「その見た目に油断してしまったようだ……。しかし、この僕に傷をつけるとは、さぞ名のある騎士だったに違いない。君は、いったい何者だ?」
自分の名を名乗るのなら382へ進め。
相手の言葉に耳を貸さず、無言のまま戦い続けるのならば、42へ。

「悪いな、ライラ。お前の師を信用しないわけじゃないが……万一ということもありうる。ここは万全を期したい」
ライラもうなずいた。
「気にしないで、バジャー。私から見ても先生は……その、ちょっとおかしかったと思う。きっと、狂気が先生にとりついたんだわ」
「……お、ここに悪くねぇもんがあるぜ」
チャダルが橋のたもとに落ちていた酒瓶を拾い上げた。見ると、確かに犬の頭らしき意匠が凝らされている。逆さにして振ってみたが、何も零れ落ちてはこない。
「きっと旅の安全を祈って川に捧げられたお酒だわ。このあたりには、そういう風習があるの」
「そりゃ、縁起いいじゃねぇか。こいつにしちまいなよ、旦那」
俺は仮面を川に投げ込み、代わりに仲間が見つけた“頭”を戴くことにした。
頭が犬頭の酒瓶になったことを忘れずに、64へ。

ほとんど前も見えないほどの砂嵐の中をかき分けながら、一歩一歩進んでいく。どこまでこの砂漠は続いているのだろうか……
首無し馬に乗っていないのであれば、命運値を1減らさなければならない。未だ天運に見放されていないのであれば、まだ歩を進めることができるが、もしもここで命運値が尽きてしまったのなら319へ進むこと。
方角も不確かになってきたころ、不意に巨大な影が現れた。すぐ近くに、枯れた一本の大樹が斜めに突き立っている。巻き上げられた砂のせいでまったく見えていなかったのだ。
木は砂を避けるには頼りなく、ここで立ち止まっても良いことはなにもない……
枯れ木の右側を進むのならば15へ進め。左側を進むのなら436へ。

今現在、同行者がいるのであれば293へ進め。そうでないのなら、暗闇の中で落ちた頭を探すことしかできない。だがそれもわずかの間だけだ……敵が一声呻き、足元に転がった俺の頭を踏み砕いてしまう。通路にその絶望の響きが飲み込まれていくが、俺にはそれすらも聞くことができない。失われた頭を探し続け、閉ざされた宮殿の中を手探りで彷徨うことしかできないのだ……
こうなってはもう打つ手はない。いずれ侵入者に気づいた退魔師によって発見され、祓われてしまうだろう。遅かれ早かれ、その時は必ず来る……

亡霊の圧に抑え込まれた俺の身体を炎が舐めていく……実体の無いはずの亡霊の身体に焼かれる痛みが奔った。握りしめていた武器も、いつしか手から抜け落ち、最早立っていることもままならない。うずくまり、地に付している俺の前まで来ると、敵は異様に長い指を伸ばしてきた。その黒い指先で俺の額に触れ、小さくしかしはっきりとした声で判決を下す。
「――有罪。監獄の塔に幽閉を命ず」
炎がさらに勢いを増し、黒衣を纏った異形の姿を覆い隠した。ファファスタスに仇なす存在は例外なく、あの塔に囚われることになるのだ……
……だが、まだ希望は残っているかもしれない。そう、仲間がいれば……
同行者がいるのであれば304へ進め。
いないのなら、33へ。

鍵には白く光る宝石がついていた。
月長石の鍵を入手したことを覚えておくこと。364へ進め。
ただし、すでにこの鍵をもっているのであれば、当然ここには何もない。

下へと続く階段を背に回廊を突き当りまで進み、左側の壁に扉がある場所まで進む。この先はどうなっていたか……俺は記憶を探ってみた。
回廊を戻り、別の方向へ行ってみるなら10へ。
扉を開けて中へ入るなら2へ。

「俺たちはこのまま関所を超える! カルルームで落ち合うぞ!」
チャダルは誰にも咎められることなく国境を超えることができるだろう。だが、一旦はチャダルとは別れ別れだ。
霧の中で馬が走り出したことに気づいた刃の騎士たちが、馬を返そうとしているのが視界の端に見えたが、チャダルがうまいこと邪魔しているのか直ぐには追ってこない。
だが追手がかかるのも時間の問題だ。今となっては最早、このまま関所を強行突破するしかない。ライラが振り落とされないように抑えつつ、俺は馬を急がせた。やがて前方の霧の中に、長く左右に上る塁壁の影が浮かんでくる。関所は近い……!
367へ進め。

街道を外れ、老婆に聞いた話を思い出しつつ、それらしい抜け穴を求めて木々の中を探す。月明かりが霧でぼやける中での捜索は難しいかと思われたが、運のいいことに、程なく岩の間に小さな洞穴が見つかった。大人が通りぬけるのには難儀しそうな狭さだが、小柄なライラなら行けなくもなさそうだ。俺の“頭”と武器も何とかなるだろう。
「風が吹いてくる……ということは、反対側に抜けているってこったぜ」とチャダル。生前、盗賊家業をしていたころはこういう抜け道をよく利用していたと、したり顔だ。だが、あの老婆の話によれば、この洞穴は相当古いものということになる。途中で崩れてこないとは限らない……
この抜け穴を使うつもりなら195へ。
万が一崩れでもしたら生き埋めだ。やめておいたほうがいいと判断するのなら、ここはあきらめて関所をどうにかして突破することを考えるべきだろう。その場合は427へ進め。

ライラが纏う外套を指でなぞりながら、老婆が呟く。「……うむ。これならば問題なかろうて」
その時、俺の注意は天幕の外へ向けられていた。何者か――おそらくこの商隊の者だろうが――が近づいてきたのだ。小走りに迫ってくる足音からして、急ぎの用らしい。
「お頭……よろしいでしょうか?」
入ってきたのは、さっき見た男たちの一人だった。男はライラを一瞥し、老婆の元へと歩いていく。そして手にしていた巻紙を解き、老婆と小声で二言三言交わす。
チャダルが顔色を変えながら呻いた。「奴が持ってきた紙……ありゃぁ、手配書だぜ」
男は隠れている俺の横を通り、再び天幕を出ていく。老婆が立ち上がった。
「……刃の連中に手配されておるね。それもかなりの懸賞額じゃ。お主を気に入ったワシとしては匿ってやりたいが、若い連中はお主を捕らえるべきと主張しておる。この商隊の存続にかかわる問題じゃから、彼らを責めることもできん。
よいか、一刻も早くここを出て身を隠すのじゃ。時間を稼いでみよう……ゆめゆめ、関を正面から突破しようなどとは断じて思うでないよ。さあ、裏からお行き。幸運が共にあるうちに」
天幕を出た老婆のもとへ商隊の者どもが集まってきた。わざと彼女が部下たちにあれこれ回りくどい指図を出している間に、俺たちは天幕の裏側から抜け出し、遠くへと離れる。
馬はおいてきてしまったが、ライラの命には代えられない。あきらめるより仕方ないだろう。無事に済んだだけでも上出来だ。
99へ進め。

追ってきた亡霊騎士は俺のところまで来ると馬を止めた。首のない馬がその断面からいななきと思わしき声を漏らす。馬上の騎士は整った顔立ちをしていたが、その眼光は並みならぬものがある。生気あふれる若者というほどではないが屈強さと老獪さを兼ね備え、武を誇るならば最も力量確かな年頃だろう。生まれの年代は知らないが、少なくとも俺よりは長く生きたに違いない。
「勇敢な騎士、それも首をなくした者は嫌いじゃないが……不本意とはいえ、任務を帯びている身なのでね。邪魔をするなら斬らせてもらおう」
奴の声、身振りが何かを思い出させようとしている。以前――いや、生きていたころに顔を合わせたことがあるのかもしれない。よく見てみれば、奴の馬具に見知った紋章が施されているではないか……刃の血族の紋章だ!
「首無しでは話も無理か? まあいい……用があるのはあの少女だけだ。通してもらうよ」
こいつは明らかに亡霊だ。だが、刃の血族が亡霊を使役するなどありえるだろうか? 俺が答えずにいると、抗戦の意志ありと取られたのだろう。奴は剣を――実体の無い、霊体の……おそらくは生前幾度となく死線を共にした愛剣を――抜き放った。
俺が武器として選んでいるのが、除霊の短刀であるならば332へ。三日月刀であったなら、419へ。
奴と同じく、生前から使っていた剣であるならば310へ。それぞれ進め。

ここはライラが閉じ込められている牢獄の正面だ。左右に通路が続いていて、どちらも少し行ったところで牢獄部屋を取り巻くように折れ曲がっている。足元には埃が積もっているが、鉄格子の端から右へと向かう足跡がうっすらと残っている。
「三日ごとに近くの兵隊が一人、嬢ちゃんにメシを持ってくるんだ」
チャダルが吐き出すように言った。「……全然足りゃしねえ。だから、俺っちが外から調達してくる必要があるってわけ。兵隊なんて碌なもんじゃねぇよ。可哀そうとも思っちゃいねぇんだ」
しばらくの間、チャダルと行動を共にすることになることを忘れないように。

アミュレットに傷があるのなら272へ進め。
傷など無いのであれば308へ。

俺は武器を手に、亡者たちに躍りかかった。“頭”が打ち落とされないに気を付けながら、朽ちかけた亡骸を相手に刃を振るう。しかし多勢に無勢。明らかに効いてはいるのだが、どうしても決定的な状況打破とはならない……。手間取っているうちに、新たな亡者の群れが姿を現した。闘争の喧騒に引き寄せられてきたか!
こうなれば最早、できることは我武者羅に戦うことだけだ。半ばやけくそになりかけたその時、背後からやってきた亡者たちが武器を突き出した……俺ではなく、俺に向かって武器を振り上げていた奴らへと。
たちまち乱戦となった。程なく何体かの亡者が倒れ、地面に散る。味方となった奴らの武具に紋章が描かれているのが見えた……書の血族のそれだった。
やがて武器を打ち合う音もまばらになり、最後まで立っていた亡者も力尽きて骨の山へと戻る。
8へ進め。

「……近くにいるわ」ライラがぽつりと呟く。次の瞬間、馬が何かに怯えたように首をもたげ、足を止めた。もう俺にもわかる。背後から鎧の鳴る音が聞こえてくるのだ。周囲の空気がどんよりと蠢いたと思った瞬間、それは――いや、そいつらは姿を現した。
ボロボロに錆びついた甲冑に身を固めているのは、4体の白骨死体だ。肉無き腕で構えた盾に描かれているのは、見間違えるわけもない……書の血族の紋章だった。
俺は武器の柄を握り、連中とライラの間に立ちはだかった。120年前は間違いなく味方だったこの亡者たちは、今もその忠誠心を失っていないのだろうか? それとも、出会うものは誰彼構わず襲うだけの存在となり果てているのだろうか?
「旦那……逃げたほうがいんじゃねぇかな……。こいつら、話が通じるとは思えないぜ」
チャダルが情けない声を上げる。
逃げたほうがいいと判断するのなら8へ。
この場に留まるのであれば329へ。

身体が重い。そうか、鎧のせいで重いのだ。腰のあたりに手をやると、剣が下げられているのが分かった。握りなれた柄を確かめ、少し安心する。
しかしここはどこなのだろうか……何も見えないし、何も聞こえない。わずかに湿った空気が感じられるが……
不意に、視界が一気に開けた。眩い光が双眸に差し込み、自分が今いる場所の様子が像を結ぶ……と思ったのだが、ぼんやりとしか見えない。かろうじて、そこそこ広い室内であることがわかった。最初感じたよりも暗いようだった。
「……頭、それで大丈夫かしら?」
幼い声が聞こえてきた。「まさか、首無しのままとは思わなかったから」
そう言われて頭に手をやってみると、何やら固いものに当たった。陶器か何かのような手触りだ。どう考えてもこれは俺の頭ではない。いったいどういうことだ? 何が起きている?
俺が戸惑っているのを察したのだろうか、再び声が聞こえた。
「こっちを見て。貴方の後ろよ」
振り返ってみると、淡いぼんやりとした塊が見えた。それが白い服――少々薄汚れているが――を着た金髪の子どもであることに気づくのに少し時間を要した。声は少女と思えたが、髪は短い……男のようだ。そうか、罪を犯した証として切られているのだ。
さっきよりはましになってきたが、まだ視界がぼやけている。くそっ、何もかもがわからない。記憶も曖昧なところがあるようだ……そうだ、俺は死んだはず……蘇ったとでもいうのだろうか?
少女にそれを確かめてみるのなら153へ進め。それよりも自分の頭がどうなっているのかが気になるのであるなら356へ。

「嬢ちゃんだけどよ……ありゃ、きっとまじないで縛られてるぜ」チャダルが囁く。
それが聞こえたのか、老人は歪んだ笑みを浮かべた。
「その通り……目端が利くようだな。じゃが、もう儀式はほぼ完了している……あとは、この娘が呪言を唱え終わるのを待つばかりだ。その間に、ワシは貴様らを排除するとしよう」
ファファスタスが迫ってくる。強力なまじない師という正体を隠す必要もない今となっては、その一歩にすら力が満ちているのが感じられる。決して老人と侮ることはできない。
「こいつは俺が食い止める……お前はその間に……」俺の言葉にチャダルは頷いた。
俺の“頭”を見たファファスタスが笑みを浮かべ、口の中で何か呟く。その瞬間、俺の視界はどす黒い瘴気で覆われた。くそっ、アミュレットに何か仕掛けられていたらしい。力が抜けていく……!
BATTLE 
サイコロを一つ振れ。そして武器などから得られる戦力ボーナスを加える。
出目が「6」であれば、さらにサイコロを振って加算せよ。
(ただし、「1」が出た時点で自動的に敗北となってしまう)
得られた値と、敵の戦力を比べよ。同点以上であれば勝利だ。
敗北を喫した場合でも、命運点を1消費することで再挑戦できる。
決してあきらめることなかれ。
俺が何とか敵を引き付けている間、チャダルは独自に動くことができる。だが、俺が負けた時にはファファスタスに邪魔されてしまうだろう。そうなってしまったときは471へ。
勝った時には、チャダルもまた見事課せられた仕事を成功させる。チャダルに頼んでいたのが……
ライラの呪言を止めさせようとしていたのなら314へ。
ファファスタスの隙をついて一撃を喰らわせようとしていたのなら44へ。
ファファスタスから何かを盗ませようとしていたのなら355へ。

街道をうかがうことができる岩陰に潜みながら、王都を出入りする旅人や商人たちが行き交うのを観察する。そうする理由はもちろん、この“頭”と武器だ。これだけ人通りが多い中では、これらを隠しとおすことは難しい。それに、王都の門では衛兵や騎士が不審な侵入者がいないかどうかを厳しく見張っているに決まっている。
しかし方法がないわけではない。雑多な品を扱う商人の荷車を見つけ、その中に潜り込むことさえできれば……。
はたして昼過ぎにまさしく注文通りの荷車が通りかかったので、俺は頭を荷に紛れさせて王都へと入ることができた。門を守る衛兵は密かに都へ入ろうとする不審者を探していたのだろうが、こっちは姿なき亡霊だ。見咎められるわけもない。
人目が切れた瞬間を逃さず荷車から滑り降りる。あとは人気が無くなる夜まで息をひそめ、王宮へ向かうことにしよう。そして、ファファスタスが言っていた剣を玉座から抜くのだ。
やがて日が落ちる。だがさすがは王都だった。街の灯りは消えることを知らず、人々も活気づいたままだ。さすがに深夜になれば皆寝静まるだろうが、今のうちから移動しようとするならば、薄暗い裏路地を選ばなくてはならない。
深夜まで待つのであれば157へ。今から見つからないよう慎重に行動を開始するのであれば、492へ進め。

ライラの体力を考えると、馬が必要だ。
そう考えていた矢先、街道の先を探りに先行していたチャダルが、少し行ったところで野営している旅商人が馬を数頭連れているのを見つけてきた。まっとうな商いに励んでいる男には悪いが、ここで一頭いただかない手はない。
ライラは盗みを躊躇したが、必要なことだと二人がかりで説得した。馬を扱うことができないというチャダルをライラの護衛に残し、俺は一人で馬を奪いに向かう。
しばらく行くと奴が言っていたとおり、馬が数頭、木につながれているのが見えてきた。近くには荷がおろしてあるようだ。静かに近づいていくと違和感を感じたのか、一頭の馬が辺りを探るような仕草を見せた。音を立てないよう気を付けながら縄を解き、一息に飛びのる。見えない乗り手を振り落とそうとする馬の首に手を当ててどうにか言うことをきかせながら走らせる……商人が異変に気付いたころには、とうに俺はその場を離れていた。
ライラとチャダルと合流した後、どうやって馬に乗るかをしばらく試行錯誤する。いろいろ試してみたが、結局三人で馬に乗ることで落ち着いた。まず俺が乗り、手綱を握る。ライラが俺に重なるようにしてやはり馬に跨り、最後はチャダルだ。ライラと俺には身長差があるため、彼女に俺の“頭”がぶつかることはない。チャダルはライラが落ちないように身体を支える役だ。武器を操ることもおぼつかないチャダルだが、それでもいないよりはましだろう。
馬は一人の少女と二人の亡霊を乗せているわけだが、加重はわずか一人分、それも子どもの重さのみだ。これならライラに無理をかけることなく、旅することができるだろう。
馬の持ち主に出くわさないように少し南へ戻り、別の道を辿ることにする。多少の遠回りも、馬があれば問題はない。
171へ進め。

不意に視界が閉ざされ、音も消え去った。何者かが俺の“頭”を奪いさったのだ。こうなっては何もできない……ただ闇雲に彷徨いながら、何か手に触れるものがあれば首へと持っていき、落胆するということを繰り返す。その間、俺の感覚は本来の“頭”に戻っていた。
……俺の頭はどこか暗い場所に閉じ込められ、大きく揺られているのだった。こんな状態では、首の代用品を探すことに集中することもできやしない。
どのぐらいこうしていただろうか……不意に一条の光が差し込み、俺の顔を照らす。狭い口からの光はすぐに消えたが、その代わりに俺を見下ろす目が現れた。ここは壺か何かの中で、誰かが覗き込んでいるのだ!
「……バジャー、まさか本当に君だったとはね」
衝撃とともに一気に世界が開けた。俺の首を収めていた入れ物が地面に落ちて割れたのだ。だが俺は生首の状態で転がり、目の前に立つ一人の騎士を見上げることしかできない。
「書の騎士バジャー。君は僕にとって、ついに届かなかった剣士だった……。せっかく蘇ったというのに、なんてザマなんだ。これじゃ剣を交えることもできない」
嘆くように呟く相手の声には聞き覚えがあった。いや、もっと若い声だった……そうだ、この男はかつて俺の首をはねた、あの時の追手の騎士だ! しかしあれから120年が経っているはず。つまりこいつも……俺は声を絞り出した。
「お前も……誰かに呼び出されたのか……。何故、俺の首を持っている?」
「あの時、氷霧の森で僕はアイシャ姫を狙うよう仲間に合図した。結果、君の首を取りはしたが、あれは実力じゃない。君の動きは明らかに鈍っていた……姫に気を取られたってわけだ。
僕が騎士バジャーよりも優れた剣士であることを証明する機会は永遠に失われた。皆は僕の腕を褒め称えたが、なんの慰めにもなりはしかなったよ。ほかならぬ僕自身が、そうではないことをよく知っていたからね」
「そんなことはどうでもいい……お前の目的はなんだ? 誰のために働いている!?」
奴は俺を無視して続けた。
「僕はあれから、死ぬまで不敗を貫いたよ。剣の衰えを感じる歳になって、自刃したんだ。それまでの間に多くの決闘を重ね、その全てに勝利した……君の最強を護るためにね。だってそうだろ? 君が最強でなくちゃならない。僕が勝てなかったのは君だけなんだから。
それなのに……首だけだなんて、酷い再会だよ。だけど、それも僕のせいだ。僕が君の首をずっと首壺に入れていたから……すまない、バジャー。本当に……」
俺の言葉には一切耳を貸さず、奴は剣を抜いた。
「……唯一尊敬する騎士がこんな姿でいることに僕は耐えられない。さようなら、バジャー……」刃が風を切る音とともに再び闇が全てを包み……そして……

螺旋階段の上から階下をのぞき込む。下の階の天井は高く、どうやらもうここが地上階らしい。四方の壁は全て石造りの大広間となっている。大扉は開け放たれ、差し込んだ光で闇が凝縮されたように、左右に深い影ができていた。数日は流れていなかったであろう空気が積もった埃を渦と巻きあげる中、一人の男が立っているのが見える。その手に桶は無い。食事を運んできたわけではないのだ。
「例の娘は……最上階か」
そいつはゆっくりと確かめるように広間を見渡し、奥にある螺旋階段――俺のほうへと歩き出した。
俺は斧を手に、二階で待ち受ける……。
螺旋階段を一歩一歩上ってくる足音を聞きながらじっと待ち、奴の頭が見えると同時に斧を振り下ろす。だが斧は床を砕いただけだ。奴は咄嗟に身をひねり、俺の一撃を躱していた。
「そうか、幼いながらにまじない師だったな……死霊術師か。こんな重い得物を振り回すとは、相当に強い霊のようだ。しかしなんだ、その頭は。こんな亡霊は初めて見るぞ」
446へ

少しばかり戻り、それから農地を突っ切る。
「ここよ……おばさんの家は。……そのはずなんだけど」
「どうみても廃墟だな」
何があったのかはわからないが、明らかにもう誰も住んでいない。周りの畑も雑草が伸び放題になっていた。
ここにいても何も得るものはなさそうだ。先へ進むべきと俺は思ったが、ライラはもう一か所だけ寄りたいところがあると言う。
478へ。

俺は黙ってライラとファファスタスのやりとりを聞いていた。確かにこの老人はかつてライラにまじないの手ほどきをしたらしい。そこに嘘は感じられなかった。
やがて二人の話は終わり、ファファスタスは熟考に入ったようだ。ライラは何も言わない老人をきまり悪そうに見ている。
「……やっぱり、ご迷惑でしょうか? 私が刃の血族に捕まったのも、先生の言いつけを守らなかったからです。それなのに先生を危険に巻き込んでしまって……」
ファファスタスはライラの言葉を遮った。
「だが、こうしてここで再会したことにも意味があるとは考えられんかね。それに、ワシがまじないを教えていなければ、お前は無事にここまで戻れなかったであろう。様々な運命の糸が絡んだ結果、今日という日があるのだ。なれば……これも必然かも知れぬ」
そう言って、老人は俺のほうに目をやり、言葉を継いだ。
「騎士殿の頭となっている兜。それはかつて書と刃の血族が戦った、120年前ごろの様式と見える……貴殿もおそらくは、あの時散った騎士の一人なのではないかな? ライラを助けてくれているのだ、かつて書の血族に仕えた勇者と、ワシは思いたい。
貴殿を信じて明かそう。ワシは書の血族の生き残りだ。そして、このライラも書の血を引いている。貴殿をこの世に呼び戻しておることがその証だ。死霊術は決して簡単なまじないではない……人の魂と魂を結わえるには、高貴な血による資質が必須となる。でなければ、せいぜい呼べて小動物の霊までだろう。彼女の魂と貴殿の魂は類まれなるまじないによって結ばれておるのだ」
その言葉を聞いて、思わずライラは立ち上がった。「……でも、お父さんもお母さんもまじないなんて、できなかったわ」
「我らの一族が奴らに襲われたのは120年も前の話だ。運よく生き延びた者も、その素性は隠そうとしただろう。己が子を護るため、あえて何も伝えなかったとしても不思議ではない。お前の両親……おそらく父親であろうが、自らに流れる血について何も知らなかったのだろう」
211へ進め。

奴一人では、まじないの成就は難しいはずだ。だからこそ奴はライラを欲したのだ。となれば……ライラを引き離せばいい!
「ライラ! 俺だ。わかるか?」大声で呼びかけるが、小さなローブの姿はこちらを振り向こうともしない。だが、今一人の人物は俺の声に反応して振り返った。その表情は怒りに満ちている。
「儀式の邪魔をするのはお前か……首無しの騎士よ……!」
チャダルが一緒にいるのなら116へ進め。
いないのならば、25へ。

木々の下生えの間から姿を現したのは、一人の老人だった。手にした杖の先にかすかな青白い火を灯し、白い花を二房手にしている。
「……おや。亡霊の客人とは珍しいな」
どうやら俺の姿が見えているらしい。その声を聞いてウロから出てきたライラは安堵の表情を浮かべた。「先生……お久しぶりです」
先生と呼ばれた老人は驚いたように眉をあげる。
「ライラではないか……よく無事でいてくれた。その首無しの御仁はお前が呼び出したのかね? 軽率にまじないを使うのは良くないと警告したはずだが……」
ウロの中には地下へ降りるための梯子があり、その下にはちょっとした住まいが作られていた。老人が煙の出ない魔法のランプに火を入れると、亡霊ならぬ者の二つの影が光に追いやられて壁のほうへ伸びる。彼はライラへ腰かけを勧め、自身は古い木製の揺り椅子に身を沈めた。
「この時期の夜にしか咲かない薬華を採りに出ててな……山歩きの後はこの椅子でないとダメなのだ。楽な恰好で失礼させてもらうよ。
さて、ライラ。お前が密告されたと聞いて、もう会えることはあるまいと思っておった……。安心するといい、ここはワシのまじないによって護られている」
老人はファファスタスと名乗った。ライラが閉じ込められていた塔からどうやって脱出したかを語っている間、俺は黙って老人を観察していた。この男は信頼に足る者だろうか?
「……そうか、貴殿がこの娘を守ってくれたのか。まじないが目の敵にされているこの時代、一たび捕らわれたライラが、今こうして故郷にもどってこられたことは奇跡に近い。ひとえに貴殿の働きによるものだろう。ワシは、この娘の師と呼ばれるのもおこがましいただの老人だが……それでも礼を言わせてくれ」
ファファスタスは、そう言って俺に頭を下げた。
今、俺の頭となっているのは何だろうか? 次のいずれかであるはずだ。
鉄兜(267)、鍵(74)、木彫り(306)、落書きされた石(482)
それぞれ指示された行先へ進め。

「この樹、知ってる」
次の夜、道を進みだしてしばらくした時、道端にそびえる大樹を見上げながらライラが言った。「昔、よく登って遊んだわ……もう村はすぐそこよ」
レザニアとは如何なる集落なのかを確かめようとして、俺は目を凝らした。この先で木々の密度が薄くなり、開けているようだ。
「うぐ……っく、何だ……? あつっ 顔が……竜が熱い!」
突如、チャダルが顔を搔きむしって悶え始めた。地面に身を投げ出し、呻き続けている。そのただならぬ気配が判るのだろう。馬が落ち着きをなくしたので、俺はライラが振り落とされるまえに彼女を下ろしてやらねばならなかった。
「貴方……刺青が!」
チャダルの様子を心配そうに見ていたライラがはっとして言った。彫られた竜の入れ墨が赤くなり、顔を押さえる指のあいだから鈍い光が漏れている。今やチャダルは息絶え絶えとなり、心なしか姿もぼやけて見えた。ライラがその手を握るように添えると、奴は落ち着きを取り戻したのか、姿も再び安定してきたようだ。
「こいつはきっと、呪いの刺青なんだ」チャダルはレザニアに背を向けて縮こまり、ガタガタ震えながら話し始めた。姿の乱れは収まっていたが、竜は変わらず赤く燃えて続けている。
「盗賊がこんな目立つもん、好んで入れるかよ……俺っち知らねぇ! いつの間にか竜が……捕まって縛り首になっちまったのも、きっとこいつのせいなんだ!」
チャダルは首をさすりながら言った。死んだときのことを思い出したせいなのか、その首には縄の跡が浮かんでいた。
「……竜が熱くて、焼け死んじまいそうだ。亡霊になっちまってるのに、やっぱりもう一度死ぬのは怖いんだよ。どうして刺青が燃えてるのかはわかんねぇけど……俺っち、こっからもう一歩も踏み出せねぇよ……」
ライラは近くの茂みからユーフォミアを摘んできた。ライラによれば、荒ぶる心をなだめる性質があるというが、薬草学に明るくない俺には初耳だった。ライラが手際よく薬草をつぶし、鮮やかな緑の汁を使ってなにやらまじないをかけたが、チャダルの刺青が発する熱が収まる兆候は一向に見えない。チャダルはもうここから動かないと決めているようで、夜が明ける前に早く行けと言うばかりだ。
こうなってはしかたがない。俺とライラは奴に馬を預け、二人だけでレザニアへと向かう。この村にチャダルの刺青が反応した“何か”があるのだろうか……
チャダルと別れ、398へ進め。

カルルームへ入るときには三人だったが、今は二人だ。俺たちは何も言わずに国境を越えた場所へ戻り、再び生まれた国へと踏み込んだ。
「あの亡霊騎士……明らかに何者かに使役されていたわ。そんなことができるのはまじない師だけのはず。でも、刃の血族にはまじない師なんていない……」
マールバハールに入ってからしばらくたって、ライラが言った。確かに彼女の言う通りだ。脳裏に一人の男が浮かび上がる。俺が知る、この時代に生きる書の血族は多くはない。まずライラ。そして……
ライラもそれ以上は何も言わなかった。しかし、師への不信感を募らせているのは明らかだ。
344へ。

「旦那! 諦めるな!」
俺が苦戦しているのを見て、チャダルも柄に手をかける。一人では不可能と思われたこの難題だったが、二人がかりで力を込めていると、やがて剣がわずかに滑りはじめた。そして、次第に刀身が露わになっていく。
「すげぇ……こいつはすごいお宝だぜ。俺っちにはわかるよ」
チャダルが目を見張る。目利きでは奴に劣るであろう俺にとっても、それは明らかだった。
剣には文字が刻み込まれている。まず間違いなく、まじないの文言だろう。残念ながら俺にもチャダルにも読めなかったが、国土の魔力を封じていたという曰くつきの剣だ、何かしらの力を持っているには違いなかった。持っていくべきだろう。
そう、これは魔封じの剣なのだ。今後は戦いにおいて戦力に3を足すことができる。
今までもっていた武器があったとしても、それは置いていかなければならない。だが、それを補って十分な武器のはずだ。
さあ、あとは脱出するだけだ。あまりもたもたしていると、異変を察して衛兵どもが押し寄せてくるかもしれない。この塚の入口は一つだけだった。あそこを塞がれてしまってはおしまいだ。俺たちは急いで玉座の間を離れることにした。
297へ進め。

幸いにして、今の俺の頭はどこにでもあるような石ころだ。落書きの部分を下にして地に伏していれば、目立つことはない。連中は俺に気づくことなく、そのまま通り過ぎて行く。
「しかし今日は獲物が居やがらねぇ……もう少し行ってみて、ダメなら引き返すか?」
「馬鹿言うなよ。手ぶらで帰ってみろ、村長にどやされるぜ。タマリンド近くまでいきゃ、何とかなるだろ……」
「待てよ、あすこにゃ兵士が駐屯してるはずだ。面倒は避けろとも言われてるし……もう少しだけ行って誰もいなけりゃ戻ろうぜ」
「そうだな。そうするか……」
二人が腰に下げている鉈は大仰で、会話の内容からしてまともな連中ではなさそうだ。辻強盗か追剥といったところだろう。どうやら村ぐるみで悪さをしているらしい。
連中が向かう先にはライラとチャダルがいる。しかし俺がここまで来た速さを考えると、あそこまで人の足でたどり着くにはまだまだ時間がかかるはずだ……
ライラのことはチャダルに任せ、馬の入手を優先するのなら、392へ進め。
今、この場で背後から二人に襲い掛かるなら59へ急げ。

詰所の奥に、塚の中へと続く通路があった。先を覗いてみると、内部にも石が詰め込まれているのが見える。最早かつての栄華はどこにも感じられない。
目指すは玉座の間。記憶が確かなら、宮殿の中心にあったはずだ。衛兵たちが異変に気付く前にと、俺は入口へと身を滑り込ませた。
12へ進め。

砂丘を超えると、そこには大きく口を開けた断崖が現れた。巨大な地割れが行く手を遮っていたのだ。乾いた砂があちこちで雪崩落ちていて、地割れを半ば埋めている。
切り立った岩肌の中に、一か所明らかに人の手による入口があるのが見えた。間違いない……ついに、マールバハールの王たちが眠る霊廟にたどり着いたのだ!
今の俺の“頭”となっているのは何だろうか?
カルルームの石像、まじないの仮面、あるいは犬頭の酒瓶である場合は470へ進め。
それ以外の品ならば225へ。

霧に紛れて関所の様子を伺ってみたが、常に兵士の姿は絶えず、二人より減ることもない。カルルーム側の出口にも兵は配置されているだろうし、その間も無人ということはないだろう。国境ともなれば守りが厳重であろうと覚悟はしていたが、予想通りこれを突破するのは難しそうだ。チャダルが不安そうに声を漏らす。
「どうするよ、旦那。あんまもたもたしてっと、さっきの連中が戻ってくるぜ」
俺たちは手早く計画をまとめ、行動に移した。先ずチャダルが関所へ向かい、騒ぎを起こす。その間に――退魔師がすぐに出てこなければ、十分その時間はあるはずだ――俺とライラは身を潜めながらできるだけ関所に近づいておき、警備の兵たちの注意が逸れて手薄になったのを見計らい、一気に関所を駆け抜ける。その間、ライラを護るのは俺の役目だ。チャダルはできる限り騒ぎを大きくして時間を稼ぎ、それから国境を超える。落ち合う先はカルルーム領内だ。
一旦チャダルとは別れ別れだ。だが、程なく会えるだろう……全てがうまくいけば。
しばらくすると、兵士たちが騒ぐ声が聞こえてきた。
「おいっ、あっちの篝火が倒れてるぞ!」
兵士たちは慌てて火を消そうと持ち場を離れた。すぐにまた別の篝火が倒れる。チャダルの仕業だ。
「このまま一気に突っ切るぞ!」
俺の言葉にライラはうなずき、ともに走り出す。関所の中で敵と鉢合わせた時のために、俺は武器を握りしめた。
ここで命運値を1消費するべきと考えるのなら、488へ進め。ただし“頭”が幸運のお守りであるのなら、命運値を減らさずともよい。
そうは思わない、あるいはしたくてもできないのであれば……432へ。

アミュレットに傷はついているだろうか?
もしもついているのならば485へ。
傷など無いのであれば、359へ進め。

奴の一撃を受け、俺は床へと崩れ落ちる。ファファスタスは死霊術を修めたまじない師だ……ともなれば、亡霊を霧散させることもできるのだろう。俺の身体は大きく抉られて、人の形を成していなかった。ライラも床に倒れたまま動かない。
「ライラはもう助からんじゃろう……ワシの夢は潰えた……120年もかかったというのに、全て無駄になってしまった……!」狂える老まじない師の嗚咽がこだまする。もう俺には、次の一撃を耐えきることはできない。確かにファファスタスの野望を食い止めることはできた。だが、そのために払った犠牲は大きすぎた……またしても、俺は護るべき人を護れなかった……

鍵穴に月長石の鍵を滑り込ませ、回してみる。カチリと小さな音が通路に響いた。
406へ

しかし、先ほどから聞こえるあの鐘の音はどうにも不安になる。俺は鐘が再び鳴り響く前にと、先を急ぐ。扉の向こうには上に続く螺旋階段がある部屋があった。
階段を上ってみると、長い回廊の南端に出た。先を窺うと、ずいぶん先へ行ったところで左へ曲がっているのがわかる。もしもこの塔がライラが囚われていた塔と同じ造りをしているのだとしたら、この先には牢があるはずだ……。
その読みは当たった。回廊を曲がると左側は鉄格子になっていて、その先の突き当りで通路はさらに左に折れていた。
ライラがここに囚われているかもしれない。俺の脳裏に初めて彼女と会ったときの様子が蘇る。せっかく自由になれたというのに、軽率にもあの老人を信用したことが悔やまれた。
俺をあざ笑うかのように、またしてもあの鐘が鳴る。
TOLLING
鐘が鳴った回数を記録しておくこと。ここでは1回追加だ。
牢の中を覗いてみるのなら155へ。
回廊の先を確かめるのであれば241へ。それぞれ進め。

月明りの中、丘の間を縫うように続く街道を南へと進む。目指す村へと至る道は何本かあるが、ライラの体力を考えると、もっとも移動距離が短いであろう道を選ぶ他に選択肢はない。
やや気負いつつも旅を始めてみたが、王都から離れていることもあってか誰とも出会わない。このあたりでは、夜通しかけて集落の間を移動するような行商人も稀なようだ。身を隠しつつ移動しなければならない身としてはありがたいが、ライラの足ではどうしても距離を稼ぐことは難しい。さして進まないうちに東の空が白んできた。
「私、もう寝ないとダメみたい……貴方たちも日の光の中では力が弱くなるから、昼の間は隠れているほうがいいわ」
疲れ切った顔で目をこすりながら、彼女は道脇の茂みをかき分け始めた。チャダルが慌てて後を追う。「ちょ、ちょっとまってくれよ、嬢ちゃん。蛇とか潜んでるかもだからよ……夜明けの蛇はよく噛むんだぜ?」
あの塔を出たのが、既に夜半過ぎだった。その後、村でひと騒ぎを起こして……そこからずっと歩いてきたのだ。疲れもたまっているだろう。ましてやライラはまだ幼い。彼女の言う通り、ここらで休息をとるのがよさそうだ。俺も二人の後を追い、街道から外れた場所に身を隠す。
「メシも食わねぇで、寝ちまった。これじゃ嬢ちゃんの身体がもたねぇよ……どっかで馬かロバを見つける必要があると思うね」
「同感だな……この先に集落でもあれば、馬が手に入るかもしれん」
俺たちは地図を広げた。現在地を確かめ、道が続く先を辿ってみれば、確かにタマリンドと同じ規模の村があると読み取れる。
「この先といっても、こりゃだいぶあるぜ。嬢ちゃんの足じゃ夜通し歩いたとしても二日……いや、三日はかかるだろう」
「俺かお前が一足先に行って、馬を盗んでくるならどうだ?」
「なるほど……そいつぁいいね。というか、それしかねぇって感じだ。当てが外れて馬が見つからなかったとしても、先々のことがわかるってのは大きいぜ」
奴はにやりと笑みを浮かべた。こういうところはいかにも盗賊だ。さて、そうと決まれば動くのは早いほうがいい。だが俺たちのどちらがライラの元に残るべきか……?
俺が単独行動をする場合、“頭”の不安がある。よほど気を付けなければなるまい。だがチャダルはチャダルで、聞けば馬の扱いはさっぱりだという。奴一人では馬をここまで連れてこれるかわからない。
自分で馬を探しに行くなら469へ。チャダルに任せてみるのなら179へ進め。
やはり三夜かけてでも、全員で進むほうがいいと判断するのなら121へ。

「……この先、いるわ」ライラがぽつりと呟く。次の瞬間、馬が何かに怯えたように首をもたげ、足を止めた。もう俺にもわかる。行く手から鎧を鳴らす音が聞こえてくるのだ。周囲の空気がどんよりと蠢いたと思った瞬間、それは――いや、そいつらは姿を現した。
ボロボロに錆びついた甲冑に身を固めているのは、7体の白骨死体だ。4体は五体満足ですらなく、いずれも武器を引きずっている。また、2体が盾を構えているがそこに描かれているのは刃の血族の紋章だった。傷だらけの上に色あせていたが、見間違えようもない。
武器の柄を握り、俺は素早く考えを巡らせる。この実体ある亡者たちに、手持ちの武器は効くだろうか?
「後ろからも出やがったぜ!」チャダルが半ば悲鳴じみた声を上げる。
振り返ると奴の言う通り、背後からも武装した骸骨の一団が近づいてくる……だが、その紋章は書の血族のものと見えた。
書の亡者たちならば味方に違いない。行く手を塞ぐ刃の亡者たちを相手に戦いを挑むのなら30へ。
亡者に敵も味方もない。挟み撃ちを避けるため、草の中へ馬を走らせるのであれば、428へ。

俺は近づいてくるファファスタスから距離を置くように一歩下がった。老人の表情が曇るのがありありと見て取れる。
「先生。私たちがここへ来たのは、貴方に保護してもらおうと考えてのことではありません……私はこれから、自力で生きていかなければなりませんから。誰かを頼って、この身を委ねるつもりはないのです」
弟子の言葉にファファスタスは振り返った。「……それは良い心がけだ。だが、どうやって刃の血族どもから逃げおおせるつもりだね?」
「刃の血族の力が及ばない地、つまり他の国で暮らすのも一つの方法ではないかと考えています」
「マールバハールを離れるか……」
そこまで言ってからファファスタスは俺のほうに目をやり、言葉を継いだ。
「いささか奇妙な“頭”をしてはいるが、貴殿を誠実な騎士と見込んで明かそう。ワシは書の血族の生き残りだ。そして、このライラも書の血を引いている。貴殿をこの世に呼び戻した術がその証だ。死霊術は簡単なまじないではない……人の魂と魂を結わえるには、高貴な血による資質が必須となる。でなければ、せいぜい呼べて小動物の霊までだろう。彼女の魂と貴殿の魂は類まれなるまじないによって結ばれておるのだ」
その言葉を聞いて、思わずライラは立ち上がった。「……でも、お父さんもお母さんもまじないなんて、できなかったわ」
「我らの一族が奴らに襲われたのは120年も前の話だ。運よく生き延びた者も、その素性は隠そうとしただろう。己が子を護るため、あえて何も伝えなかったとしても不思議ではない。お前の両親……おそらく父親であろうが、己に流れる血について何も知らなかったのだろう」
俺の“頭”となっているこの鍵に、鎖はついているだろうか?
もしもそうなら448へ進め。鎖は付いていないのであれば211へ。

村から離れるにつれ、チャダルを苦しめていた痛みも軽くなってきたようだ。竜の刺青が発する熱も引いたらしく、その色は見慣れた黒に、そして形を保てなくなっていた頭もどうやら元通りになっている。
「俺っち、死んじまうかと思ったよ……けど、もうとっくの昔に死んでるわな。亡霊が“死ぬ”ってのは、この世から跡形もなく消えちまうみたいな、そんな感じなのかね?」
「そういう風に考えている人もいるけど、別の考え方もあるの。誰もがみんな、死んだら次の命に還っていくんだって。でも、もしもそれが本当なら……私は貴方たちが本来行くべきだった道をふさいでしまったことになるわね」
「お前がどっちを信じているかはどうでもいいがな」二人の話を黙って聞いていた俺は、そこで会話に割り込んだ。「消えるにせよ、生まれ変わるにせよ、お前が俺を呼びとめてくれているおかげで、今がある……負い目に感じることはない」
レザニアから道を下り、川にかかる橋が見えてきたところでチャダルが再び口を開いた。
「……結局、嬢ちゃんの師匠には会えたのかい?」
俺たちがファファスタスのことを説明してやると、チャダルはあきれたように言った。
「そいつぁずいぶんと夢見がちな爺さんだなぁ。いくらものすごいまじないが伝わっていたって、それだけで国全部を敵に回して勝てるとは思えねえよ……断って正解だったんじゃねぇかな。
書の血族か……この刺青も、その爺さんに関係あったのかもしれねぇ。俺っち、盗みのせいで縛り首になったのは間違いねえんだけど、どんなふうに捕まったのかも覚えてないし、この刺青にもホント心当たりがねぇんだ。でもこいつにゃ間違いなく、まじないが掛かってる。あんとき盗みに入ったのは、まじない師が住んでたって噂の屋敷だったんだ……もしかしたら俺っち、その爺さん……ファファスタスだっけ? そいつにとっ捕まっちまったんじゃねぇかな?」
奴はそういうと、真剣な顔で俺の“頭”を見た。
「なぁ、旦那。その頭……奴にもらったって言ったよな?
爺さんは信頼できるのかい? 嬢ちゃんには悪いが、俺っち嫌な予感がするよ」
今の頭――仮面のはずだ――を捨てたほうがいいと思うのならば174へ進め。
考えすぎだと思うのであれば、頭はそのままにして、64へ。

鋭角に通路が曲がる角へとやってきた。不意に視界にゆらりとした影が映り、獣じみた爪が俺の体をすり抜けていく。角の反対側からやってきた何者かと鉢合わせしてしまったのだ!
そいつはボロボロになった埋葬される死者に着せられる衣を引きずりながら蠢いていた。
かつては人間だったのかもしれないが、明らかに異形と化している。何者かのまじないで狂わされているのだろうか……いずれにせよもう人間らしさは微塵も残ってやしない。驚いたことに、俺の身体はわずかに霊気を削られていた。先ほどの接触で奴の鋭い爪がやったのだ。
BATTLE 
もしも手持ちの武器がない場合は、戦力から2を引かなくてはならない。半ば亡者と化しているらしく、霊体の剣でも傷を負わせることができるので、戦うこと自体は可能だ。
サイコロを一つ振れ。そして武器などから得られる戦力ボーナスを加える。
出目が「6」であれば、さらにサイコロを振って加算せよ。
(ただし、「1」が出た時点で自動的に敗北となってしまう)
得られた値と、敵の戦力を比べよ。同点以上であれば勝利だ。
敗北を喫した場合でも、命運点を1消費することで再挑戦できる。
決してあきらめることなかれ。
勝ったのなら、35へ進んでよいが、負けた場合は俺の頭が叩き落されてしまったことを意味する。その時は148へ。
この怪物をすでに倒しているのであれば、この遭遇は起こらない。35へ進んでよい。

「奥様は……そのままお隠れになられた。生きておった方の御子は奥様の遺言により、ひそかに逃されたのじゃ。バルサザール様は御子が双子とは知らなかった……息をしておらぬ赤子をみて、残念そうにしておったよ。ずいぶんと後になって、もう一人御子がいたと知ったバルサザール様はワシを捕え罰を与えなすったが、すでに御子の行方を知る者はおらんかった……」
そう言い残し、老婆の姿は消えてしまった。
大きな鐘の音が鳴り響く。俺は無言のまま踵を返し、牢のほうへと戻る。
TOLLING
鐘が鳴った回数を記録しておくこと。ここでは1回追加だ。
残すは、牢の間のみとなった。155へ進め。

俺は思い切って“頭”を外した。
万に一つにもアミュレットを落とすまいと、触れる指に力が入る……
……俺の頭はどこか暗い場所に閉じ込められているようだ。光は全く無いが、時折ゆすられるのがわかる。誰かが、俺の首を持ち運んでいるのかもしれない。そんなふうに考えていると、男の声が聞こえてきた。
「首無しの騎士を排除しろ……か。身体も満足じゃない亡霊の相手なんて……命令に逆らえないってのは、まったくもって最悪だね」
どうやらこいつの標的は俺らしい。首を持たぬ騎士など、そうそう居るものではない。
「まあ、どこの誰かは知らないが、誰が相手でも負ける気はしないね……バジャー、君以外にはね」
不意に自分の名前が出てきたので、思わず首をすくめてしまった。生前の俺のことを知っているということは、こいつも120年前を生きた者、つまり俺と同じ亡霊なのだろうか? そして、俺の首を持っているらしいというのはどういうことだ?
それっきり声の主は黙ってしまったので、しばらくしてから俺は再びアミュレットを首にすげた。そう遠くないうちに、この男と相まみえる時がくるのかもしれない。
159へ進め。

「おのれ……! よくも我が魔導兵を……!」老まじない師の絶叫が玄室に響き渡る。
俺は返す刃を奴に向けた。「あきらめろ……もう何一つ、お前の望むようにはならない」
老人は唇を曲げて笑みを浮かべた。
「じゃが、ライラは未だ我が呪縛が虜……魔導兵は何度でも蘇る……」
「俺がその時間を与えると思うのか?」俺の言葉に奴の笑みが消える。
その時、チャダルに介抱されていたライラが身を起こした。
「……ん… 私、何を……?」頭をさすっている彼女の様子からは、まじないの影響が残っているようには見えない。いつもの彼女の眼だ。ファファスタスが慌ててローブを探り、赤い宝石の珠を放り出した。見事にヒビが入っている。老人の手から宝珠が落ちた。
「我がまじない……破れたり。
そうか、より強いまじないの、魔導兵が敗れた反動を受けたのだな……」
ライラに詫びをいれながら、泣き笑うチャダル。そしてあらゆる切り札を失って打ちひしがれる老まじない師。その差が全てを物語っていた。俺たちの勝ちだ。
54へ進め。

どの鍵を使うか?
当然だが、持っていない鍵は使うことはできない。

突き当たりまで進んでみると、壁に何かが掛けられていた。見るからに頑丈な斧で、重そうな刃を備えている。
「こいつなら、鉄格子を曲げることができるんじゃないか?」
「そいつは妙案だと思うぜ、旦那……こんなもんが牢の近くにあったなんて、気づかなかったな」
斧を手に取ってみるなら、413へ。今は塔の捜索を優先した方がいいと判断するのであれば、斧はそのままに今度は通路の反対側へ行ってみることにしよう。461へ進め。

首に乗っかっているのが鉄兜なら327へ。
何か別の物が“頭”になっているのなら273へ。それぞれ進め。

像は疲れ切った表情を浮かべており、身に着けた鎧にはわずかな装飾すら見られない。明らかに身分の低い兵士のものだ。しかしそれでも彼は背筋を伸ばして立っており、手にした剣を前方へと突き出している。その切先は塚の中心の方角を指していた。
こう綴られたプレートが取り付けられた台座の上に、像は立っていた。奴らからすれば、書の王朝は偽りの王の系譜で、自分たちがそれを正したという言い分なのだろう。戦に敗れるとは、こういうことなのだ。
鎖を通してある鍵が一本、像の首に掛けられている。鍵には宝石がついているようだ。
鍵をとるのなら447へ進め。そうしないのならば、次に進む道を決めなければならない。468へ。

不意に体がぐいと引っ張られる。何も見えず、聞こえないまましばらくたつと、視界が戻ってきた。チャダルが疲れ切った顔でこっちを見ている。「あいつ、旦那の頭を踏みつぶそうしたんだぜ……俺っち、必死でかっさらったよ」
俺はあたりを見渡した。さっきの敵の姿は見えないが……ここはどこだ?
「旦那を引っ張って逃げるのは骨だったよ。……何とか逃げ切れたのはいいんだけど、どの道を来たかわかんなくってさ。二つばかり分かれ道があったと思うんだけどよ」
「気にするな。お前がいなかったら全て終わっていたんだ……頭さえあれば、なんとかなるさ」
チャダルに礼を言うと、俺は歩き出した。さあ、ここはどこだ?
63へ。

ファファスタスは俺の一撃を受け、ローブを翻して退いた。気配を消して近づいていたチャダルがその隙を見逃さず、背後から飛び掛かる。しかし……
「そんなことだろうと思っておったわ、このコソ泥めが!」
瞬時に振り返った老まじない師は杖を振りかざし、チャダルを打ち据えた。情けない声をあげながらチャダルは床を転がっていく。
「ダメだ……こいつ、そんなもん持ってねぇよ!」
俺たちが戦っている間にも、ライラは操られるままに儀式を進めていく。その唇から流れる呪言が途切れた時、祭壇の丸岩がぎこちなく動き出した。うずくまるようにしていた手足を伸ばし、立ち上がったそいつはまさに魔力の塊だった。まじないの心得の無い俺でもわかるほどだ。この玄室全体が揺れ動いている!
「あれこそ、我が王家に伝わる魔導兵……マールバハールの守護者よ」ファファスタスが感極まった声を震わせた。
465へ進め。

俺の“頭”となっているのが、鍵であるならば117へ進め。
それ以外の品であるのなら、213へ進め。

うまくこの場を離れてくれよとの思いも空しく、チャダルとライラが馬から落ちる。刃の騎士が二人のほうへ向かおうとするところへ後ろから襲い掛かり、これを討ち果たすことに成功した。だが、そこで俺の身体は動かなくなってしまう。
「亡霊めが……日の光の中で、無謀なことだ」ぬるりとした声が聞こえるが、振り返ることすらできない。「退魔師の前で、迂闊だったな」
乗ってきた馬は、もう揺れる草の遥か彼方にいるようだ。俺の目は、地面に落ちたままぴくりともしないライラから離せない。その脇にうずくまるチャダルは、俺と同じく敵の術中に陥っているようだ。俺たちがこうして消え失せていないということは……ライラはまだ生きているということだ。だが……打つ手がない!
背に鋭い痛みが奔る。奴が斬りつけてきたらしい。身体無き身体が痛む。こいつも例の短刀を持っているのにちがいない。どうやらこれまでのようだ……反撃すらできないのは口惜しいが、俺にはどうにもならない。こうして未練を残して果てるなら……俺もまた、この古戦場を夜な夜な彷徨う亡者となるのだろうか……?

その時、唸りとも悲鳴とも聞こえるような音が響いた。剣に異変が起きた時の警鐘だろうか? だとしたら、程なく敵がここへ押し寄せるだろう……その前に脱出しなければならない。外に出てしまえば夜の闇に紛れることは容易い。そのまま王都からもおさらばできるだろう。そのためには、最短距離を戻る必要がある!
ここから石塚の入口までの間に、回廊が交わる場所が何か所あっただろうか?
記憶が正しければ、迷うことなく真っすぐ戻ることができるはず……
1箇所のはずだ 366へ
2箇所だったはず 475へ
いや、3箇所だ 3へ

山間の村、レザニアの夜は早い。すでにほとんどの建物の灯りは消えている。
俺はチャダルが好みそうな酒場に向かったが、ここも静かなものだ。すでに看板を下ろしてしまっている。
もしもあの場にいて村人に見つかったのだとしたら、チャダルではなく馬のほうだろう。馬は何かと重用される動物だ。となれば……
俺は村の家々の馬小屋をあたってみた。もしも馬を連れ戻った村人がいるのなら、馬の番をまかされたチャダルも一緒にいるのではないか?
三軒めで当たりを引き当てた。ある農家の裏手にある馬小屋の外に、見覚えのある馬がつながれていたのだ。その足元で、チャダルは小さくなりながら痛みをこらえるように震えていた。奴の顔に走る刺青は、今なお赤く燻っていて、奴の頭は半分崩れかかっていた。
「旦那かい……? ああ、頭は変わっちまってるけど、バジャーの旦那だ……!
あすこを離れちまってゴメンよ。でも、馬が村の連中に見つかっちまって。俺っち、馬がいなくなっちゃ旅に困ると思って……なぁ、嬢ちゃんは一緒じゃないのかい?」
「その話は後だ。馬が騒ぎ出す前にここを離れるぞ」
ライラがいないことに気づいたチャダルを急かし、俺たちはこの村を後にした。
ここからは再びチャダルと行くことになる。126へ進め。

ライラは師に呼びかけた……だが、その名は一体誰のものだろうか?
一介のまじない師のものであるのなら495へ。
王家に仇なした咎人のものであるのなら83へ。
復讐に生きた王族の生き残りのものであるのなら343へ。

……俺の頭――本来のやつだ――はどこか暗い場所に閉じ込められているらしい。光は全く無いが、時折ゆすられるのがわかる。誰かが、俺の首を持ち運んでいるのかもしれない。そんなふうに考えていると、男の声が聞こえてきた。
「首無しの騎士を排除しろ……か。身体も満足じゃない亡霊の相手なんて……命令に逆らえないってのは、まったくもって最悪だね」
どうやらこいつの標的は俺らしい。首を持たぬ騎士など、そうそう居るものではない。
「まあ、どこの誰かは知らないが、誰が相手でも負ける気はしないね……バジャー、君以外にはね」
不意に自分の名前が出てきたので、思わず首をすくめてしまった。生前の俺のことを知っているということは、こいつも120年前を生きた者、つまり俺と同じ亡霊なのだろうか? そして、俺の首を持っているらしいというのはどういうことだ?
「……もう大丈夫だ旦那。しかっし、災難だったなぁ」
チャダルの声とともに、視界が戻ってくる。「魚の骨とくりゃ、猫にとっちゃ御馳走だったってわけだよ」
俺は礼を言いながら、“頭”に触れた。取っ手がついている。チャダルが笑う。
「旦那も昔はそいつで酒をあおってたんじゃねぇか? ちょっとヒビ入ってるけど、少なくとも猫に狙われることはねぇはずだぜ?」
こいつは王都でよく使われる素焼きのジョッキだ。頭のでかい寸詰まりな戦士像になっていて、兜の端から酒を飲むのだ。あの妙に愛嬌のある顔の造りを思い出しながら、俺はため息をついた。だが、この際文句は言うまい。
頭がジョッキになったことを忘れずに、491へ。
それにしても気になるのはさっきの男だ。そう遠くないうちに、奴と相まみえる予感がした。

ファファスタスの言葉通り、奴はこの巨岩の化け物――おそらくはこれが霊廟の守護者なのだろうが――を完全に使いこなしているわけではないらしい。反応は鈍く、動きはどこか緩慢だ。
「……やはり、ワシではダメなのか……!」歯ぎしりをする老まじない師の目の前で、俺は一撃を敵に加えた。岩の身体が体勢を崩し、床に崩れ落ちる。
「ここまでだ……ライラにかけたまじないを解いてもらおうか」
俺は武器の切先をファファスタスに突きつけた。奴の視線が刃の先と、俺の背後の間を泳ぐ……操られたライラが近づいてきているのかもしれない。だが、今ファファスタスから目を離すわけにはいかない。奴はそんな俺を見て唇を歪めて醜悪な笑みを浮かべた……なんて顔だ。妄執と狂気にとりかれているのだ。
「ワシを殺すと、ライラもただではすまんことに感づいたか……? そいつは正解じゃ……本物のまじないを見るがいい!」
背後から抑揚のない呪言が聞こえてきた。ライラの声だ。倒したばかりの敵が、王家の末裔の虚ろな呼びかけに応じ、以前よりも力強く蘇る……!
BATTLE 
サイコロを一つ振れ。そして武器などから得られる戦力ボーナスを加える。
出目が「6」であれば、さらにサイコロを振って加算せよ。
(ただし、「1」が出た時点で自動的に敗北となってしまう)
得られた値と、敵の戦力を比べよ。同点以上であれば勝利だ。
敗北を喫した場合でも、命運点を1消費することで再挑戦できる。
決してあきらめることなかれ。
一回勝っても、まだ勝利とはいかない。あくまで敵の指先からほとばしる霊力を躱せたにすぎない。この敵を下すためには、さらにもう一度戦い、勝たなければならない。
見事勝利を収めたのなら、368へ進んでよい。
その前に負けてしまったのならば424へ。

「旦那! 斧のところ!」チャダルが叫ぶ。
奴が指さしているのは斧が刺さった石壁だ。そこにかすかに老女の姿が浮かび上がってきている。斧は老婆を壁に貼り付けにしていたのだ。
「ここはバルサザール様に逆らった者の魂が閉じ込められた牢獄。ワシ以外にも多くの者が捕えられておる……自由を与えられているように見えるが、一体何者じゃ?」
「“ファファスタス”様じゃねぇのか?」とチャダル。だが、老婆はそんな名は知らないと答えた。
「ワシはバルサザール様に雇われた産婆じゃった。あの御方は戦のあとにお若い奥様をお迎えになっての。お子様ができたんじゃ……双子じゃった。しかしながら酷い状態での。片方の子は死んでおった。今一人は何とか生きておったが、長くはもつまいと思われた。奥様も血を多く失ってしまっていたが、そのお顔は満足そうじゃったよ」
老婆は咳き込み、その姿が再び薄れてきた。彼女は苦し気に漏らす。
「……バルサザール様がお怒りじゃ。ワシにしゃべるなと言うておる……」
奥方の名を訊ねるのであれば348へ進め。
その女性と、生きていた子どもがその後どうなったのかを聞きたければ286へ。

タペストリー明らかにどこかの地形図だ。書棚からマールバハールの地図を探し出して照らし合わせてみると、どうやら国の南部に広がる砂漠のものらしい。
タペストリーには書の血族の紋章と、いくつもの文字列が織り込まれている。解読を試みるが、掠れていて読み取るのが難しい。だが、かろうじて次のような言葉が見つかった。
これらの響きに聞き覚えがあった。そうだ、これはかつてマールバハールを治めた王の名前だ。俺が生きていた時代においても、すでに歴史の中でしか聞かない名前だった。
つまり、これらの名前を擁するこの場所こそが……書の王族の霊廟に違いない!
元のパラグラフで、調べ物の続きを続けよ。

「こんにゃろ……俺っちもいるってことを忘れるなよ!」
炎の中からチャダルの声が聞こえた。続いて、声にならない叫びが再び響き渡る。先程とは違い、悲鳴に近い。俺の身体を縛る感覚がわずかに緩むのが感じられる……!
チャダルの顔に走る“竜”は何匹だろうか?

扉を開け、くぐってみるとそこもまた同じような大きさの部屋だった。石壁なのは左手だけで、あとはレンガ壁だ。正面の壁にも別の扉があって、中途半端に開いている。
チャダルが扉を確かめながら言った。
「ずいぶん立て付けが悪いな。ろくに動きやしねぇ……けど、嬢ちゃんが通るには十分だ。メシを持ってくる奴も通ってるんだから当たり前か。もちろん旦那の頭も問題ねぇ。せっかくだし、ここは先へ進もうじゃねぇか、なあ」
328へ進め。

俺は黙ってライラとファファスタスのやりとりを聞いていた。確かにこの老人はかつてライラにまじないの手ほどきをしたらしい。そこに嘘は感じられない。
やがて二人の話は終わり、ファファスタスは熟考に入ったようだ。ライラは何も言わない老人をきまり悪そうに見ている。
「……やっぱり、ご迷惑でしょうか? 私が刃の血族に捕まったのも、先生の言いつけを守らなかったからです。それなのに先生を危険に巻き込んでしまって……」
ファファスタスはライラの言葉を遮った。
「だが、こうしてここで再会したことにも意味があるとは考えられんかね。それに、ワシがまじないを教えていなければ、お前は無事にここまで戻れなかったであろう。様々な運命の糸が絡んだ結果、今日という日があるのだ。なれば……これも必然かも知れぬ」
そう言って、老人はは俺のほうに目をやり、言葉を継いだ。
「いささか奇妙な“頭”をしてはいるが、貴殿を誠実な騎士と見込んで明かそう。ワシは書の血族の生き残りだ。そして、このライラも書の血を引いている。貴殿をこの世に呼び戻した術がその証だ。死霊術は決して簡単なまじないではない……人の魂と魂を結わえるには、高貴な血による資質が必須となる。でなければ、せいぜい呼べて小動物の霊までだろう。彼女の魂と貴殿の魂は類まれなるまじないによって結ばれておるのだ」
その言葉を聞いて、思わずライラは立ち上がった。「……でも、お父さんもお母さんもまじないなんて、できなかったわ」
「我らの一族が奴らに襲われたのは120年も前の話だ。運よく生き延びた者も、その素性は隠そうとしただろう。己が子を護るため、あえて何も伝えなかったとしても不思議ではない。お前の両親……おそらく父親であろうが、己に流れる血について何も知らなかったのだろう」
何かが引っ掛かる……そう、この声だ。老人の声にどうも聞き覚えがあるように思えてならない。
俺はどこでこの声を聞いたのか、懸命に思い出そうとした……
脳裏に浮かんだのは何か? 直観で選ぶこと。
除霊の短刀 130へ。
氷霧の森 97へ。
アイシャ姫 339へ。

ここは鋭角に通路が曲がる角だ。足元には倒したばかりの敵が倒れているが、わずかに動いているように見える……この宮殿の永遠の守護者として強力なまじないに縛られ、幾度死のうとも解放され得ぬ存在なのかもしれない。急いでこの場を離れたほうがよさそうだと判断し、俺は視線を上げた。
角から見て、左右に二本の通路が伸びている。どちらも暗く、先は見通せない。
右の通路を進むのなら242へ。
左の通路を進むのなら131へ。

玉座に近づき、剣を調べてみる。ファファスタスが言っていたとおりなら……こいつを引き抜けば、このマールバハールは再び魔力満ち溢れる地に戻るはずだ。それはすなわち、書の血族の力を封じるために施された一手ということでもある。そう簡単には抜けないようになっていてもおかしくはない。
俺は柄をつかみ、力を入れる。最初はびくともしなかったが、やがて剣は動き始め、ゆっくりではあったが、なんとか玉座から引き抜くことができた。
引き抜いた剣には何かの文字が刻まれているのがわかった。俺には読めなかったが、まじないの文言なのだろうか……? しかし、国土を巡る魔力を封じていたという曰くつきの剣だ。何かしらの力を持っているには違いない。持って行った方がいいだろう。それにここに残していけば、また刃の者の手によって玉座に突き刺されないとも限らない。
ここで命運値を1消費するのであれば170へ進め。
やらない、あるいはしたくてもできないのなら377へ。

俺は目覚めた。いつのまにか気を失っていたらしい……ラシュドと名乗った亡霊騎士の刃を受けたあたりが痛むので確かめると、霊気を失ったためか大きく身体がえぐられてしまっている。生身の人間だったら間違いなく死んでいる。
“頭”に手をやると、これもまた随分傷んでいるのが分かった。このまま激しい斬り合いを重ねればいずれ壊れてしまうだろう……その時、俺は近くに首壺がおかれているのに気付いた。ラシュドが去り際に残した言葉が蘇る。
――奴は彼女を、自らの野望のために利用するつもりだ――
ラシュドは俺が剣を抜くために王都へ来ているのを知っていた。それに、亡霊を使役するなんて芸当ができるのはまじない師だけだ。その気になればライラはいつでも俺を再び死の忘却へと解き放つことができる……だが、敵はラシュドを送り込んできた。全てはファファスタスが秘密裏に俺を排除しようとしたことを示している。あの男が何を企んでいるかは知らないが、こうなった以上、奴の傍にライラを置いておくわけにはいかない!
俺は目の前にある首壺に手を伸ばした。これなら傷ついた“頭”の代わりに使えそうだ。だが奴は何と言っていた? 確か、俺から預かっていたと……つまりこれは……
壺を割るのであれば412へ進め。
やめておくのなら、173へ。

奴は俺の手にある武器を見て、笑みを浮かべた。
「この時代の騎士はどいつもこいつも腑抜けぞろいだが……君は違うようだ。その剣が見せかけだけでないことを期待するよ!」
この一太刀に、命運値をいくつ賭けるか?
1でも、それ以上でも構わない。0でもよい。ただし、残っていない分は使うことはできない。
敵の刃は目前に迫っている。判断に費やせるのは一瞬だ。決めたら55へ進め。

「だ、旦那……馬が……!」
背後でチャダルが声を掠れさせて慌てふためく。振り返った俺の目に、緊張に耐えられなくなった馬がいななきながら後ろ脚で立ち上がる姿が飛び込んでくる。しがみついていたライラの身体が宙に浮いている。なんとか馬から離れずに済んでいるようだが、振り落とされてしまうのも時間の問題だ。
「……なんだ? 馬がいるぞ!?」
「誰かいるのか!?」
ガサガサと乱暴に草がかき分けられ、二人の騎士が現れた。その後方、草の中にもう一人の姿が見え隠れしている。こちらはフードをかぶっているらしい。
俺は目の前に現れた騎士の喉をめがけて刃を突き上げながら、チャダルに向かって叫んだ。「ライラを連れて逃げろ! 後で落ち合うぞ!」
暴れる馬にチャダルが飛びつくのを視界の端にとらえながら、俺は残る二人の敵に向き直った。奴らは仲間がいきなりやられたことに驚き、戸惑っている。迅速に始末しなければならない!
BATTLE 
サイコロを一つ振れ。そして武器などから得られる戦力ボーナスを加える。
出目が「6」であれば、さらにサイコロを振って加算せよ。
(ただし、「1」が出た時点で自動的に敗北となってしまう)
得られた値と、敵の戦力を比べよ。同点以上であれば勝利だ。
敗北を喫した場合でも、命運点を1消費することで再挑戦できる。
決してあきらめることなかれ。
勝利したのならば、373へ進んでよい。
負けた時には、296へ。

数刻の後、俺は思いもしなかった光景を前に絶句していた。かつて壮麗さを誇った王宮が、積み石で封じられていたのだ。代々書の王が居としていた宮殿は巨大な冷たい石塚となり、無残な姿となっている。衛兵が二人一組になって塚の周りを巡回しているのが見えたが、貴人を警護しているというにはほど遠い、荒々しい連中のようだ。
背後を振り返ってみれば、都の中心部の向こう側、120年前には何もなかった場所に新しい宮殿が建っているのが見えた。おそらくあそこには偽王が座しているに違いない。
それはともかく、これから俺はこの塚に入っていかなければならない……石壁に近づいてみたが、壁を抜けようとしてみてもうまくいかない。妙な力が働いているらしく、亡霊の身体でも通り抜けることができないのだ。改めて石塚をよく見てみれば、確かにいくつかまじないの文様らしきものが刻まれた石が混じっているのがわかる。刃の連中のくせに、まじないを利用しているのが気にいらないが、そうまでしてここを護る必要があるということなのだろう。
衛兵と鉢合わせしないようにしながら塚の周りをまわっていくと、北側に小さな詰所があった。見覚えのあるローブを纏った男が一人椅子に腰を下ろしてじっとしているのが見える。例の紋章――退魔師だ。少し離れて様子をうかがっていると、やがて巡回の衛兵たちがやってきた。
「おい、起きろ。この穀潰し野郎が……仕事中に酒くらってんじゃねぇ!」
「ほっとけほっとけ。どうせ中の奴らは出てこれないんだ。こいつの仕事なんて無いんだからよ」
どうやら泥酔しているらしいが、それよりも“中の奴ら”というのが気になる。塚の中にも何者かがいるらしい。
やがて衛兵たちの姿は見えなくなった。俺はそっと詰所に忍び寄る……
寝ている退魔師に気づかれないように中に忍び込むのなら274へ進め。
念のため退魔師を殺しておくのなら156へ進め。

――どうした、異国の騎士よ。ここで屈するのか?――
俺の頭の中に、またあの声が響く。カルルームの精霊だ。
――あの魔導兵が完全に覚醒してしまうと、我が国土にも大いなる災いが降りかかる……。お前にはここで、あやつの邪心を打ち砕いてもらわねばならぬ。そのために我は、共にここまで来たのだ――
いつしか像は光を放っていた。その光に照らされていると、不思議と気力が沸き起こってくる。ファファスタスによって抉られた傷がふさがり、武器を握る手に力が蘇る。
ファファスタスが呻いた。「異国の邪霊とは……よりによって、この神聖なる墓所に!」
BATTLE 
サイコロを一つ振れ。そして武器などから得られる戦力ボーナスを加える。
出目が「6」であれば、さらにサイコロを振って加算せよ。
(ただし、「1」が出た時点で自動的に敗北となってしまう)
得られた値と、敵の戦力を比べよ。同点以上であれば勝利だ。
敗北を喫した場合でも、命運点を1消費することで再挑戦できる。
決してあきらめることなかれ。
勝てたら199へ。
負けたのならば、今度こそ万事休すだ。奇跡は何度も起きるわけでない。

ファファスタスは俺の一撃を受け、ローブを翻して退いた。そしてチャダルがライラに近づいているのに気づく。
「くくく……なるほど、いい作戦だ。だが、無駄じゃ……ワシのまじないは亡霊ごときが呼びかけたところで解けるようなものではない」その言葉通り、チャダルが懸命に呼びかけるが、ライラは何の反応も示していない。
再び俺のほうへ振り返った老まじない師が何かを呟くと同時に、再びアミュレットからどす黒い瘴気が漏れ出す……呪いによって、わずかに残っていた力までもが消え失せてしまう。
動けぬ俺を脇目に、奴は未だ何の無表情を崩さないライラに呼びかけた。
「……とんだ邪魔者のせいで儀式はやり直しじゃ。まずはこやつらの始末といこう」そこまで言ってファファスタスは残酷な笑みを浮かべた。
「なんじゃ、その涙は……そこの亡霊にほだされたというのか? ……無駄じゃ無駄じゃ。いかに抗おうとも、ワシのまじないは破れはせん」
106へ。

「あの時から変わらないバジャーの顔……一目ですぐにわかったわ、貴方だって。
何故って? それはね……あの牢で最初会ったときに、想像してたとおりだったんだもの」

「どれ……少しの間、頭無しで我慢してくれたまえ」
ファファスタスが手を伸ばしてくるのが見え、それから視界が消えうせた。いつものように、埃っぽい暗闇が広がる……
……いや、何かがいつもとは違う。俺の首がどこか狭い場所に押し込められていて、身動き一つできないのは変わらないが、明らかに揺れているのだ。この振動はよく知っている……馬だ。俺の首を入れた何かが、馬に揺られている!
不機嫌そうな声がかすかに聞こえた。男の声だ……しかし馬の蹄が地面を蹴る音でよく聞き取れない。やがて視界は再び闇に溶け……ランプの灯りに照らされたファファスタスの隠れ家が戻ってきた。
「ワシには、これは書の王家に伝わる品だと思えてならん」
件の鍵を手に、ファファスタスは興奮気味に捲し立てていた。鍵に掘られた文様を調べ、間違いないとうなずいている。ちょっと待て。すると今、俺の首に乗っているのは?
手を伸ばしてみると何に触れた。小さな金属の塊のようだ。
「ここにあった、古い像の一つよ」ライラが俺の“顔”をのぞき込んでいる。「とりあえずお借りしたのだけれど……私が見える? 声は聞こえているかしら?」
ファファスタスは俺たちの会話など気にも留めず、鍵に夢中になっている様子だ。
「これがワシの思った通りの品であれば……うまくすれば、刃の血族から国を取り戻すことができるかもしれん。もしもそうなればだ、ライラ。お前が女王ということになる」
その言葉にライラは心底驚いているようだが……確かに彼女にはどこかアイシャ姫の面影がある。ファファスタスの言っていることもあながちおかしくはなく思えた。
「書の血族が王座を追われたのは120年も前の話だ。運よく生き延びた者も、己の素性は隠そうとしただろう。肉親を護るため、あえて何も伝えなかったこともあったに違いない。お前の両親……おそらく父親であろうが、己に流れる血について何も知らなかったとしても、不思議ではない。
賢いお前のことだ。もう察しているかと思うが……ワシも生き延びたひとりだ。この国をあるべき姿に戻したいという気持ちに嘘はない」
そこまで一気に言ってからファファスタスはしばらく口を噤み、再び話し出した。
「ただのまじないの才ある幼子ではなかった……お前は我らが一族の悲願に繋がる、希望の灯足りえる存在だ。ワシは常々この国を正したいと思っていた……そうだ、そうでなければ隠れながら生き永らえている意味などありはしないではないか。
ライラ、はっきり言おう。ワシはお前がここに残ることを望んでいる。代々書の血族に伝わっていたはずの、禁断のまじないを探す手伝いをしてもらいたいのだ。そして、そのまじないを用い、マールバハールからあの裏切り者どもを消し去ることができたら……!」
話が大きくなってきたようだ。だが、ファファスタスの言う通り刃の血族どもから国を取り返せるというのであれば……それはアイシャ姫の無念を晴らすことにも通じるのではないだろうか?
140へ進め。

一撃で騎士は息絶え、馬からずり落ちる。異変に気付いた残りの二人が武器を抜き放った。今度は相手も準備万端だ。正面から立ち向かうしかない。
BATTLE 
サイコロを一つ振れ。そして武器などから得られる戦力ボーナスを加える。
出目が「6」であれば、さらにサイコロを振って加算せよ。
(ただし、「1」が出た時点で自動的に敗北となってしまう)
得られた値と、敵の戦力を比べよ。同点以上であれば勝利だ。
敗北を喫した場合でも、命運点を1消費することで再挑戦できる。
決してあきらめることなかれ。
敵を片づけることに成功したならば、先へ進むことができる。237へ。だが、負けたのならば、万事休すだ……その時は62へ進むしかない。

詰所から拝借した地図を広げ、月明かりの下で覗き込む。マールバハール王国が描かれている部分の真ん中あたりに朱で丸が小さく描かれていて、タマリンドという名の村を囲んでいる。周囲の地形からして、どうやらこれが今いる場所のようだ。
「レザニア……あった」
地図のあちこちへ視線を走らせていたライラが言った。小さく書かれたその名前の近くを走る川の流れを確認し、山々が作る曲線を確かめて彼女はうなずいた。
レザニアという村は、ここタマリンドの南方を走る川をさかのぼっていったところにあるようだ。エナムと川の名が記されている。俺も知っている……この流れは王都へと続いているのだ。刃の血族が反旗を翻したあの夜、炎に包まれる都が赤々と水面に映っていた……
「旦那、旦那ってばよ」
チャダルの声に我に返る。ライラはすでに地図を畳み、肩から掛けた背負い袋にしまっていた。
「ここでぐずぐずしてっとマズイぜ。しっかりしてくれよな」
まだ亡霊を探しているのか、数本の松明が揺らめいているのが遠目に見える。確かにそろそろ動いたほうがよさそうだ。連中の炎が作る暗い影の中に潜みながら、俺たちは南へと向かう。
やがてタマリンドは遠ざかり、喧騒も届かなくなった。程なく灯りも見えなくなるだろう。
281へ進め。

やはりこの砂漠は死の世界だった。立ち入ることはできても、生きて出ることは叶わぬのだ。だが、それでも死せるマールバハールの王たちの眠りは妨げられることになろう……ファファスタスと名乗る男によって。
もう彼を止められる者はいない。王たちを護っているはずの砂は、最後の希望をも飲み込んでしまった……

しまった! どうやら道を覚えそこなっていたようだ。
早く外へ出なければ……! 焦って走りだした俺を、徐々に大きくなる警報の響きが苛むように包む。
377へ進め。

「だが、実は問題が一つ残っている」
ファファスタスは地図を指しながら言った。霊廟があるという砂漠よりも北、今いるこの地よりも、もっと北に位置する王都だった。
「このマールバハールは、かつてまじないの才ある一人の若者が初代王となり、打ち建てた国だ。彼は自分の国にふさわしい場所としてこの地を選んだ。この国には、我らまじない師がその力を借りることができる自然の流れ……魔力をたたえる大小の地脈が走り交わっている。特に力強い二つの筋が交差する場所が、都として選ばれた。そして王が坐する椅子は、マールバハールで最も魔力が高まる一点に据え付けられていたのだ。この事実だけでも、マールバハールの王は、まじない師であるべきことは明白だろう。
しかし120年前、刃の輩によって王位が簒奪されただけではなく、国の基盤までもが脅かされてしまった。まじない師ならぬあの者どもが大いなる地脈について知っていたはずもないが、我ら書の血族の名誉を貶めるために打った一手……自分たちの勝利を民に示さんと、我らが玉座に突き立てた剣が、この国の地脈を堰き止めているのだ!」
「王家のまじないを取り行うためには、その剣を抜かないといけないということですね」
「その通りだ、ライラ。我々は件の魔術の力が最大限に発揮されるよう、あらゆる手を打っておく必要がある。
今の王は所詮、地位を受け継いだだけで自らの手で権力を掴み取ったわけではない……120年の間に忌まわしき牙も鈍くなっておる。一たび剣を抜いてしまえば、再び地脈を狂わす手立ては最早持ち合わせてはおるまい」
ファファスタスは俺のほうを見た。
「我々は二手に分かれなければならない。ライラは王家の血を引いている……鍵を携え、南へ向かう必要がある。だが、まじない師としての修業は足りていない。ワシの導きが要るだろう。そして北の王都へ行き、玉座から剣を抜く者も必要だ。騎士殿……この役目を貴殿にお任せしたい。引き受けてくれるな?」
ライラが慌てて口をはさんだ。
「ま、待ってください先生。彼は私がまじないで呼び出した亡霊です……私から離れると力も失ってしまいます。王都なんて、そんな遠くまで……私が南へ行かなければならないならなおさらです」
「お前は死霊術を天性の感覚のみで行っている……その才は素晴らしい。だが、知識も身に着けるべきだな。このような手もあるのだよ」
ファファスタスはライラに銀のナイフを渡して髪をひと房切り取らせ、簡単なまじないの手引きをした。そして引き出しから手頃なアミュレット――抽象的ではあるが、鬼神の顔が彫り込まれている――を取り出してきて、器用に装飾の石を外すと、その裏にライラの髪を仕込みつつ石をはめ込み直した。
「このアミュレットが、ライラとの絆を堅固に保ってくれる。決して手放すではないぞ。今の騎士殿なら、“頭”にしておくのが一番よいだろう」
頭がアミュレットになったことをメモしておくこと。そうしたら、命運値を3増やしてよい。これはこのアミュレットにのみある特別な効果だ。だが、頭を別の品に挿げ替えた時には、命運値を3減らさなければならない。このことを忘れずに、376へ進め。

草むらの中を逃げて行ったのが何だったのかは不明だが、その理由はすぐに分かった。続けて狼が躍り出てきたのだ。獣はこちらを見て立ちどまる。どうやら飢えているらしく、ライラを新たな獲物と考えているのは間違いないが、俺たち亡霊の存在に気付いて躊躇しているようにも見える。だが、それも一時のことだ。ライラに飛び掛かってくる獣を止めなければならない!
BATTLE 
サイコロを一つ振れ。そして武器などから得られる戦力ボーナスを加える。
出目が「6」であれば、さらにサイコロを振って加算せよ。
(ただし、「1」が出た時点で自動的に敗北となってしまう)
得られた値と、敵の戦力を比べよ。同点以上であれば勝利だ。
敗北を喫した場合でも、命運点を1消費することで再挑戦できる。
決してあきらめることなかれ。
勝ったら92へ進め。負けた場合には、最早ライラを守る者はいない。武器を持たぬチャダルでは、この腹をすかせた狼をどうにもできないだろう……。ライラが死ねば、俺たちもまた消える他ない。

鋭い軌跡を描く奴の剣先をかいくぐり、俺は手にした武器を繰り出した。俺の刃は奴をかすめたが、敵の一撃は俺の身体に食い込んでいた。
「そんな頭をしているくせに、腕は立つようだ……僕には及ばないがね。名の知れた騎士だと見たよ。君は、いったい何者だ?」
だが、奴には及ばなかった。俺は今、追い詰められている。
自分の名を名乗るのなら487へ。
答えないのであれば、402へ進め。

行く手から鎧の鳴る音が聞こえてくる。周囲の空気がどんよりと蠢いたと思った瞬間、それは――いや、そいつらは姿を現した。
ボロボロに錆びついた甲冑に身を固めているのは、全部で7体の白骨死体だ。4体は五体満足ですらなく、いずれも武器を引きずっている。武器の柄を握り、俺は素早く考えを巡らせた。この実体ある亡者たちに、手持ちの武器は効くのだろうか?
BATTLE 
もしも武器が除霊の短刀であるならば、効果は絶大だ。この戦いにおいては、戦力に3を足すことができる。
サイコロを一つ振れ。そして武器などから得られる戦力ボーナスを加える。
出目が「6」であれば、さらにサイコロを振って加算せよ。
(ただし、「1」が出た時点で自動的に敗北となってしまう)
得られた値と、敵の戦力を比べよ。同点以上であれば勝利だ。
敗北を喫した場合でも、命運点を1消費することで再挑戦できる。
決してあきらめることなかれ。
負けてしまったときには158へ進まなければならない。
見事勝利したのなら、258へ。

「先生、ごめんなさい」ライラは言った。
「王家の血筋とか、そんないきなり言われても……私は……」
無理もない。まだ幼い少女には重すぎる話だ。
何か言おうとして一歩踏み出してきたファファスタスの手が震えていた。俺は二人の間に割り込むように入る。俺は彼女の騎士であること誓った。たとえ国のためであっても、ライラが望まぬ道は避けるべきだ。
その時、ファファスタスから老人らしからぬ殺気が立ち上るのを感じて俺は身構えた。この男はまじない師だ。何をしてくるかわかったものではない……しかし、ファファスタスはすぐに落ち着きを取り戻したようだ。深くため息をつき、数歩下がると揺り椅子に身を沈めた。
「……それもまた、しかたあるまい。お前はお前が為すべきと思ったことをするがいい。ワシも、ワシの道を行くとしよう」
俺の“頭”となっているのが、鍵であるならば、463へ進め。
それ以外の品であるのなら395へ。

像は初老の男のもので、鋭い眼光を持っている。知らぬ顔ではあるが、これが誰であろうと、侮れない相手であることは確かだ。
片手に抱えた書類の束をよく見ると、地図のようだ。もう片方の手に持った棒には目盛りがついていて、この棒を手前へと突き出している。その先は、この塚の中心がある方角だった。
像が立つ台座には、こう書かれたプレートがはめ込まれており、首からは鎖のついた鍵がぶら下がっている。鍵には宝石がついているようだ。
鍵をとるのなら250へ進め。
そうしないのならば、次に進む道を決めなければならない。364へ。

俺は素早く街道脇の茂みへと入った。こっちから連中の姿が見えたということは、向こうも俺の鉄兜に気づいていてもおかしくはない。茂みの中で伏せてしまえば、おそらくは見つからずに済むだろう。奴らが不審に思ってくれてないことを祈るばかりだが……しかし想像していたよりも早く連中の声が聞こえてくる。どうやら走ってきたようだ。やはり見られていたらしい。
「確かこの辺りだと思ったんだが……」
一人が茂みをかき分けて踏み込んできた。だが、足元の草の間にある俺の頭には気づいてはいない。その視線は茂みの奥へと向けられている。
「だから言ったろ、見間違いだって」
「いや、ホントだって。人の頭ぐらいの塊が浮かんでてよ、そいつが道から外れていったんだ。ここの茂みが揺れていたんだ、間違いねぇんだって」
後から来たもう一人はあきれたように首を振って答えた。
「だいたいなんだよ、その浮かんでる塊ってのは。おおかた、鳥かなんかを見間違えたんだろう」
「だから、そんなんじゃねぇんだって言ってんだろ」
こいつらは旅人のように見せかけているが、荷は軽そうだ。腰に下げた鉈も旅の共としては大仰すぎる。近隣に根城を持つ追剥か辻強盗といったところか。
命運値を1消費すれば、連中に見つからずに済む。そうするのなら118へ進め。
命運値を消費したくないのなら161へ。

扉を通りぬけると、また似たような部屋だった。正面の壁は石壁となっており、どうやらここも塔の角部屋のようだ。もう一つ扉が右手のレンガ壁についていたらしいが、先ほどとは違ってドアそのものが残されておらず、ただ壁に四角い穴が口を開けている。
石壁伝いに回り込むようにその穴をくぐると、そこもまた同じような大きさの空間だった。正面にはまたしても部屋の入口が見えた。今度は扉があるが、開いていて移動に支障はない。
しかし、俺の目は右手の壁に掛けられた大きな肖像画に釘付けになっていた。それは……俺にとって忘れえぬ女性、アイシャ姫の姿を描いたものだったのだ。姫の似姿はキャンバスの左半分を占めていたが、絵の右側は大きく損傷していて何が描かれていたのかはわからなかった。
俺の首に乗っかっているのが、肖像画なら230へ。
そうではなく、別の物が“頭”になっているのなら32へ。

その時、ライラが一歩踏み出した。止めようとした俺を制し、彼女は亡者たちを見据える。
「私は書の王家の血を引く者……貴方たちの敵ではありません」
亡者たちの動きが止まった。程なく彼らの硬直は解けたが、もう敵意はなかった。亡者たちはライラの前に膝をついたのだ。
「こいつは……へへ、まるで本物の女王みたいだぜ、嬢ちゃん」
チャダルが恐る恐る漏らした声に反応したように、亡者たちが立ち上がり、武器を構えて俺たちのほうを向く。ライラはそれを見て、静かに言った。「彼らは私の仲間です……大丈夫」
亡者たちは俺たちの後をついてきた。まるでライラを護衛するかのように。朝日と共に消え失せる宿命なのだとしても、その揺がぬ忠誠心は、確かに死んではいなかった。
8へ進め。

次第に敵の殺意は薄れていき、ついにその姿は黒い靄となって散っていった。その中をチャダルがこっちへ、よろけながら歩いてくる。
「……旦那、俺っちも……やってやったぜ」その手には、俺の手から落ちてしまっていた魔封じの剣があった。記憶を取り戻したチャダルの“恨み”は、武器を握ることができるまでに強くなっていたのだ。
「剣は旦那のほうがうまく扱える……俺っちは何か別の獲物を持っていくよ」
162へ進め。

ライラの吐息が徐々に整ってきた。もう吐血も止まっている……これは奇跡だ!
「……ん… 私、何を……?」
やがてライラは意識を取り戻した。そこにはまじないの影響は微塵も見えない。いつもの、彼女の眼だった。
安堵したその時、かすかな呻き声が聞こえてきた。振り向くと、血だまりの中でファファスタスの指がわずかに動いているのが見えた。奴もまた、まだ生きている……!
54へ。

奴は俺の武器を見て失望の表情を浮かべた。
「くだらないね……騎士ならば、退魔師が如き姑息な戦いは選ぶべきではない。僕が生きていたころの騎士たちは皆、誇り高き戦人だった。だが、君はそうではないようだ!」
この一太刀に、命運値をいくつ賭けるか?
1でも、それ以上でも構わない。0でもよい。ただし、残っていない分は使うことはできない。
敵の刃は目前に迫っている。判断に費やせるのは一瞬だ。決めたら4へ進め。

「チャダルは常にライラのそばに居ろ。何かあったら連中の気を引くような騒ぎを起こすんだ。俺は見つからないように暗がりをついていく……こいつを持っていてくれ」
俺が持っていると目立ってしまいそうな武器をライラに渡しながら、馬の速度を落として篝火へと近づいていく。少し離れた場所で馬を止めると、商隊のほうでもこっちを伺うように何人かの男たちが姿を見せた。馬から降りたライラのそばにチャダルがついているのを確認し、俺は素早く連中の視線から外れるように移動する。
「どうしたね、お嬢ちゃん。まさか、一人でこの馬に乗ってきたのかい?」
「この先には関所があるだけだぜ……ちょっとでも怪しいと思われたら、絶対通してもらえねぇよ。悪いことは言わねぇから引き返したほうがいい」
そういいながら近づいてくる男たちに臆することなく、ライラは答えた。
「カルルームにいる叔母に会いに行くんです。関所の様子をご存じでしたら、教えていただきたいの。それに、可能なら買物もさせてもらえるとありがたいのですけれど」
奴ら、ライラの受け答えがあまりにも堂々としているので面食らったようだ。何やら小声で相談していたが、やがて一人が奥にある天幕へと向かっていった。
「客となりゃ話ぐらいは聞いてやらんでもない……だが、ちょっと待ってな。俺たちのお頭がなんて言うか次第だからよ」
残った一人は地面に座り込んでライラにあれこれ聞いている。ライラもうまいこと話を合わせているようだ。これならしばらくは放っておいても問題ないだろう……俺はお頭とやらがいると思われる天幕へと近づいて行った。
件の天幕はかなり使い込まれた年代物だった。あらかた掠れてしまっているので憶測になってしまうが、布地に顔料で描き付けられた文様はカルルーム風の唐草柄のように思える。中には蝋燭が灯っているらしく、ぼんやりと光がにじみ出てきていた。入口から中を伺おうとしたとき、さっきの男が出てきて仲間に声をかけた。
「お頭がよ、そのお嬢ちゃんと話がしたいとさ!」
ライラと話していた男が立ち上がり、彼女をテントへ――俺の目の前の、このテントだ――と案内しはじめた。俺の存在を気取らせないためにライラはこっちを向かずにいたが、チャダルはニヤニヤしながら手を振っている。さっさと行けと奴を睨みつけ、俺も“頭”を足元から滑り込ませた。そして布のひだの間に隠れながら聞き耳を立てる。
394へ進め。

亡者はこちらには目もくれず、足を引きずっている。何を言っても聞こえていないようだ……やがて奴は、再び砂嵐の中へと消えていった。 160へ。

「120年前の決着を今度こそ着けよう……これが最後だよ、バジャー!」
BATTLE 
サイコロを一つ振れ。そして武器などから得られる戦力ボーナスを加える。
出目が「6」であれば、さらにサイコロを振って加算せよ。
(ただし、「1」が出た時点で自動的に敗北となってしまう)
得られた値と、敵の戦力を比べよ。同点以上であれば勝利だ。
敗北を喫した場合でも、命運点を1消費することで再挑戦できる。
決してあきらめることなかれ。

こんなところで頭を失うわけにはいかない。俺は兜を抑える手に力を入れた……だが、指に力が入らない。頭が失われる瞬間、ライラの言葉が脳裏をよぎった。
“貴方たちは日の光の中では力が弱くなる――”
70へ進め。

異形の亡霊が声にならない叫び声をあげる。炎が大きく揺らめき、殺意が押し寄せる。
BATTLE 
これまで鐘が鳴った回数。それが敵の戦力だ。
もしも武器が除霊の短刀であるならば、効果は絶大だ。この戦いにおいては、戦力に3を足すことができる。
サイコロを一つ振れ。そして武器などから得られる戦力ボーナスを加える。
出目が「6」であれば、さらにサイコロを振って加算せよ。
(ただし、「1」が出た時点で自動的に敗北となってしまう)
得られた値と、敵の戦力を比べよ。同点以上であれば勝利だ。
敗北を喫した場合でも、命運点を1消費することで再挑戦できる。
決してあきらめることなかれ。
見事打ち勝てたのならば345へ。力及ばず屈するのであれば、249へ進め。

さっきと同じような小部屋へと入る。次の扉は東の壁についていた。ここはどうやら角部屋らしい。立派な調度品が設えられているが、特に目を引くものはなさそうだ。
東壁の扉を開けると、そこも似たような部屋だった。正面の壁に奥へと続く扉がある以外には、やはり何もなさそうだ……
ここまでに、鐘の音が3回以上鳴っているのであれば……不意に炎が立ち上る。458へ。
2回以下なら280へ進め。

アイシャ姫……炎上する王都……そして氷霧の森……
……だめだ、よく思い出せない。確かに聞いたことがある声だと思ったが、それもあやふやになってくる。
211へ。

王都では隠密行動が必須となる。俺には最低限の荷――この“頭”と、武器だけだ――しかない。王都への道は全て頭に叩き込んだつもりではあったが……生前、この辺りには来たことがなかった。
悪い予感は当たるものだ。人里を避けて進み始めると、早くも道が怪しくなってきた。地図を持ってくればよかったと悔やむが、後の祭りだ。
命運値を1消費することで、道に迷うことなく確実に進むことができる。そうするなら204へ進め。
命運値を消費する気はない、あるいはできないのであれば426へ。

「できるだけ遠くへ離れ、隠れていろ!」
俺の言葉にライラはうなずくと、走りだした。その姿から視線を離し、俺は亡霊騎士のほうへ向き直る。奴は俺の前で首無し馬を止めた……この感じには覚えがある。そう、かつてアイシャ姫を逃した、あの時と同じ感覚だ。
「……娘を逃したのか。だが、安心したまえ。僕は同じ過ちは繰り返さない……かつて同じように他人を護ろうとした騎士がいた。僕はまだ若く、また愚かしいことに思いあがってもいた。僕は彼の首を取ったが、それは卑怯な手段によるものだったのさ。僕は残りの生涯を、恥と後悔に苛まれながら過ごしたよ……。
すまないね。君には関係ない話だった。信じてもらえるかはわからないが、あの子を狙うことはしないと誓おう」
奴はそういうと、剣を抜いた。その優雅ともいえる動きを見ていると、繋がっていないはずの首が疼く。そうか、こいつは……俺の首を切り落とした優男だ。あの時の刃の騎士までもが亡霊となって、相まみえることになろうとは。
「……関所に亡霊が一人いただろう。そいつはどうした?」
「ふむ。先程確かに一人亡霊を斬り伏せた……そうか、お前たちの仲間だったのか。どうやってあの娘を連れて国境を越えたのかと思っていたが、うまいことやったものだね」
こいつを倒すべき理由が増えた。俺は腰に下げた剣を抜き放つ。これ以上、言葉のやり取りは無用だった。
この一太刀に、命運値をいくつ賭けるか?
1でも、それ以上でも構わない。0でもよい。ただし、残っていない分は使うことはできない。
敵の刃は目前に迫っている。判断に費やせるのは一瞬だ。決めたら127へ進め。

“サラヴァイ”は家系図の中に見つかった。四代目の王の名だ。
元のパラグラフで調べ物の続きをするために戻ってもいいし、457で、他の名前を探してもいい。

「ワシは……自らの意思で、血族を裏切ったのだ……後悔など、しておらん……」
乾いた笑みを浮かべ、奴は消え入るような声で吐き捨てた。
83へ。

俺たちは皆、精神をすり減らしていたが、全力でレザニアを目指した。あの老人を放っておくと良いことにならない……そんな予感があった。
あの時、奴は何を考えていたのだろうか。刃の血族への復讐。それは間違いがない。自分たちもそれぞれに刃の血族に恨みを持つ身ではあるが……奴には何かもっと異質な執念があったように思える。
ともあれ、山間の村レザニアまでもう少しだ。いずれにせよあの老まじない師ともう一度話をしてみるしかない。
“頭”がカルルームの黒檀像なら231へ。
魔除けの仮面、あるいは翁面の酒瓶のいずれかであるのなら167へ。
そのいずれにも当てはまらないのであれば、431へ。それぞれ進め。

亡霊の圧に抑え込まれた俺の身体を炎が舐めていく……実体の無いはずの亡霊の身体に焼かれる痛みが奔った。だが、俺も負けてはいない。果敢に武器を振るい、奴の身体へとたたきつけていく。
次第に敵の殺意は薄れていき、ついに黒い靄となって散っていった。
162へ進め。

まじないが打ち破られた影響か、大きく痙攣したライラの身体が床へと崩れ落ちた。半狂乱になったファファスタスが祭壇へ駆け寄り、喚きたてる。「ここまで来て……諦められるものか!」
再び呪言が玄室に響き始めた……だが、それも僅かな間だけだった。この隙を見逃す俺ではない。
切り裂かれたローブを赤く染めながら、老まじない師が呻く。「おのれ亡霊め……だがどうじゃ……あれこそ、我が王家に伝わる魔導兵……マールバハールの守護者……すばらしい……」
その言葉を最後に、ファファスタスは事切れた。それを待っていたかのように、祭壇の巨石がぎこちなく動きはじめる。奴め、ギリギリのところで儀式を終わらせていたのだ! そいつはうずくまるようにしていた手足を伸ばし、引きちぎられた縄と呪符を舞い散らせながら立ち上がった。
背後ではチャダルが気を失ったライラに必死で声をかけ、介抱している。俺は二人を護りながら戦わなければならない。
BATTLE 
サイコロを一つ振れ。そして武器などから得られる戦力ボーナスを加える。
出目が「6」であれば、さらにサイコロを振って加算せよ。
(ただし、「1」が出た時点で自動的に敗北となってしまう)
得られた値と、敵の戦力を比べよ。同点以上であれば勝利だ。
敗北を喫した場合でも、命運点を1消費することで再挑戦できる。
決してあきらめることなかれ。

急に流れが早くなり、舟は滑るように湖から流れ出る。背後を振り返ると、さっきまでいたあたりで巨大な魚が跳ね上がるのが見えた。あれに巻き込まれていたら、ただではすまなかったはずだ……危ないところだった。
それから数日。次第に支流が集まってきて、川は雄大な大河となっていった。生前、王都にいたころには毎日のように見ていたエナムの流れだ。もう特に危険な出来事も起きないまま、彼方にはおぼろげながら王都の影が見えてきた。
だが、これ以上近づくと無人の舟では怪しまれるかもしれない。事実、この舟にはまじないがかかっているのだ。俺の考えを読み取ったのか、あるいはファファスタスが使うときにも王都に入ることは避けていたのか。ともかく舟は勝手に川岸に生えている葦の茂みへとわけ入った。そして、ついに動かなくなる。ここからは陸に上がって王都へ向かうなさそうだ。
時刻は夜明け、店の準備を始める商人や、道を急ぐ旅人たちで街も活気づくころだ。
480へ進め。

「奥様のお名前かぇ? もちろん、アイシャ様じゃよ……子を遺してお亡くなりになった……」
そう言い残し、老婆の姿は消えてしまった。
大きな鐘の音が鳴り響く。俺は無言のまま踵を返し、牢のほうへと戻る。
TOLLING
鐘が鳴った回数を記録しておくこと。ここでは1回追加だ。
残すは、牢の間のみとなった。155へ進め。

不意に体がぐいと引っ張られる。何も見えず、聞こえないまましばらくたつと、視界が戻ってきた。チャダルが疲れ切った顔でこっちを見ている。「あいつ、旦那の頭を踏みつぶそうしたんだぜ……俺っち、必死でかっさらったよ」
俺はあたりを見渡した。さっきの敵の姿は見えないが……ここはどこだ?
「旦那を引っ張って逃げるのは骨だったよ。……何とか逃げ切れたのはいいんだけど、どの道を来たかわかんなくってさ。二つばかり分かれ道があったと思うんだけどよ」
「気にするな。お前がいなかったら全て終わっていたんだ……頭さえあれば、なんとかなるさ」
チャダルに礼を言うと、俺は歩き出した。さあ、ここはどこだ?
242へ進め。

やがて、光が届かぬ前方の闇の中から一人の騎士が姿を現した。忘れもしない男だ。
「バジャー、また会えてうれしいよ……まじない師はこの先だ。あの少女もね」
俺は進む足を止めることなく、武器を抜き放つ。奴――かつて俺を二度も負かした騎士、ラシュドの亡霊は俺の殺気を真っ向から受けながら、不敵な笑みを浮かべた。
この手にある武器は何か?
これらの武器ではなく、己の一部でもある実体なき剣で戦いに挑むこともできる。その場合は335へ進め。

ユーフォミアの部屋には他に出口はない。壁を抜けられない以上、元来た方へ戻ることしかできないようだ。
回廊に戻り、螺旋階段を超えて反対側へ向かう。そして左側の壁についている扉を開けた。先へ進む道はここしかない。
2へ進め。

奴の剣筋は確かで、気を抜けば一気に畳みかけられてしまいそうだ。しかし俺とて武勇で知られた騎士。決して劣りはしない。十何合も打ち合ったころ、奴は興奮しながら言い放った。
「……実に素晴らしい! 頭を失ってなおこれほどの鋭さとはね。君ほどの使い手を倒せたのなら、彼の“最強”はより確かなものとなるだろう……! 君が五体満足だったなら、この決闘にはもっともっと意味があったろうに、残念だよ!」
敵の剣閃が光る……これを躱すことはできなかった。俺の“頭”は所詮借り物。ここまでの戦いで、既に傷ついていたのだ……どこかが欠けたらしい。視界が大きく削られ、並行感覚が失われる。
「バジャー!」
思わず膝をついた俺の背後から、ライラの悲鳴が聞こえてきた。あのバカ娘、まだこの辺に留まっていたらしい……
だが、それを聞いた敵は表情を変えた。
「今、なんと呼んだ? この騎士が……あのバジャーだって?」
40へ。

やはりタペストリーは地図のようだ。書棚からマールバハールの地図を探し出して照らし合わせてみると、どうやら国の南部に広がる砂漠のものらしい。
タペストリーには書の血族の紋章と、いくつもの文字列が織り込まれている。
俺の“頭”となっている品は何だろうか?
魚の骨、あるいはジョッキであるのならば485へ。アミュレットであるなら277へ。それ以外の品であるのなら、359へ。それぞれ進め。

舟を川へと押し出し、そのまま飛び乗る。
谷を下る流れは速く、あっという間に橋は後方へと消え去った。俺は“頭”を抑えながら、船のへりに捕まって身体を固定する。こんな急流に投げ出される――ましてや“頭”を落とす羽目になる――のだけは防がなければならない。
行く手に白く飛沫を上げる岩が見えてきた。あっという間に舟が吸い寄せられていく。岩の先にはまた別の大岩があり、その間へと水が逆巻きながら流れ落ちていく!
命運値を1消費して、この難所に備えるのであれば483へ進め。
それができない、あるいはせずに乗り越えるつもりなら……サイコロを一つ振り、出た目が「4」以上だったのなら483へ行ってよい。「3」以下だった場合は、37へ。

チャダルに盗ませようとしていたのは何か?
青い装丁の魔術書 294へ。
赤い宝石の珠 386へ。
緑の金属でできた護符 202へ。

「俺の頭が……? どういうことだ……」
口を開いた俺は、自分の声に驚いた。まるで壷に首を突っ込んで喚いたみたいだ。頭の中を反響がこだましている。
「今、ここに乗っかっているこいつは何だ?」目の前にいる少女が答えを知っているかどうかはわからないが、他に聞く相手はいなかった。
ややあって彼女は口を開いた。
「……貴方の首は切り落されたのよ。もう120年も前の話だけど。刃の血族と書の血族が争った戦いがあったことは覚えてる? 書の血族に仕えていた貴方は、お姫様を守っていたけれど、使命を果たせずに死んだって記録が残っているわ……騎士バジャー。それが貴方の名前でしょう。違う?」
そうだ、俺は……使命半ばにして倒れたのだ。王から託された姫を護ることもできず……。あの時の記憶がよみがえってくる。馬を駆る間、俺の背で小さく震えていた姫。そして隣国カルルームとの国境へと続く森で戦った追っ手の騎士……
「120年経っていると言ったな。あの方は……アイシャ様はどうなった?」俺は呻くように言った。
「アイシャ姫は、刃の血族に捕まったって読んだわ。手柄を立てた誰だかと結婚させられたって。でも子供も無いまま若くして死んだみたい。今は刃の血族がこの国を治めているの。書の血族から奪った王座に剣を突き立てたなんて話も伝わってるわ」
俺は身体が怒りに震えるのを感じた。なんという不甲斐ない騎士なのだろうか……姫を護れなかっただけでなく、恥辱を負わせたうえに失意のまま死なせてしまったとは!
「貴方は確かに、あのバジャーね。アイシャ姫の話を聞いてこんなに怒っているんだもの」
そして彼女は付け加えた。
「私はライラ。話ができてよかったわ……それも貴方の身体に首壺を乗せたおかげね。
だって、バジャーったら首無しのままだったんだもの」
首壺! 処刑後に首を収めるための、顔を模した壺だと? そんな物が今、俺の頭になっているというのか?
首壺を叩き落すなら178へ。屈辱に耐えてライラと話を続けるのならば361へ進め。

不意を突き、一気に倒すしかない。騎士の一人に狙いを定め、俺は飛び出した。
BATTLE 
サイコロを一つ振れ。そして武器などから得られる戦力ボーナスを加える。
出目が「6」であれば、さらにサイコロを振って加算せよ。
(ただし、「1」が出た時点で自動的に敗北となってしまう)
得られた値と、敵の戦力を比べよ。同点以上であれば勝利だ。
敗北を喫した場合でも、命運点を1消費することで再挑戦できる。
決してあきらめることなかれ。
勝てたのなら、引き続き残りの二人を相手に戦いを続けることができる。317へ進め。
不意打ちに失敗したのであれば62へ。

「お前は何者だ? 俺がよく知っている、ある男にそっくりなんだが……チャダルという名の盗賊を兄弟に持った覚えはないか?」
男は今度こそ、はっきりと驚きの表情を浮かべた。
「そいつはまさしく俺っちの名前だ。けど、兄弟はいねぇ……あんたが知ってるって奴こそ誰なんだ? 興味がでてきたぜ」
同じチャダルと名乗る、見た目もそっくりな男に俺は奴のことをかいつまんで説明してやった。ファファスタスの隠れ家から、ここへ送り込まれたことも……。全てが手の込んだ罠だった場合に備え、ライラのことだけはぼかした。
男は黙って聞いていたが、やがてぽつりと言った。
「なるほどなぁ……そっちのチャダルって野郎はよ、記憶が無いとか、そんなことを言ってなかったかい?」

タペストリーは地図のように見える。そこで書棚からマールバハールの地図を探し出して照らし合わせてみると、どうやら国の南部に広がる砂漠のものらしいことがわかった。
また、タペストリーには書の血族の紋章と、いくつもの文字列が織り込まれていた。解読を試みてみたが、掠れていて読み取るのが難しい。だが、かろうじて次のような言葉が見つかった。
これらの響きに聞き覚えがあった。そうだ、これはマールバハールを治めた王の名前だ。俺が生きていた時代においても、すでに歴史となって久しかった。
元のパラグラフへ戻り、調べ物の続きへ戻れ。

「……私、やっぱりマールバハールに戻る」
焚火が爆ぜる様子を見ながら、しばらく考え込んでいたライラが言った。
「この先も亡霊に狙われるとしたら、どこにいても安全じゃないわ。貴方たちもそうだけど、亡霊には国境なんて関係ないもの。それに、私が本当に王家の血を引いているなら、狙われる理由はいくらでもあるし。私を殺したい者も、利用したい者もいる……」彼女の目に新しい決意が宿っているのが見て取れた。
「どうせ逃れられないのなら、立ち向かうしかないよね。私が自由を得るためには、あの国で戦って勝ち取る他ないんだわ」
彼女は俺たち二人の顔を見た。俺には異論はない。もとより、ライラがそうしたいのなら最後まで付き合うつもりだった。チャダルも同じだったらしく、少なからず興奮している様子だ。
「嬢ちゃんがそう言うなら、俺っちもついてくぜ」
「お前の師……ファファスタスを完全に信用するわけじゃないが、奴が持っている情報は必要だ。俺たちがこの先、何を信じて何をするべきかを見定めるためにも、な」俺はそう言って立ち上がった。
「マールバハールへ戻り、レザニアへ行こう。ファファスタスの隠れ家なら何か掴めるだろう」
385へ進め。

「ねえ、聞いてバジャー。私たちは敵を同じくしてる。蘇らせてあげたからって恩を着せるわけじゃないけど……私を助けてほしいの」
異物の頭に魂のほうが慣れてきたのだろうか、徐々に視界は鮮明になってきていた。目の前に立つライラは、その言葉の印象よりも幼く見えた。元々長かったであろう後ろ髪は今は切られて短かったが、前髪は伸びていて薄い金色の髪が左目を隠している。どこかアイシャ姫を思わせる顔立ちだ。
「……ライラ。お前は何者だ? 一体ここはどこなんだ?」
部屋の広さに比べ、物は少ない。ライラが腰かけていた椅子の他は、部屋の片隅に小さな木製の桶がいくつか見えるだけだ。その中の一つには水が少し入っていたが、多くは空のようだった。あとは本が数冊、積み上げられているぐらいだ。硬く冷たい石の床に、同じく黒々とした壁。窓はふさがれていて、小さな明かり取りの穴が天井近くにあるきりだ。小柄なライラといえど通るのは無理だろう……たとえその高さまで登れたとしても。
「さっきも言ったけど、私が貴方をこの世に呼び戻したの。昔、飼ってた猫の魂を呼んだときは……村のみんなから、まじないの力を持っているなんて不吉な子どもだって言われたわ」
そして彼女は床から本を一冊拾いあげ、ページを繰り始めた。
「刃の人たちは、書の人を悪者にしたかったんだと思う。私が捕まったのも、きっとこの力のせい……お父さんとお母さんは亡霊を呼び出すことなんてできなかった。私だけが、普通じゃなかったの。
でも私を捕まえた人たちは、そんなことは知らなかった。だから私のことを書の血族の生き残りだなんて考えたのね。ここは書の人が囚われていた塔なのよ。名前は塗りつぶされていたけど、記録は本になって残されていたから、それでわかったの。その人は刃の血族を恨みながら、死ぬまで閉じ込められていて……アイシャ姫のことも、あなたのこともこの日記に残されていたわ」
彼女は持っていた本を開き、とあるページを示す。そこには戦争で敗れた後、書の貴人の一人が受けた痛々しい記録が綴られていた。文字の色はくすんだ赤茶で、血で書かれたものと見える。書の血族はそのほとんどが囚われの身となり、間を置かずに処刑されていったようだ。わずかな生き残りもここのような石の塔に閉じ込められたということなのだろう。
「お前の敵も、刃の連中ということか。奴らが……いや、奴らの子孫が、お前をここに閉じ込めたんだな」
「そう。でも、私はここで死ぬつもりなんてないわ」
「それで俺を呼び出したのか……だが、首を失った騎士にどれほどのことができるか」
「私もびっくりしたわ。こんなはずじゃなかったの。でも、確かに貴方は首を切られて死んだって書いてあった……こうなる可能性も考えておくべきだったわね」
改めてライラを見ると、なるほど確かに幽閉されているせいだろう、やつれてはいる。しかし衰弱しきっているという風でもない。慣れぬ首を巡らせて部屋を見渡してみると、出口らしき扉は二つあるのがわかった。奥の壁についている小さな木の扉が一つ。壁に沿って続く鉄格子の中央には、大きな錠がこれ見よがしにぶら下がっている潜り戸がついている。鉄格子の向こうには、暗い廊下が左右に続いているのが見えた。
「貴方が何を考えているかわかるわ、バジャー」ライラが言った。
「あっちの扉は、その……用を足すところ。私でも通れないような小さな穴があるだけ。私は塔どころか、この部屋からすら出ることができないの。でも、何とか生きているわ。食べる物も少しは手に入るし、この本やランプだって……」
そこまで彼女が言ったとき、上から何かが落ちてきた。明かり取りの穴からだ。
401へ進め。

俺も懸命に抗ったが、先の一撃は大きかった。傷口から霊気を散らせつつ何合も打ち合った結果、奴にも傷を負わせることはできたが……どうしてもそれ以上に食らってしまう。
「さらばだ、首無しの騎士よ!」
奴がとどめとばかりに剣を打ち下ろす。最早俺には、それを躱すだけの力は残されていなかった。

首に乗っかっているのが鉄兜なら152へ。
何か別の物が“頭”になっているのなら273へ。それぞれ進め。

さて、次はどっちへ向かうべきか……
像からみて右手手前へ延びる通路を選ぶのなら86へ。
左手手前へ進む道にするのならば63へ。
右手奥へ行ってみるなら467へ。
あるいは左手奥へ進むならば49へ。

再び地上へと出た俺たちの前に広がっていたのは、見事なまでに晴れ渡った青空だった。あれほど俺たちを苦しめた砂嵐も収まっていて、陽炎に揺らぐ砂の地平の先に、マールバハール中部の山々が見えていた。
「もう書の血族が匿していた力は残っていない……これで刃の血族の支配は絶対になったんだわ。それでも、先祖が守ってきた力を悪用されるよりはいいわ」
刃の血族はこれからも、書の生き残りを弾圧するだろう。ライラが平和に暮らすには、このバールマハールは危険すぎる。だが彼女はこの国に未練はないと言い切った。カルルームでも、あるいはもっと遠い国であろうと、どこででも生きていけると。それにもう彼女は天涯孤独ではないのだ。
やがてライラにも次の生へ向かう刻がくるだろう。その時、俺もまた無へと還ることになる……最期の瞬間まで、何があろうとも俺は彼女の騎士であり続けるだろう。そして彼女は、そんな俺を見ていつもこう言って笑うのだ。
「バジャー、今回の“頭”は何にしたの? ……うん、とってもステキ。似合ってる」

積石の回廊を足早に進む。果たして、すぐに外へ続く入口へと到達した。371へ進め。
ただし、石塚の入り口で退魔師を殺していたのならば417へ。

「このまま一気に突っ切るぞ……しっかりつかまっていろ」
俺の言葉にライラはうなずき、馬にしがみつく。俺は前方に迫ってくる関所に向けて、さらに馬を駆り立てた!
ここで命運値を1消費するべきと考えるのなら488へ。ただし、“頭”が幸運のお守りであるのなら、命運値を減らさずともよい。
そうは思わない、あるいはしたくてもできないのであれば432へ進め。

確かにライラは王家の血を引いている。霊廟の守護者を操ってみせたことで、それは証明された。だが、それは彼女の意思に反した行動だった……そのせいなのかもしれない。ファファスタスが試していた時に比べると守護者の動きはまともだったが、それでも俺の敵ではなかった。これでは、刃の血族に復讐しようとしても戦力足りえなかっただろう。
言葉もなく立ち尽くしている老人を残し、俺はすぐさまライラのほうへ駆け寄る。彼女は床に倒れこんでしまっていた。強制的にまじないを使わされた結果、戦いで守護者が受けた衝撃の影響をまともに受けてしまったらしい。
「ライラ……! おいっ、しっかりしろ!」これじゃ、俺が彼女を殺してしまうようなものだ……最悪の予感が脳裏をよぎる。
“頭”がカルルームの像なら165へ進め。
別の物だった場合には、462へ。

「……旦那! しっかりしろ!」
不意に音と視界が戻ってくる。チャダルが俺の首に何かを乗せたのだ。俺たちは二人して床に転がっており、目の前では、勝ち誇った笑みを浮かべた刺客が短刀を振りかぶっている!
何かを握ってているのに気づき、力を振り絞って繰り出した……いつの間にか手の中にあった短剣が敵の喉元へと吸い込まれる。
男は乾いた笑み貼り付けたまま、開いた穴から血をごぼごぼと吹き洩らしつつ埃の中へと崩れていった。「……ち…夜にするんじゃなかったぜ……」
俺は血に濡れた刃を見つめ、新しい“頭”に手をやった。これは……兜か?
「あっちの隅に、甲冑一式があったんだ。奴があんたに気を取られている間に、頭と武器をなんとか持ってきたってわけ」チャダルが言った。
「それにしても……亡霊を斬れるなんて、おかしいと思ったよ」
420へ。

「チャダルはまだ来ないのかしら?」
カルルーム領内に入ってからしばらくして、ライラが言った。確かにそろそろ追いついてきてもいいはずだが……まさか、何かあったのだろうか? 国境のほうを振り返った俺たちの目に、誰かが馬に乗ってやってくるのが見えた。
「チャダルじゃない……騎士よ。それも亡霊の……!」
ライラの言う通りだった。姿はおぼろげで、背後の景色が透けて見える。それに……奴が乗る馬には首が無かった。その姿に俺は不吉なものを感じた。何故かはわからないが、間違いなく追手だという確信があった。
ライラを逃し、戦いに臨むなら341へ進め。
ライラを護りつつ戦うつもりなら、185へ。

やはりあれは警報だったらしい。街を巡回する衛兵たちの動きが変わったのは明らかだ。しかし、そのおかげで警備の薄いところができている。俺たちは奴らの隙間を縫うように王都から脱出するべく裏路地を走った。塚の入口を護っていた退魔師は今頃失態を責められているだろう……退魔師協会にも一泡吹かせてやれたと思うと少しは気が晴れるというものだ。
「こっちだ、旦那。今なら壁を越えられるぜ」チャダルの言葉に心なしか安堵が感じられる。そうだ。王都を出てしまえば、どこへでも身を隠すことができる。衛兵に見つかることを恐れる必要もない。
すぐにでも南の砂漠へ向かい、ライラとファファスタスに追いつかなければならない。俺たち亡霊の足は速い。程なく再会できるはずだ……
「見事、あの剣を抜いたようだな。大したものだよ」不意に声を掛けられ、俺たちは振り返った。
いつの間に現れたのか、一人の騎士が馬にまたがっている。だが彼の姿は半ば透けており、馬のほうはといえば、なんと首が無い。こいつは俺たちと同じ、亡霊だ!
「今はこんな様だけど、僕はかつて刃の血族に仕えた騎士でね……汚らわしいまじないに縛られて、不本意ながらこうしているってわけさ。君たちもそうじゃないのか?」
奴はそう言うと、殺気を漲らせて剣を抜き放った。
「……だが君たちは幸せだ。こんな悲惨な境遇から解放されるんだからね!」
敵の一撃を裁くのに、命運値をいくつ賭けるか?
1でも、それ以上でも構わない。ただし、残っていない分は使うことはできない。
敵の刃は目前に迫っている。判断に費やせるのは一瞬だ。決めたら61へ。

王都へ入るための門の前には巨大な篝火が燃えており、そこへ至る道を明々と照らしていた。塁壁の上はもちろん、門の前にも数人の衛兵が油断なく並んでいて、彼らの緊張した面持ちが、何かあったのだと告げている。
奴らに発見されないギリギリまで近づき、聞き耳を立ててみる。どうやら昼間に巡回に出た兵の一部戻っていないらしい。野盗に備え、今夜は特に厳重な警備になっているようだ。
こうまで厳重に固められてしまっては、俺に何もできることはない。この“頭”がある限り、すぐに見つかってしまうだろう。王都には退魔師もいるはず。軽はずみなことは避けるべきだ。せめて全身揃った亡霊だったなら……そこまで考えて、ふと思った。俺の頭はいったい、どこにあるのだろう?
あえて“頭”を外し、状況を確かめてみるのも手だろう。しっかりと持っていれば、いつでも“頭”を戻すことができるはずだ。そうしてみるのなら287へ。
余計なことはせず、警備の隙ができるのを待つのであれば159へ進め。

チャダルがライラを支えながら、馬をなだめようとして喚いているのが聞こえる。仲間の一人が倒れたこともあり、敵の注意は身をかがめた俺――低い位置に不自然に浮かぶ物体――には向いていない。機を逃さず刃を次の敵に突き立てる。もちろんフードの男――退魔師からだ。
「ちくしょう……亡霊か……! 昼なのに……」
自分の身体に突き立った刃を見て、奴は血の泡を吹きながら呻く。俺は素早くその口を塞ぎ、死体を地面に押し倒した。さすがにこうなると、残る騎士も異変に気付く。逃げる馬と少女を追うのをやめ、武器を振り回しながら辺りを威嚇する。「くそっ、どこだ! どこにいやがる!」
すでに草生えの中に身を隠していた俺は、敵が背を向けるのを待って鎧の間に刃をすべりこませた。死体の数がさらに一つ増えた。
「さすがだね、旦那。戦いはお手の物ってわけだ」戻ってきたチャダルが感心している。馬の扱いにも慣れてきたのか、馬はすっかり落ち着きを取り戻しているようだ。それに比べ、ライラは憔悴した様子だった。暴れ馬に必死にしがみついていたせいだろう。しかたあるまい。
「連中が王座を乗っ取って120年か……敵も無く、すっかり平和鈍りしているようだな」
俺が生きていたころの騎士が相手だったら、もっと苦戦していただろう。仮にもマールバハールの騎士ともあろうものが、なんという体たらくだ。だが、これも時代が変わったということなのかもしれない。
しばらくすると、ライラも落ち着いてきたようだ。さて、これからどうするか決めなければならない。古戦場を浄化して回る任に就いているのがこいつらだけとは考えにくい。
このまま進むのなら、221へ。
今は身を潜め、夜を待ってから進むのなら187へ進め。

石に刻まれた引っ掻き傷を見ていると、実際にそこで何者かが石壁を搔きむしっていることに気が付いた。じんわりと現れたそいつの身体は半ば透けている……俺と同じ亡霊だ。
そいつは俺がいることに気づくと、驚いたように指の動きを止め、こちらを見た。そして怪訝な表情を浮かべて呟いた。「その鎧装束は、我らが書の騎士……? だが、その頭は……」
口を開きかけた俺を無視して、男の亡霊は続けた。
「いや……我らに与するものであれば誰でも構わん。ただ、聞いてくれ……囚われの身となり、この忌まわしき石を積む羽目になってどれほどの時が経ったかは知らぬ。だが、あの男への恨みは決して消えることはない。あの卑劣な裏切り者……」
不意に犬の遠吠えが回廊に響いてきた。亡霊は怯えた様子で頭を抱え込む。「ああ、奴が……あぁ!」男の姿が身をよじったと思うと、瞬く間に消えてしまった。
しばらく様子をうかがうが、何も起きない。件の遠吠えはあれきり聞こえず、亡霊が再び姿を見せることもないようだ。
今立っている角から見て、左右二つの通路が伸びている。
右の通路を進むのなら131へ。
左の通路を進むのなら381へ。

行けども行けども、砂嵐が収まる気配は無い。砂塵が吹き荒れる中を、ひたすら進むしかない…… 247へ。

ファファスタスは地図を示しながら続けた。
「ここから王都へ向かうには二つの方法がある。一つは街道にそって北上するやり方だ。いくつかの道があるが、どの道を通っても大差はない。結局は、かつての古戦場を抜ける主街道に合流することになる。途中には村や集落がいくつかある……騎士殿の場合は、“頭”が人目に付くことを避けてもらわねばなるまいな」
そして彼は再びレザニアの位置に指を戻し、近くを流れる川に沿って滑らせた。
「今一つは、このエナム川を下る方法だ。エナムは流れゆく過程で多くの支流と合流し、やがては大河となって王都へと達する。最初はしばらく急流が続くが、亡霊なればさほど苦でもあるまい。
いずれにせよ、“頭”だけはしっかりと守ってもらう必要がある……。万が一、剣を玉座から引き抜く前に“頭”を無くしてしまったら、全ては水の泡だ。立ち回りには気を付けてくれたまえ。一応、繋ぎのまじないをかけておくが、何しろ幽体と物質だ。どこまで繋いでおけるか……だが幸いにもこの“頭”には、まじないの力がかかっている。少しは役立つことを期待しよう。
そうそう、役に立つといえば……レザニアを出て少し行ったところにある橋の下に、ワシの舟がある。まじないがかかった舟だ。川を下るのならば、あれを使うといい」
「次会うときは、お前は冠を載せているかもしれないな」
次の夜。流れる風に吹かれながら、俺はライラに言った。ここから見下ろすレザニアに灯りは少なかった。
「お願い、バジャー。王都での仕事が終わったら、すぐに砂漠のほうへ来て。貴方が一緒にいるほうが、きっとうまくいく……チャダルも連れてきてほしいの」
「そういや、例の竜の入れ墨は結局何だったんだろうな」俺はチャダルが苦しんでいた様子を思い出した。ライラはそれも調べておくと答え、実体のない俺の身体を抱くように両手を伸ばした。
「必ず戻ってきて。貴方は……私の騎士なんだから」
95へ進め。しばしの間、ライラとは離れ離れだ。

鎧を鳴らしながら近づいてくる足音が響いてきた。かなりの大人数のようだ。あっという間に大勢の騎士や兵士が踏み込んでくる。退魔師も何人かいるようだ。俺としては、「頭」が見つからないように壁際の暗がりに身をひそめるより他にできることはない。
「塚の入口を厳重に固めておけ。わずかな異変も見逃すな。それから、すぐに退魔師協会に連絡してもっと人数を回してもらえ。少し前に捕えた死霊術師の娘がタマリンドの塔から逃亡したという知らせがあったが……これも亡霊の仕業かもしれん」
隊長と思しき男が命令を下す。これは死の宣告に等しかった……一度死んだ身である亡霊にも効くやつだ。退路は断たれた。いつまでも手練れの退魔師たちの目を欺き続けることはできまい。遠からず、俺はこの世から消されてしまうだろう……

鍵穴に翡翠の鍵を滑り込ませ、回してみる。カチリと小さな音が通路に響いた。
406へ。

巧妙に隠された入口から中に入ってみたが人の気配はない。
「さっきからずっと、俺っちの刺青が何の反応もしねぇからよ。その爺さんはこの辺にゃ居ねえってわけだよ」とチャダル。
そう、奴はライラを伴い、南へ向かったはずだ。懸命に記憶を辿る。南の砂漠……王家の霊廟。たしかそう言っていた。しかし、あの男が明かした全てが真実とは限らない。何しろ奴は、ライラから俺とチャダルを引き離そうとしていたのだから。
何か手がかりになりそうなものがないかと探っていると、机の隅に小さくたたまれたメモがあった。それに壁には地図のようにも見える古いタペストリーがかかっているが、これも妙に気になる……
「おっ? この棚、隠し戸が仕込まれてるぜ……ほら、開いた」チャダルが声を上げた。そこには古い羊皮紙の巻物が収められていた。
これらの品を調べる前に、このパラグラフの番号を記録しておくこと。
全て調べ終わったのなら、その時は194へ進め。

兵隊たちは村へ行ったきり、戻ってきた様子はない。騒ぎはまだしばらく続くだろう。だが、まだここに兵が一人でも残っていたら面倒だ。念のためライラは身を隠すことにし、チャダルに護衛を頼むと俺は詰所へと近づいた。扉は閉まっていたが、鍵はかかっていない。武器の柄を握る要領で取っ手を掴み、そっと隙間を作って中をうかがう。誰もいない。俺は扉を開けた。
乱雑に散らかった部屋だ。飲みかけの酒が残ったジョッキに、賭博用のカード。ここの連中はお世辞にも模範的な兵士たちとは言えないようだ。これなら地図が一枚消えていても、それと発覚するには時間がかかるのは確実だ。
地図はすぐに見つかった。ライラに見せれば、故郷の村の名前を見つけることができるだろう。
318へ進め。

やがて通路が交差している場所へ出た。形ばかりの広間になっていて、中心には一体の像が立っている。男性の像で、この塚の中心の方――そこには玉座があったはず――を向いているようだ。だが、異様なことに首から上がなく、前へと突き出した右腕の先も欠けているではないか。この像を調べてみるのであれば209へ進め。
像に用がないのであれば、ここに留まる理由もない。広間で交わっている通路は垂直に交差しているのではなく、妙に角度がついているようだ。
像からみて右手手前へ延びる通路を進むのなら63へ。
左手手前へ進む道を選ぶのなら496へ。
あるいは右手奥なら49へ。
残る道は左手奥だ。これを進むなら439へ。

「俺はバジャー……120年前の戦争で死んだ、役立たずの騎士だ」斬り結びながら、答える俺の声を聞いた奴の表情が変わる。
「バジャー! 本当に君なのか……!」
どうやらこいつは、俺のことを知っているようだ……そして、俺もこいつのことを知っていた。これだけ刃を交えればいやでも思い出す。あの時の、氷霧の森で俺の首を切り落とした男だ!
「お前も……誰かに呼び出されたのか……」
「あの時、僕はアイシャ姫を狙うよう仲間に合図した。君の首を取りはしたが、あれは実力じゃない。君の動きは明らかに鈍っていた……姫に気を取られたってわけだ。僕が騎士バジャーよりも優れた剣士であることを証明する機会は永遠に失われた。皆は僕の腕を褒め称えたが、なんの慰めにもなりはしかなったよ。そうではないことをよく知っていたからね」
「そんなことはどうでもいい……誰がお前を呼び戻した? そして、なぜ俺を狙う!?」
しかし、奴は俺を無視して続けた。
「僕はあれから、死ぬまで不敗を貫いたよ。最期は剣の衰えを感じる歳になって、自刃したんだ。それまでの間に多くの決闘を重ね、その全てに勝利した……バジャー、君の“最強”を護るためにね。だってそうだろ? 君が最強でなくちゃならない。僕が勝てなかったのは君だけなんだ。
亡霊となって使役されるなんて屈辱も、もうどうでもいい。逆に感謝でいっぱいだよ! さあ、今度こそ決着をつけよう!」
奴のおしゃべりになど構ってはいられない。俺は無言で剣を繰り出し続ける。最初に入れた一撃が与えた傷は深く、数合の後、奴はついに崩れ落ちた。
「消える前に吐いてもらおうか、誰がお前を遣わした?」
奴は崩れかけた身体で呻きながら、唇をまげて笑った。「さすがだよ、バジャー……いいだろう、教えよう。それは……」
そこまで言いかけた時、不意に奴の身体が砕け始めた。霊気の霧散が早まり、風に流されていく。
「……最後まで僕を縛り続けるってわけだ。バルサザール……!」
それが最後だった。奴が残した名に俺は驚く。バルサザール……それはかつて俺が仕えた、王の弟の名だった。
混乱しつつ、俺は頭――借り物の頭だが――を整理する。
こいつは俺が剣を抜くために王都へ来ているのを知っていた。それに、亡霊を使役できるまじない師といえば……つまり、書の王族だ。バルサザールであるならば王家の者しか使えないという死霊術を使っても何らおかしくはない。120年前の人間が、もしも密かに生き延びていたとしたら……俺の脳裏に別の名前が浮かぶ。
俺はまだ近くにいた首無し馬に飛び乗ると、すぐさま南を目指した。あの男が俺を排除しようとしたとなると……ライラにとって良くないことが起きているに違いない!
首無し馬を手に入れたことを忘れずに、14へ進め。亡霊は風のように走ることができる。それが馬の亡霊ならさらに速い。

「嬢ちゃん、勘弁な!」
勝ち誇ったファファスタスの顔が瞬時に曇る。チャダルが主であるライラに一撃を喰らわせたのだ。彼女の小柄な身体が床に崩れ落ちると同時に、明らかに魔導兵の動きが鈍る。
「馬鹿な……!」奴が漏らした呻きを消し去るように、チャダルは大声で叫んだ。「やっちまえ、旦那ぁ!」
半ば放心状態の老まじない師を尻目に、俺は魔導兵のほうへ駆け出した。今はこいつを倒すことが先決だ!
BATTLE 
サイコロを一つ振れ。そして武器などから得られる戦力ボーナスを加える。
出目が「6」であれば、さらにサイコロを振って加算せよ。
(ただし、「1」が出た時点で自動的に敗北となってしまう)
得られた値と、敵の戦力を比べよ。同点以上であれば勝利だ。
敗北を喫した場合でも、命運点を1消費することで再挑戦できる。
決してあきらめることなかれ。

風に逆らいながら必死で、先を行く姿を見失うまいと進む。奴も動いているが、明らかにこちらよりも歩みが遅い。程なく近くへ寄ることができた……だが、そいつもまた、この死の世界にふさわしい存在だった。
砂にまみれた襤褸をまとい、砕けた片足を引きずる骸骨――亡者なのだ。
今の俺の“頭”は何だろうか?
カルルームの石像、まじないの仮面、あるいは犬頭の酒瓶である場合には52へ。
魚の骨であるのなら108へ。
それ以外の品ならば、334へ進め。

新たな目的を得た俺たちは、十分に休息をとってから、国境を越えた場所へと戻った。
再びマールバハールへと入った後は、そのまま南下する。目指すは、老まじない師が隠れ住んでいたレザニアだ。
344へ進め。

ファファスタスは俺の一撃を受け、ローブを翻して退いた。こっそりと近づいていたチャダルがその隙を見逃さず、背後から飛び掛かる。しかし……
「そんなことだろうと思っていたぞ、このコソ泥めが!」
瞬時に振り返った老まじない師は杖を振りかざし、チャダルを打ち据えた。情けない声をあげながらチャダルは床を転がっていく。
「誰にも邪魔はさせん……ワシは、この力を得るためだけに耐え忍び、生き永らえてきた……。さあ、ライラよ、ワシの可愛い弟子よ。魔導兵を目覚めさせるのだ!」
勝ち誇り、叫んでいた奴の目が驚きに見開かれた。命令にもかかわらず、ただその場に立ち尽くしているライラを見て慌ててローブを探る。だが、探し物はそこにはない――赤く光る珠はチャダルの手の中にあった。
「旦那の剣なら、まじないをぶった斬れる……頼むぜ!」
チャダルが投げてよこしたその珠に、俺は魔封じの剣を叩きつけた。ファファスタスの絶叫とともに、紅玉の珠が砕け散る。
346へ進め。

ただ、冷たい水の中を沈んでいく……既に視界は失われていた。こんな状況でも生きていた頃の感覚が残っているのか、やけに身体が重い。これはきっと鎧の重さだ……やがて何かゴツゴツとしたものが半身に当たるのがわかる。川底だろうか……全ては闇の中だ。何もかもが憶測でしかない。
……俺の頭――おそらくは本来の――はどこか暗い場所に閉じ込められていた。大きく揺られているようだ。こんな中途半端な状態が続くのは苦痛以外の何物でもない。
不意に周りが明るくなった。俺の身体は川の底ではなく、どこかに引き上げられているようだ。そして、俺の顔を覗き込んでいるのは……
「旦那、大丈夫かい? 流石に今回ばかりはもうダメかと思ったぜ」
俺は身体を起こした。舟の上だった。
「お前が引き上げてくれたのか。恩に着る……助かった」
「へへっ、俺っちも役に立てたってわけだ」照れくさそうにチャダルが笑う。
「あんたの身体を川底で見つけるのには苦労したぜ。引き上げるのはその倍ってところだ。舟が流れに逆らって留まってくれてたから何とかなったけどよ……まじない様様だね……」
俺は奴が何か言いにくそうにしているのに気付いた。
「……でもよ、嬢ちゃんの力が込められたアミュレットが見つからなかったんだ。俺っちたちは何の力もねぇ亡霊になっちまった」
その言葉にはっとして頭に手をやる。するとこれは……? 妙な手触りを感じ、水面に映る自分の姿を確かめた。こいつは魚の骨じゃないか! なんてことだ!
俺がうろたえる様子を見て、チャダルが申し訳なさそうに付け加えた。
「こんな湖のど真ん中じゃ、それしか使えそうなもんが見つからなかったんだよな」
なお悪いことに、武器も失ってしまった。
頭が魚の骨になったことを忘れずに、347へ進め。

「ちょっと待った、旦那」
寝ている相手に武器を突き立てようとした直前、奥を伺っていたチャダルが俺を止めた。
「他に入口は無いみたいだからよ。ここで下手やると、袋のネズミになっちまうかもしんねぇ」
退魔師をそのままにしておくこともできるし、やはり殺してしまったほうがいいと思うのであればそうすることもできる。殺すのはやめておくのなら206へ。憂いを断っておくのなら122へ。

再び地上へと出た俺たちの前に広がっていたのは、見事なまでに晴れ渡った青空だった。あれほど俺たちを苦しめた砂嵐も収まっていて、陽炎に揺らぐ砂の地平の先に、マールバハール中部の山々が見えていた。
もう書の血族が匿していた力は残っていない。刃の血族の支配は絶対なものとなった。しかし、ライラは満足げに呟いた……先祖が願いを込めて残した力を悪用されるよりはいいと。
刃の血族はこれからも書の血族の生き残りを弾圧するだろう。身寄りのないライラが平和に暮らすには、このバールマハールは危険すぎる……だが、彼女にはもう、この国に対する未練は一切無かった。カルルームでも、どこででも生きていけると。それに彼女は天涯孤独ではなかった……二人の亡霊が常に、彼女のそばにいるのだ。
もちろん、いずれライラにも次の生へ向かう刻がくる。それは命ある人の身である以上必然だ。その時、俺もまた無へと還ることになる……最期の瞬間まで、何があろうとも俺は彼女の騎士であり続けるだろう。

老婆は再び口を開いた。
「ところでお主、その身なりでカルルームへ向かうつもりかぇ?」
俺の首には何が乗っているのが鉄兜ならば、5へ
それ以外の品ならば254へ。それぞれ進め。

灯りに導かれるように通路を進んでいくと、やがて石室に出た。生きている物の姿はない。
ここから先にも道が伸びているが、これまでよりも急勾配になって、さらなる地下へと潜っていくようだ。
今、隣に共に歩む仲間がいるだろうか?
同行者が二人いるのであれば135へ進め。一人なら129へ。
一人きりでここまで来た場合には、41へ。

二人が去っていくのを確かめ、俺は再び道を進む。あの会話からすると、連中はきっとライラたちがいる場所まで行かずに引き返してくるに違いない。急いだほうがよさそうだ。
200へ。

さて、次はどっちへ向かうべきか……
像からみて右手手前へ延びる通路を進むのなら496へ。
左手手前へ進む道を選ぶならば229へ。
右手奥なら120へ。
あるいは左手奥にするのなら285へ。

天幕の中には一人の老婆がいた。齢100を越えようかという風貌で、古着の束に包まれて寝台の上に腰かけている。ここへライラを連れてきた男が何事かを耳打ちすると、無言でうなずいた。どうやらこの老婆が、ここの頭領らしい。
老婆はライラを頭からつま先まで品定めするように眺めていたが、やがてはっとしたような表情を浮かべた。彼女が手を小さく振ると、怪訝な顔をしながらも男が無言で引き下がる。人払いの合図だったようだ。誰もいなくなったのを確かめるように間をおいて、老婆が声を漏らすように話し始めた。
「……ここに、アンタ以外にも居るね。もう一人……いや、二人のようじゃが」
チャダルが驚いて一歩退く。「俺たちが見えているってのか?」
しかし、老婆はそれには答えなかった。彼女はライラを見据えたまま、再び口を開く。「ワシには亡霊の声は聞こえん。ただ、存在を感じるだけじゃ。どうじゃ? お主は死霊使いであろう?」
そうだと言ってやれとライラに伝えるつもりなら、104へ進め。
逆に絶対に認めるなと言うのなら、ライラは老婆の言葉を無視するだろう。254へ。

次の夜。ファファスタスは隠れ家のウロから出て、俺たちを見送りながら言った。
「カルルームヘ逃げようというのなら、国境となっている氷霧の森を抜けなければならん。王都に入る必要はないが、かなり北まで進む必要がある。古戦場を抜けたあたりで西へ進路をとるといい。
ライラや、これを着ていくがよかろう。あの森の空気は冷たい。今のままでは肺が凍ってしまうぞ」
「ありがとう……先生。お力になれず、申し訳ありません」
「いや、その話はもういい。ワシも強引だったようだ」
俺の“頭”は新しくなっていた。まじないがかかった仮面で、ファファスタスが言うには死霊術師であるライラとの繋がりが強まるという。
「あの老人、この後どうするつもりだろうな……」
俺は山間を下りながら、ライラに聞いてみた。彼女は前を見据えたまま答える。
「わからないわ……でも、先生の選んだ道は危険だと感じたの」
頭が魔除けの仮面になったことを忘れずに、409へ。

ファファスタスは祭壇から離れ、こちらへと向かってきた。
「お前たちが持っている“鍵”をよこせ……それさえあれば、眠りしマールバハールの夢、古き書の血族が残した力を解き放つことができるのだ!」
BATTLE 
サイコロを一つ振れ。そして武器などから得られる戦力ボーナスを加える。
出目が「6」であれば、さらにサイコロを振って加算せよ。
(ただし、「1」が出た時点で自動的に敗北となってしまう)
得られた値と、敵の戦力を比べよ。同点以上であれば勝利だ。
敗北を喫した場合でも、命運点を1消費することで再挑戦できる。
決してあきらめることなかれ。
勝ったら199へ進んでよい。だが、負けたのならば……460へ。

馬を駆り、一気に橋を渡る。ライラは振り返りもしなかった。もう故郷に未練はないのだろう。
数日の後、俺たちは再びあの石の塔が建つタマリンドへと近づいていた。流石に亡霊騒ぎも落ち着いてはいるだろうが、わざわざ首を突っ込むことはない。地図を調べ、今はほとんど使われていないような古い街道を探す……迂回することができそうだ。
171へ進め。

ライラの故郷、レザニアは山合いの小さな盆地を切り開いて作られた村だった。遥か王都を超えて流れいくことになるエナム川が、村のすぐそばで水音をたてている。家はまばらで、農地の中にぽつぽつと建っていた。住んでいる者はそう多くはなさそうだ。タマリンドのように、夜遅くまで酒場に明かりがついているということもないらしい。
「で、どうするんだ? あてはあるのか?」
「私にまじないを教えてくれた人がいたって話、覚えてる? その人が使ってた隠れ家が村の向こうにあるの。彼はもう年寄りで……つまりそれってそれだけ長く刃の血族から逃れ続けていたってこと。今日会えるかどうかはわからないけど、あそこなら何か身を隠す手がかりがあるはず……」
ここではライラの顔も知られている。俺の頭のこともある。村には入らず、迂回して行ったほうが安全というものだろう。俺たちは村の端に沿って木々の間を進んでいったのだが、どうもライラは村が気になっている様子だ。俺が問いただすと、彼女は立ち止まってぽつりと言った。
「私の家、どうなっているんだろうって気になって。それにおばさんたちも……」
ライラの生まれた家へ行ってみるなら478へ。
ライラを引き取り、のちに彼女を国に売ったという女が気になるなら266へ。
このまま危険を冒さず、彼女が師と出会った隠れ家へ向かったほうがいいと思うのであれば484へ。いずれかを選んで進め。

家系図の中に“アイルカーン”は確かに存在した。初代の王、つまりマールバハールを打ち立てた人物の名だった。
元のパラグラフで調べ物の続きをするために戻ってもいいし、457で、他の名前を探してもいい。

霊廟へと踏み入り、通路を辿る。進めば進むだけ、行く手に明りが灯っていく。不思議なことに路を照らす炎からは熱を感じない。まじない師の王たちが眠る墓にふさわしく、まじないがかかっているのだ。しかし、これでは侵入者がいることは明らかだ……ファファスタスは抜かりなくこちらを待ち構えているだろう。
俺の“頭”は何だろうか?
首壺であるのなら168へ進め。
それ以外の品が乗っているのならば、391へ。

床に落ちたそれは、乾いた音を立てて転がった。しっかりと焼き上げたパンの塊のようだ。
「へへっ、今日も食いもん見つけられたぜ」
陽気な声とともに、壁から小柄な男が姿を現した。明らかに亡霊だ。左目から頬にかけて、見事な竜の刺青が走っている。だが、そのいかつい竜とは裏腹に、男は朗らかな笑みを浮かべていた。
「おかえりなさい。いつもありがとう、チャダル」ライラはパンを手に取って嬉しそうに言った。
「なぁに……ライラ嬢ちゃんにゃ、この世に戻してもらったってぇ大恩がある。俺っちにゃ力がねぇからここから出してやることはできねぇけど、こーいうことならお任せってね。なんせ、あんな桶にちょぴっとが数日置きじゃ足りねぇよな……おや、新入りですかい?」
チャダルと呼ばれた男は、やっと俺に気づいたようだ。ライラがうなずく。
「じゃぁこいつが例の騎士様ってわけだ。しかし、まさかの頭だなぁ」
何者だと問いただすのなら214へ。
無礼な輩は無視するに限ると考えるならば110へ。それぞれ進め。

こんな奴に名を教えてやる必要はない。黙っていると、奴はあきらめたように肩をすくめた。
「つれないな……では、しかたがない。続けよう」
362へ進め。

「チャダル……お前、この名前に覚えがあるか? 120年前の戦に関連する男なんだが」
チャダルはしばし考え、答えた。「うーん、バルサザールねぇ……俺っちにとっちゃ昔話だったけどよ、聞き覚えはあるぜ。たしか、ただ一人許された書の王族だったっけかな。でも待てよ……そうだ、結局何年か後に処刑されてたはず」
アイシャ姫を連れて隣国へ逃れろと言ったのは、この男、王弟バルサザールだった……そして、あの追手たちはまるで、姫の行き先を知っていたかのように現れた。
「どうしたい旦那? ずいぶん怖い顔してよ。なあ、早いところ例の剣を抜きに行こうぜ」
「……ああ、そうだな。急ごう」
湧きあがった疑念――最早確信に近かったが――を胸に、俺は首を失った像に背を向けた。
像からみて右手手前へ延びる通路を進むのなら63へ。
左手手前へ進む道を選ぶのなら496へ。
あるいは右手奥なら49へ。
残る道は左手奥だ。これを進むなら120へ。

「そいつにはワシのまじないがかかっている……とんだ間抜けだな!」
俺の“頭”を見た老人が笑みを浮かべ、口の中で何か呟く。その瞬間、俺の視界がどす黒い瘴気に覆われる。くそっ、何か仕掛けられていたらしい。力が抜けていく……!
動けぬ俺を脇目に、奴はライラに呼びかけた。
「……とんだ邪魔者のせいで儀式はやり直しじゃ。まずはこやつの始末といこう」
106へ。

ファファスタスの言葉が思い返される。“レザニアを出て少し行ったところにある橋の下に、ワシの舟がある”
橋の下へもぐりこんでみると、確かに舟はあった。
亡霊は風のように速く動けるが、道に迷う危険はある。主街道を外れることなく北へ向かえば間違いなく王都へ着けるだろう。だが、それには問題があった……なにしろ、俺の“頭”は目立つ。集落は避けて進まねばならない。そうなると細かい道を行くことになるが……土地勘がないため、絶対に迷わないとは言い切れない。面倒なことになる恐れはどうしても残る。
一方、もしも川の流れに沿って行くならば、王都まで迷うことなく一直線だ。しかし亡霊の身ではあるが、俺は生前の感覚に縛られている。舟無しに川を行くことは難しい……間近で見るエナムはさすが上流だけあって流れが速い。一人で舟で下るとなれば、“頭”の喪失にはよほど気を付けなければならないだろう。もしも頭が水に落ちてしまおうならば、あっという間に身体は流されて離れ離れだ。そのまま何もできず、ライラの命が失われるその日まで暗闇の中を彷徨わなければならない。いや……ファファスタスは「まじないのかかった舟」と言っていたはずだ。ならば、多少の急流ではびくともしないということもありえる……
舟でエナムを下る決心がついたのなら354へ。そうではなく、陸路で王都を目指すことにするのなら340へ進め。

だが扉は開かない。その代わり、どこからか鎧を鳴らしながら踏み込んでくる足音が響いてきた。かなりの大人数のようで、前後どちらからも近づいてくる。“頭”が目立たないように壁際に寝転んでいると、やがて通路は大勢の騎士や兵士たちでいっぱいになった。中には“心臓にナイフ”の図案が施されたローブを羽織っている者もいる……退魔師だ!
「鍵が像からはずされています……侵入者がいたことは確実です」
「だが、そいつはどこへ消えたのだ? 誰もおらぬではないか」
ヒカリゴケの薄暗い明かりの中では、今のところ俺の“頭”に気づく者はいないようだ。何とかして抜け出さなければならない……兵士たちの隙を見ながら、少しづつ通路を戻りはじめる。しかし、隊長の言葉が無慈悲に響いた。
「退魔師と協力して塚の入口を厳重に固めておけ。少し前に、タマリンドの塔に捕えてあった死霊術師の娘が逃亡したという知らせがあった……これも亡霊の仕業かもしれん。わずかな異変も見逃すな!」
退路は断たれた。手練れの退魔師の目を欺き続けることはできまい。遠からず、俺はこの世から消されてしまうだろう……

夜を待ってから静かに村を離れ、街道を戻る。村の連中から確実に“頭”が見られなくなる距離までは慎重に、そしてそのあとは一気に走った。亡霊の足は生きている者のそれより遥かに速い。夜が明けるころには、俺はライラとチャダルが隠れている茂みまで戻っていた。
「どうだったい、旦那。馬はいなかったのかい?」
俺は預けていた武器を受け取りながら、見てきたものを二人に説明した。
危ない橋は渡らないほうがいい。俺たちは道を引き返すことにした。
115へ。

異形の亡霊は俺の顔を見て、動きを止めた。「……書に仕えし騎士、バジャー」
しゃがれた声が炎燃え盛る中に響く。「生きていた時、お前を裁くことは叶わなかったが……その罪は明白である。報いを受けるがいい」
337へ進め。

俺たちは木々の間を通り抜けながらレザニアを迂回し、チャダルと別れたところへと向かった。しかし、例の大樹のところまで来たというのに、奴の姿は見えない。馬もいないようだ。
ここは道沿いで、俺たちが分かれてから一日たっている。朝になる前に、馬が人目につかないように移動したのかもしれない。
「近くに気配が感じられない……どこにいったのかしら」
ライラは道の真ん中に立ち、目指すべき先をうかがった。表情は浮かないままだった。それから、振り返ってレザニアのほうに目を向ける。
「見つけた。こっちにいる……けど、苦しんでいるみたい。あの刺青、ずっと痛んでいたのかも」
そいつは直接奴に聞けばいい。とにかく、村へ向かえばいいわけだ。
山間の村、レザニアの夜は早い。すでにほとんどの建物の灯りは消えていた。
チャダルはこっちにいると、ライラが先を歩く。やがて俺たちは一軒の農家の裏手にある馬小屋へとたどり着いた。狭い小屋の中には2頭の馬がおり、外には見覚えのある3頭目が柱につながれている。その足元で小さくなりながら痛みをこらえるように震えている姿は間違いない、チャダルだ。
チャダルは俺たちがやってくるのに気づくと、顔を上げた。顔の左側に走る刺青が赤く燻っていて、奴の頭は半分崩れかかっていた。
「嬢ちゃん……それに旦那も。あすこを離れちまってゴメンよ。けどよ、馬が村の連中に見つかっちまってさ。俺っち、馬がいなくなっちゃ旅に困ると思って、それで……」
ライラは何も言わずにチャダルを抱きしめようと腕を伸ばした。亡霊に触れることができずとも、気持ちは伝わる……チャダルは泣き出した。
「馬が騒ぎ出す前に、ここから離れるべきだ。急ごう」俺は馬をつなぐロープをほどいた。
再びチャダルと行くことになる。284へ進め。

扉の向こう、塚の中心は大きな広間となっていた。かつて書の王が坐した玉座には、一本の剣が突き立てられていた。これがファファスタスの言っていた、地脈を乱しているという剣か!
今の“頭”がアミュレットであるならば、257へ進め。他の品であるなら421へ。

BATTLE 
もしも握っている武器が除霊の短刀であるならば、効果は絶大だ。この戦いにおいては、戦力に3を足すことができる。
サイコロを一つ振れ。そして武器などから得られる戦力ボーナスを加える。
出目が「6」であれば、さらにサイコロを振って加算せよ。
(ただし、「1」が出た時点で自動的に敗北となってしまう)
得られた値と、敵の戦力を比べよ。同点以上であれば勝利だ。
敗北を喫した場合でも、命運点を1消費することで再挑戦できる。
決してあきらめることなかれ。
見事、勝利したのなら181へ進んでよい。
惜しくも敗れたのであれば、76へ。

この中には、俺の斬られた首があるはずだ!
罠ではという疑念が一瞬よぎるが、それを振り切って俺は壺を地面にたたきつけた……
今や、騎士バジャーは五体満足だ。首に切れ目などない。本来の頭が乗っている。全ての感覚が戻ってきている。今までとは違い、身体のきれに違和感も残っていない。最初からこの状態だったなら、不覚をとることもなかったろう。
本来の頭を取り戻したことを忘れずに。
今後「頭が何か」と聞かれた場合には、その時いるパラグラフから50を引いたパラグラフへ進むこと。
今は14へ進め。

斧に手を伸ばすと、ズシリと重い。頑丈な造りをしていて、これならライラを牢から連れ出すことができそうだ。
この斧を武器として戦闘で使う場合には、戦力に1を足すことができる。
「流石だね。こんな重いモン持ちあげるなんて」
感心したようにチャダルが言った。
「俺っちたち亡霊はよ、ちょっとしたもんなら触れることができる。ほら、騒霊って言ったっけ。物が浮かんだりするやつさ。けど、力が弱けりゃ大したもんは動かせないってわけだよ。……ちょっと、その斧貸してもらえるかい?」
そんなものかと思いながら斧を奴に手渡すと、斧はチャダルの手をすり抜けて床に転がった。奴は手を見ながらため息をつき、ぼやくように言った。
「……俺っちには“執念”とか“無念”ってやつが足りてないんだな。そこへ行くとバジャーの旦那、あんたはこの世に強い未練があるみたいだね。負け戦で死ぬってのは、やっぱ相当悔しいものなのかい?」
アイシャ姫のことを考えながら、俺は斧を拾い上げた。先ほどよりも軽く感じる。
「チャダル、お前は処刑されたと言っていたな。恨みはないのか?」
「そいつは間違いないんだけどさ、俺っち生前の記憶がいまいちあやふやなんだよな。だから弱いんかな」
そう言って、奴は頭を掻いた。
「ライラの嬢ちゃん、まじないを感覚でやってるみたいでよ。雲一つねぇ満月の夜にしかできねぇらしいし……。呼び出した霊も、俺っちは記憶の欠落、旦那は首無しときた。ちゃんとした師匠についていればまた違うんだろうけどよ、まじない師は弾圧されてっからなぁ……」
ライラの牢まで戻ると、彼女はびっくりしたような目で俺が手にしている斧を見た。
「すごいの見つけて来たわね」
「ちょっと待ってろ、今出してやるからな」
俺は斧を振りかぶり、思い切り鉄格子にたたきつけた。その途端、衝撃が体に走って視界が遮断される。何も見えない、何も聞こえない……
この状態になったことがあるなら38へ進め。初めての体験なら197へ。

ファファスタスの手の中で何かが光った。
「ライラ……我が愛しい弟子よ。こっちへくるがいい」まるで冥府から湧いてくるような声が響く。俺の横でライラがふらりと一歩進んだので、慌てて引き留める。虚ろな瞳をしていて、明らかに正気ではない。まじないか!
「チャダル! ライラを抑えていてくれ!」
そう叫ぶと同時に、俺はファファスタスのもとへ飛び出していた。奴を倒せば、ライラにかけられたまじないも消えるはずだ。
「……もちろんそう来るであろうな、首無しの騎士。ならばワシはこいつを動かすしかない……なに、不完全な状態でも構わん。邪魔な輩を排除してから、改めて目覚めさせてやる。ライラさえいれば容易いことよ……!」
ファファスタスが再び呪言を吐きだす。それに呼応し、祭壇の丸岩がぎこちなく動き出した。巨石の表面にはじわりとまじないの文様が浮き上がり、うずくまるようにしていた手足を伸ばして、老まじない師と俺の間に割り込んでくる。引きちぎられた縄と呪符が舞い散る中、玄室全体が揺れ動いた。
BATTLE 
サイコロを一つ振れ。そして武器などから得られる戦力ボーナスを加える。
出目が「6」であれば、さらにサイコロを振って加算せよ。
(ただし、「1」が出た時点で自動的に敗北となってしまう)
得られた値と、敵の戦力を比べよ。同点以上であれば勝利だ。
敗北を喫した場合でも、命運点を1消費することで再挑戦できる。
決してあきらめることなかれ。

「で、この先行くあてがあるのかい?」
塔へと続く道を逆へ辿り、最初の辻まで来たときチャダルが言った。それぞれの道を窺ってみたが、夜も更けていて暗く、少し行った先の様子もわからない。
俺たちはライラがいなけりゃ消えるさだめだ。彼女の安全を第一に考えたいところだが……頼れる親族がいればあるいは……
「お前、家族は?」
「お父さんも、お母さんももういないわ。私、二人を呼び出そうとして……それで捕まっちゃったの。きっとおばさんが怖がって、兵隊に言いつけたんだわ。あの人は私がまじないを使えるなんて知らなかったから」
「なら、お前の故郷へ戻っても安全ってわけじゃなさそうだな」
まてよ……隣国カルルームは書の血族の味方のはず。かつて姫を逃がすことには失敗したが、ライラをこの国から連れ出すのは悪くない考えではないか? しかしチャダルは首を振った。
「旦那、残念だけどカルルームはあてにできねぇよ。あの国はマールバハールと協定を結んでんだ……旦那が知ってる昔の王家じゃなくて、王位を簒奪した刃の連中とだ」
まさに四面楚歌。どこにも、この娘の味方はいないというわけだ……俺たち二人の亡霊を除いて。
俺たちの話を聞きながら、しばらく考えていたライラが口を開いた。
「私が生まれた村の外れに“隠れ家”があるの。夏になると、そこにまじない師が来ていたわ。もうおじいちゃんだったけど……それだけ長く、捕まらないでいたってことよね。きっとまじないで自分を護っていたんだわ。
私、その人からまじないを習ったの。先生はいつも言ってたわ。この力を軽々しく使っちゃダメだって。そう言われてたのに私……」その時、一陣の風が吹いて木々がざわめき、彼女は言葉を切り、黙り込んだ。
場を和ませようとしたのか、チャダルが明るい声を出した。
「……このちょっと先によ、俺っちが嬢ちゃんの食い物を調達してた村がある……どこに行くにせよ、必要だろ?」
確かに食料の確保は必須だ。そして、この先のことも考えておかなければならない。行き先によっては、必要となる物も変わってくるだろう。
今の状況を踏まえたうえでも、ライラを隣国へ逃すべきと考えるなら434へ。ライラの師だというまじない師の隠れ家に向かうべきと考えるなら233へ。
今の頭は空っぽの借りものだが、ゆえにしっかりと考える必要がある……どちらが良いだろうか?

カルルーム領内を進むうち、やがて日が暮れてきた。だが未だ人里は見えてこない。
「この国の人々がマールバハールを恐れているとしたら、この辺りには誰も住んでいないのかも。でも街道を辿っていけば、いつかは集落があるはず」
幼いライラはもちろん、俺たちだってこの国については何も知らない。国境近くの街や村の所在すらわからないのだ。
「そうだな。行けるところまで行ってやろう」
彼女はうなずき、俺はまだ見ぬカルルームの都があるという西方に目をやった。そのときチャダルが叫んだ。「誰か来るぜ……けどよ、ありゃ亡霊じゃねぇか!?」
振り向いた俺の目に、こちらへと馬を駆ってくる騎士の姿が入る。チャダルが言った通りだ。姿はおぼろげで、背後の景色が透けて見える。それに何より、奴が乗る馬には首が無かった。その姿に俺は不吉なものを感じた。何故かはわからないが、追手だという確信があった。
「チャダル! ライラを連れて遠くへ離れろ! ここは俺が食い止める!」
先を急ぐ二人を護るように、俺は道の真ん中に立ち、相手が来るのを待ち構えた。腰には最早手になじんだ武器があるが、相手が同じ亡霊であれば……蘇った時から共にある、この実体無き剣も有効だろう。どちらの武器で戦うか決めておかなければならない。
今は255へ急げ。

だが、そこまでだった。始末した番人の死体が奴らに見つかっていたのだ。
「畜生、だから言ったのによぉ!」チャダルの悲鳴がこだまする。
377へ進め。

「大丈夫。先生ならきっと、この鍵が何だかわかると思うから」
俺の様子を見て、ライラがそう言った。
316へ。

奴は俺の武器を見てあきれたような笑みを浮かべた。
「亡霊相手に、そんな武器が通用すると思うのか!」
この一太刀に、命運値をいくつ賭けるか?
1でも、それ以上でも構わない。0でもよい。ただし、残っていない分は使うことはできない。
敵の刃は目前に迫っている。判断に費やせるのは一瞬だ。決めたら4へ進め。

男の亡骸を探っていたチャダルは、何かを取り上げた。メダルか何かのようだ。
「……“心臓にナイフ”か。こいつは退魔師協会の殺し屋だぜ」
退魔師協会? 聞いたことがない名前だ。となると……俺が死んだ後に作られた組織なのだろう。つまり、憎っくき刃の奴らの手の者だ。
チャダルに聞いてみたところ、書の血族を駆逐したものの、その力を恐れた刃の血族が設立した組織らしい。思った通りだ。まじないの力を退け、その痕跡を消して回ることを任務とするという。聞いたかぎりでは、ライラの命を狙って来たとしてもおかしくはない。
「こんな奴らが狙ってるなんて、早いとこ嬢ちゃんを連れ出さなきゃな。嬢ちゃんに何かあったら、俺っちたち消えちまうよ」
「……何だと?」俺はチャダルの言葉に思わず声を荒げ、奴の襟首をつかんだ。「どういうことだ!」
「な、なんだよバジャーの旦那……あんた知らなかったのかい。俺っちもあんたも、嬢ちゃんが呼び出した亡霊だろ。まじないをかけた者が死ねば、俺っちたちをこの世に結び付けている力も消える。つまり、元通り消えちまうか、あるいは狂って自我を失ったまま彷徨い続けるかってわけ……」
俺はチャダルを離した。要するに、最初からライラに協力するしか道はなかったということか……
すでにライラを牢から出しているのなら205へ。
まだ彼女が囚われの身であるなら188へ。それぞれ進め。

「ずいぶんしっかりと刺さってるみたいだね。俺っちの力じゃ、まったく動きゃしねえよ」
チャダルが玉座に近づき、剣を調べながら言った。ファファスタスが言っていたとおりなら……こいつを引き抜けば、このマールバハールは再び魔力満ち溢れる地に戻るはずだ。つまり、書の血族の力を封じるために施された一手だ。そう簡単には抜けないようになっていてもおかしくはない。
俺は柄をつかみ、力を入れた……確かに、チャダルの言うとおりびくともしない。ライラと繋がっていたあのアミュレットを失ったからか? だが、ここまで来たのだ。何としてもやらなければ……!
ここで命運値を1消費するのであれば272へ。
やらない、したくてもできないのなら377へ進め。

「完全に夜が明けちまったな……どうするよ?」
王都を出入りする旅人や商人たちが行き交うのを見ながら、チャダルが言った。俺たちは今、街道をうかがうことができる岩陰に潜んでいた。これだけ人通りが多いと、俺の“頭”と武器を隠すことは難しい。それに、王都の門では衛兵や騎士が不審な侵入者がいないかどうかを厳しく見張っているに違いない。
「方法はある。雑貨を扱う商人の荷車を見つけるんだ。骨董品やガラクタが多ければいうことはない」
「ははぁ……そこに潜り込もうってわけだな。悪かねぇけどよ、そう上手くいい感じの荷車がくるとは限らねぇぜ?」
「夜を待ったところで、門は厳重に閉ざされてしまうだろう。この方法が一番確実だろうからな……気長に待つさ」
はたして昼過ぎには、おあつらえ向きの荷車が通りかかったので、俺たちは荷に紛れて王都へと入ることができた。門を守る衛兵は密かに都へ入ろうとする不審者を探していたのだろうが、こっちは姿なき亡霊だ。見咎められるわけもない。
人目が切れた瞬間を逃さずに荷車から滑り降りる。あとは人気が無くなる夜まで息をひそめ、王宮へ向かえばいい。そして、ファファスタスが言っていた剣を玉座から抜くのだ。
……いつの間にか近くにきていた猫と目が合った。いや、この“頭”には眼球がないので、向こうは見つめあっていることに気が付いていなかったかもしれない。だがしかし、今の“頭”が何だったを思い出した瞬間、目の前が真っ暗になった!
俺の“頭”に喰らいついたであろう猫を、この一瞬で捕えようとするのであれば命運値を1減らす必要がある。そうするのならば442へ進め。
そうしない、あるいはできないのであれば300へ。

「この先にファファスタスって爺さんがいるぜ……間違いねぇ」チャダルの顔に走る入れ墨が赤く燃えていた。
「嬢ちゃんを取り戻そうぜ、なあ旦那」
かつてレザニアで苦痛に屈したこの男が痛みに耐え、強い意志を以て立ち向かおうとしている。俺は無言でうなずき、奴の肩をたたいた。
41へ進め。

マールバハールの王たち――そのいずれもが、名だたるまじない師だ――が眠る霊廟を護る魔導の番人。七代に渡るまじないの国の、知られざる英知の結晶。
ファファスタスに操られているとはいえ、守護者はその責務を果たした。そう、ここでは俺のほうが異物であり、排除されるべき存在だったのだ……
岩の指先からほとばしる霊力によって俺の身体が穿たれる。そしてあっという間に跡形も無く散らされてしまった。全ては一瞬の出来事であり、俺は二度目の死を理解することすらできなかった……

左手のレンガ壁に扉が一つあるきりで、他には今降りてきた階段以外に続く道はなさそうだ。
「どっちの壁にすっかね?」チャダルが正面の――扉がついていない――壁を指しながら言った。
「足跡が続いてるそっちの扉をくぐるか、あるいはこっちの壁を抜けてくかだ。
嬢ちゃんを連れだすときに壁抜けは無理だけどよ、こういう塔にゃ隠し部屋があることも多いんだ。何か役に立つもんが見つかるかもしんねぇ。旦那の頭の問題はあるけど、向こう側に新しい頭にできそうなモンがあるかもだし……どうするよ?」
扉から先へ進むなら305へ。壁を試してみたいのなら466へ進め。

運の無いことに、しばらく北上するうちに辿るべき道を見失ってしまった。何たる不覚!
だが、王都へと続くエナム川に出ることさえできれば何とかなるはずだ。そう考え、小さな川に沿って道なき道を進むことにする。やがてせせらぎはより大きな川へと注ぎこみ、大きなエナムの流れへと加わっていく。あとはエナムを見失わなければ問題ない……はずだった。
“頭”のアミュレットに傷があるなら、84へ進め。傷など無いのであれば479へ。

深い氷霧が立ち込める中を、静かに進んでいく。この先には関所があるという……当然そこには駐屯する騎士や兵がいるはずだ。辺りを巡回していないはずがない。
「……旦那」チャダルが囁く。俺はその声を制しながら黙って頷いた。かすかな蹄の音が近づいてくるのだ。
街道脇の木々の間に隠れながら、息をひそめる俺たちの前に三頭の馬が姿を現した。鼻面を厚い布で包み、氷霧への対策としている。馬にまたがっているのはやはり三人の騎士で、こいつらも同じように厚手の外套をまとっていた。
「どうした……何か近くにいるのか?」騎士が馬に話しかける。馬は大きくいななき、それに応えた。
三人の騎士は顔を見合わせて馬を止め、剣の柄に手をやると声を上げる。
「誰かいるのか……? 姿を見せよ! 我々は国境を守る者である!」
奴らは馬に跨ったまま、辺りを探り始めた。このままでは俺たちのそばにくるのも時間の問題だ。
命運値を1消費し、この危機を脱するつもりならば、88へ進め。ただし、“頭”が幸運のお守りであるのなら、命運値を減らさずともよい。
そうしない、あるいはできないのであれば戦うことを選ぶこともできる。その場合は357へ。それもよしとしないのなら、78へ進む他ない。

たとえ書の血族のために戦った者たちだったとしても、今の彼らに俺たちが味方だとわかるとは限らない。ただただ妄執の命じるままに武器を振るっているかもしれないのだ。俺やチャダルはともかく、ライラを危険にさらすわけにはいかない。
背高の草に分け入って道なき道を進んでいくと、そこそこに古い武具とその傍らで人骨が朽ちているのに出くわす。この場を支配する呪縛を以てしても、最早動くことすら叶わぬ残骸だ。その度にライラは足を止め、祈りを捧げた。「……120年も経っているのに、まだ戦い続けているなんて」
その様子を見ながら、チャダルが居心地悪そうに囁く。
「この調子じゃ、ここを抜けるのはいつになるかわからねぇな……それこそ、亡者たちに見つかっちまわねえとは限らねぇぜ」
幸運を祈り、命運値を1消費するのであれば8へ進め。
何があっても自分の力で対処できると考える、あるいは命運値がもう残っていないのなら158へ。

鍵穴に黒瑪瑙の鍵を滑り込ませ、回してみる。カチリと小さな音が通路に響いた。
406へ。

悪い予感は当たるものだ。舟の真下から巨大な生き物がその身をもたげ、俺の身体は湖へと投げ出されてしまう。必死で“頭”を抑える俺の視界に映ったのは、今まさに迫ってくる怪魚の棘だらけの尾びれだった……!
“頭”のアミュレットに傷があるなら、387へ。
ないのであれば133へ進め。

チャダルが共にいるのであれば243へ。
いないのであれば、47へ進め。

俺たちは自由と安寧を求め、カルルームへと続く道を突き進む。混乱に陥る関所の中を一気に駆け抜け、向こう側へ続く出口が見えたその時、ライラの悲鳴が全ての希望を引き裂いた。
振り返った俺の目に、必死の形相でライラの襟首を掴む兵士の姿が映る。反射的に武器を繰り出し、その男の手首を斬り飛ばしたが……すでに俺たちは取り囲まれていた。
「手配中の娘だ、間違いない」
「生かして捕まえろとの命令だったな……書の血族の生き残りらしいが……」
「俺の腕が……畜生、亡霊め! 退魔師を呼んで来てくれ!」
万事休す。マールバハール国境の守りは甘くなかった。
幸いにも、奴らの会話を聞く限り今この場でライラの命が奪われるということはなさそうだ。だが、それが彼女にとって幸運と言えるのかどうか。それを見届けることは俺にはできそうにない……すぐに退魔師が来る。俺にできるのは、この有様に気づいたチャダルが、手遅れになる前にライラを助け出せるようにと祈ることだけだ。

「じゃ、俺っち先に行ってるぜ。旦那が来たらすぐに新しい頭をのっけてやっからよ」
チャダルが壁の向こうへ姿を消すのを待ち、俺は歩き出した。壁が迫ってきて、それから軽い衝撃とともに真っ暗になる……どこか遠くで何か陶器が割れる音が聞こえた気がした。きっと俺の頭が床に落ちたのだろう。構わず歩き続けると、首のあたりにわずかな重さがかかり、視界が明るくなった。
「どうだい? 新しい頭はよ。なかなか似合ってるぜ、その髪型」
チャダルが半笑いを浮かべているのを見ながら、俺は頭に手をやってみた。確かに花瓶らしい。乾燥してボロボロになった植物が砕け、指の間から落ちていく。何年も経っているようだが、これはユーフォミアだ。アイシャ姫は、この花が好きだった……
「下らんことを言ってないで、先を急ぐぞ」俺は湧き上がった想いを断ち切るように言った。今は感傷に浸っている時ではない。
チャダルが言っていたように、ここも似たような部屋だった。さっきまで花瓶が乗っていたであろう台と、正面にある扉の他には特に目に付くものはない。
頭が花瓶になったことを忘れずに、212へ進め。

チャダルが案内するでもなく、道はまっすぐ小さな集落へと続いていた。村はずれに建っている兵士の詰所も極めて簡素なものだ。夜警が一人、戸口の前で眠そうに目をこすっているのが遠目にもわかった。
道を外れ、月明かりが作る木々の影の中を慎重に進む。小柄なライラ、そして俺の頭と武器だけを連中の目から隠せばいいのだから、そう難しい話ではない。
「カルルームへ行くには、氷霧の森を超えなきゃダメなんだろ? 一年中、凍える霧が立ち込めるって噂だ。俺っちは行ったことがないけどよ……バジャーの旦那、あんたは確かあすこで……」
村に入った後、そこまで言ってからチャダルは慌てて口を噤んだ。
「気にしなくてもいい……事実だからな。そのおかげでカルルームまでの行程はわかっている。だがそのためには一度王都へ向かう必要がある……俺は、王都からカルルームへ向かう道しか知らない。
お前が言う通り、あの森の霧は肺を喰む。このカーテンの服では、ライラには厳しいだろう。厚手の外套を探したほうがいい。旅に暮らす行商人が用いるようなやつだ」
ライラは、己が纏う布の厚さを不安げに確かめた。
「まあそれぐらいは手に入ると思うぜ。一応ここは街道沿いの宿場だからよ、旅人の一人や二人はいつもいるんだ」
もう寝静まっているのか、家々の明かりは消えていた。その中で、一軒だけ窓から光が漏れている建物があった。風に乗って陽気な笑い声がここまで流れてくる。どうやら何人かの男たちが酔っ払っているらしい。
「酒場だよ……宿も兼ねてる。嬢ちゃんに届けられていたメシもあそこで作ってたみたいだったぜ。そんで俺っちも、あすこからパンをくすねてたってわけ。
さて、嬢ちゃんにはちょいと隠れててもらうとして……旦那はどうするね? 村の連中が起きてるとなりゃ、鉄兜を浮かべておじゃまさんってわけにもいかねえし。食料調達は慣れてる俺っちのほうがいいだろ……外套のほうはあんたに任せていいのかい?」
ライラを一人にしておくのは危険かもしれない。自分もここに残ることにして外套の調達もチャダルに任せるなら215へ。多少危険でも準備は手早く済ませたほうがいいと考えるのなら、自分で外套を探しに行くべきだろう。そうするなら89へ。決めたら即、行動に移さなければならない。

精魂尽きたのか、ライラが崩れ落ちて膝をつく。またしても魔導兵を倒されて半狂乱になったまじない師が喚き立て、操られたライラはうずくまったまま痛々しくも血を吐き、それでもなお呪言を絞り出す。しかし魔導兵はわずかに軋みを上げるだけで、その巨体で立ち上がるには時間がかかりそうだ……ファファスタスを討つべきは今、この瞬間しかない。早くけりをつけなければ、ライラの命が危ない!
BATTLE 
サイコロを一つ振れ。そして武器などから得られる戦力ボーナスを加える。
出目が「6」であれば、さらにサイコロを振って加算せよ。
(ただし、「1」が出た時点で自動的に敗北となってしまう)
得られた値と、敵の戦力を比べよ。同点以上であれば勝利だ。
敗北を喫した場合でも、命運点を1消費することで再挑戦できる。
決してあきらめることなかれ。

砂漠の中をさまよい続ける。この砂の海に果てがあるのかどうか疑わしくなってくる……ともかく、今は前へと進むしかない。
201へ。

鉄格子の脇を通り過ぎ、俺は回廊を左へと曲がる。薄暗い通路が続いており、その先は行き止まりとなっていた。壁に何かが突き立っているのが見える。近づいてみると、大きな斧だとわかった。鋭い刃を石壁に食い込ませているのだ。
「この塔の中を自由に歩いておるとは……」
しわがれた声が回廊に響く。
同行者がいるのであれば302へ。
一人ならば、124へ進め。

もう既に、どこかで地図を入手しているのであれば26へ進め。
手元に地図がないのであれば、チャダルが聞いたという話を信じるしかない。嘘だということはないだろう――何も知らない俺たちならともとかく、普通に暮らす村の人々が都の方角を偽る理由はあるまい――が。チャダルが聞き違えたということはあり得るかもしれない。
「いくらなんでもよ、そこを疑うのは酷いぜ」
憤慨するチャダルをライラがなだめている。まあ、他に手掛かりがない以上、奴の情報をもとに動くしかないだろう。
この集落は南北に続く細い街道沿いにあった。まだ亡霊を探しているのか、木々の向こうに数本の松明が揺らめいているのが見える。彼らの火が作る暗い影を伝いながら、俺たちは村を迂回しながら北へと進む。
やがて喧騒も届かなくなった。灯りはまだ見えていたが、程なく視界から消えるだろう。
263へ進め。

俺の“頭”がアミュレットの場合には12へ進め。
そうではなく、何か別の物が乗っているのなら120へ進め。

首無し馬を駆り、南へと駆ける。その行程で、適当な“頭”になりそうな物を探し、適当な品を見つけることはできたが……どうしたものだろうか。確かにこのアミュレットは先の戦いでは呪いを発した。だが、同時にライラ自身のまじないで、彼女と俺を繋ぐ絆でもあるのだ……。
“頭”を取り換えるべきと考えるのなら134へ。
危険を承知で、このままアミュレットを使い続けるつもりなら481へ進め。

「ちょっと待ってて……こうすれば、きっと無くしにくいはず」
ライラは同じく家から持ち出してきたと思しき鎖を鍵に取り付けた。
「貴方の体に引っ掛けられるわけじゃないから、気分的なものかもしれないけど」
頭が鎖付きの鍵になったことを忘れずに、484へ進め。

とっさに頭上に手を伸ばし、猫を捕まえる。その瞬間、足元に魚の骨が落ちていくのが見えた。この骨は俺の“頭”となっていたはずだ……では、今俺はどうやってそれを見ている?
「すげぇな、旦那」チャダルの声がするほうに耳が傾くのが分かる。どうやら首の上で捉えた猫が、そのまま俺の頭の役目をはたしているらしい。
「まあでもよ、ずっとそいつを捕まえているわけにもいかねぇか。両手がふさがっちまうもんな」チャダルが地面から魚の骨を拾い上げると、俺の意に反して“頭”は、にゃぁと一声鳴いた。
「こんな道よく知ってるなぁ。間者みたいなこともしてたのかい?」
俺たちは今、王都の街並みを見下ろしながら進んでいた。塀の上を歩き、屋根伝いに王宮を目指しているのだ。
この道はあの猫が知っていた。あの時、猫の記憶をわずかだが読むことができたのだ。生きているモノを頭にしたのは初めてだったが、不思議な体験だった。人ならぬモノの思考は、決して心地よいものではなかった。未だ気分は悪い……だが、人目につかぬ道が知れたのはありがたい。
今、俺の頭には再びあの魚の骨が乗っている。別の猫に出会わないことを祈ろう。
491へ進め。

やがて霧は薄くなっていき、ライラが吐く息も白い輝きを失っていく。ついに視界が開け、俺たちの目に、マールバハールよりも山がちな大地が広がっているのが映る。まだ国境から十分に離れたとは言い難いが、ともかく危険は去った。ここではもう、ライラを捕らえよという命令は効力を失っている。
“頭”が仮面か、あるいは酒瓶の類の場合は416へ進め。
それ以外の品であるのなら、23へ。

ライラは無意識のうちにまじないを使っていたようだった。不完全な術で蘇った偉大なる初めの王の霊は程なくして薄れて消え、霊廟には真の静寂が訪れた。書の血族の墓所で息づいているのは、ライラ一人だけだった。
「……行きましょう。ここは私がいるべき場所じゃない」彼女は一言そう呟くと、踵を返して地上へと戻る道を歩みだした。
今、三人でいるのなら389へ進め。
自分とライラだけしかいないのなら365へ。

扉を開けると、そこはユーフォミアが覆い繁る小部屋だった。花の甘い香りが部屋中に満ちていて、むせかえりそうになる。入ってきた場所以外に、出ていけそうな扉は無い。引き返そうとすると、ユーフォミアの葉がガサりと音を立てた……何かいるのだろうか?
部屋を出るのならば、先ほどの螺旋階段の反対側へ進むことになる。251へ進め。
この部屋を調べてみるのなら、175へ。

こいつは油断ならない相手だ。俺のこともはっきりと見えている。心してかからなければ……!
BATTLE 
サイコロを一つ振れ。そして武器などから得られる戦力ボーナスを加える。
出目が「6」であれば、さらにサイコロを振って加算せよ。
(ただし、「1」が出た時点で自動的に敗北となってしまう)
得られた値と、敵の戦力を比べよ。同点以上であれば勝利だ。
敗北を喫した場合でも、命運点を1消費することで再挑戦できる。
決してあきらめることなかれ。
首尾よく勝てたら489へ進んでよい。だが、逆に負けてしまったのなら232へ。

赤く輝く宝石が、鍵にはついていた。
紅玉の鍵を入手したことを覚えておくこと。468へ進め。
ただし、すでにこの鍵をもっているのであれば、当然ここには何もない。

俺は黙ってライラとファファスタスのやりとりを聞いていた。何かが引っ掛かる……そう、この声だ。どうも聞き覚えがあるように思えてならない。
俺はどこでこの声を聞いたのか、懸命に思い出そうとした……
脳裏に浮かんだのは何か? 直観で選ぶこと。
除霊の短刀130へ。
氷霧の森97へ。
アイシャ姫339へ。

やがて夜になった。ライラが起きてきたので、事情を説明する。チャダルが一人で馬を調達しに行ったと聞き、彼女は不安そうな表情を浮かべた。
「……それって、大丈夫なの?」そいつは一日中、俺も考えていたことだった。
「貴方たち亡霊は、太陽の下だと弱まるの。退魔師と出会ってさえなければ、大丈夫だと思うけど……できるだけ早く合流したほうがいいわ」
夜の街道を歩きだしてしばらくたつと、前方から馬が走ってきた。見ればチャダルのやつが馬の首のあたりにしがみつくようにして、片腕を伸ばし何か赤いものを馬の鼻先に掲げているではないか。あれは……人参か!
馬はあっという間に近くまで爆走してきたので、俺はライラをかばうように道の脇へよけざるを得なかった。こっちに気が付いたチャダルが何か喚いたようだが、聞き取れぬまま通り過ぎていく。
「そいつを放せ! 地面に落とすんだ!」あらん限りの声で叫んで後を追う。俺の声が届いたのかどうかは定かではなかったが、チャダルの手から人参が落ちるのが見えた。馬はすぐに立ち止まって食らいつく。
俺はその間に走り寄り、馬の背に乗った……はたして亡霊の身で、こいつを操れるだろうか? 頭を押さえながらもう片方の手で手綱を掴み、馬の腹をかかとで軽く叩く。馬は何かが背に乗っていることを感じたのか、地面から顔を上げた。いいぞ、何とかなりそうだ。
「へぇ、うまいもんだね旦那。さすがは騎士様だっただけのことはある」
お前こそ無茶苦茶な方法ながら、よく馬をここまで連れてきたもんだと返してやると、奴は得意げに頭を掻いた。
「私も乗れそう?」
ややあってから追いついてきたライラが俺を見上げながら言った。そう、ここからが問題だ。ライラが落ちないように馬を操らなければならない。激しく走らせるつもりはないが、この先、そうせざる得ない事態もあり得るだろう……。しばらく試行錯誤した挙句、結局三人で馬に乗ることにした。
まず俺が乗り、手綱を握る。ライラが俺に重なるようにしてやはり馬に跨り、最後はチャダルだ。ライラと俺ではだいぶ身長差がある……彼女に“頭”がぶつかることはない。チャダルはライラが落ちないように身体を支える役だ。武器を操ることもおぼつかないチャダルだが、それでもいないよりはましだろう。
馬にかかる加重はわずか一人分、それも子どもの重さのみ。おそらくは亡霊が近くにいるせいか、妙な感覚に戸惑っている様子を見せているが、一応のところは俺が操るままに動いてくれている。これならいけそうだ。
感触をつかみつつ、ゆっくりと街道を南下しはじめると、やがて前方に松明の明かりがいくつか見えてきた。街道の脇をなめるように左右に動いている。どうやら探し物をしているらしい。
「ありゃこの先の村の連中だ……まるで砦みたいな集落でさ。あいつら村ぐるみで追剥やってるんだ。この馬を探してるにちげぇねえ、きっと」と、チャダル。
見つかると厄介だ。ここはいったん北へ戻り、迂回する道を進んで目的地へ向かったほうがいいだろう。馬も手に入ったことだし、多少の遠回りも問題はない。
208へ進め。

やはりあれは警報の類だったらしい。街を巡回する衛兵たちの動きが変わったのは明らかだ。しかし、そのおかげで警備に偏りが生まれ、人員の薄いところができている。俺は奴らの隙間を縫うように裏路地を走り、王都から脱出した。
こうして壁を越えてしまえば、一息つけるというものだ。塚の入口を護っていた退魔師は今頃失態を責められているだろう……退魔師協会にも一泡吹かせてやれたと思えば、溜飲も下がるというものだ。
次は、南の砂漠へ向かったライラとファファスタスに追いつかなければならなかった。だが、亡霊の足は速い。程なく再会できるはずだ……
「見事、あの剣を抜いたようだな。大したものだよ」不意に声を掛けられ、俺は振り返った。
いつの間に現れたのか、一人の騎士が馬にまたがっている。だが彼の姿は半ば透けており、馬のほうはといえば、なんと首が無い。こいつは俺やチャダルと同じ、亡霊だ!
「今はこんな様だけど、僕はかつて刃の血族に仕えた騎士でね……汚らわしいまじないに縛られて、不本意ながらこうしているってわけさ。君もそうじゃないのか?」
奴はそう言うと、殺気を漲らせて剣を抜き放った。「……だが君は幸せだ。こんな悲惨な境遇から解放されるんだからね!」
敵の一撃を裁くのに、命運値をいくつ賭けるか?
1でも、それ以上でも構わない。ただし、残っていない分は使うことはできない。
敵の刃は目前に迫っている。判断に費やせるのは一瞬だ。決めたら77へ。

踏みしめたる砂が崩れる中を進むうちに、砂塵の向こうに人影が見えた気がした。だが、こんな場所を流離う者が他にいるだろうか? 足を止めて目を凝らしてみたが、何も見えない。気のせいだったかと思った矢先、再びその影が姿を現した……確かに誰かがいるのだ!
そいつに近づくのであれば384へ。やめておくのなら160へ進め。

奴一人では、まじないの成就は難しいはずだ。だからこそライラを欲したのだ。となれば……ライラを引き離せばいい!
「ライラ! 俺だ。わかるか?」大声で呼びかけるが、小さなローブ姿はこちらを振り向こうともしない。だが、今一人の人物は俺の声に反応して振り返った。その表情は怒りに満ちている。
「儀式の邪魔をするのはお前か……首無しの騎士よ……!」
アミュレットに傷があるのなら261へ進め。
傷などないのなら、404へ。

しばらくチャダルがわめく声が聞こえていたが、再び締め付けが強くなってきた。力及ばなかったのだろうか、チャダルの声が弱く小さくなっていく……
33へ。

「貴方の頭、ボロボロになっちゃったわね」
そう言われて俺は“頭”に手をやった。奴の剣閃が何度もかすめていたのだろう、確かに大分傷ついているようだ。
「このままじゃ、また戦いになったらきっと壊れちゃうわ……ちょっと待ってて」ライラは道端にあった小さな像のところへ行った。黒檀でできていて、マールバハールでは見たことがない、奇妙な造形をしている。
「この道の守り神なのかも知れないけど……ごめんなさい。今だけ、どうか私たちに力を貸してください。いつか、きっと戻しに来ます」
彼女はお祈りをしてから、その像を手に取った。どうやら俺の首にすげるつもりらしい……確かに、顔のようにも見えなくはない。
――本来なら許されることではあらねど、汝らの行く先にカルルームの未来も関わっているようだ……今回だけは許そう。
我はカルルームを守りし者。我が現身が一つを、汝らに授けよう――
人ならぬ声が響く。ライラにもその声は届いているようで、彼女の顔には驚きの表情が浮かんでいる。それっきり声はしなくなったが、俺の身体には何か今までにない力が漲っているように感じられた。
「……私、やっぱりマールバハールに戻ろうと思う」しばらく考え込んでいたライラが言った。
「さっきの声……カルルームの土地神か守護精霊だと思う。マールバハールがこの先、カルルームにとってよくないことをするって予言に聞こえたわ。私たちならそれを止められるかもしれない」彼女の目に新しい決意が宿っているのが見て取れた。
「本当に私が王家の血を引いているのなら、道を踏み外そうとしているマールバハールを正すのは私の役目だわ。それに……チャダルの仇も取りたい」
彼女は俺の顔を見た。俺には異論はない。もとより、ライラがそうしたいのなら最後まで付き合うつもりだった。
「……お前の師匠を完全に信用するわけじゃないが、奴が持っている情報は必要だ。俺たちがこの先、何を信じて何をするべきかを見定めるためにもな」俺はそう言って立ち上がった。「マールバハールへ戻り、レザニアへ行こう」
271へ進め。
“頭”がカルルームの黒檀像になったことを忘れずに。

どの鍵を使うか?
当然だが、持っていない鍵は使うことはできない。

夜に紛れて移動するほうが人目につかないため、今まではそうしてきた。だがここは別だ。亡霊たちが戦を繰り広げている中を進むほうが危険と判断し、朝を待つ。
朝日が平原を照らすと、その光に溶けていくように澱んだ戦場の空気が薄れていく。
なるべく目立たないように、街道を外れて進む。いわくつきの古戦場とはいえ、ここは王都に至る街道が走る平原だ。同じように夜明けを待っていたであろう旅人がいてもおかしくはない。
丈長の草をかき分けながら進んでいくにつれ、足元に人骨が転がっているのに出くわすことも増えてきた。折り重なるようになっているもの、ボロボロになった鎧をまとったもの、折れた槍や錆びた剣に貫かれたままのものなど様々だ。こいつらが夜な夜な妄執に突き動かされ、果てることのない戦いを続けているというわけだ。だが太陽が出ている今、動く者はただの一人とていない。
その時、明らかに生きている者の会話が風に乗って聞こえてきた。
……相変わらず気味が悪いったらない……お前ら退魔師は何をやっているんだ……
……これだけの死者……完全に浄化なんて無理……
鎧をガチャつかせ、草をかき分ける音も聞こえてきた。何人いるのかまではまだわからないが、確実にこちらへ近づいてきている!
命運値を1消費するのならば、172へ進め。
命運値を消費したくない、あるいはできないのであれば184へ。

メモを開いてみると、それはどうやら家系図らしい。走り書きのため読みにくいが、俺がかつて仕えた王の名前も見つかった。その祖先だけでなく、わずかながら末裔の名も書かれているようだ……無意識のうちに、俺は記憶にある名前を探していた。その名は――
“アイルカーン” 399へ。
“バルサザール” 101へ。
“サラヴァイ” 342へ。

今や、あたり一面が炎の海だ。熱気渦巻く中を、例の鐘がひときわ大きく鳴り渡る。
――我が主に逆らわんとする不届き者たちよ!
その許されざる行い……我、ジェリコ・リャマの裁きを受けるがよい――
いずこともなく男の声が響き、炎の中から影が立ち上った。黒いマントを羽織り、手に書物を掲げる様子は明らかに法を司る判事のものだ。しかし不自然に膨れ上がった身体から延びる四肢は螺子くれ、その皮膚はひび割れていた。あまりの熱さに、その異形の姿が歪んでみえる……。だがそれだけではない。マント姿を通じ、うっすらと向こう側が見えた。こいつも亡霊か!
ジェリコと名乗った亡霊は、こちらを指差すとゆらりと近づいてきた。
再び鐘が鳴る。鳴った回数に2を追加せよ。
TOLLING
今現在、俺の“頭”は何だろうか?
アミュレットであるのなら、235へ。その他の品であるのなら337へ進め。

王は憎々し気に言葉を吐き出した。
「なんだその頭は……首をなくしたのか? 鎧を見れば我らが書の血族に仕える騎士のようだが……。
その頭には忌まわしき、あやつのまじないがかかっているようだ。お前が我が王家の騎士だというのならば、できるだけ早く取り換えるがよい……いつかきっと災いをもたらすだろう」
163へ。

奴の一撃を受け、俺は床へと崩れ落ちる。ファファスタスもまた、死霊術を修めたまじない師だ……ともなれば、亡霊を霧散させることもできるのだろう。俺の身体は盛大に抉られて崩れていた。
「ライラと“鍵”を送り届けてくれたことには礼を言おう……だが、もう用済みじゃ……!」
ファファスタスが俺を見下して勝ち誇る。
頭に戴くのがカルルームの石像であるならば313へ進め。
そうでないのなら、次の一撃を耐えきることはできない。ライラは敵の手に落ち、狂えるまじない師のいいように利用されてしまうだろう……

ライラが閉じ込められている牢の前を横切り、残された足跡――ここへ食事の桶を運んだ者がつけていったらしき、薄汚れた泥の跡――を辿りながら反対側へ進んでいく。通路を右へ曲がった先に階段があった。ここが階下へ降りる唯一の道なのだろう。
60へ進め。

「……ん… 私、何を……?」悪い予感を拭い去る声と共に、ライラが意識を取り戻す。そこにはまじないの影響は見えない。いつもの、彼女の眼だ。
お前はファファスタスに操られて……と言いかけて、俺は振り返った。そうだ、奴を放っておくわけにはいかない。だが心配は無用だった。チャダルがまじない師をしっかりと抑え込んでいたのだ。
54へ。

ファファスタスは俺のほうを見た。「その鍵を譲ってもらうことができれば、よかったのだが。しかしこれが閉ざされし霊廟の鍵と決まったわけではない……ワシはもう少し探してみることにしよう」
次の夜、ファファスタスは隠れ家のウロから出て、俺たちを見送りながら言った。
「カルルームヘ逃げようというのなら、国境となっている氷霧の森を抜けなければならん。王都に入る必要はないが、かなり北まで進む必要がある。古戦場を抜けたあたりで西へ進路をとるといい。
ライラや。これを着ていくがよかろう。あの森の空気は冷たい。今のままでは肺が凍ってしまうぞ」
「ありがとう……先生。お力になれず、申し訳ありません」
「いや、その話はもういい。ワシも強引だったようだ」
俺の“頭”は新しくなっていた。件の鍵をむき出しにしておくのは危険だというファファスタスの忠告により、鍵はライラが慎重にしまい込むことにした。代わりとなったのが、この仮面だ。まじないがかかった品で、死霊術師であるライラとの繋がりが強まるという。
「あの老人、この後どうするつもりだろうな……」
俺は山間を下りながら、ライラに聞いてみた。彼女は前を見据えたまま答える。
「わからないわ……でも、先生の選んだ道は危険だと感じたの」
頭がまじないの仮面になったことを忘れずに、409へ進め。

「生きていた頃ならば、僕もそうしていただろう。鉄の重みこそが、騎士の刃だとね。けど……今、僕らは亡霊の身だ。勝利を見据えるなら、ありえない選択肢だよ」
BATTLE 
サイコロを一つ振れ。そして武器などから得られる戦力ボーナスを加える。
出目が「6」であれば、さらにサイコロを振って加算せよ。
(ただし、「1」が出た時点で自動的に敗北となってしまう)
得られた値と、敵の戦力を比べよ。同点以上であれば勝利だ。
敗北を喫した場合でも、命運点を1消費することで再挑戦できる。
決してあきらめることなかれ。

マールバハールの王たち――いずれもが、名だたる強力なまじない師だ――が眠る霊廟を護る魔導の番人。七代に渡るまじないの国の、知られざる英知の結晶。
王家の血を引く末裔たるライラによって目覚めたそれは、聖なる霊廟にふさわしくない者の存在を許さなかった。そう、ここでは俺とチャダルこそが異物であり、排除されるべき側だったのだ……
俺たちはそろって守護者の指先からほとばしる霊力によって穿たれる。そしてあっという間に跡形も無く散らされてしまった。全ては一瞬の出来事であり、俺は二度目の死を理解することすらできなかった……

「ちょっと待っててくれ。様子見てくる」
そう言うと、チャダルは壁の向こうへと姿を消した。程なく奴の顔が壁から生えてくる。
「向こうも似たような部屋だなぁ。先へ続いてる扉があったぜ。それから、旦那の頭になりそうな花瓶もな。顔の模様が描かれてるやつだ。……どうするね?」
壁を越えていくのなら433へ。やはりそれはやめて、普通に扉から先へ進むことにするなら305へ。

鋭角に通路が曲がる角へとやってきたところで不意に何者かが獣じみた爪を繰り出してきた。角の反対側から現れたそいつの攻撃が俺の体をすり抜けていく。
ボロボロになった衣――埋葬される死者に着せられる装束だ――を引きずり、うめき声をあげるそいつは、かつては人間だったのかもしれないが明らかに異形と化している。強力なまじないで狂わされているのかもしれない。。驚いたことに、俺の身体はわずかに霊気を削られていた。先ほどの接触で奴の鋭い爪がやったのだ。
BATTLE 
もしも手持ちの武器がない場合は、戦力から2を引かなくてはならない。半ば亡者と化しているらしく、霊体の剣でも傷を負わせることができるので、戦うことそのものは可能だ。
サイコロを一つ振れ。そして武器などから得られる戦力ボーナスを加える。
出目が「6」であれば、さらにサイコロを振って加算せよ。
(ただし、「1」が出た時点で自動的に敗北となってしまう)
得られた値と、敵の戦力を比べよ。同点以上であれば勝利だ。
敗北を喫した場合でも、命運点を1消費することで再挑戦できる。
決してあきらめることなかれ。
勝てたら307へ進め。しかし負けた場合、それは俺の頭が叩き落されてしまったことを意味する。その時は248へ。
この怪物をすでに倒しているのであれば、この遭遇は起こらない。307へ進んでよい。

さて、次はどっちへ向かうべきか……
像からみて右手手前へ延びる通路を進むのであれば229へ。
左手手前の通路を選ぶなら123へ。
右手奥へ行ってみるならば285へ。
あるいは残された道を選び、左手奥へ向かうならば177へ。

「ライラを頼んだぞ。彼女に何かあったら、俺たちは御仕舞なんだからな。もしもの備えに俺の武器を預けておく。ライラが起きたら渡しておいてくれ。丸腰よりはましだろう」
「わかってるって、バジャーの旦那。俺っちだって命は惜しいからよ……亡霊だけどな。そんなに嬢ちゃんが心配なら、とっとと行ってさっさと戻ってくるのがおすすめだぜ」
チャダルに武器を託し、俺は街道に人気がないのを確かめると茂みをすり抜けた。
「……旦那、もしも頭が外れちまったら、その場でじっとしてなよ。夜になったら嬢ちゃんと俺っちも動くからさ。旦那が首無しでいたとしても見つけられるように、街道から外れないでくれよ」
蘇って以来、完全に一人で行動するのは初めてだ。俺は片手で頭を押さえながら街道に沿って進んだ。亡霊ゆえか、身体は軽い。生前よりも速く走ることできる。しかも疲れはまったく感じないのだ。これなら、日が落ちる前に目指す村に着くことができるだろう……
だが、そうそう上手く行くものではなかった。やがて前方から何者かが街道をこちらへ向かってくるのが視界に入る。徒歩で二人。一見したところ旅人のようだ。だが、遠目ではわかりにくいが、武器を腰から下げているようにも見える。このままいけば、時を置かずして鉢合わせることになるだろう。だが、戦おうにも武器は置いてきてしまっている。
街道を離れて茂みに身を隠すなら291へ。頭はしっかりと押さえておけば、大丈夫だろう。
道端に倒れこみ、転がってやり過ごすという手もある。これなら動きは最小で済む。見咎められずに済むかもしれない。そうするなら363へ。だが、こっちから見えたということは、奴らからも俺の“頭”が浮いているのが見えていたかもしれない。あまり時間はない。すぐに決めなければ……!

開かれている入口を見て、ライラが怪訝な表情を浮かべる。
「先生は霊廟には入れないはず……だって、鍵はここにあるんだもの」
ライラは懐を探り、代々王家に伝わっているといわれた件の鍵がそこに確実にあることを確認する。もしかしたら、奴は別の鍵を見つけたか……あるいは造り出したのかもしれない。俺は奴が以前会った時に垣間見せた妄執を思い出した。
「だが、現にこうして入口は開いてるんだ。ならやることは一つしかない……行こう」
地割れの底へと降りられそうな場所は程なく見つかった。入口から様子を窺うが、生き物の気配は無いようだ。明かりもなく、数歩先は闇に溶け込んでいる。意を決して一歩中へ踏み込んだ瞬間、奥へと続く通路の両側に炎が並び、傾斜のある通路がまっすぐに地中へと続いているのが浮かび上がった。
400へ進め。

「ワシとて死霊術を極めたまじない師じゃ……亡霊ごときに後れを取るなどありえぬ!」
奴の持つ杖が、俺の実体なき身体を削り取っていく。もしも生前の身体を持っていたなら、こんな枯れ木も同然の老人などあっという間に切り伏せることができただろうに。
我が身を呪いながら、俺はこの世から消え去った……

「さっきの話だけど」
ライラが再び話し始めた。
「私たち、協力できると思うの……答えは焦らないでいいわ。とりあえず今の状態に慣れるためにも、少し歩き回ってみるのがいいんじゃないかしら」
その言葉にうなずいたチャダルが、鉄格子の前へと俺を誘う。
「亡霊なら、こんなもん簡単にすり抜けられる。さっき俺っちが壁を抜けて入ってきたのを見てたろ? だけど、実体のあるパンはダメだ。だからあの小さな窓から通す必要があったってわけ。
そこでだ、バジャーの旦那。今、あんたの頭は首壺だ。このまま進んだら、壺は鉄格子に引っかかって落ちるよな? そしたらあんたの頭は割れちまう。それは困るだろう?
何も見えない、何も聞こえない、その上何もしゃべれねぇじゃよ、どんなに勇名を馳せた騎士様でもどうにもならんってこった。だからこういうときは……」
いきなり視界が真っ暗になった。同時に音も消え失せる。そしてまた、すぐにそれらが戻ってきた。
「……こうやって頭を取り外して、もう一回乗っけてやるって寸法だ。あんたは一歩進む。で、頭のほうは角度を変えながら鉄格子の間をうまいこと俺っちが通す。悪くないやり方だろ?」
俺はチャダルを睨みつけて言った。「よくわかった。理解したよ。……だがな、二度といきなり俺の頭を外すんじゃない。今度やったらお前の首を飛ばして同じ目にあわせてやるからな」
チャダルは怖い怖いと呟きながらうなずいた。「……悪かったよ。すまねぇ」
俺は鉄格子の前に立ち、チャダルに合図した。首が外され、全てが闇に包まれる。音一つしない無の中を一歩進み、そのまま数歩……ほどなく視界がもどってきた。チャダルが再び頭を挿げたのだ。
頭が首壺であることを忘れずに、20へ進め。

BATTLE 
もしも握っている武器が除霊の短刀であるならば、効果は絶大だ。この戦いにおいては、戦力に3を足すことができる。
サイコロを一つ振れ。そして武器などから得られる戦力ボーナスを加える。
出目が「6」であれば、さらにサイコロを振って加算せよ。
(ただし、「1」が出た時点で自動的に敗北となってしまう)
得られた値と、敵の戦力を比べよ。同点以上であれば勝利だ。
敗北を喫した場合でも、命運点を1消費することで再挑戦できる。
決してあきらめることなかれ。
見事、勝利したのなら181へ進んでよい。
惜しくも敗れたのであれば、352へ。

ライラの身をあえて危険に晒すことはない。そう考えた俺たちは霧に紛れて街道を離れ、木々の中へと入っていく。
馬がいるのなら、残念だがこれ以上連れていくことは難しい。203へ。
馬はいないのなら、80へ。

「ちょっとまってくれよ旦那」
チャダルが言うには、俺が行こうとしている方向は間違っているという。奴は自信ありげにこっちだと進みだす。
チャダルのあとをついていくのであれば366へ進め。
自分の判断を信じて進むのなら320へ。

「もう大丈夫なのか」俺の問いに彼女は無言でうなずく。その瞳には、忌まわしき呪縛のまじないが落としていた影はなかった。
チャダルはライラと別れてからのことを話してやろうとしたが、彼女は指を立ててそれを止めた。
「まずはここから出ましょう……ここは私たちが居るべき場所じゃないから」
389へ進め。

「旦那! あぶねぇっ!」
チャダルが叫ぶ。その声に思わず振り返ると、目に飛び込んできたのは今まさに襲い掛かってくる男の姿だ。身なりは貧しく、その鋭い眼光は俺の“頭”――アミュレットに向けられている。俺の身体、つまり武装した騎士の姿は見えていないようだ。俺は身をかわし、すれ違いざまに一撃をくれてやった。
「浮かんでる宝飾なんて、あからさまに怪しいブツに手を出すなんてよ。ったく、都のワルも質がおちたもんだ」
地面にのびた男を見下ろしながらチャダルが愚痴る。「同じ盗賊として、俺っち悲しいぜ」
正直、俺にはピンとこない。
491へ進め。

村人たちは寝静まっていて、夜の道を行く人影はない。それでも注意を払い、物音を立てないように気を付けながらライラの後をついていくと、やがて一軒の古い家へとたどり着いた。
「これは……まじないの札か?」
「触れないで。これ、退魔の呪符だから」
ライラの声に、伸ばしかけていた指を引っ込める。家屋には何重にもロープがかけられていて、そのロープから札が何枚も下がっていたのだ。ライラの言う通りなら、これをやったのは退魔師協会に違いない。
「人間には害はないわ……たとえまじない師だとしてもね。中でまじないを使わなければ大丈夫」
彼女はそう言って、ロープをくぐった。「バジャー、貴方はここで待っていて」
村の様子をうかがいながら待っていると、彼女は家から出て戻ってきた。その手には小さな鍵が握られている。
「これは家に代々伝わる品なの……捕まってからもずっと気になってて」
鍵は鈍い光を放っていて、全体に細かい模様が彫り込まれていた。
「何に使うのかはわからない。でも、きっと大事な物なんだわ。お父さんも、おじいちゃんも大事にしてたって言ってたもの。
……この模様、顔のようにも見えるわね。貴方の頭になるかも……どう?」
彼女が俺の首に鍵を乗せる。新しい目で見たライラの顔には、先ほどまでとは違って迷いは残ってなかった。
「私、思うの。私が持っているよりも、貴方に預けておくほうがきっと安全だって」
頭が鍵になったことを忘れずに、484へ。
ただし、これまでの頭が木彫りだった場合は441へ進むこと。

いつしか川の流れは緩やかになり、ついに水面は動かなくなってしまう。エナムはその中流に、湖沼地帯を抱えていたのだ。これまでも、ずいぶんと水をかき分けながら歩いてきたが、とうとう腰まで水につかる羽目になってしまう。実際には俺の身体は虚ろな亡霊であるので、多少動きにくいと感じることはあるものの、溺れるということはないが……
その時、水の中をすべるように進む影がいくつかあるのに気が付いた。どうやら魚らしいが、その大きさは尋常ではなかった。比較的小さいものでも馬ほどもある。なるべく水を乱さず、慎重に歩を進めたが、腰に下げていた刃の煌めきが奴らの注意をひいてしまったようだ。魚影の一つがこちらへ向かってきて……俺の武器を喰い取りながら、俺の身体をすり抜けていく。予想していなかったのはその時、巨魚が跳ねたことだ!
俺はバランスを崩し、冷たい水の中へと倒れこんでしまったのかもしれない……しれない、というのはその時俺は頭を弾き飛ばされて、すでに何も見ることができなかったからだ。
133へ進め。

俺が“頭”に戴いているのがアミュレットであるのなら、262へ。
何か別の物の場合には422へ進め。

目の前には砂の海が広がっている。この辺りまで来ると、もう作物を育てるには向いていないらしく人里も見当たらない。ここから先は命ある人間の立ち入るべき場所ではなく、死者の領域なのだ……。その奥深くに、歴代の王が眠る霊廟がある。ファファスタスはもう砂漠に入っているだろう。急がなくてはならない。
砂漠へと踏み入ると、程なく風が巻き始めた。砂塵に逆らいながら進んでいくと、やがて大きな岩が見えてきたので、その影で一息つくことができる。
岩の右側を回って先へ進むのであれば247へ進め。左側から行くのなら201へ。

俺は黙ってライラとファファスタスのやりとりを聞いていた。確かにこの老人はかつてライラにまじないの手ほどきをしたらしい。そこに嘘は感じられなかった。
やがて二人の話は終わり、ファファスタスは熟考に入ったようだ。ライラは何も言わない老人をきまり悪そうに見ている。
「……やっぱり、ご迷惑でしょうか? 私が刃の血族に捕まったのも、先生の言いつけを守らなかったからです。それなのに先生を危険に巻き込んでしまって……」
ファファスタスはライラの言葉を遮った。
「だが、こうしてここで再会したことにも意味があるとは考えられんかね。それに、ワシがまじないを教えていなければ、お前は無事にここまで戻れなかったであろう。様々な運命の糸が絡んだ結果、今日という日があるのだ。なれば……これも必然かも知れぬ」
そう言って、老人は俺のほうに目をやり、言葉を継いだ。
「いささか奇妙な“頭”をしてはいるが、貴殿を誠実な騎士と見込んで言おう。ワシは書の血族の生き残りだ。そして、このライラも書の血を引いている。貴殿をこの世に呼び戻した術がその証だ。死霊術は決して簡単なまじないではない……人の魂と魂を結わえるには、高貴な血による資質が必須となる。でなければ、せいぜい呼べて小動物の霊までだろう。彼女の魂と貴殿の魂は類まれなるまじないによって結ばれておるのだ」
その言葉を聞いて、思わずライラは立ち上がった。「……でも、お父さんもお母さんもまじないなんて、できなかったわ」
「我らの一族が奴らに襲われたのは120年も前の話だ。運よく生き延びた者も、その素性は隠そうとしただろう。己が子を護るため、あえて何も伝えなかったとしても不思議ではない。お前の両親……おそらく父親であろうが、己に流れる血について何も知らなかったのだろう」
211へ進め。

舟は岩の間を無事に通り抜けた。だが、まだ気を抜くには早い。
しばらくすると前方から水が轟く音が聞こえてきた。どれほどの落差があるかはわからないが、間違いない。滝があるのだ……!
今一度、命運値を1消費するなら102へ。
それができない、あるいは強固な意思でそれをしないのであれば……サイコロを一つ振れ。出た目が「5」以上なら、102へ行ってよい。「4」以下だった場合は210へ進め。

やがて村の反対側へと出た。
道は村の端で終わっており、俺たちは山の中へと分け入ることになった。ライラの先導で道なき道を進んでいくと、やがてぽっかりと開いた草地に出た。
「ここを越えたらもうすぐよ」
レザリアの家々が暗い山合いに沈んでいるのが見えた。その先に頭一つ飛び出た樹がある。あそこにチャダルがいるはずだ……奴を苦しめた要因らしきものは村にはなかった。もしもこの先に、その理由があるのだとしたら……
「こっちよ、バジャー」
ライラの声がして、俺は考え事から引き戻された。枯れた大木の根元に、人が一人潜れるぐらいのウロがある。
「ここが入口。中は想像以上に広いの」
ライラがウロを覗き込み、中へと滑り込んだ。「貴方も入ってきて」
しかし俺はそうしなかった。獲物へと指をかけながら、身構える。何者かが山を下ってきたのだ――暗き夜に、道なき木々の間を。一体何者だ?
269へ進め。

タペストリーは地図のように見える。そこで書棚からマールバハールの地図を探し出して照らし合わせてみると、どうやら国の南部に広がる砂漠のものらしいことがわかった。
また、タペストリーには書の血族の紋章と、いくつもの文字列が織り込まれていた。
「最初のは……えっと……アイルカーン、かねぇ? その先はもう全然わかんねぇや」
小さく織り込まれた文字を覗き込んでいたチャダルが言った。
元のパラグラフで、調べ物の続きを続けよ。

タマリンドは未だ騒ぎの中にあった。村はずれにライラを残し、守りをチャダルに任せて俺はタマリンドを探っていたが、どうやらその主役はすでに亡霊ではなくなっていたようだった。頭のことがあるからあまり近くへは寄れないが、地面に伏せながら風に乗ってくる声を聴くことはできる。
……塔の囚人が消えたらしい……昨晩の亡霊と関係が……
……退魔師が死んでいた……都へ報告しなければ……
……そもそもあの娘は何者だったんだ?
やはりライラが逃げたことはすでに知られているらしい。馬は諦めて、早々にこの地を離れたほうがよさそうだ。身を隠しながら進むのであれば、例の旧街道の荒れ具合も逆に都合がいいと考えることもできる。
150へ進め。

「バジャー……120年前の戦争で死んだ、役立たずの騎士だ」
俺の名を聞いて奴の表情が変わる。「バジャー! 本当に君なのか!」
どうやらこいつは、俺のことを知っているようだ……そして、俺もこいつのことを知っていた。これだけ刃を交えればいやでも思い出す。あの時の、氷霧の森で俺の首を切り落とした男だ!
俺を見下ろす奴の表情から敵意が消えていた。
「バジャー、僕はかつて君の首を刎ねた。名はラシュド……いや、僕の名前などはどうでもいいな。
覚えているかい? 氷霧の森で僕たちは戦った。あの時は僕も若かった……どうしても君に勝ちたかった。だから姫を狙い、君の動揺を誘った……愚かだったよ。あれは僕の負けだ」
片方の手を自らの身体につっこむと、俺を二度倒した男は何かを取り出した。あれは……首壺ではないか。
「気づいているかい、バジャー。僕は君が“剣“を玉座から抜くのを待ってから攻撃を仕掛けた……首無しの亡霊騎士が仕事を成したのち、これを滅せよという命令だったんだ。亡霊として使役される僕は、まじない師の命令に逆らうことができない。これ以上の屈辱はないよ。でもね……僕は今、喜びに満ち溢れている。こうして君と、再び納得のいく決着をつける機会が得られたのだから。今の戦いは忘れよう、君はまがい物の頭で挑んでいた……僕はまだ納得していないよ」
そういうと奴は首壺を地面に置き、首無し馬を操って背を向けた。
俺はすでに、傷を抑えたまま気を失ってしまっていた。しかし意識が遠のく瞬間、奴の声がかすかに聞こえた気がした……
――これは君から預かっていたものさ。今こそ返すとしよう。これで、僕が滅するべき相手はいなくなったわけだ。
奴は彼女を自らの野望のために利用するつもりだ。追ってくるといい、彼女を取り返しに。そして、今度こそ決着をつけようじゃないか――
309へ進め。

背後で騒ぐ声があっという間に遠ざかり、国境を守る警備兵の手を間一髪ですり抜けたことを確信する。俺たちはマールバハールから逃れることに成功したのだ! だがまだ気を抜くわけにはいかない。奴らがカルルーム領へ追手を出さないとは限らない。一刻も早くここから離れなくては……隣国の領地へ入れば入るほど、奴らは追いにくくなるはずだ。
馬に乗っているのであれば128へ。徒歩ならば、219へ進め。

奴の腕も中々だが、かつて数多の戦場を潜り抜けた俺の敵ではない。
それでも、奴も意地を見せた。致命的な一撃を受けながらも繰り出した短刀が、俺の“頭”――肖像画を突き破ったのだ。頭を失った俺は、暗闇へと落ちていった。
369へ。

ラシュドと名乗った騎士は明らかに、何者かによって使役されていた。それができるのはまじない師だけ……つまり、書の血族だ。ライラを望む書の血族……俺の脳裏に一つの名前が浮かぶ。もしもあの男がライラを諦められなかったのだとしたら、全ては説明できる。だが、そうはさせるものか……!
再び氷霧の森に踏み入った俺は、難なく国を隔てる塁壁をすり抜けた。俺の“頭”はもう何物にも阻まれることはない。手持ちの武器も、あらかじめ壁越しに投げ入れておけばそれで済んだ。
マールバハールへと戻った俺は、一人南へ向かう。目指すのは、今や倒すべき敵であることが明らかとなった老まじない師の隠れ家だ。
14へ進め。

「なあ、さっきから気になってたんだけどよ……旦那、王宮は街の反対側だぜ?」とチャダル。
馬鹿な……と言いかけて俺は気づいた。そうか、120年前とは違うのだ。しかし今向かうべきは、かつて書の血族が玉座を構えていた場所だ。問題ないとだけ返し、先へと進む。
数刻の後、俺は思いもよらなかった光景を前に絶句していた。かつて壮麗さを誇った王宮が、積み石で封じられていたのだ。代々書の王が居としていた宮殿は巨大な冷たい石塚となり、無残な姿となっている。衛兵が二人一組になって塚の周りを巡回しているのが見えたが、貴人を警護しているというにはほど遠い、荒々しい連中のようだ。
「この石塚が昔は王宮だったってことか……なるほどねぇ」
チャダルが興味深げに見ている。奴が生まれた時代には、ここはすでにこの有様だったようだ。
背後を振り返ってみれば、都の中心部の向こう側、120年前には何もなかった場所に刃の偽王が座する新たな宮殿が篝火に照らされているのが見えた。
それはともかく、これから俺たちはこの塚に入っていかなければならない。石壁に近づいてみたが、壁を抜けようとしてみてもうまくいかない。妙な力が働いているらしく、亡霊の身体でも通り抜けることができないのだ。考えてみれば、書の血族の力を封じている場所だ。まじないを排斥した刃の連中なればこそ、それぐらいの用心はしていてもおかしくはない。改めて石塚をよく見てみれば、確かにいくつかまじないの文様らしきものが刻まれた石が混じっているのがわかる。刃の連中のくせに、まじないを利用しているのが気にいらないが、そうまでしてここを護る必要があるということなのだろう。
衛兵と鉢合わせしないようにしながら塚の周りをまわっていくと、北側に小さな詰所があった。見覚えのあるローブを纏った男が一人椅子に腰を下ろしてじっとしているのが見える。例の紋章――退魔師だ。少し離れて様子をうかがっていると、やがて巡回の衛兵たちがやってきた。
「おい、起きろ。この穀潰し野郎が……仕事中に酒くらってんじゃねぇ!」
「ほっとけほっとけ。どうせ中の奴らは出てこれないんだ。こいつの仕事なんて無いんだからよ」
どうやら泥酔しているらしいが、それよりも“中の奴ら”というのが気になった。塚の中にも何者かがいるらしい。
「確かに、この中には昔の亡者が彷徨ってるなんて噂があったな」チャダルが懐かしそうに言った。「子どものころよく聞かされたもんさね……あの頃はおとぎ話みたいなもんだと思ってたけどな。もしかしたら俺っちたちのお仲間かもしんねぇ」
やがて衛兵たちの姿は見えなくなった。俺はそっと詰所に忍び寄る……
寝ている退魔師に気づかれないように中に忍び込むのなら206へ進め。
念のため退魔師を殺しておくのなら388へ進め。

ここでじっとしていてもさほど意味はないだろう。それよりも、早く目的を達するべきだ。王都へ着くまでにもずいぶんと日が経ってしまっている。
王宮の場所ははっきりと覚えている。俺は記憶を頼りに、未だ騒がしい王都の民の目をすり抜けるように目立たぬ路地や物陰を渡っていった。
だが、目ざとくも俺の“頭”を見つけた輩がいたらしい……
頭になっているアミュレットに傷があるのならば477へ進め。傷物でないのなら264へ。

BATTLE 
サイコロを一つ振れ。そして武器などから得られる戦力ボーナスを加える。
出目が「6」であれば、さらにサイコロを振って加算せよ。
(ただし、「1」が出た時点で自動的に敗北となってしまう)
得られた値と、敵の戦力を比べよ。同点以上であれば勝利だ。
敗北を喫した場合でも、命運点を1消費することで再挑戦できる。
決してあきらめることなかれ。
勝利を掴んだのであれば、91へ進んでよい。
しかし力及ばず、敗北したのなら……俺は深い一撃を受けてしまう。362へ。

武器に手をやる俺を制し、ライラが歩み出た。
「規律の番人、ジェリコ・リャマ。貴方の名は後世にしっかりと伝わっています。120年の後の世を生きている私でも知っています。
貴方はかつて、“王ではなく、法にのみ仕える”と言い残した……そんな貴方が、なぜ死者を弄ぶまじない師などに仕えているのですか?」
異形の亡霊の動きが止まる。床に視線を落とし、苦悩するかのような様子を見せた。
そして、大きく叫ぶと宙を仰ぎ……その螺子くれた姿は炎とともに掻き消えてしまった。
部屋の中は何も変わっていなかった。何一つ燃えてなどいなかった。
「行きましょう……先生を止めに。たとえそれが刃の血族であっても、死者をこんな風に扱うなんて間違っているわ」
年に似合わぬ表情を浮かべたライラの横顔は、彼女が師との決別を選んだことをはっきりと告げていた。
186へ進め。

老いたまじない師は眉一つ動かさず息を引き取った。やはり本当の名前ではなかったのかもしれない。
191へ。

進んでいくと、やがて塚の中心へと向かう扉が現れた。通路はまだ先へと続いている。
扉には書物に剣が突き立てられたレリーフが施されており、鍵穴があるのがわかった。試してみたが扉は動かない。開けるには鍵が必要ということだろう。
扉に向かい、右へと通路を進むのなら381へ。
左へ向かうのならば90へ。
合いそうな鍵を持っているのであれば、試してみてもいい。そうするなら289へ進め。

やがて、再び砂が巻き上がりはじめた。程なく砂嵐が一帯を包み隠す。
201へ進め。

精巧な浮彫が施された石の扉の影から窺ってみると、その奥は巨大な玄室のようだった。正直、王家の墓とはいえ地下にこれほどの空間があるとは思わなかった。ここまでくる間に見た魔法の灯りによって照らされているが、炎の大きさは桁違いだ。四つの隅に設置された巨大な鼎の上で、赤々と燃えている。
玄室の中心には、球体に削り出された巨大な岩塊からなる祭壇があり、縦横に張り巡らされた縄には数えきれないほどの呪符が連なっている。びっしり黒々とまじないの文句を書き付けたローブを身に着け、祭壇の前でこちらに背を向けて呪言を唱えているのがファファスタスだろう。その声は玄室に響き渡り、一語一語ごとに四方の炎が不自然に揺らめいている。呪符もそのたびに共鳴していて、何かのまじないが進んでいるのは間違いない。だが、この共鳴は明らかに不完全で揺らぎも大きい。ファファスタスもそれを感じているらしく、苛立っているようだ。
「やはりワシ一人では、完全なる目覚めは無理ということだな……
待っていたぞ、ライラ。我が弟子にして、このまじないの中核となる血をひく者よ」
奴が振り返り、こちらを一瞥した。
「たとえ何度逃げようとも、ワシの手へ戻ってくる……それがお前の運命なのだ!」
俺の“頭”となっているのは何だろうか?
黒檀像なら39へ
犬頭の酒瓶、または石像だったのなら396へ
魔除けの仮面ならは220へ
まじないの仮面だった場合には180へ
あるいは、翁面の酒瓶であるのなら414へ

鍵穴に月長石の鍵を滑り込ませ、回してみる。カチリと小さな音が通路に響いた。
410へ

「書の王が残した力……これからもずっとここで眠り続けるべきだわ」
ライラは霊廟の扉を閉じ、まじないでそれを封じた。
「……ひとまずはこれで良し。でも、もっとちゃんと鍵掛けのまじないを使えるようにならないとね」
あれほど俺たちを苦しめた砂嵐も収まっていて、陽炎に揺らぐ砂の地平の先に、マールバハール中部の山々が見えていた。
「レザニアに戻りましょう。あそこには先生が残した魔導書や、先人の記録が色々とあるはず。
私は……まじない師として、もっと力をつけないといけない」
そう言ってライラは笑みを浮かべた。希望と決意、そして己が血筋に対する誇りに満ちた、力強い表情だった。
それからは……そうだな。マールバハール史上でも稀な力を持つまじない師へと成長したライラと、その従者たち――もちろん俺と、チャダルだ――は、刃の血族の追跡をあしらいながらこの国で暮らしたというわけだ。霊廟に残された力の番人として。
ライラもずいぶん年を取った……彼女は死ぬ前に霊廟に眠るあの力を解き、自然の有様へ、あるがままへと戻すつもりらしい。それが、“最後の書のまじない師”としての責務と考えているようだ。もちろん俺たちに異論はない。あろうはずもない。
かつて俺を縛っていた後悔と自責の念は、とうの昔に晴れていた。ライラがつないでくれた第二の生が、俺を救ってくれたのだ……
