目を覚まして窓の外を見る。
満天の星空が広がる中に手を伸ばし、一つの輝きを摘まみ上げた。
「少しくすんで来てるわね」
丸みを帯びてきた五角形に鑿を当てて的確な角度を探す。
槌を軽く振るうこと十回。五つの塊を削り出した。
手の中で形を確認し、五芒が際立ったその星を元の位置に戻す。
うまくいった。明らかに輝きが強まった……無論、鋭角がもたらす錯覚もあるだろうけれど。
これで今日の仕事は終わりだ。
これだけのことを、毎日毎日、永劫とも言える時をかけて繰り返している。
手元に残った星の欠片をミルで挽き、みずがめ座から適量の水を汲む。
恒星に薬缶をかけ、程良く沸いたら、星雲のフィルターで星の粉からお茶を抽出する……一滴一滴。
ちょうどカップに半分ぐらい。予想通り。
軽く唇を濡らす。今日削ったのは白色矮星……星の核特有の濃い口当たりが強くて、少々苦い。
天の川からミルクをほんの少しだけ注ぐ。カップをくるくると回し、水面に生まれた渦巻き型銀河が時間とともに失われていくのをしばし眺める。
いい感じ。今日の気分にぴったりの味になった。
空になったカップを洗いながら、再び窓から夜空を見下ろす。
いくつか色が鈍くなっている星を認め、明日はどの星を磨こうかと思案した。
そして、仕事を終えた後いただくことになるであろうお茶の味に思いを馳せる。
星は皆違う。同じものは一つとてない。
数多の色彩、微細に異なる輝き、そしてそれぞれが醸し出す風味。