デニスブラウン装具は内反足の治療過程においてしばしば用いられます。この装具は英国の Denis Browne (デニスブラウン)によって1930年前後に作られました。ただし、彼は1934年の論文(重要論文です)において、『I stumbled upon it( it はデニスブラウン装具)』といっているのでこの装具の原理がデニスブラウンの発想によるものかどうかについては確信がありません。
どのような装具でも同じですが、装具は矯正をする為のものではなく、矯正を行った後の形態を維持するために用いられます。デニスブラウンはこの装具について、「矯正の結果を維持する為に用いる」ということをはっきりと述べています。ただし、この装具は、矯正位を維持するだけでなく、足関節(足首)を動かす事を許容することに特徴があります。彼は、「足関節を動かすことにより下肢の筋肉の萎縮を予防する」と考えました。すなわち、この装具の本質は、矯正を維持し、足関節の動きを良好にし、かつ筋肉(特に下腿の筋)の萎縮を可能な限り予防する、ということにあります。
デニスブラウン自身の論文に記載してあるデニスブラウン装具(副子、そえ木)の構造について述べます。アルミの板をL字形に曲げ、足裏と踵にぴったりと当て、絆創膏で固定します。同様のことを反対側にもおこないます。次に、両側のアルミの足底の部分をアルミのバーで固定します。固定の際には足が70度くらい外に向くようにします。このようにするとひとたび整復された足は、その矯正位を保つことができます。アルミのバーが重要なのであって、もしこれが無いとすると矯正位を維持できません。論理的には足の部分、すなわちくるぶしから下が皮膚もなく、脂肪組織などもなく、骨だけであれば矯正位を保てるはずですが、実際にはそういうことはないのでどうしてもバーで足を外にむけておかなくてはいけないのです。この装具を9ヶ月くらい装着し、独立歩行が可能となった時点で、L字に曲げたアルミの板を靴に変えます。この靴の底にアルミバーをとりつけ、足を矯正位に維持します。これが今一般に用いられているデニスブラウン靴の原形と考えられます。これは靴ですので、ときどきはずして親が足の矯正操作を行うことが出来ます。
デニスブラウン装具は現在私達も好んで使用しています。私達がどのような時期に用いるかというと、初期の矯正が終わり、ギブス固定を数カ月続けた後で、ギブスの無い状態でも軽い外反位に保たれているような状態になってからです。或は少なくとも強い矯正力を加えなくても軽度の外反位にもってゆくことができる状態(専門的にはflexibleな状態)になってからです。装具の役割はあくまでも矯正位を維持することだからです(このことは装具治療一般にあてはまることです)。この段階からは、本人による足の積極的な運動により、足首の動きを良好とし、下腿筋の発育を促し、そしてときどき(1日4回以上)御家族に足首の動きをよくするリハビリをしていただくのが効果的と考えております。私達の施設では、できるだけ赤ちゃんが下肢を動かしやすいようにプラスチックバーを使用しています。1才未満ですとプラスチックでもなんとか破損しないでゆけるようです。1才過ぎに独立歩行が始ったならばデニスブラウン装具は夜だけにしています。
この装具は手術の後にも用います。手術で得られた矯正位を保ち、足首の可動性と筋力を増強させる為です。