2010年11月17日(水) 図書館の昼ごはん

 私は日本に1カ月以上行っていて、ひさびさに戻ってきた。
 さて、帰ってきたその次の日の13日の土曜日、さっそく図書館。

 前々から気にはなっていたのだが、この近所の子は、お昼休みに帰りたがらない。
「お昼ごはん食べてからおいで」と、お昼に1時間、子どもたちを追い出して、昼休みとして閉めていたが、どうも帰りたがらない子が多い。結局、家に帰っても、ろくなお昼ご飯は食べないらしい。親からもらったお小遣いで、スナック菓子を食べて終わる子も多いようだし、何も食べない子もいるだろう。
 この土曜日もそうだった。
「ここで、タム・マックフン(パパイヤ・サラダ)を作って食べようよ」と、ユイが言う。「パパイヤ買ってきて、そうしよう」。
「それなら、うちにパパイヤあるから、うちで作ればいいよ」と、私が言い、結局、タム・マックフンを、トウガラシ25本も入れて、彼女らは作ったのである。それだけでは、あまりにお腹がすきそうなので、急遽、炊飯器でご飯を炊き、卵5つで卵焼きを作り、それを、10人ほどで、一緒に食べた。

 ここ1週間、子どもたちは、ヴィエンチャン遷都450周年の行事で学校が休みなので、火曜と水曜の2日間特別に図書館も開いている。
 
 さて、昨日も、常連の子たち、帰らない。子どもたちは
「カオピアック(うどんのようなもの)を買ってきて、図書館で食べよう」などと言っているので、
「タム・マックフン作るんなら、まだパパイヤあるよ」と言うと、
「卵焼きの匂いが恋しいなぁ」などと言う。
 蓋をあけてみると、誰も、カオピアックを買ってきていない。
「え〜、ご飯、足りないよ」と、冷蔵庫に残っていたパンを皿に大盛りと、やはり残っていた卵で卵焼きを作って、やはり10人ほどで食べた。お皿洗いは、子どもたちが順番で。結構きちんとやる。

 図書館が、お昼ごはんまで出すっていうのは、サービスし過ぎ・・・・とも思う一方で、この辺りの子どもたちの、食事のことも気になる。お腹すかせたまま、お菓子なんかかじって、図書館に1日中いるのも気になるし・・・・。
 などと思っていると、夕方、図書館から帰ったばかりの、ユイとテンが、玄関の外から、「きよこ〜」と呼ぶ。「なーに?図書館は閉まったよ。明日だよ」と言うと、「ちょっと来てよ、贈り物があるから」と言うので、出て行くと、パパイヤの実1個と、青菜を1袋差し出して
「これ、プレゼント。明日のお昼にね」と言う。
 この子たちの家は、決して裕福ではない。
「いいよぉ、家に持っていって食べなよぉ」と言うと、「いいの。明日のお昼ね」と言うので、受け取った。なんとも言えない気持ちになった。みんなでお昼ご飯を食べるのが、よっぽど嬉しかったのか、楽しいのか・・・。たいした食事を出したわけじゃないけれど、今日はご飯やパンも総ざらいあり合わせを必死に出したので、子ども心に「悪いかな」と思ったのかもしれない。
 今朝は、ちょっと太っちょの男の子イーが図書館に来るなり、「ちょっと、来て来て」と呼ぶ。イーは、お米を3合ほどと、卵を3つ渡して、「お昼、卵焼き作ってね」と言う。
 というわけで、今日のお昼は、ご飯をたくさん炊き、青菜炒めと卵焼き(卵は、後から誰かが一つ追加して4つ分)と、やはりタム・マックフンとそれから、カオちゃんが持っていた竹の子の炒め物・・・・で、結構豪勢なお昼となった。料理を、ダンナと私が一生懸命やっていると、オオンが、「二人は、この家の主人なのに、台所に二人して立って、まるで主人じゃないみたいね」と言う。まるでお手伝いさんみたいだということだ。まったく、その通り。子どもたちのお手伝い?だろうさ・・・と思ったけれど
「そうよぉ。この家のご主人さまは、ほら、そこに3匹寝てるよ」と、気持ちよさそうに寝ている犬を指していうと、オオンは「ハハハ…本当だね」と言う。

 今日は、小2の小さなポックは家の丼にカオピアック(うどん)を入れてきて、でも、一緒に座って食べている。自分の丼を食べ終わった後、「ご飯食べる?」と聞くと、「うん、食べる」と言うので、お皿にご飯とおかずを盛ってあげると、お皿に喰いつかんばかりの大口で食べる。するとイーが、
「ポック、そんな食べ方するの?ぼく、それ家でやったら、食べさせてもらえないや」と言う。

 ゴザを敷き、みんなで食べるお昼ごはん。どうせだったら、なるべくバランスのとれた食事を出せればいいな・・・と思う。じきに、栄養のことなんかも、簡単に教えられたらいい。
 
 まぁ、無理せず、出来る限りやればいいじゃないか・・・と思うのである。
 
 まぁ、ここは「図書館」というよりも、子どもの砦…である。子どもたちが、基本的には、好きなことをできる場所にしたい。子どもたちが、いろいろな経験をできたらいい…と思う。
 集まるみんなは、他人の集まりだけど、ゆる〜いゆる〜い家族。
 誰でも、みんながやってきたら「我が家」
 
 そんな場所になればいいな・・・・と思うわけだ。


11月19日(金) たった3人の分校へ手紙を送る
 先月、日本に戻った折、あるきっかけで、島根県の鰐淵小学校猪目分校という学校を訪ねた。生徒は3人だけ。隣の町にある本校は20数名だそうで、分校の方は、生徒3人、先生2人と校長先生。学校の1室の6畳くらいの和室で、膝を突き合わせるようにして、私たちはラオスのお話をパネルシアターにしたものと、椰子の実から作った人形をみせた。地元のケーブルテレビの取材もいきなり入り、大人に囲まれた中で、子どもたちが3人、ちょっと固くなっていたけれど。
 最後に、今度は子どもたちからの発表。自分たちが、地元の清流にいる、カジカカエルの観察と、カジカガエルを守る活動をしていること。地元の人たちへ、自分たちが作ったヨモギ団子やら、漬物、花の苗なんかをプレゼントしていること。それから、ラオスへ絵本を送る活動をしていることを発表してくれた。3人は、お祭りや学校の行事の時に、自分たちが作ったキーホルダーなんかを販売して募金してもらい、そのお金で、絵本を買って、絵本にラオス語訳を貼るという活動をしているそうなのだ。たった3人の小学生たちが、そんなに頑張っているなんて、結構ジーンときた。
この小さな学校の3人の子どもたちを、先生たちや大人たちが、一生懸命、盛りたて、温かい目で見守り育てていることが、伝わってくる。
 この3人が貼った絵本は、SVA(シャンティ国際ボランティア会)の活動の一環として行われているものである。私たちの図書館にもSVAから頂いた本があるが、それは、この3人のものではないだろう。でも、私たちも、同じように、誰かが訳を貼った絵本を使わせてもらっているから、これは、この3人のやった絵本が届いていると言ってもいいだろう・・・・
 ということで、ラオスに戻ってから、分校の写真を、子どもたちに見せ、あれこれ説明をして、ラオスの子どもたちに、日本の分校の3人に手紙と絵を書いてもらうことにした。
 10人ほどの子どもたちが、一生懸命手紙と絵を書いた。
 不思議なことに、子どもたちは、山と川と田んぼの広がる風景を描くのが好きである。郊外に住む子ならまだしも、この住んでいるヴィエンチャンなんかから、山なんかあまり見えないのに……と思う。この子たちの親たちは、ほとんどが、地方から移り住んできた人々である。きっと、そこの風景なのだろうか。そのラオスの基本型の風景なんだろう。
 豊かな自然に囲まれた3人だけの子どもの風景にくらべると、ここは、ずいぶんにぎやかなゴタゴタして、子どもたちがごった返した風景である。
 何はともあれ、空間を超えて、国境を越えて、友だちができるのは楽しいことだ。何かがつながればいいなぁ・・・・と思う。