2011年11月5日(土)
図書館の裏の、バラック小屋のような家に住んでいる3家族が、土地の契約が切れて、引っ越すらしい。大家さんは、バラック小屋を壊して、長屋アパートを作りたいらしい。常連のユイやプーが、もうすぐ引っ越していってしまうのか。ヴィエンチャンの土地が高沸している中で、お金がない人たちに安く土地を貸すのをやめる地主も、増えてくるだろう。いったい、今後どうなるのだろう?ユイやプーたちは、もう図書館に来られなくなってしまのかな? 仕方ないとは思いつつ、そう思うと寂しい。
2011年11月6日(火)
最近、図書館スタッフのカオは、ラオスの遊びを、子どもたちに教えている。
相変わらず、何度言ってもゴム草履投げを辞めない子どもたちの横で、小さい子を集めて、遊びを教えている。
オニの子が顔を伏せ、その子の背中の上に、みんなが手のひらを出す。親役の子が、歌をうたいながら、順番に手を指して行き、歌が終わった時、石が誰の手のひらの中にあるかを当てる。なかなか当たらない。みんな大喜びでやっている。
遊びというのは、人から人へ、世代から世代へと伝えられていくものなんだろう。上の子から下の子へ・・・・と次々と伝わってきたものなのだろう。ここでは、大きい子も小さい子も一緒に遊んでいるから、まだそういう伝承があるけれど・・・日本では、そんな遊びが消えてしまったのは、ちょっとさびしい。
午前中は、本を読んでいる子もいたが、午後、本は誰も読んでいない。
まぁ、1日中、本を読むわけにもいかないし・・・・・ここは遊び場を兼ねた場所になっているから、もうこれは仕方ないんだろうと思う。
最近、常連になった4歳のナナーは、お話をしてあげると、まぁ、次から次へと自分のお話を展開する。猫が出てくると、自分が最近見たネコの話をひとしきりするし、次に犬が出てくると、犬の話をする。一緒に聴いている他の子は、迷惑そうだが、ナナーはまだとっても小さいので、さすがに怒鳴りつけるわけにもいかず、困った顔をしている。私も、「うん、うん」と適当にうなづいて、絵本の話を続けるのだが、まぁ、ナナーは頭の回転が速いのかもしれない。
まぁ、とにかく、ここは、いろんな子どもたちの居場所であることは、確かだ。
2011年11月20日(日)
ここ最近、新しい子がやってくるようになった。この新メンバーたち、さっそく本を借りて行く。久々に?図書館らしい姿。新しい子たちは、近くには住んでいるのだが、私立の学校へ行っている子が多く、家も、そんなに貧しそうではない。本もすらすら読めるらしい。
この図書館で、久々、「本を見に、本を読みにくる子たちが来ている」ということは、ちょっと嬉しいことだった。
古顔といえば・・・・相変わらず、ゴム草履投げをして遊んでいる。「もう、さんざん、そんな絵本なんか見ちゃったよ」ってことなのかもしれないが・・・・・
午前中、子どもたちがラオスの遊び・・・・をやるのを、私はビデオで撮る。なかなか面白い。前にも書いたが、大きい子も小さい子も、最近来た子も、みんな一緒になって遊ぶのが、いいところだな・・・と思う。
今日は、はじめて図書館の様子をヴィデオに撮ったのだが・・・・・
男の子も、女の子も、小さい子も、大きい子も、みんな一緒に遊ぶ場所・・・・こんなにくったくなく一緒に遊べるっていうこは、なかなか素敵なことなんじゃないかなぁ・・・・と思うわけだ。日本の子どもたちも、ここに来て、一緒に中に入って遊べればいいのになぁ・・・・なんても思ったりする。
ここの図書館は、なるべくいろんな子どもたちが、それぞれ楽しく、居心地のいい場所として来てくれたらいなぁと思う。
小さいナナーは、また一人で、やってきて、他の子はおかまいなしに、ずっとぬり絵をしている。他の子を気にせず、本を読みふけったり、絵を描いたり、自分の好きなことにのめり込める子は、いいなぁと思う。
この9月に、中2に進学したばかりの女の子、ノイが、学校を辞めたという。彼女は背もすらっと高く、脚も長い。最近、みんなが学校へ行っているはずの時間帯に見かけるので、おかしいなぁ・・・と思っていたのだが・・・・
「学校辞めたの?なんで?」と聞いても、ぶすっと「辞めたのよ」としか答えなかったが、図書館が終わってから、昨年一度中1で学校を辞めて復学をしているオオンと、やはり学校を辞めてしまったユイと一緒に、夕方、家の前にやってきた。
オオンはちょっとおでかけの格好をしている。
「今日から仕事なの」と言う。「どこで?」
「そこの角のカラオケや」
「いったい何時から何時まで?」
「夕方から夜の12時とかまでよ」
「え〜、それじゃ、朝起きられないでしょ?」
「大丈夫、私は起きられるもん」
というが・・・・これから毎日のことじゃ、いったい学校に通えるのだろうか?ユイの方は働きだして4日目だという。私が、毎晩、騒音で悩まされているカラオケ屋であるが・・・・・この2人は、そこで働くのか・・・
「でもさ、学校はちゃんと行くんだよ」
「大丈夫よ」
というが・・・・はたして、どうなるだろう?そこへ、ノイがやってきた。
「ねぇ、どうして学校辞めたの?」
「働いて家計を助けるんだもの。仕事探しているの」
「もう学校辞めてしまったの? もう何日行ってないの?」
「2週間、もう名前、消されてしまったしね・・・」と言う。
中2で学校を辞めた子が、いったい何ができるというのだろう?・・・・本当は、行きたくないわけがないだろう・・・ノイだって、たくさん本は読む子である。
オオンは両親と離れて暮らしているし、ノイは、きょうだいがたくさんいる・・・・それぞれ、いろいろな事情を抱えているのだろう。図書館に来る子どもたちとして、つきあって来たけれど、いったい、私に何ができるというのだろう? いったいどうしたらいいのだろう?
ユイの妹のテンも、小5で学校を辞めてしまい、今、朝の6時から午後1時まで皿洗いをしている。月50万キップだそうだ。今日も仕事が終わってから、午後、図書館に来たが、やたらシースルーな派手な格好をしている。大人にまじって仕事をして、大人の世界に一歩踏み入れているせいか、精一杯、背伸びをしているような・・・・精一杯おしゃれした姿が、かえって寂しく見える。
彼女は、実の父親だが、母は継母である。親にも甘えられず、親にたしなめられることもないのだろう・・・・・私などが、人一倍、親に甘えて育ってきた方なので、余計に彼らに申し訳ないような気持ちもしてしまうのだが、まだ子どもでいたい頃に、一人立ちして行かなくてはいけないことは、厳しいことだ。夜、9時10時、私がもう眠くなってきているというのに、オオンやユイは、カラオケ屋で客の下手な歌につきあって、サービスしていなくてはいけないんだろう。そう思うと胸が痛い。
だが、ラオスでは、そうは特別、同情すべき話でもないのだろうか。ダンナは、「人生、そんなもんさ。夢みたいにはいかないんだよ・・・」と言う。
2011年11月27日(日) 影絵の夜
ここ1カ月ほど、主人が所属するグループ「カオニオ」のメンバーに、モンの民話の影絵化をおねがいしていて、彼らは日々準備、練習していたのだが、昨日、ドンパレープで演じた。
今、暗くなるのは6時だ。1年で一番早い頃ではあるが、いつもは、4時で図書館は終わりだから、暗くなるまで子どもを残すのは、やはり親に承諾を得ないといけない。
ということで、土曜日の日、親に、影絵への招待状を書き、子どもに持ち帰らせた。もちろん、来られる人には見に来てほしいし、来られなくても、子どもたちが帰らないのを心配しないように、である。
当日の昼前になって、ユイが
「私たち、もう長い間、踊ってないわ。影絵がはじまる前に、踊らせてよ。しばらく、踊りの練習もしてないから、練習するわ」と言いだす。ユイとオオンは、最近、夕方、近所のカラオケ屋で働いていて、「見られないのが残念」と言っていたが、
「キヨコから、今日の影絵大会に、参加させてもらえるように、1時間だけ遅れていくことを許してもらえるように、オーナーに頼んでよ」と言う。最近、カラオケ屋の子どもたちも、図書館によく来るようになったが、昨日来なかったので、招待状をまだ渡していなかったので、その招待状も持って、ユイとオオンと一緒に、カラオケ屋のオーナーの奥さんに、
「この子たちは、ずっと前から図書館の中心メンバーで、今日、踊ったりもするので、ぜひ、1時間仕事に遅れることを、認めてもらえませんか?」
と言うと、奥さんは
「わかったわ。5時から7時は、行ってもいいわ。でも、あんたたち、今すぐ仕事に入んなさい」と言われて、二人が神妙な顔をして店に入ったのを見て、彼女たちはここでは、使用人なんだ・・・と思うと、なんとも言えない気がしたが、でも、二人とも見られるようになって、よかった。
さて、子どもたちは、大きな子どもたちのグループと、小さな子どもたちのグループもにわかに仕立て、3曲踊るという。あっという間に、準備をしたのはなかなかさすがである。
舞台裏で、曲の打ち合わせをするオオン
影絵の舞台は、図書館側ではなく、家の前の庭に立て、準備している。さて、4時に子どもたちを帰したものの、みんなすぐ戻ってくる。踊るグループの子どもたちは、家に入って、髪を結ったりして準備をしている。チビのポックやキャンディーも、髪を結いあげて、一人前だ。
少し薄暗くなった5時半くらいから、まず、子どもたちみんなで、子どもの歌に合わせてリズム運動のような踊りをみんなでおどった。
、小さい子のグループ、ポック、キャンディー、パー、パーン、ヌン、フォン、そしてラッキーボーイ・・・・の踊り。図書館で練習したこともないのに、上手・・・学校で習っているというが、ラオスの子はさすが、踊りがうまい。
大きい子の踊りも終わる頃には、もう暗くなり始めている。大勢の子どもたち、そして、招待状がよかったのだろう、子どもたちのお母さんたちも思ったより大勢来てくれているのが、嬉しかった。普段、ここの子どもたちの親は、ほとんど覗きに来る人がいないからである。
今回、お菓子を準備したのだが、余ると思った63袋が、足りなかった。80人くらいは来ていたようである。
さて、暗くなり、いよいよ影絵のはじまり。。。。
「トラ、クマ、イノシシと人間の知恵くらべ」という話。
、
イノシシ、クマ、そしてトラが集まっているところに、人間が来る。
動物たちは、モノトーン。
これは、半透明のクリアファイルを切って作ったのだが、意外に素敵であった。
「おい、人間、おまえは知恵があるそうだが、どんな知恵だか見せておくれよ」と言うと、人間は、石を打ち合わせて、火花を見せる。
「なーんだ、こんなもんかい、じゃあ俺たちと知恵くらべしようぜ」と動物たち。人間は、くさはらの丘で明日会って、そこで知恵くらべをしようと言う。動物たちは、そこは自分たちの得意な場所だぜと、喜ぶ。
次の日、早く来た動物たちは、丘で準備運動。
ここで、調子のいい沖縄の音楽に合わせて、動物たちが動くと、子どもたち大笑い。それに演技者たちが、触発される感じで、動物たちもますます調子よく動く・・・・子どもたち、ますます大笑い。
遅れてきた人間は、丘の裾野で、火をつける。火は燃え広がる。
赤いセロハンを、動かしているわけだが、子どもたちも「火事だ、火事だ」と声をあげている。
トラは、ところどころシマに焦げて、縞模様が、クマは真黒に焼け焦げ、イノシシは、毛がやけてゴワゴワになってしまった。
ここでまたまた大笑い。
トラは、今度こそ、人間に勝ってやる!と、牛と馬を連れてやってきた人間に、もう一度勝負しようと持ちかける。人間は「俺の知恵は、家に忘れてきたんだよ」。トラが、「取ってきて、勝負しろよ」と言うと、人間は、「おれがいない間に、おまえがおれの牛と馬を食べちまうんじゃないかと心配だよ」と。トラは「そんなこと心配するなら縛っていけよ」と言う。結局、人間の知恵とは、斧のことで、人間は斧を取ってくると、トラをぶちのめしてしまった。
それを見て、牛は歯が折れるまで笑い、馬も転げまわって笑って、角が折れるまで笑ったので、今でも、牛には上の歯がないし、馬には角がないんだよ・・・ というオチ。
「へっこき嫁の話」
これは、タイトルからして、面白そうだ・・・・と子どもたちは期待していたみたいだ。日本のお話と似通った話がモンの民話であるので、モン仕立てとしたが、内容的には、日本のお話からとっている。だが、この影絵では、かなりラオステイストとなっているのが、面白い。
まず、始まりの調子がいいラオスの音楽に、さっそく子どもたち手拍子・・・・
ラオスの結婚式独特の掛け声と、「飲めや飲めや」などという宴会の会話と、指で囲った中に、花嫁花婿を入れて、部屋に入る様子を表すなど・・・なかなか。素朴だけれど、面白い。
掛け声が上がると、見ている子どもたちも、一緒に声を上げる・・・・演じる方も、見ている方も、ラオスならではのノリで・・・・会場全体が、楽しく盛り上がった。後ろから、大人たちの笑い声が聞こえてくるのも、嬉しかった。
暗い中、1時間、小さい子どもたちまで、よく見ていた。
ずっと、闇の中、光で演じる、この影絵の夜をやってみたいと思っていたが、、まずまず、盛況に終わってほっとした。
見た子どもたちも、演じた人たちも、満足げで楽しそうだったのが、嬉しいことだった。