2012年2月


 土をこねる                                2012年2月4日、5日
 文庫のおねえさんのカオちゃんが、煉瓦を作る作業場から、「粘土」を買ってきた。1s5000キップ(50円) 。10s買ってくる。これまで、ここの子どもたちは、油粘土(?プラスチック粘土?)で遊んだことはあるが、泥の粘土ははじめてだ。みんな何を作るかというと、鉢。これは、ラオスでは、日常に食べるタムマックフン(タイではソムタムという、パパイヤサラダ)を作る道具。ラオスの家庭ならどこにでもあるものだ。それから、小さく丸めて、「うずら玉子」。前に、買ってきた油粘土の方が造形はしやすいのだろう。その時は細かいものを上手に作っていてびっくりしたのだが、この自然の泥粘土では、やはりもっと大ざっぱなものしか作れない。でも、自然の土は触っていて気持ちがいいし、なんだか素朴でいい。今後、続けていけば、もっと面白いものもできてくるかもしれないけれど・・・・でも、土をこねるというのは、いい。小さい子どもたちも、いっしょうけんめい泥団子を作っている。




 以前、山の村で子どもたちが粘土をこねたときは、立派な水牛や、鶏や・・ができた。山の子どもたちは、自分たちで、山のどこかからか粘土をとってきて、作るのである。みんな、とても上手に動物を上手に作っていた。日常的に見ているからか・・・・でも、子どもたちが、誰に教えられるわけでもないのに、自然に粘土をとってきて、造形をしているってことが、すごい。だいたい、粘土が、自然の中にあるものってこと自体、日本にいる子などは知らないんじゃないか。ここビエンチャンでも、すでに買ってくるものになっているし。


これは山の子の作品。山とビエンチャンでは土の色も全然違う。

これは、油粘土で作ったケーキ。今、ビエンチャンでは、「バースディ」のお祝いが一般的になっていて、子どもたちはケーキが楽しみ。山の村では、子どもたちも、まだ自分の誕生日なんて知らない。


2012年2月19日(日) 久しぶりにオオンが来た

 中1で学校をやめてしまった女の子オオンは、カラオケ屋で働いていたが、最近、カラオケ屋をやめた。
 この前の夕方、うちのすぐ近くのそのカラオケ屋の前を通ったら、やけに背が高くなったオオンが私のところにやってきた。目の上下をまっくろに塗り、お化粧をしている。
「すごく背が高くなったね」と言うと、
「だって、ハイヒール履いてるんだもの」と、オオンが言う。
 確かに、私より背が高くなった彼女は、とても高いハイヒールを履いていた。
「あのね、私、今日でこの店やめるの。そしたら、今度、会いに行くね」
とオオンは言った。
 カラオケ屋で働きはじめてから、急に大人びてしまった彼女・・・・中学生の時間を通り越して大人になってしまったような彼女のことが、なんとなく心苦しく、胸が痛むような気がしていた・・・・オオンが、私たちの子ども図書館のメンバーからは去ってしまったような気がして・・・でも、たかが図書館に来る子・・・という関係だけで、それ以上、口をはさむわけにもいかず・・・・もう図書館なんて・・・と思っているのかな・・・無理やり来いとも言えないし・・・・と思っていたのだ。


 私はあれこれ用があり、ここ1週間ほどヴィエンチャンを空けていたのだが、今日の午後戻ってきたので、図書館に座っていると、オオンがやってきた。ゴムぞうりを履き、なんだか前のオオンに戻ったような、すっきりとした顔をしている。
「仕事やめたんでしょ? どうしたの? 元気にしてる?]
と聞くと、オオンは、私に耳打ちをして、
「ねぇねぇ、お願いがあるんだけど・・・・インスタントラーメンをきよこの家で作ってもいい?」
と言う。
「いいよ。私も昼ごはんまだ食べてないから、私の分も作ってよ」
と言うと、オオンは、いそいそと、インスタントラーメンを買いに行った。
 オオンは、
「私、久しぶりに図書館に戻ってきたんだもの。今日は、お祝いよ。で、ラーメン食べようよ」
といい、6袋のインスタントラーメンを大なべで煮た。
 オオンは、図書館に入り浸っている頃、インスタントラーメンをうちで作って食べるのが好きだったのだ。野菜もちゃんと入れ、なかなか美味しく作る
 オオンは久しぶりにラーメンをうちで作って、みんなで食べたいらしい。
 オオンと、同じ学年だったプーと、ターイと、図書館のお姉さんであるカオちゃんと私の5人で、大なべのラーメンを食べた。オオンは、最後に
「これ、これ入れなくっちゃ」
と、唐辛子のぶつ切りを、10本分くらい入れ、
「これでも、まだ辛くなんかないわよ」と言い、たくさん食べた。

 オオンは、両親はいるが、事情があって別居、おばあちゃんにずっと育てられている。今日も、どうして親といっしょにいないか? という話になると、
「私は、何がどうしたって、おばあちゃんと一緒にいるの・・・・おばあちゃんと離れることはできないわ」と言う。オオンは、ずっと育ててくれたおばあちゃんのことが大好きで恩を感じているらしい・・・とはいえ、実の両親もいるし、自分と一緒にいる妹と弟の面倒もみなくてはいけない・・・・・10代前半にして肩に負っている荷は重い。
「また少ししたら仕事、探すの。でも、その前に、少し図書館に遊びに来てからね」
と言った。

 子どもたちは、決して平等な環境には生まれてきていない。
 みんな、それぞれが生まれついた環境の下で、もがきながらも生きていくしかない。
 他人にはどうしようもない・・・
 でも、少しだけでも、他人のおせっかい・・・をすることで、その子が少しでも、明るい道へ進めるのなら・・・・・ちょっとだけ、気にして見ている・・・というような・・・・ことしかできないが・・・・・それでも、結構気にしていたオオンが、久しぶりに「当たり前の顔」して、図書館に戻ってきてくれたのが、今日はうれしかったのだ。
 
 最後に、ラーメンを食べたどんぶりなどをきちんと洗い、ふきんもちゃんと洗い、オオンは、「ありがとう」と言って帰って行った。
 久しぶりに、子どもらしい顔をしたオオンに会って、今日はうれしかった。