2012月6月2日(土) 子どもの日のクッキー

 ラオスでは、6月1日が子どもの日だ。毎年、子どもたちは何かしらのイベントを期待している。初年度は、新聞紙の服のファッションショーをやり、コープン(ラオスの汁かけそうめん)を出した。昨年は、植樹をして、ルークシン(肉団子)を出した。今年は・・・・ダンナのノイが、不在のため、車で買い出しもできないし、大きなことはできそうにない・・・・・・そうだ、クッキーを焼いたら、楽しいじゃないか!
 と思いついた。ここの子どもたちは粘土細工が好きだ。クッキーでいろいろな形を作って、焼いて、自分の焼いたクッキーをみんな、家に持って帰る・・・・というのはどうだろうか?

 ぐりとぐらのケーキ作り。しょうがパンぼうや。おまたせクッキー・・・・絵本の中に出てくる手作りのお菓子・・・・いったいどんな味なんだろう? 子どもの頃には、それだけでわくわくしたものだ。きっと、楽しいに違いない!楽しくて、うれしくて、おいしい! 素敵じゃないか!
「子どもの日には、みんなでクッキーを作ろう!」と宣言した。

 前日、私は、3キロの小麦粉、1.5キロのマーガリン、1.3キロの砂糖、15個の卵を使って、クッキー種をこねた。イベントの時に子どもたちは大勢来る。もし足りなかったら困るから・・・・張り切って準備しておいたのだ。

 問題は、うちの窯である。うちにはダンナ手作りのパン窯があるのだが、火入れが難しい。薪やら炭を入れて燃やすのだから、「220度のオーブンで10分」というわけにはいかない。今までも、何度も、パンを焼くのに、煤だらけになるだけでうまく焼けなかったり・・・失敗している。犬しか喜ばない代物を何度も作っている。果たして、私で、火の加減がうまくいくのだろうか? でもきっと、パンじゃなくてクッキーだから平気だろう・・・・なんとかなるよ・・・・

 朝、お隣のラオス人マンくんに火入れをしてもらう。あぁ、なんとかなりそうだ・・・・ 
 子どもたちがぼちぼちとやってくる。来た子どもたちに、「手を洗うのよ!」と言ってから、それぞれ、クッキー種と、干しブドウを渡す。
「何でも作っていいよ。動物でもなんでも・・・・」
と言うと、私は、火加減を見に行く・・・・・あれ?全然熱くなってない。あれ、100度にもなっていないくらい。 あわてて、薪と炭を足す・・・・すると、図書館から
「クッキー種、足りないよぉ」と言われ、冷蔵庫の中から、クッキー種を持って、また図書館へ。見ると、子どもたち、ただ丸めて、それに干しブドウをつけている。
「あれ?なんかさぁ、もっと、いろいろなもの作っていいんだよ」
と言ったものの、クッキー種がべとべとしていて作りにくいらしい。粘土細工のようにはいかないらしいのだ。見ると、雪だるまのようなものもある。
「それ、平たくしないと焼けないと思うよ」
「みんな、自分が作ったもの、よく覚えておくんだよ。持って帰っていいんだからね」
と言ったものの、みんな似かよったものを作っている。

 そうこうするうちに第一陣ができあがった。天板にいびつなハートやら丸やらが載っている。
「はい、これ、焼いて」と言われて、窯に持っていったものの、さっき薪を足したせいか、煙臭い。今、窯に入れたら、きっと煤だらけの生焼けクッキーになってしまうだろう。
「早く入れようよぉ」と、子どもたちが言う。
「ちょっと待って。まだダメだよ。熱さが足りないなぁ」
「十分熱いじゃん。平気だよぉ」
 またあわてて炭を足したものの、まだ100度。これは、失敗するかも・・・・・まずい煤色になった生焼けクッキーになったらどうしよう?・・・・・と思いながらも、天板を中に入れる。

「クッキー種、足りないよぉ。まだある?」
「ちょっと待って・・・・今、持っていくから」


 あたふたあたふた、熱くならない窯と、クッキー種を入れた冷蔵庫と、図書館をバタバタと往復するうちに・・・「また、できたよ。これも焼いてね」と、天板が、次々とやってくる。
「わぁ、ヤバー、全部、失敗するかも・・・・」
 そこへ、友達の真由美さんと、彼氏のデッドくんがやってきた。
「あぁ、よかった。お願い」
と、デッドくんに火をお願いする。彼は、炭をどんどん入れ、
「扇風機で、風を送れば、火がよく起きるよ」と、扇風機を回した。少しずつ、温度が上がってきた。

「まだ、クッキー焼けないのぉ?」
「いつになったら、焼けるの?」
 子どもたちも、しびれを切らしている。
「待って、待って、もうちょっとだから」
 作り始めてから2時間もしたころか、やっと、一番最初に入れた天板の上のクッキーが焼けた。
「焼けたよ。もう、まずはみんなで一枚ずつ食べて。もう、自分のとか、こだわらないでいいから。みんなで食べて」
 あっという間に、子どもたちの手が伸び、クッキーはなくなる。味はまずまずだ。「おいしい!」と言ってもらって、ほっとする。
「まだ、これからどんどん焼けるからね」





 辛抱強く、窯番をしてくれたデッドくんのおかげで、クッキーは無事焼けたが、最後のクッキーが焼きあがった時には、もう12時を回っていて、小学校の行事に行かなくちゃいけない子どもたちはもう帰っていた。自分の焼いたクッキーを、それぞれが持って帰るという構想は・・・・間に合いませんでした。
(あさって、図書館に来る子どもたちで、分けて食べることにしましょう)

 クッキー種も張り切りすぎたか、多すぎて余った・・・・そこで、私と真由美さんで
「こういうのを作りたかったのよ」と、ブタやら犬やらの動物クッキーを作ってみる。落ち着いてやれば、べとべとしていても、できる。でも、さっきは、私もあわてていてできなかった。
「はじめに、子どもたちにやって見せたらよかったな」・・・・
 まぁ、これも後の祭り。でも、なんとか、クッキーが煤だらけの生焼け・・・とならずに、とりあえずおいしいクッキーが焼けただけでも、まぁ、よしとしよう・・・・そんな、子どもの日のクッキーつくりでした。



 なんともあたふたと疲れたわけで、子どもたちが帰った後は、炭の残り火で、スペアリブを焼いてビールで、3人でお疲れ様。腹にしみた。
 
 いつかはもっと手際よく火をおこし、涼しい顔して優雅に、「わぁ、おいしい!かわいい」と言われるようなクッキー焼けるようになりたいもんです。