2011年12月2日(金) またまたメリーの子犬

 子犬は4匹になったが、この4匹は小さいながらも元気で、メリーのおっぱいを勢いよく飲んでいる。元気な子犬たちは、おっぱいを飲む時に、前の両足で、おっぱいの両側を交互に押しながら飲む。まったく、おっぱいがよく出るようにマッサージしながら飲んでいるようなもので、生まれながらにしてちゃんと、どうしたらおっぱいがよく出るかを知っていて、自然にやるようになるのだから、たいしたもんだ。この元気な4匹は、おっぱいを飲みだしてまもなく、この動作をするようになったのに、弱く生まれてしまった2匹は、結局、うまくおっぱいを飲むことすら、できなかった。
 今回、人間が助けようとしたが、結局死んでしまったが、自然の中では、やはり弱く生まれた子は生きぬいていけない・・・・のは、そういうものなのだろう。

 メリーは、だんだん、子犬の元を離れて、家の中に遊びにくるようになっている。ずっと、子犬とだけいるのは、そりゃあ、飽きるだろうし・・・・それよりもまず、ずっとおっぱいをやっているのだから、お腹がすくのだろう。しょっちゅう、会いにやってきては、真ん丸い目で、見つめる。
「お腹すいてるんだけど・・・・それにさ、育児って疲れるのよね、ちょっとだけ息抜きさせてよ」と、言いたげである。
 そうして、しばらくうろうろしてから、いつのまにか、子犬のところに帰っている。
 ふと見ると、メリーは、ダンナのゴム草履をくわえていき、枕元に置いている。
 きっと、人恋しいんだろう。家の裏に、まだおっぱいを飲むばかりの子犬たちだけといるわけだから、他の家族の匂いが、恋しいんだろうな・・・


12月15日(木) うちのネズミとり犬たち

 うちには、恥ずかしながらネズミがでる。
 今日も、ペプシとポチが、クンクンクンクンと部屋の隅を嗅いでいる。ダンナが、「本当にいるのかい?」と2匹が嗅いでいる辺りを棒でつつくと、 ネズミがチョロチョロ走りでたではないか!
「わぁ、出た!ホントにいる。ヌゥ ヌゥ(ラオス語のネズミ)」
 と私が騒ぐと、外にいたメリーが、待ってましたとばかりに飛び込んできた。メリーは、かわいい顔しているくせして、ネズミと聞くと、血の気が騒いで仕方ない。
 それはいいのだが、もう逃げてしまった後の場所を一生懸命、探しまくる。
「そっちじゃないって、向こうに逃げた」
 犬3匹と、人間二人が、ワァワァと、部屋の隅を覗いたり、ネズミを探していると、わぁ、また隅から走り出る。ネズミも、隠れてもこう騒がれては、じっとしていられないらしい。
「わぁ!あっちあっち」
 私は、口で言うだけで、ネズミが走り出ると、「きゃ〜!」と椅子に昇ったりして、逃げる。そんな中、パンダだけは、「我関せず」と、棚の下に潜り込んで、寝ている。ポチとは姉妹なのだが、まるで、性格が違う。ポチはお母さんのメリーに似て、ネズミとなると、他の犬たちと一緒にバタバタしているが、パンダは、一切関心を示さない。マイペース・・・というか自分の無関心なことには一切関心を示さない犬で・・・・犬の姉妹でも、ここまで性格が違うか・・・・と思う。
 
 ネズミであるが、「きゃ〜、あっちあっち」「どこだどこだ」と、旦那と私が、まだあちこち探している時に、ふっとメリーを見ると、あれ、いつのまに捕まえたものだか、もうくわえているではないか。自慢げに、くわえて放さない。たいがい、ペプシが噛みついたりするのだが、ペプシは自分ではくわえない。メリーに手柄を渡す。
 ネズミがとれたのはいいが、メリーが自慢げにネズミをくわえて、こっちに向かってくると、私はまた「きゃあ〜」と逃げる。
 ドタバタ喜劇みたいな、犬のネズミとりである。


12月30日(金) ちょっと寂しい年の暮れ


 うちのペプシがいなくなって、もう1週間たってしまった。毎日、今日は帰ってくるかな・・・と思って待っているが、帰ってこない。
 ちょうど1週間前の晩、旦那が帰ってきて」、車を入れるために扉を開いた時に、ペプシは、勢いよく走り出たのだ。まるで、走る喜びを体いっぱいに、一直線に脚を伸ばし、「ぼく、遊んできま〜す」とばかりに駆けて行った。逃げ出して困ったことなのだが、ペプシが走る姿は美しいな・・と思った。「ペプシー、戻っておいでぇ〜」と言いながら、ちらっと、嫌な予感もした。
 次の日の朝、ペプシは帰ってこない、いつもなら、扉をバンバン前脚で叩き、「開けてくれぇ、クンクンクンクン」と騒ぎまくるのだが、その音がしない。ちょうど、図書館でクリスマス会をしなくてはいけないので、それをやりながらも、ペプシのことが気にかかって仕方なかった。

 ペプシは2年前にも一度いなくなり、もう食べられてしまったんだろう・・・と思っていたら、10日もした頃に戻ってきた。ラオスでは、犬は、「捕まって食べられる」という心配がある。ペプシが走っているところを、人間が追いかけても追いつかないが、食べ物で釣られたら、きっと、ひょいと捕まってしまうかもしれない、トンマな犬でもある。お人よしで、人懐っこい。あぁ、おばかさんのペプシ。
 ペプシ、お前はどこにいるんだろう。オス犬だから、旅に出ているのかもしれない・・・・悪い人間さえいなかったら、必ずお前は帰ってこられるのに・・・・今、帰ろうとしている途中かもしれない・・・・

 ご飯の時、膝の上に、黙って長い顔をのせて、上目遣いで人の顔を見て、「黙ってねだっていた」ペプシ。その顔がない・・・・・そう言うと涙が出てきた。「犬のことぐらいで泣くな」と怒られるかと思ったら、旦那も鼻をすすっている。顔を見ると、涙が目からこぼれていた。
「人間だって、犬だって、その時がくれば死ぬんだから仕方ない」
と、旦那は言う。それはそうだ。もちろん、犬ごときで、こんなことで、どーする! と、自分を叱咤激励しているけれど、やっぱり、辛い。何をやっていても、寂しい。犬でこんなこと言っているんだから、親しい人を亡くした時の辛さはいくばかりか・・・と思う。

 うちの他の犬たちの中で、いつも、オス犬同士でけんかばかりしていたラッキーが、すっかり元気がない。ご飯もあまり食べずに寝てばかりいる。いなくなってから、ほとんどペプシのことを口に出さない旦那が、
「シアオ・チャオ・ユー・サイのぉ(お前のダチはどこへ行ってるんだろうなぁ?」
とつぶやきながら、頭をなぜてやっている。 
 旦那は、「正月まで待ってみて、帰ってこなかったら、お線香あげて、水を流して、魂を送ってやろうな」と言う。ラオスの人たちは、魂が輪廻転生をして、生まれ変わることを信じている。
 私は、まだ、「早く、帰ってこいよぉ・・・みんな待っているよ」と、思いながら・・・・、こうして2011年も終わりが近づき・・・・・いいことも悪いことも・・・・悲しみと喜びも一緒に歩いていく。