「ある夜のできごと」                           2009年8月8日
 
 私は頭にきていた。ダンナのノイとけんかしていたからだ。奴は、だんまりを決め込んで、何も言わない。
「キーカン・ワオ(しゃべってもしょうがねぇよ)」ときた。
「そんなことだからね、理解しあおうなんて難しいよ」
と私は言い、嫌なとげとげした空気が流れる。
 その時、ネズミが走った。
 でかい!
 ネズミは2階へ走って行く。
「ヌー(ネズミ)、ヌー(ネズミ)、ヌー、ヌー」
 私は大声で叫び、2階へと駆けのぼる。
 私のあとに、メリー、ペプシ、そして、ノイが階段を駆け上る。

 ところが、ペプシは2階の暗い踊り場に上がった途端、クンクンと言いながら、私に飛びついてくる。まったく、おまえ、私はネズミじゃな〜い!違うでしょ!お話にならない。

 メリーは、責任感いっぱいのふりをして、クンクン、あちこち嗅ぎまくって捜しているが、おもむろにしゃがむとシーッとおしっこをする。床に水たまり。



「おいおい、メリー、違うでしょ!おしっこは外でしょ。おまえ何しに来たの!」
 結局、大ネズミは捕まらず。
 ペプシはさっさと下に降りて、もう寝てるし、メリーは嗅ぎまくったあげく、おしっこしただけ。もぉ! 
 メリーも下に降りてくると、さっそく2匹は、取っ組み合い、噛み合いの大ゲンカをはじめる!
「もー、おまえたち、いい加減にしなさい!」
 2匹のケンカで、こっちのケンカはどこかへ行ってしまった。
 こんなもんか・・・・・

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 朝、ノイもいないし、
「今朝はコーヒーと、おいしいフランスパンでも、食べようっと、チーズをつけて!」
と、準備して、さぁ食べようとすると、もうペプシとメリーがしっかりいる。このフランスパンは、普段のよりも高いやつである。どうして、こいつらは、嗅ぎつけるんだ?
 メリーは、いつものように、じーっと私を見つめ、もう「おすわり」をしている。
「これで、くんなかったら、一生、「おすわり」なんかしてやんないわよ!」
と言うがごとく、おすわりして、じーっと私を見つめる。
 メリーは、日本語の「おすわり」もわかるし、ラオス語の「ナン(座れ)」もわかるのだ。
「ちぇっ、仕方ない」
と少しちぎってやると、ペプシが、「ぼくも、ぼくも、ぼくにもちょうだい!」
と、こっちは、おすわりができずに、やたらシッポをふって、ジタバタジタバタ・・・・
「ペプシ、おすわり!」
 パタパタ、ジタバタジタバタ




「ペプシ、おすわり!」
と、ぎゅーっと手でお尻を押して、やっと、お座りができた。

 ペプシは、やたら口を動かし、ニチャニチャおいしそうに食べる。
 メリーは、伸ばした前脚の間にしっかりパンをはさんで、チマチマ食べている。