第8回

「リーサルウェポン4」 Lethal Weapon 4(1998)

− 妻子があり、まじめで古風な黒人刑事ロジャーと型破りで破天荒なマーティンの愉快な二人組みが6年ぶりに帰ってきました。ロジャー一家のどたばたや、脇役たちとの掛け合いは、毎度お決まりのパターンとはいえ、回を重ねても度を越すことなく、非常にうまく構成され、心地よい笑いを誘います。そして、こちらもお決まりの、度を越したアクションシーンと壮絶な肉弾戦も健在です。今回は香港カンフー映画のスター、リー リン チェイ(ジェット リー)を悪役に迎え、香港映画さながらのアクションシーンが展開され、観ていて楽しくて仕方ありません。ハリウッド映画に吸収される形ではありますが、最近の香港アクションのハリウッドでの活躍は実に嬉しいものがあります。また、このシリーズは一貫して、人間の絆という、アメリカ人ならずとも最も親しみやすく、心が和むテーマをベースに展開されているのも魅力でしょう。それは主要な登場人物同士の絆だけではなく、犯人との対決が全て殺された仲間の復讐という形で展開されているところにも伺えます。そして、このシリーズが成功したのは、全4作を通してこれらの要素が上手くまとまっていたからだといえると思います。

− そのバランスを崩さず今回の大団円までまとめたのは名プロデューサ、ジョエル シルバーとリチャード ドナー監督。ジョエル シルバーは黒人と白人のコンビを使った良質のアクション映画を得意とする名プロデューサで、本シリーズのほかに「48時間」、「ダイハード」等を世に送り出しています。リチャード ドナーは「スーパーマン」などでも有名な監督ではありますが、なんと言っても本シリーズが代表作でしょう。今回も堅実な演出で楽しませてくれます。

− 主演はご存知メル ギブソンとダニー グローバー。メル ギブソンはいまさら紹介するまでもないかもしれませんが、オーストラリア映画「マッドマックス」シリーズで注目され、ハリウッドに進出し、いまや監督もこなすハリウッドきってのトップスターとなりました。3作目出演後、このシリーズには出ないといっていたようですが、6年経って、またお馴染みの仲間たちとの撮影を楽しみたくなったようです。ダニー グローバーは周囲に翻弄される生真面目な気の良い刑事ロジャーを魅力的に演じ、本シリーズの笑いの中心となっていますが、「刑事ジョンブック 目撃者」では悪徳警官を演じたりもしています。そのほか2作目から登場するリオを演じるジョー ペシ、3作目から登場する女人間兵器(?)ローナを演じるレネ ルッソをはじめお馴じみの面々が脇を固めます。

− これらの面々が絆を深め、ついには製作スタッフまでも加わり一つの家族としてアルバムに収まるラストシーンはシリーズの完結を飾るにふさわしい名ラストシーンとなりました。

− 日本では他のシリーズ物に比べキャラクターの認知度は低いといえるでしょうが、個人的には最も成功したシリーズ映画の一つではないかと思っています。ロジャー家の子供たちの成長や仲間たちの友情の深まり、人間関係の変化等、シリーズを通して実に上手く脚本も練られていて、1作目から通して観るといっそう楽しめますよ。(1998.9.13)

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