Distanceの烈サイドです。
やっぱりラブくないですが。
豪サイドよりはゴーレツ要素があるよーな、ないよーな。





それは、突然。


唇にあるのは慣れない感触。
唇に感じる優しさと対照的に強く掴まれて痛みが走る肩。
目の前には見慣れたはずの弟の顔。
・・・だけど。
弟の顔はまるで別人のようで。
十年以上見てきた顔なのに、まるで知らない男に見えた。

・・・・・・何故か、弟にキスされているってことより、
   豪が、自分の知らない顔をしていることがショックで。














静かに自分から離れていく顔が目に映る。




こんな豪、僕は知らない。



なんだか・・・・・・



すごく。



恐い。




恐くて・・・・・・




「・・・・・・兄貴?」

弟の顔でのぞき込んでくる豪に、少しの安堵。
何か言葉を返そうと思うのだけど、喉の奥が潰れたような感覚がそれを許さない。
怒鳴らなきゃ。
いつもみたいに。
「なにすんだよっ」って。
そう思っているうちに、段々豪の顔が困ったような顔になっていく。
なんでお前がそんな顔してんだよ。
そう言いたかったのにやっぱり言葉にはならなくて、かわりにヒクと喉が鳴った。
豪の指が頬に伸びてきて、そんなことどうってことないはずなのに、自分の体が固くなったのがわかる。
僕の頬に触れた指からそれを感じたであろう豪は、苦笑をもらした。
「泣くなんて思わなかったから・・・ごめん。ちょっとからかったつもりだった・・・」
それはもう、自虐的ともいえる笑顔で、そんなことを言うから     



















     Distance   -pain-    













バタバタバタッと騒がしい音を廊下中に響かせたかと思ったらガラッと教室のドアを開け放って。
もう、それだけで誰かなんてわかりすぎるほどわかるけど。

「烈兄貴っ!」

決定打に大声で名前を呼ばれて。
こんな豪の態度が最初は恥ずかしくてたまんなかった。
でもあまりに日常化したソレは、既に友人のネタにされることもほとんどなく。
僕は大袈裟にため息をつきながら、豪の時間割を頭に浮かべた。
えーっと、次の時間、数学だっけ?
豪が小脇に抱えているのものにチラと視線をむけるとそこにあるのは、やっぱり数学の教科書とノート。
コイツって本当に予想を裏切らないよな。
「一問につき肩もみ5分」という条件に豪は嫌そうな顔してみせるけど、どーせ折れるのはわかってる。
自分の手の内にある教科書と僕の顔を見比べて、悩める少年に一言。
「休み時間、残り少ないぞ」
僕はペンケースからシャーペンを取り出しながら、にこやかに告げてやった。






一学年下の数学の問題なんてのはモノによっては別の解き方を習ってしまったが為に
その問題で求められてる式が出てこないなんてことはよくある。
が。
僕にはそんなことは関係なくて。
この10年間、豪の勉強をみるのは僕の役目だったから。
1学年下の復習はもう習慣のようなもので。
よく先生が"予習復習は勉強の要"なんて言うけど、あながち間違いじゃないな、と思う。
弟のため、のつもりが自分の成績にも如実に現れてた。
"頭がイイ"なんて、自分には的外れな賛辞。
それを一番わかってないのは他ならない弟だったりするけれど。



割と簡単な演習問題だったおかげでたいして時間もかからずに解き終えたノートを返す。
ほへーっとノートを眺めてバカ面さらしてる豪の頭を軽くこずく。
「お前さー、俺のトコに泣きついてくるくらいなら昨日の夜のうちに来いよなー」
「だって、さっき知ったんだもんよ。この前の授業、寝てたし」
「お前ってホントに・・・」
「ありがと、助かった!兄貴、愛してるv」
小言のひとつでも言ってやろうと思ったのに、豪はそれを察したのだろう
「じゃっ」と手をあげると要領よくその場から逃げ出した。
「おい、豪!」
入ってきたときと同じく慌ただしく教室を出ていくその背中を見送りながら、
我知らずもれるため息。

豪が教室を出ていくとコトの成り行きを面白そうに傍観していた友人どもが席の周りに集まってきた。
「星馬弟は相変わらずだなー」
「お前ら、見ててあきねーよ」
ちょっと待て。"見てて飽きない"に僕のことも入ってんのか?
そりゃー、あのバカは確かに見てて飽きないけど。
「しっかし星馬もなんだかんだ言って弟に甘いよな」
豪が聞いたらすごい勢いで反論されそう。
『俺、甘やかしてもらったことなんてねーぞ?!』とかさ。
「豪に課題が出たら、結局後で手伝うハメになんだから今やっといた方が楽だろ」
・・・・・・うーん。言い訳としては悪くない、かな?
「そーいうもんか?」
「そ。あー、肩もみしてくれんならお前の課題もみてやるよ?」
にっこり。
笑顔の効力は計算のうち。
友人とのつまらない話は終わりにして、次の授業の準備を始める。
今度はこっそりと胸の中だけで溜め息をついて。









・・・・・・"言い訳"ねぇ・・・。



何に対しての言い訳なんだか・・・。





はぁ。















         ‡‡‡   ‡‡‡   ‡‡‡







いつだって、胸の奥が渇いてる。
ホントウは。
どうすれば潤うのかなんて、わかりすぎるほどわかっているけれど。
僕はそれを望まない。









         ‡‡‡   ‡‡‡   ‡‡‡







脱いだ服を脱衣籠に放り込みながら、洗面所の鏡に映った自分の姿を見る。
・・・・・・そんなに細いだろうか。
先程、肩もみに疲れてじゃれだした弟の言葉を思い出す。
そりゃぁ、標準・・・よりやや細めかもしれないけど    。
同年代より体格のいい豪と比べるなよな。
この肌の白さがまた体型を貧弱に見せてる気がする。
とはいえ日に焼けても赤くなるだけでちっとも焼けないのは体質だし。
って、自分に自分の弁解をしてどーするんだか。
鏡の中の自分をちょこっと睨み付けてみて、なんだか虚しくなってきたので
手早くシャワーを浴びることにした。










シャワーを浴びて部屋に戻るとさっき、僕が部屋を出た時と同じ状態で豪が床に転がっていた。

「豪?」
「んー」
返事があるということはそのまま寝てしまったわけではないらしい。
「・・・・・・何してんだ?」
「ゴロゴロしてた」
なんだそりゃ。
「風呂あいたから入ってこいよ」
「んー」
先程と同じ生返事だけよこしてちっとも動こうとはしない。
ったく、だらしがないったら。
「豪っ」
少しキツめに名前を呼んで次の行動を促す。
いつもだったらそこでブチブチ文句を言いながらも起きあがるはずなんだけど。
そんな気配は全然なくて。
気づくとコロンと仰向けに転がり、
怒鳴りつけてやるか実力行使に出るか思案している僕の足下にその頭を持ってきていた。

足下から見上げるその顔。目つき。

普段は小学生から変わんないよーな顔で笑うくせに。
アレ以来、時折見せる、その大人びた目。
その目で見られると。
恐くて、苦しくて、もう心の中がぐちゃぐちゃで。

空気を変えたい一心で何か喋ろうと口を開ようとしたらその前にスラリと腕がのばされた。

「・・・・・・?」

意味がわからずにいると豪はニヘッと笑ってこうのたまった。

「ひっぱって起こしてーv」

「・・・・・・アホ」

今さっき、気まずいような空気を感じていたのは自分だけだったのか?

「起こしてくれたらちゃんと風呂行くって」
「じゃぁ、いかなくていい。そこで寝てろ」
「兄貴、冷たい・・・・」

ご丁寧に泣き真似までして。
そんなこと言ってる間に起きた方が早いのに。絶対。
でも、豪の目がいつも通りなのに安心して。
コイツが早く風呂入んなきゃ迷惑するのは母さんだし。
仕方なく僕は豪の足の方に回り込む。
そして、ほんっとーにしかたなさそーっっにその手をつかむとひっぱって起こしてやった。

「さんきゅー。んじゃ、風呂でも入ってくるかー」

こっちが拍子抜けするほどあっさりとそう言って。
自分の小さいワガママが通っただけにしてはあまりにも満足そうな顔。
何がそんなに嬉しいのかニコニコと。

「そんな顔しても俺の肩もみの残り時間は減らないぞ」
「・・・・・ちっ、忘れてなかったか」
「あたりまえだ。しっかり待ってるから早く行って来い」
「へーい」

不満げな声を出しながらも目は笑ってる。


豪が部屋を出て、パタンと閉められたドア。








なんなんだよ、もう。








ボスッとベッドにに思い切りよく座って、髪が濡れたままなのも構わず仰向けになった。


静かに目を閉じると瞼に浮かぶのはさっきの豪の目。


















思い出しただけで。




















チクリ。





























胸が痛むのは、何故?











なんかこのふたり・・・付き合うどころか告白だってしてないのに 今まで書いたどの話よりバカップルな気が・・・・・・(汗)。 なーにがひっぱって起こしてvだ、恥ずかしいヤツめ!(お前が言うな。) でもねー、星馬兄弟は素でラブラブしてそうだしさ。 告白してないからこそこんなラブいんじゃないかと。 恋人になったら(ウチの)烈は甘やかしてくれないから、実は今の方が幸せかもね、豪さん(哀)。 この話はあいこ的にはいろいろ設定あるので 気が向いたら続きを書くかもしれないかもしれないです。(なんじゃそりゃ) ・・・でもこの話、前回を見る限り反応薄いんだよなー(^^;)。
NOVELのTOPへ戻るHOMEへ戻る