アテンションプリ〜ズッ!
ウチにしては珍しくラブくない感じです。
ちょっと痛くてもOKな方だけドーゾ(^^;)。
この気持ちは、恋じゃない。
君を想うココロは誰にも負けないけれど。
この想いを「恋」と呼ぶことが君にそんな顔をさせるなら、
この気持ちは・・・恋じゃない。
Distance
今日、数学あたるなんて・・・ジュンのやつ知ってんならもっと早く言えっての。
テキストとノートを抱えて階段を駆け上がる。
この際、上級生の教室なんだから少し遠慮して、なんてことは言ってられない。
いや、まぁ、普段から気にしたことねーけど。
ガラッ
「烈兄貴っ!」
室内で休み時間を過ごしていたほとんどの生徒がドアを無遠慮に開けた俺に目線を送る。
が、それも一瞬のこと。
それほどに、俺がこの教室を訪れることは日常化していた。
窓際から既に呆れた視線を投げている烈兄貴の元へ一直線に向かう。
「一問につき肩もみ5分」
ぐっ・・・頬杖をつきながら俺の手の中のテキストを一瞥し、
しれっと条件を出してくる兄貴に不覚にも言葉がつまる。
人の足下見やがって・・・。
数学の担当教員は次回あてる生徒を予告する。
その上で間違った答えを出すと課題5ページ。
やってこなければ10ページ。
「休み時間、残り少ないぞ」
数学の課題10ページなら兄貴の肩でももんだ方がマシか。トホ。
「お願いシマス」
「まいどー」
まるで魔法のようにさらっと解かれていく演習問題。
「終わりっ」という言葉とともに差し出されたノートを受け取りながら、
俺と兄貴、実は血が繋がっていないんじゃないかなんて頭をよぎる。
・・・だったらいいなぁ、障害イッコ減るじゃん。
なんていう俺のバカな考えを見透かしたよーなタイミングで兄貴に頭をこずかれた。
「お前さー、俺のトコに泣きついてくるくらいなら昨日の夜のうちに来いよなー」
「だって、さっき知ったんだもんよ。この前の授業、寝てたし」
「お前ってホントに・・・」
兄貴の呆れた顔に礼を言うとダッシュで自分の教室まで戻った。
これ以上の小言はカンベンだ。
「へぇ、よく間に合ったわねー。サスガって感じ」
「オレ様の脚力をなめんなよ」
「誰があんたの脚力褒めてんのよ。どーせ烈のとこ行ったんでしょ?
私が言ってるのは"こんな短時間にそれだけの問題が解けるなんてサスガ烈兄ちゃん"ってこと」
「・・・・・・」
出たっ。ジュンの兄貴贔屓。
これがまた的を得てるだけにまともに言い返せないのがツライとこだな。
「なぁに、その目は。
私が教えてあげなきゃ"課題10ページ"だったくせに」
「だったらもっと早く教えてくれればよかっただろー?!」
「だって、この方が面白いじゃない」
何が面白いんだよ、ったく、ムカつくな〜、この女っ!
「いいでしょ、間にあったんだから。
それにしても烈って相変わらずアンタに甘いわよね」
含みを持たせた表情で、んなこと軽く言うんじゃねー。
兄貴が俺に甘いことなんて俺が一番よく知ってんだよ。
コッチの状況はお前が思ってるより、ずっと緊迫してんだぞ。
ジュンの言葉が終わると同時に鳴り出したチャイムが
俺の反論を許さなかった。
‡‡‡ ‡‡‡ ‡‡‡
たとえ、誰だろうと。
君を傷つけるヤツは許さない。
誰かが君を傷つけようとするなら俺が絶対に守ってあげる。
守りきる、自信はあるんだ。これでも。
だけど。
他ならない、俺自身に傷つく君を、
俺はどうやって守ってやればいい?
‡‡‡ ‡‡‡ ‡‡‡
「うー・・・も少し下。あ・・・そこ・・・・・・気持ちいー」
・・・・・・この肩、尋常じゃねぇぞ。
兄貴のせっかくの官能的なセリフ(そんくらいの楽しみがなきゃ肩もみなんかできっか)も
耳を素通りするほど力を込めなくては兄貴の肩はほぐれない。
「兄貴、勉強ばっかしてっからこんなになんだよ」
「だってバカになるのヤだもん」
視線を上に送って言外に"お前みたいな"と含ませる。
嫌みな言い方させたら世界1だな、ウチの兄貴は。
「幸い、ウチには高性能な肩もみ機がいるしな」
悪い顔になってんぞー、烈兄貴。
・・・・・・・ホント、さすがの星馬豪サマでも勝てねぇよ。
まぁ、俺の負けなんて・・・きっと惚れたときから決まってたんだろーけど。
これ以上続けたら俺の肩の方が凝っちまう。
俺は肩を揉む手を止めて、そのまま手をするりと前へ滑らした。
腕を兄貴の胸の前で交差させ、後ろからすり寄ってみる。
「兄貴〜」
「甘えたってムダだぞ、豪。しっかり、時間いっぱいやってもらうからな」
「うえー。もー、手が死ぬって。少し休憩ー」
「ったく、しょーがないな」
兄貴の肩口に顔を埋めると兄貴の香りが鼻孔をくすぐる。
「重い」と言いながら俺の頭をどかそうとするので
そのまま前へ倒れ込むようにずるずると頭をすべらせると膝枕の形になった。
「へへっ」
居心地の良さに思わず顔を綻ばすと上から呆れた声が降ってきた。
「こんなのが嬉しいなんて、いつまでも子供だなー」なんて。
よく言うよ。
わかってないはずがないのに。
この頭のイイ兄貴が。
膝に頭を乗せたまま、目の前にある細い腰に腕をまわしてみた。
そのまましがみつけば「どーした?」と頭にポンと手を置かれる。
子供じゃないよ、俺。
でも、兄貴がそーしたいなら・・・。
「・・・・・・細い」
「あ?」
「兄貴の腰、ほっせー。なんだよ、この細さ。もやしくんじゃん」
「もやしってゆーな!」
「頭良くっても、もやしじゃなー」
「・・・・・・豪。覚悟はできてるか」
「げ」
俺はもやし好きだぞっ。ラーメンにいっぱい入ってると嬉しいし、炒めてもうまくって・・・・
という我ながら無理のあるフォローは無視され、鉄拳をくらった。
兄貴は、でやっ!と俺を床に放り投げ立ち上がる。
床に転がりながら仰向けになると兄貴が俺の顔をのぞき込んできた。
「大体、俺の体育の成績、お前とかわんないぞ」
蛍光灯で逆光になってその表情はよく見えないが、口調からふくれっ面が簡単に想像できる。
ムキになるあたり、そーとー気にしてる証拠だな、細いこと。
そーゆーむくれた態度は弟にしか見せてくれない。
だから余計に。
この立場を投げ出せない。
兄貴が弟としての俺を否定したことは今まで一度だってなかった。
もちろん、間違いがあれば容赦なく正す。
けれど、度の過ぎたスキンシップも、大抵のワガママも、
弟としてのソレは結局、最後にはちゃんと受け入れてくれる。
それならば"弟"ってゆー特権をフルに使って。
君の隣に居続けたい。
「ふぅっ」
大袈裟なため息。
俺がいつまでも笑ってるので分が悪いと思ったのだろう。
「・・・先、風呂入ってくる。続きは風呂出たらちゃんとやらせるからな」
指さし確認なんてしなくてもわかってるって。
「もやし発言のお詫びに背中でもながしてやろーか?」
「結構デス」
バタン!
思いきりよく閉められたドアを床に転がったまま、しばらく見つめてた。
この気持ちは、恋じゃない。
ドアから視線を外すとゴロンと天井を仰いで目を閉じる。
兄貴のヤツ、思いっきり殴りやがって・・・痛くて涙が出てくんぜ。
「痛ぇよ・・・」
こんなにも、近くて遠い・・・・・・君との距離。
史上最低に情けない豪さん(16歳)←希望。
コンセプトはカッコイイ豪!で書き始めたのにこのテイタラク。
このままではアメリカ勢やドイツ勢に継いで豪ファンを敵に回す日も近いか?(合掌)
できたらちゃんと続きを書いてラブラブにしてあげたいようっっ(親心)
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