今回はちょっぴりお子様中学生。
某曲のパクリのつもりは全くない・・・多分。



「I&I」




1週間かー。
長いよな。
兄貴、風邪ひいて寝込んだりとかしないかな?
外、出歩けないくらいの高熱とか。
「豪っ、何ボケーッとしてんのよ?」
「んあ?」
「アンタ、掃除当番でしょ?ボケッと座ってないでチャキチャキ動きなさいよっ!」
あれ?いつのまにHR終わったんだ?
オレはジュンに声をかけられて、やっと今が放課後だと気づいた。
掃除なんてかったりーし、誰かに押しつけてサボってやりたいとこだけど・・・。
家帰ってもつまらないことをグダグダ考えてしまうだけだし、
今日は兄貴は先に帰っちまってるし、
オレはジュンに渡されたホウキを素直に受け取った。
ジュンは満足したらしく、他の女子のもとへと戻っていく。
いつもなら無理矢理にでも兄貴と一緒に帰るんだけど
今日は特別授業でお昼には帰ってしまっている。
特別授業・・・明日からの修学旅行の事前オリエンテーションってやつ。
だーーー、もう、なんでそんな行事があるんだよっっ!
旅行行くなら、全学年一緒にしてくれりゃいいのによぉ。
と、ホウキを受け取ったものの、掃除らしい掃除もせずうだうだしているオレに
女子の冷たい目線がつきささる。
ギャーギャー言われるのがめんどくさくて、オレはやっと体を動かし始めた。




ふふん、オレがちょっと本気を出せば掃除くらい、ちょろいぜ!
やっぱ天才は何やらせても違うな。
と、せっかくオレが掃除に燃えていると、今度は女子のほうの動きが止まった。
くそぅ、人のこと威嚇しておきながらどーゆー了見だ!
一喝してやろうと近づいてみると、一人の子を囲んできゃぁきゃぁ騒いでる。
よく見てみると、囲まれてる子の指には小さな石の指輪がはめてあった。
これで騒いでるのか・・・。
こーゆーのに熱中する気持ちはオレにはわかんねぇ。
前にジュンにそう言ったら、すんごい勢いで反論されたことがあったな。
オレはそれを思い出して声をかけるのをやめた。

「あ、でも中指には指輪しない方がいいんだって、人差し指に変えた方がいいよ」
「えー、なんでー?」
「なんか、指輪って魔力あるっていうじゃない?中指に指輪してると自分に入ってくるはずの
 "イイコト"が逃げちゃうんだって」
「なんで中指なの?」
「あ、あたし、それぞれの指にそういう力があるって聞いたことあるっ」

「女って、こういう話スキだよなー。」
「オレらにはわかんねーな」
ホウキを持ったクラスメイトが話しかけてきて
もはやこの教室で掃除をしてる奴はいない。

「だから結婚指輪って薬指にするんだって」
「薬指に指輪するとどうなるの?」
「男女の縁が薄くなるらしいよ。結婚したら、他の男を寄せ付けないように
 指輪で封印するのよ。その相手のために」
「きゃーっ」

「ホントに信じてるのか?そんなの。」
バカが余計な一言を言ったおかげで帰るのがまた少し伸びてしまった。
ま、今日はその方がありがたいけど・・な。


   ×××  ×××  ×××  


「ただいまー」
台所にいる母ちゃんに声をかけて2階へあがる。
ホントは1番に兄貴の部屋に行って顔を見たかったけど・・・
兄貴の部屋にあるでっかい旅行バックを見ると何かムカツクから
オレは珍しく自分の部屋へ直行した。
鞄を投げてベッドに転がる。
イライラする。
一生の別れじゃあるまいし、兄貴に大人げないと思われたくない。
でも。
楽しそうに旅行の準備をする烈兄貴。
兄貴も、少しくらい・・・オレと離れるの淋しいと思ってくれてる?
それとも・・・・・・。


「・・・う・・ごう」
ん〜・・兄貴の声・・?
「・・おい・・ごー・・」
自分の名前を呼んでくれる兄貴の声は心地よい。
「あにきぃ・・」
やっぱり、一時だって離していたくない。
オレが兄貴にぎゅうっと抱きつくと・・・
「いつまで寝ぼけてんだ、バカ豪っ!」
という心地よい・・・とは言えない怒鳴り声と拳が降りてきた。
「〜〜〜ってぇ・・・。何すんだよ、烈兄貴!」
あまりの痛さに涙を浮かべながら抗議の声をあげると
「お前がいつまでたっても起きないからいけないんだろ!」
顔を赤くした兄貴に怒鳴られた。
顔真っ赤にするほど怒んなくてもいーだろ。ちぇ。
「・・母さんが、夕飯の用意出来たから降りてこいってさ」
オレあのまま眠りこけてたのか・・・?
「あー、もうっ、制服のまま横になると皺になるからやめろっていつも言ってるだろ?
 ・・ったく・・・学ラン早く脱いでこっちかせよ」
兄貴はハンガーを手にしてまだ少しぼーっとしてオレに手を出す。
「兄貴・・・明日何時頃・・行くの?」
「は?」
「だから、明日!何時頃、家出るんだよ!」
「7時・・ちょっと前くらいかな。・・・って、そんなの後でいいだろ。
 下で母さん待ってるんだから、早く着替えろよ」
ベッドから立ち上がる様子のないオレにちょっとイライラしてるみたいだ。
「帰りは?」
「はぁ?一週間後だろ」
「違う!時間だよ、時間!何時頃・・・帰ってくるんだ?」
「ふーん・・・?」
兄貴はハンガーを手にしたまま、腕を組んで含み笑いをしてる。
オレが「なんだよっ!」と言うと
「お前、ボクが修学旅行行っちゃうから淋しいんだ?」
と言って顔を近づけてきた。
図星を指されて何も言えないでいると
「まったく、いつまで経ってもコドモだなー」
ときゃらきゃら笑ってる。
そんな兄貴を見てたら無性に腹が立ってきた。
「兄貴はっ、淋しくないのかよっ!」
「別に?1週間でもうるさい弟の心配をしなくてすむなんて嬉しいくらいだな」
・・・そーゆー風に言われるんじゃないかと思ってたけど・・
思ってたけど、実際そう言われると−−−−キツイなー。
「何、落ち込んでんだよ。お前らしくないな」
落ち込むだろ、普通!
「ちょっと遠くに行くだけだろ。
 別に『お前との距離』が広がるわけでもあるまいし、そんなに考え込むなよ」
そう言ってオレにハンガーを渡すと「ご飯、冷めちゃうじゃないか。先、下行くからな」と
部屋を出ていってしまった。
・・・あれ?
今、兄貴、すっげぇ嬉しいこと言わなかったか?
兄貴の言葉を頭の中で繰り返してみて・・・
「〜〜おっしゃっ!」
オレは勢いをつけて立ち上がるとすぐに着替えて下へ降りた。
オレの豹変ぶりに驚いてる兄貴を横目にオレは上機嫌で夕飯をたいらげたのだった。


   ×××  ×××  ×××  


ジリリリリリ・・・・・・
パシッ
「・・・う〜・・ねみぃ・・」
目覚まし時計でちゃんと目が覚めたのなんて生まれて初めてかもしれない。
オレはゆっくり起きあがって一つ、あくびをした。
顔を洗って、兄貴の部屋に行ってみると、もうすっかり行く準備が出来てるようだった。
「豪?・・お前にしては随分早起きだな。わざわざ見送るために起きてきたのか?」
・・・別に、甘い言葉を期待してたわけじゃねーけど・・。
「まーな。優しい弟だろ。感動したか?」
「普段起きるのが遅すぎなんだよ。いつもこんくらいに起きたらどーだ?」
「うるせーなっ、いつ起きてもいいだろっ」
「遅刻しなきゃな」
うっ。
「あはは・・ウソウソ、サンキュ。じゃ、そろそろ行くから」
荷物を手にしようとした兄貴の前に立つ。
「な、兄貴っ。ちょっと手、かして」
兄貴は「なんだよ?」と言いながらも、とりあえずこちらに手を差す。
オレは兄貴の両手首を掴んで左右の薬指の付け根に口付けた。
「ぎゃーっ!何すんだよっっ?!」
顔を真っ赤にして振り上げられた拳をオレは難なくかわす。
「ちょっとした、おまじない♪」
さすがに学校行事に指輪はさせられないからなー。
「この荷物、下まで持ってってやるよ」
旅行バッグを担いで兄貴の部屋を出ると中から
「〜〜豪っ!!」
という声が聞こえてきた。


オレのいないところで、兄貴が知らない奴と喋ってたり
笑ってたりするのかと思うと、やっぱりなんかむかつくけど。
オレは(多分)兄貴の心の一番近いところにいるから。
もう、コレくらいの距離関係ないぜ!




おわり


ちょっとずつの低年齢化をはかって、今回は中学生。 一応、ラブラブ未満な感じ・・・かなぁ。(そーか?) 烈視点のもちょっぴり書いてみたら、もー、暗い暗い! 速攻ゴミ箱に捨てました(^^;)。 ちなみに「I&I」は相手のことも自分と同じように感じられるほど 親密な間柄、みたいなニュアンスです。 だから「You&I」じゃないわけです。 ちなみに久保田●伸の曲とは全く関係ありません(笑)。 NOVELのTOPへ戻る HOMEへ戻る