last resort −Side;Miki




可愛い後輩のジュンちゃんと一緒に屋上ランチ。

珍しく自分で作ったお弁当のオカズは、ほとんどが冷凍モノ。
私は猛特訓の末、唯一の得意料理になった甘い卵焼きを頬張りながら
明日はお母さんに作ってもらおう、と心に決めた。


「前に先輩が烈の部屋にいたことあったじゃないですか。
 やっぱ、アレがきっかけだと思います」

女の友情ランチ、本日の議題はなんでこんなにイイオンナ2人が揃って
フラレなきゃいけないのか。について。


「烈の部屋っていうか。
 あの家って豪にとっては大切な場所ですから」

まぁ、そうよね。
生まれた時からずっと一緒に育ってきた家ですものね。

でも、私の一番欲しいモノを持ってるくせに
そんな事にまで嫉妬するなんて、ちょっと度量が狭いんじゃないの?

「先輩、知りませんでした?
 豪って、すっごい欲張りなんですよ。
 コレを手に入れる為ならコレは捨てるって考えなんてなくて
 欲しいモノは全部自分のものにしないと気が済まないんです。
 限度ってゆーのを知らないんですよねー」

バカだから。
と付け足しながら笑うジュンちゃんは、
振り切れたわけでもなく、開き直ったわけでもないだろうに
少し嬉しそうに見えた。
ふぅん。
そんなバカなトコに惚れたんだ?

「なんてゆーか、バカすぎて放っておけないんですよ」

自分に惚れた女にこうまで言わすとは、侮れないバカと見たわ、星馬豪。











まぁ、私だって。
最初からわかってはいたのよ。
烈が自分に振り向くわけない、なんてことは。

自分の好きな人の気持ちがどこにあるかなんて、
女の子にとっては数学の公式なんかよりずっと簡単。
その矛先が、自分から離れてれば離れてるほど。

でも、アタシってば、可愛い女の子の上、顔よし、頭よし、
料理はちょっと苦手だけどそれを補う程度にスタイルよし、
なんだから相手がバカじゃないかぎり、あんな大男に負けるはずがないのよ。


だいたい星馬弟も弟よね。
ジュンちゃんみたいな健気で可愛い女の子がそばにいて、何が不満だったってのかしら。

確かに烈は可愛いわ。
顔もキレイだけど、その性格が。
バカみたいに面倒見がいいとこも。
そんなそぶり見せないくせに意外に熱血くんなトコも。
アタシがもし女に生まれてなくても烈に惚れたと思うもの。


だから、わかってはいるけれど。
弟くんもジュンちゃんが嫌なわけじゃないってことは。
寧ろ彼女に不満があるなんて言ったらぶっ飛ばすし。




議題が「こんないい女をふった男達の見る目のなさ」に変わった頃。
給水タンクの横にあるドアが騒々しく音を立てながら開き、
今まさにその見る目のなさをあらゆる点から検証されていた2人が
ギャーギャー言い合いながら屋上に足を踏み入れてきた。


大げさな身振り手振りをつけながら、烈に一生懸命話かけてる弟くん。
一方の烈は。
弟くんにむけてる顔には「うんざり」って書いてあるのに
目はとろけそうに甘いことに気付いている?


あーあーもー、ムカつくわ。
アタシ達の前でイチャつくなんて、イイ度胸。





















「2人もココでお昼?」
「あぁ」
「今日、天気よくて気持ちいいしね」

コッチに気づいた2人が寄ってきて、幼なじみの和やかな会話。
だけど、アタシだって伊達に烈の女友達をキープしてたわけじゃないのよ。
烈の顔をのぞき込みながら、にっこり笑顔付きで3人の会話にカットイン。


「ふたりはすっかりラブラブねーv」


瞬間かぁっと音がするくらいの勢いで顔に血をのぼらせた烈は
「そんなんじゃない」
っていうけれど。

「照れることないわ。屋上で一緒にお弁当はラブラブカップルの定番じゃない」

半歩後ずさる烈に弟くんから無自覚の追い打ち。

「まーなっ、俺らラブラブだしなっ!!」

「           っ・・・・・・俺、教室で食べるから!」

バタバタバタ・・・バタン。


烈・・・・・照れた顔もイカスわよ。
さすが、アタシが惚れた男ね。

「兄貴ー!!!!」

弟くん、諦めなさい。
あの状態の烈をこの昼休み中にここまで連れてくるなんて不可能なことくらい
アナタなら当然わかっているでしょう?
いつまでもメソメソしてんじゃないわよ。
両手に華よ?
泣くなら嬉し涙にしときなさい。

ミキちゃんが余計なこと言うから・・・なんて、自分のコトは棚にあげて
ぶちぶちと文句たれてる男に貸す耳なんて無いっての。



これに懲りたら、アタシの前でイチャつこうなんて考えないことね。








でも、これくらいのこと。
可愛い報復でしょう?ねぇ、ジュンちゃん。















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本編があまりにも予定調和すぎたので、 2人がめでたくくっついた後のお話をちろっと書いてみました。 かえって蛇足になってるかもしれませんが(^^;)。 一応ジュンちゃんとミキの2人は ちゃんと星馬兄弟からご報告をうけてるようです。 面の皮厚いな、レッツゴー兄弟(笑)。 最終的に幸せになったようですが、 それまでの紆余曲折は皆様の想像におまかせとゆーことで。 ここまでお付き合いくださった方、ありがとうございましたー!(逃走) 実は自分で「オリチャラは出張らせない」とゆー不文律があったのに 結局すげーキーポイントになってしまったので 番外編は彼女の視点にしてみました。