「SCANDALOUS BLUE」





『遥か昔、この風輪町の片隅にある風守神社で・・・』


“二度と会わない”をくりかえせば 裏切る吐息が絵になる
暴かれた恋に身を震わす 秘密が蒼い傷をつけて


「もう、来るな。豪」
キッパリと言い渡した烈の胸元にのぞくのは、血を分けた弟がつけた所有のしるし。
そのほのかな赤は、桜の花びらにも似て。
「本当に嫌なら追い返せばいいだろ?」
その言に責める響きはあらねど。
海のとも空のともつかぬ青い色の瞳が、烈のわずかな心の揺れを見破ってしまう。
必死に隠している本当の願いを、いとも簡単に。
「もう、来るな」
それだけを言い渡し、くるりと背を向けようとするつれない想い人。
そのなんたる愛しさよ。
豪は自分の想いを彼の人に告げるべく、その手を伸ばす。
「来るさ」
そのまなざしは烈をとらえて逃がさない。一生かけて貫き通すと誓ったその想いの如く
・・・決して揺らがない。
「会いたかったらここに来る」
「俺は、会わない」
拒絶の言葉に、豪は強引にその体を引き寄せると、唇を重ねた。


Fallin’ Night じれるほど聞き分けのない唇 
Fallin’ Down 罪を抱いて堕ちてゆく


「はなせ・・・っ、豪!」
激しい拒絶に、力をゆるめてもその肩を抱く手は離さない。
「この手をどけろって言ってんだ」
烈の瞳が輝きを増す。ほのかな赤から、烈しく燃えあがるような真紅へと。
わかってるけど。
高校に入ってから格段に背が伸びた弟の腕は自分より長いことも。そして自分より力が強いことも。
だけど抗わずにはいられない。
なぜならこれは禁忌の恋。かなってはいけない願い。
「ったく・・・こういう兄貴見てると、ばーちゃんの昔話思い出すぜ」
『それは白い衣と緋色の袴を纏ったまだ少女のような巫女』
「風守神社の巫女の話か?」
『彼女は、純潔をまもるべき聖なる存在でありながら、里の男にからだをひらいた』
「言っとくけどな、お前があの巫女に俺を重ねてるんなら無駄だぞ。
俺がお前にほいほい抱かれるわけな・・・」
「違う!!」
まるで空気を切り裂くように発せられた言葉。
激情のままにぐっと寄せられた真剣な顔は、烈の記憶のどこを探ってもなくて。
「そうじゃねえよ・・・俺が言いたいのはその後だ」
『・・・純潔を守り通せなかった巫女はそのちからを失い』
「何だよ」
『里人は禁を破って巫女と契った男を元との戦の場に追いたてた』
「俺、ホントは怖いんだ」
『それを知った少女はその命を神に捧げ、大風をおこし戦をとめた』
「烈兄貴がどっか遠くへ行っちゃう気がして」


愛だからいけない 行き止まるAffection
それでもいい はぐれても もう君なしであるけない


「何でかな、この頃よく思いだすんだ。小さい頃はふーんとしか思わなかったのにさ」
肩に置かれた手がかすかに震えている。
笑顔とは裏腹に、豪の口からは苦し気な声がもれた。
「俺は、烈兄貴が好きだ。今だって抱きたいと思ってる・・・だけど」
それでいい。どこからか満足気な声がする。それは自分の内なる声。
「あきらめろ、豪。どんなに想ってもかなえられないことってのが世の中にはあるんだ」
これは禁忌の恋。成就してはならぬ想いなのだから。
「だから、この手を、離し・・・」
なのにどうして、求めてしまうのか。
その瞳を。その唇を。その胸を。
・・・その愛しき存在を。


Fallin’ Night  こらえても 燃え尽きたい気持ちが
Fallin’ Down 拒む腕を叛かせる


つっぱっていた腕の力が抜けていく。
いきなり支えを失った豪は勢いあまって烈にもたれかかった。
「れ・・・烈兄貴?」
その表情は、前髪に隠されて見えない。
「・・・手に」
「え?」
口をついて出たのはぶっきらぼうな呟き。
それは烈の、自分が素直になりたい時の、小さい頃からのクセ。
「・・・勝手にしろ。その代わり、俺はお前に何かあっても絶対助けてなんかやらないけどな」
まっすぐに見つめてくるその蒼い瞳に魅せられたから。
たとえ、古の巫女のように、想いを遂げた後に死が待つとしても。
それでもいい・・・きっと後悔なんてしない。
豪はふわりと微笑むと、そっとその耳元にささやいた。
「いいの?烈兄貴、それって、最高の告白だぜ?」
「お前『ばかな子ほど可愛い』って言葉知ってるか?」
ひとりがひとりの手を取り。ひとりがひとりの体を引き寄せる。
ふたりの影が静かに重なる。
どちらかともなく紡がれた、誓いの言葉は。
「・・・愛してるよ」


追いかけて探して 瞬間の Halation
あやまちで終われない 夜を重ねる ‘Cause It’s Scandalous’



−END−
あいこの無理なリクエストに応えてスキャンダラスゴーレツをくださいました☆ ゴーレツといえばダブーな恋ですよねー。 反故してるようで実はなかなか積極的な烈がたまりません(笑)。 切ない恋をしてる星馬兄弟をありがとう、かざるさん! <by あいこ>    ★NOVELのTOPへ戻るHOMEへ戻る