フィンランド旅行記/リベンジ編(3/5)

4.サーリセルカ4日目

 小雪。
朝からトナカイぞり体験をした。
これもレヴィで体験済みである。以前はぜんぜん走らないトナカイだったが、今回はわりと快適だった。

 最初は手綱を前のそりに繋いで、何台かのそりが列なって走る。走るといっても、せいぜい速歩きといったところだが。
そりは一頭立て一人乗りである。相棒は前のそりに乗っていた。
途中で手綱を各人に持たせ、自分達で操縦できるようになった。
といっても、トナカイが勝手に走ってくれるので、ほとんど持っているだけである。

トナカイぞり

トナカイぞり



 最後尾のそりが遅れているらしく、所々で一時停止した。
すると、トナカイは道端の雪をモグモグ。雪を食べ、また雪の下のこけを探しているらしい。
走りながらも、やけに道の端に寄って走るなぁと思ったら、そういうことだったのか。
そのうち、段々道草が増え、しまいには止まってモグモグし始めてしまった。
で、手綱を揺すると首の鈴が

「カラーン」

 トナカイは渋々歩き出した。
後で気付いたのだが、鈴が付いているのは私の乗ったそりのトナカイだけであった。
もしかして、このために付けたのかな?


白トナってカワイイ

モグモグ



 ところで、最後尾のトナカイが曲者で、遅れるわ、森の中に入るわで大変だったらしい。
まあ、いろんなところ回れて楽しそうだけど。(戻って来れたから言える(^^;)

ハイ、ポーズ!

トナカイと戯れる



 そりの後、コタでベリージュースとお菓子を戴き、トナカイに餌をやったりした。

 午後は予定がなかったので、街を散策した。



 夜、一面曇っていた空が晴れ上がり、星が出た。
8時のオーロラ(このところ、この時間によく出る)に備えて早めにコタへ行き、暖炉に火を点ける。

定刻通り白い筋が出始める。一本の細い直線が伸び、ところどころにドレープが出来る。
動いてはいるがこれまでになく穏やかなオーロラである。カーテンが微風に揺られているという表現がぴったりだろう。
それが15分ほどの長い間続いた。

「こんなんじゃなぁ。」

 静かで地味目なオーロラに、相棒は納得できないようだ。
人間って面白いもので、ひとつの願いが叶うと次はもっとって、どこまでも貪欲になってくる。(笑)
レヴィにいた時にこれだけ見れれば、大感激しただろうにねぇ。

 まもなく日本人のカップル2組がやって来た。
一方のカップルは結構気合を入れて、写真を撮りに来ている。
もう片方は見られればいいやといった程度で、それほど執着心はないようだ。

二度目のオーロラもまた、穏やかなオーロラだった。
でも今度は、一直線状から北へと曲がって行った。
ドレープがやや大きく、ゆら〜りゆら〜りと揺れていたが、それ以外は静かで地味なオーロラである。

 でも、それもこれから起こる一大イベントの前置きでしかなかったのだ。

 山の中腹で見ていると、やがてフィンランド人の子供達が5、6人やって来た。
現地の子か地方から来た子かは分からない。
彼らは我々よりもさらに上に上って行った。

 まもなく、歓声とともに猛スピードのそりが突進してきた。おいおい。(^^;

 山の下まで降りると、すぐに上って来た。
危ないなぁ。
端っこに避けて待つことにした。

 また突進。
我々はちょうどカーブのところにいたので、コントロールの効かなくなったそりが大きく蛇行して突っ込んでくる。
どちらの側にも突っ込んでくるので、避けようもない。
カップルの持っていた三脚付きカメラが危険に曝されている。

 仕方なく山を降りることにした。
すれ違った時に、「アイ、ソーリー!」と一人の子が言った。
まあ、子供だから憎めないなぁ。
それにしても、なんだってこんな夜中にそり遊びしてるんだ?(^^;

 そり遊びもなかなか馬鹿に出来ないなぁ。あのスピードでこの斜面を滑り降りるのって、かなり恐いぞ。
腹ばいになって頭の方から滑ってる子もいるし。
下の方で、別の子に説教してる子もいた。転び方を教えているようだ。
ある意味、スキーよりも危険かもしれないなぁ、コントロール効かないもんなぁ。
しかし、元気だなぁ。

 その後、他の日本人客はホテルへ帰って行った。
コタは相棒と私の二人だけ。寂しいなぁ。昨日の二人がいればなぁ。

11時頃に、今回の旅行で見た最大級のオーロラが出た。
白く濃い筋があっという間に頭上に伸び、空を分割した。一層強く太い光の帯である。
ゆらゆらドレープみたいに揺れている。
ちょうど真下にいて、カーテンの断面を見ているような感じだった。それも、とてつもなく分厚いカーテン。

「でかいぞぉ!」「近いぞぉ!」

光が動く度に、赤い光か混じっているようにも見えた。
本当に凄かったのはここからである。

カーテンが揺らめき側面が少しだけ斜めに見えた。
と思ったら、それかどんどん両側に広がって、というかどんどん空の低いところまで降りてきた。
両方の空が、白いカーテンで埋め尽くされてしまった。
まるで、レース(オーガンジー)のカーテンの間に入りこんでしまったようだ。

「うわぁ!カーテンだらけだぁ!!」

空中一面カーテン。空全体がうっすら白んでいるが、全てオーロラなのだ。
北と南の空の低いところにドレープの端っこが揺れている。

巨大なカーテンは、しばらくの間静かに揺らめいていた。

 この後、ホテルに戻った。
シャワーを浴びて寝ようとした頃には2時をまわっていた。
窓から空を見ると、白い筋が出ていた。
空といっても、木が生えているのでそこからはほんの少ししか見えない。
「ここからこれだけ光って見えるなら、相当大きいな。」
そう思ったのだが、睡魔には勝てず、つい寝てしまった。
 後で聞いた話によると、この時にもすごく大きいのが出たらしい。
やっぱ見とけば良かったかなぁ。ちょっとだけ後悔。