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「日々の責苦」              リヒャルト・エルツェ/1934
「リヒャルト・エルツェはヒットラーが首相になった1933年の春3月31日
独仏国境封鎖の日の最終列車でパリに逃れ、屋根裏にこもって描いた」

大戦前夜の不安を描いたこの作品は以前より画集で知っていたが、
名古屋市美術館で、出合った。絵の前から離れられなかった・・・

幻想画との出会いはごく稀である。
何度見ても捕らえられないジレンマを味わいながら、立ち去れない思い・・・

いつかはまた、この絵に会いにいきたいと思う。



「作品についての覚え書き」 

         ※私個人の覚え書きなので内容についてはご容赦ください

130×98の結構大きめのキャンバスに油絵描き。下地は丹念に塗りこめられた、
マット状態。薄いイエローオーカーか?

全体的には色の混在は少なく、押さえぎみだが、執拗な線の描きだしで形が
浮き出ている。絵の隅から隅まで描いてある。
特にBC黒い線とライドレッドのグラッシで気持悪いぐらい生命感のある模様が
描きだしてある。

下絵を完成させた後、部分から細い筆の線画で形を描き出しているよう。線の
書き出しが終わった後、上からパーツごとに薄い色でグラッシして深みを出してい
る。グラッシの上から黒い線と白い線で再度書き進めている。光の方向性、物の
形出しは巧いが全体にマッスは少なく、細部の気味悪い形つくりに神経が使わ
れている印象。線は黒だけでなく、ライトレッドであったり、白い線であったりして
いる。形出しは線だけでなく、グラッシでも行われているので細部では目で追いき
れない・・・

@空は線では無く柔らかなタッチ
A花のような形が下地の上に単色のライトレッドであっさり形どってあった。
B細い黒い線で形を浮き出すように描いてある。模様が瘤のような不気味な形
  を浮き出させていた。下部分は手の形か?上から薄いライドレッドで濃淡をつ
  けていた。
D薄い青緑地の上に黒い線で影と石のような形が描いてあった。
Eぼんやりした表情の老人のような顔。イエローオーカーの線でぼんやりとした表情
  を描いていた。形の強さは無い。影のような・・・
F中景の枝のようなもの、明るい白色で中景に浮かび上がるような印象。
G女性の髪?、リボンのような形もあった。髪のラインが淡白。綺麗だが怖さは
  無い。
H後ろを振り向く猫の姿。Eと同じようにライドレッドの淡い線描き。表情は
  ぼんやりしている。影のような印象。形を求めるのでは無く、心の中にある
  印象を表している。毛並みは白い線で描きだしている。
I猫の頭からお尻まで線の流れがある。執拗な線の流れ。


          















              
@
E
A
B
C
D
F
G
H
I
J
C黒い細い線で何度も、何度も描き出していた。髪の毛のような深みのある
  黒い濃淡。今にも動きそうな、絵の中で一番不気味な闇のイメージ。
J光の当たる部分はかなり厚めのホワイトでインパストされている。ひびが入っている
  部分もあり形が何を意味しているかわ不明だが、強烈な形が浮かび上がる。