「沼」 混合技法 30×37p 2001
深い森の中にある沼 黒い水面 油のように重く 水際に生息するシダ 苔の類
その葉の上の所 虹色に輝く花弁を持つ花が咲く 沼の養分を吸って
女の唇のように厚ぼったく 水面に映るその幻想的な美しさ
多くの昆虫がその花の蜜に誘われ 沼の中に消える
液化する昆虫の肉 残った殻は白色化し底に沈む
何万という小さな円錐形の形が堆積する 水面からは伺いしれない
黒い沼の水は 時折 透明度が100%になる 沼の水の養分が飽和点に達した時
一瞬に黒い色は透明化する そして底に見えてくる白い昆虫の残骸の群れ
あまりの多さに声も出ない 沼の水質も変化する 水飴のように濃密になり指に絡みつく蜜化
魚の類は生息せず 唯一いるのは海老の類 その体は透明 時折 ゆっくり体を動かす時
水の屈折率が変わるので判別できる 3cmほどの小さなやつ 昆虫の殻の中に生息する
沼の水が人間の肌に良いというわさが広まる 若い女達がこの沼を探しあてる
服を脱ぎ 腰まで沼の水につかる おそる おそる 黒い水を肌にかける
肌の油分は黒い水をはじく 全身に出来る黒い水玉 ゆっくり ゆっくり 下へ垂れる
尾を引きながら しだいに肌の毛穴から吸収される水
赤く腫れる肌 しだいに肌の油と反応し 白色化する水の成分
蜜蝋のような鈍い光を放ち 輝き出す女の全身の肌 男を狂わせる匂いを放つ
女の黒目も少し赤味が増す