久しぶりに帰ってきた故郷のクリーフ村は、もうが知っているクリーフ村ではなかった。
 まずひとつとして、の家がなくなっていた。の両親が流行り病で死んで、もこの村を出ることになり、住む人がいなくなったから壊されたのだろう。しかし今はまっさらになった家の跡地を見るのは、にとっては耐えがたかった。
 ふたつめは、ゴウラの遺跡への出入りが、一部の人のみ自由になっていた。王都にいた時風の噂で、クリーフ村のゴウラが復活しそうになった等、いろいろあったとは聞いていたが、今まで近づくことすら禁じられていた場所がこうなってしまうと、ゴウラはそこまで怖いものではなかったのかと不思議に思えた。
 そしてみっつめ。兄弟みたいに育ったエッジとエア、オルカとタタンがものすごく大きくなっていた。が村から出る前は、タタンなんて軽々と抱き上げれるくらいだったのに、今はもう軽々とはいきそうにない。それに前はエアより背の高かったが、今や背丈を追い越されてしまっている。とはいっても2センチ程度のほんの些細な差だが。
 昔一緒にお風呂に入ったことがある(とはいってもエアも一緒だけれど)エッジなんかはもう、昔と比べて目線の高さが合わなくなっていた。会話するときに見上げなければならないほど、身長が高くなってしまっている。オルカはもともと見上げて話さなければならなかったため、身長については何も思うことはなかったが、体つきががっちりしていて、ますますベルグに似てきたとは思った。二人とも自分と同じように成長するのだとは小さい頃に思っていたから、今になってやっと二人と自分は別のものなのだと実感した。
 時の流れとは嬉しいようで怖いなあ、とは思う。









 ゴウラ復活の件は、エッジとエアの魔刃使いにより難を逃れた。ゴウラ復活のきっかけを作ったのはこの二人だとしても、結果、世界は平和になったわけで、一時期クリーフ村では勇者として扱われるほど、二人に対しての扱いは凄いものがあった。
 世界を危機に曝したリョウガとリンリの二人は当然というべきか村を出て行き、一時的にシルターンによく似た雰囲気を持つ温泉地獄にすむことになった。エアとエッジにとっては気軽に行ける場所なので、姉弟が村から出て行くときは特に落ち込む様子は見られず、むしろ二人を笑顔で見送った。
 そして風の封刃砦に住み着いていたガブリオとゼライドははぐれ召喚獣という理由で村へ入ることを禁じられていたが、エッジやエア、ラクルとクーミンの説得により村への出入りを許可された。最初ガブリオは「そこまでしてもらうほど良い事はしてない」とそれを拒んだが、結局はエッジとエアに言いくるめられ、今に至る。
――旅に出るっていうから、贈りたいものがあるんだ!
 そうエッジに言われ、久々に村の中に足を踏み入れたガブリオは、以前と比べて微かに村の雰囲気が違っていることに気付いた。のんびりとした村の空気が、刺激的になっていた。とはいっても悪い雰囲気ではなく、むしろ良い雰囲気だ。簡単に言えばそう、活気があった。
「何カ、オ祭リデモアルンデショウカ?」
 ゼライドもガブリオと同じように雰囲気を察したらしく、今までと違う村の様子を物珍しそうにきょろきょろ辺りを見回す。
「そうかもしれないね」
 ガブリオも辺りに目配せしながら、いつもよりゆっくりとした歩調で、でこぼこした道を歩く。その途中、広場への道がある分岐点に座っているおばあさんに声をかけられ、二人はこんにちはと律儀に挨拶した。今日も良い天気ねえもしかしてベルグさんのとこに用事なの?等と話しかけられ、二人は戸惑いがちにぎこちなく応答してから、逃げるようにその場を去った。
 ガブリオとゼライドがゴウラ復活の手伝いをしていたことを、村の人たちは知らない。だからなのか無邪気に話しかけてくる村の人たちに罪悪感をどうしても感じてしまっていた。
 事件から1ヶ月経った今でも、それは変わらない。たとえ親友のエッジやエアに「気軽に村に遊びにきてね」といわれても、今日みたいにに何か渡したり渡されたりと用事がなければ、ガブリオは村にあまり出入りしなかった。
「ガブリオ!」
 ベルグの家の前の階段を上っているときに、不意に上から声がかかった。柵から身を乗り出すようにして、にかっと太陽に負けないくらいまぶしい笑顔を浮かべている。エッジだった。ガブリオは柔らかく微笑んで、階段をのぼりきり、エッジと向かい合う。
「やっと来たね…正直来ないのかと思ったよ」
 あはは、と笑いながらエッジは軍手をはめた手で額の汗を拭った。エッジの足下近くに置かれた斧を見て、今まで薪割りをしていたんだろうとガブリオは奥のほうを見た。やっぱりというか、綺麗に割られた木が丁寧に積み上げられている。
「ごめん、ちょっとラクルとクーミンに手間取っちゃって」
 苦笑するガブリオにエッジはそっかあと呟いてから、斧を手に持ってまた笑った。
「まあ、立ち話もなんだし、入って」
 ガブリオとゼライドが素直にこくんと頷くと、エッジは家のほうに向かって歩きだす。ガブリオとゼライドはエッジの後姿を追いかけて、促されるまま久しぶりにこの家に立ち入った。
 内装はやっぱりというか、前と違って変わらなかったのだが、ふと不思議なものが目に入る。彼らが使っているだろう食卓のテーブルに、見知らぬ少女が腰掛けていたのだ。少女はテーブルの上に様々な分厚い本を置き、それを見ながら紙に羽ペンで何かを書いていた。その脇には、ふもとの森に生えている様々な植物がずらっと並んでいる。
 雰囲気のある子だと、ガブリオは思った。エアやエッジもそれなりに雰囲気があるが、彼女はそれ以上だとガブリオは思った。髪の色が茶色っぽい色をしているにも関わらず、光加減でオレンジやピンクにも見え、そんな髪色に肌の白色がやたら映えていた。多分エアより肌の色は白いだろう。部屋の空気をくんと鼻を使って吸い込むと、いつもと違って不思議な匂いがあった。それは例えるなら、花のような甘さの中にすーっとするようないろんな薬草の匂いと、森の中にいるような緑の匂いが混じっていて、ガブリオはなんとなく故郷を思い出した。
「ガブリオ、何ぼけーっとしてるんだよ」
「あ、ああ。うん」
 エッジに声をかけられるまま、ガブリオは少女を名残惜しそうに見ながら足を踏み出した瞬間、少女が跳ねるように顔を上げる。彼女はまるっこい瞳をぱちくりとさせてから。
――にこり。
 柔らかく、はにかむように微笑んだ。
「!」
 反射的にビクリと身体が震え、ほっぺたが熱くなった。電撃が走ったみたいに、尻尾がビクリといきり立つ。
「ガブリオー?」
「い、今行く!」
 いつの間にやらいなくなっていたゼライドとエッジを少し恨めしく思いながら、ガブリオは階段をぱたぱたと急ぎ足で下りていった。
 前はベルグの部屋だったらしいこの工房は、今はもうエアとエッジ二人の私物で溢れかえっている少しだけ散らかっている状態に苦笑して、エッジに促されて隅に配置されているベッドに腰掛けた。そして、ガブリオはそろそろと、居間にいたあの少女のことを聞いてみる。するとエッジは今気がつきましたと言わんばかりにぽんと手を叩く。
「ああ、ガブリオは知らないよな。っていうんだ」
 カーンカーン、と大きな音をたてて剣をハンマーで打つエアとアーノの二人を気にしてか、やや大きめな声でしれっと言うエッジに、ガブリオはまだ状況がわからなくて首をかしげた。するとエッジはややあってから、申し訳なさそうにあたふたとし始める。
「あ、えと。名前だけじゃわかんないよな。は昔この村に住んでたんだ。両親が亡くなってから、はもともと王都の学校に行く予定だったからそのまま村を出たんだけど、学校に提出する“れぽーと”だかを書くために昨日この村に戻ってきたんだ」
 へえ、とガブリオは呟く。王都からきたというのにガブリオは少し納得してしまう。彼女の着ていた服装がこの村の人たちのと比べるとやや華やかだったからだ。
 エアが「できた!」と嬉しそうに言ったが、ベッドに腰掛けている二人はそんなエアを気にとめず(というか本気で気付いていないようだ)話を続けている。
「なんでも卒業するのに必要らしいんだ」
「…なんだか、大変そうだね」
 素直な感想を述べると、エッジが苦笑して見せた。そしてごろんとベッドに横になって、ぼんやりと天上を見上げる。ガブリオにはそれがなんとなく寂しそうに見えた。
「もう朝早くからふもとの森に出かけるしさー、朝ご飯食べてからずーっとアレだよ?」
 はは、と笑ってから、エッジは盛大に溜息を吐いた。何か言葉をかけるべきなのだろうか、とガブリオはやや考え込んでから、ふいに、エアが不満そうな顔をしてすぐ傍に仁王立ちしているのに気がついた。その気迫に怯えたゼライドがガブリオの背中に回りこむ。そんなゼライドをガブリオはたしなめてから、エアに向けて苦笑した。エッジといえば慌てて上体を起こす。
「何よ二人して、ナイショ話?」
「卑猥です」
 ぷくっと頬を膨らませて言うエアの横でアーノが同じように頬を膨らませてそう言ったのに対して、どこでそんな言葉を覚えてきたんだとガブリオは突っ込みたかったが、エアからいきなり長いものを投げてよこされ、ガブリオは慌ててそれを受け取った。見れば茶色くて真新しい鞘に収められた一振りの大剣だった。
「旅に出るって言うから、エッジと一緒に作ったの」
「ほかの街は必ずしも安全とはいえないし、この村よりは治安が悪いと思うから」
 照れたように笑う両者を交互に見てから、鞘の感触を両手で確かめるように触って、ぎゅっとそれを抱きしめるように持ち、ガブリオははにかむように笑った。
「ありがとう。大事に使わせてもらうよ」
 言うと、二人はにへらと嬉しそうに笑った。それからエアが何かひらめいたように両手を叩く。
「どうせだからガブリオ、お茶してってよ」
「えっ!」
「あ、それいいかも」
「ご主人様、名案です!」
 驚くガブリオをよそに、3人は和気藹々と話を進めていく。
がお土産に買ってきたお菓子、たくさんあまってるのよ」
「美味しいからガブリオも一緒に食べよ」
 傍に座っていたエッジが嬉しそうに勢いをつけて立ち上がったため、ベッドのスプリングが小さく音をたてた。その揺れに身を任せていたガブリオはぐらぐら上下に揺れたまま、剣を肩にかけられた挙句両手をエアとエッジにそれぞれ掴まれた。そのまま引っ張られて有無を言わず立たされる。
「ま、まってよ二人とも。僕はもう帰るから…!」
「「え、何か言った?」」
 爽やかな笑顔に、ガブリオは言葉を詰まらせる。
「がぶりお、無闇ナ抵抗ハ無駄ダト思イマス」
 耳元でゼライトにそう囁かれ、ガブリオは二人に手を引かれながらがっくりと項垂れた。
 1階に上がると、やっぱりさっきのままの姿勢ではテーブルに向かっていた。葉っぱを片手に持ち、それをじーっと眺めてから、羽ペンで紙に何か書いていく。それの繰り返しを少し離れたところでディナがつまらなさそうに眺めていた。
 ディナはエッジの姿に気付くと、ぱたぱたと駆け寄ってくる。そして一言。
「ねえ、いい加減にあの子どうにかしてくれない?」
 不満そうに眉を寄せてから、ボソリと吐き捨てる。眉を限界まで寄せているディナにエッジは苦笑して、やっとガブリオの手を離した。それにつられてかエアもガブリオの手を離す。やっと解放されたと、ガブリオは内心胸をなでおろした。
「ずーっとあんなのやられてちゃあ、息がつまるんだけど」
 むすっと顔をしかめているディナに、エッジはごめんごめんと笑ってから、のほうを見る。
ー」
 忙しなく動いている羽ペンがぴたりと止まって、それから彼女はそろりと顔を上げた。きょとんとした彼女の頭上にハテナマークが浮かんでいる。彼女は数回目をしばたかせてから、小首を傾げて見せた。無垢な表情に、エッジがえと、と言い渋った。
「勉強ばっかりしてたら疲れるでしょ? お茶にしよ」
 エアがすかさずフォローした。エッジがエアに視線でありがとうと贈ると、エアはどういたしましてとにこりと笑ってみせる。といえば、ぽかんとした表情を浮かべてから、テーブルの上のものを見てから、しばし考え込む。
「…そう、だね。…うん、ありがとう」
 はにかむように、は笑った。





「で、はいつ卒業できそうなの?」
 エアの何気ないであろう一言に、は口をつけていたカップを離して、困ったように笑った。
「どうだろ…飛び級してるとはいえ、まだ取ってない単位があるから」
 単位という聞きなれない言葉にガブリオは首を傾げたが、その場にいる全員がわからなかったらしく、皆が皆同じような視線をに向けた。対するはやや戸惑いがちに苦笑して、紅茶を一口飲んでから白いプレートの上に綺麗に並べられたクッキーを一つ手に取り、それをかじる。
「単位っていうのはね、学校での勉強量をはかる基準なの。学校で時々定期試験があって、その試験に合格すると単位がもらえるの」
 ガブリオはそういう仕組みがあるんだと感嘆の声をもらしてから、彼女のまとまってわかりやすい説明に少しばかり感心した。とはいっても“単位”というものがどういうものかわからないけれど。そんな彼女と同い年だろうエッジとエアは未だにぽかんとした表情のまま、を見つめている。ガブリオはそれを見て、やや苦笑を浮かべた。
「たんいって、物?」
 エッジの一言に、はぱちくりと瞬きしてから小さく噴出して、口元を片手で押さえて必死に笑いを堪えていた。どうやら物ではなかったらしい。ガブリオはエッジと同じ事を質問しようとしていたため、質問しなくてよかったなあとほっと息を吐いた。
「単位は物じゃないよ。長さの単位は物じゃないでしょ?」
 ふふ、と笑うを見て、エッジはさっぱりわからないと肩をすくめて見せた。
「私も学校に通い始めた頃はわからなかったから、それが普通なんだと思う」
 言って、両手の細い指先でカップを包み込むように持ち、紅茶を一口飲む。落ち着いた物言いとは裏腹に、ちょっとした仕草が子供っぽくて、なんだか小動物じみてて可愛らしいと、ガブリオはそんな事を思った。
「で、取ってない単位って何なんですか?」
 クッキーの食べかすを口の端につけたアーノが身を乗り出すようにしていった。その後そばに座っていたエアがアーノを座らせ、口の端についていた食べかすを取ってあげていた。
「戦闘技術と召喚技術と、薬草学、かな。でも薬草学はこのレポートができたら単位は取れるはずだよ」
 え、とこの場にいた全員から声が上がった。あのディナでさえも、ぽかんとした表情を作っている。ガブリオもじーっとを見つめた。は召喚技術を学んでいるといっていたが、召喚師になるための勉強をしているのだろうか。そんな皆の考えを察したのか、はあはは、と照れたように笑いながら。
「でもね、戦闘技術と召喚技術は苦手で、頑張ってるんだけどどっちも4つしか単位しか取れてなくて…」
 情けないよね、と笑うに、エアはぶんぶんと首を振った。
「でも、4回も試験に合格してるんでしょ? 凄いじゃない!」
 ぱああと顔を輝かせて言うエアは、本当にに感心しているらしかった。はそんなエアに苦笑を浮かべて、小さく溜息を吐いて紅茶を飲む。
「そうでもないんだ。ほんとは今年度で5単位ずつ取らなきゃいけないの」
 今年度で5単位――つまりは今年中に5回試験に合格しなければならないらしい。けれどもは今まで4回しか試験に合格していないというわけで。ガブリオはちらりとに視線を向けると、はあははと小さく笑みをこぼした。
「…あと3ヶ月もないじゃない」
 エアが心配そうな視線をに向けると、対するは照れたように笑って頬をかきながら。
「なんというか、面目ないです」
 そう言った。しょんぼりと落ち込んでしまう彼女に、なんと声をかけたらいいのかわからないらしく、エッジとエアの両者は困ったように眉を下げている。そんな彼らの頼もしい護衛獣たちといえば、1人はいつの間にか席をはずしていて、もう1人は一心不乱にクッキーを食べている。ガブリオは宙に浮いたまま静止しているゼライドに視線を向けたが、ゼライドはこちらを見てから瞬きするだけだったので、ガブリオはなんでもないと軽く首を振った。
「あの、僕が首を突っ込むのもどうかと思ったんだけど、…戦闘技術の試験って何するの?」
 未だしょんぼりしているにガブリオは声をかけてみると、は跳ねるように顔を上げた。どうやらガブリオの発言に戸惑っているらしい。
「えと、先生や生徒同士で模擬戦闘をするんだけど…」
 やっぱりそういう試験なのかとガブリオは考えながら、そっか、と適当に相槌を打った。
「…もし僕でよければ、戦闘術に関して、手を貸してあげれるかもしれないけど」
 ガブリオ自身、召喚術はまったくといっていいほど知識がないからどうしようもないが、戦闘に関してはそれなりの知識もあるし、オルフルという部族自体が戦闘に長けているため、どのくらい彼女の役に立つかはわからないが、自分の知ってる範囲内で教えることはできるんじゃないかと思った。
 それに、そんな自分に勝ったエッジやエアもいるわけで、と一番親しいであろう彼らも加わってくれればなんとかなると思ったのだ。
「エッジやエアだって、協力してくれると思うよ」
 突然会話の中に名前が出てきたため、エッジとエアは驚いてガブリオの名前を呼ぼうとしたが、のことを考えるとどうしてもそれができなくて、仕方ないなあと小さく笑った。むしろのために何か役立てるならば進んでやりたいと思えたのだ。
 といえばきょとんと目を見開いて、ぱちくりと瞬きして、それっきりだ。
「わたしたちでよかったら協力するよ?」
「そうそう。遠慮はなしってことで」
「…二人もこう言ってるし、どうかな?」
 なるべくゆっくりした口調でガブリオが言うと、は俯きがちになってうーんと唸り始めた。
「エッジやエアはともかく、…ガブリオさんのご主人様が許可しないと思うんだけれど…」
「ああ、僕にはご主人様なんてのはいないから気にしなくていいよ。僕、はぐれだから」
 言い終わってからガブリオは、はぐれだと簡単にしれっと言ってのけるほど、自分はちょっと成長したのかなあと、そんなことを考えた。をじっと見つめると、は視線を斜め下に向けて考え込んでしまう。それから心配そうに3人を見る。
「みんな私にかまうより、他にやることとかないの?」
「別に。てか1日中やるわけじゃないでしょ?」
 苦笑交じりのエッジの言葉に、はそっか、と呟いて考え込む。しばらくしてから、はガブリオを真っ直ぐ見つめた。
「それじゃあ、よろしくおねがいします」
 ぺこりと頭を下げられる。ガブリオもつられて頭を下げた。と、ゼライドに肩を叩かれてガブリオは顔を上げる。
「がぶりお、仲間集メハイインデスカ?」
「それとこれは別だよ。それにエッジも言ってたでしょ? 1日中やるわけじゃないって。急いたって仕方ないよ、ゆっくりいこ?」
 急いだところで仲間が簡単に集まるとは思えないし、と付け足して言うガブリオのその言葉に納得したのか、ゼライドは頷いてからワカリマシタと律儀に言って、まるで何事もなかったようにその場に静止した。ガブリオはそんなゼライドに苦笑してから、さて、と呟いてを見る。
「そういえば、何の武器使ってるの?」
 はきょとんとした表情を見せてから、やや苦笑交じりに言い渋る様子を見せてから、
「弓、なんですけど…」
 そう言った。

2007/03/31