ぽよすけが年長になって、幼稚園の先生方に配った文書です
平成17年4月20日
○○幼稚園の先生方
ジャンプ原田
かぽりんこ
前略
平素は、息子が大変お世話になっており、ありがとうございます。
○○幼稚園に入園してからの二年間で、随分成長が見られ大変嬉しく思っております。
ご存知かと思いますが、一昨年9月に金原小児科の臨床心理士により「高機能自閉症」
と診断されました。「高機能」に分類されてはいますが、やはり知能の遅れはありますし、
自閉傾向は軽いものの、生涯にわたり支援が必要との事です。
社会の第一歩である幼稚園で二年間を過ごし、集団生活にも少しずつ慣れてきましたが、
臨機応変に行動するのは難しく、かなりのストレスを感じていると思います。
本人が少しでも楽に毎日を過ごせるよう、障害特性と支援の方向性について家族で勉強
しているところです。
教育のプロである先生方は障害に関しての知識も豊富だと思いますが、一人一人症状が
違うと言われる自閉症児ですので「ぽよすけの場合」について自閉的症状の特徴と、良いの
ではと思われる支援方法をまとめてみました。
先生方の教育方針と異なる部分もあるかも知れませんが、参考にして頂ければと思って
おります。
散々ご迷惑をおかけしている上に、こちらの要望ばかりで申し訳ありません。
今後とも息子をよろしくお願い申し上げます。
草々
障害特性とその対策について
@感覚の違い
自閉症者は、視覚・聴覚・触覚・味覚などの感覚が独特で、例えば耳は聞こえている
けれど、必要な音だけ聞き分けるフィルター機能が弱かったり、脳内での処理方法が
違うので耳が聞こえていないように見えることがある・・・と言われています。
ぽよすけの場合は聴覚と視覚の認知能力が弱いように思います。
・ 気になることがくっきり見えて、全体が見れない
・ 刺激が多いと集中出来ない、疲れる
・ 何かに夢中になっていると、話しかけられても気付かない
・ 混乱してしまった場合には特に視覚と聴覚が上手く働かなくなるらしい
例えば・・・
スーパーなどではぐれてしまい「お母さーん!」と泣き叫んで探すのですが、なかなか
私の姿を見付ける事が出来ません。ぽよすけが叫んでいる合間に、大声で名前を呼んでも
全く聞こえていませんし(ぽよすけより遠くにいる人がいっせいに振り向くほどの声量です)
こちらを向いたときに大きく手を振っても気付かず、私の1〜2m横を泣きながら走って
素通りしてしまいます。(レジに並んでいる時など動けないので困ってしまいます・・・)
●対策
混乱してしまい指示が受け入れられなくなっているような時は、教室の隅など刺激の
少ない場所でゆっくり話して頂くと良いのではないかと思います。
出来れば現物やイラストを見せながら一つずつ指示を出してもらえれば理解しやすい
と思います。
何かに集中してしまい、先生の話に意識が向かないような時も、状況が許すなら
集中している対象を隠すか遠ざけるなどすると良いと思います。
話しかけられていることに気付かないときは、正面から目を見て名前を呼んでから
話して下さい。
A言葉の理解
・ 概念の理解がかなり遅れています。「長い・短い」と言うべきところを「大きい・
小さい」と言ったり、「今日」と「明日」が入れ替わっていたり、「この前」と言うところで
「さっき」と言います。
・ 先生がみんなに向けて話しているとき、自分もみんなの中に含まれているという事が
分かりにくいようです。いつもやっていることは一度の指示で行動に移せるようですが、
慣れていない事は個別に言われないと分からないようです。
・ 簡単な指示は理解できますが、指示が重なると分からなくなるようです。
・ 「何」「どうして」「どれ」のような言葉は特に理解しにくいようです。このような
質問をするときはなかなか伝わらなくて困ります。
「今日の給食は何だった?」と質問すると「給食全部食べたよ」などと答えます。
●対策
・ 間違った言葉を使ったときは、言い直させると不安定になることがあるので
「そうだね〜○○だね」とこちらが正しい言葉に言い換えるだけにして下さい。
・ 指示が理解出来ていない時は、個別に一つずつ言ってください。
「て・に・を・は」を使わず、外国人に話すようにゆっくり短く話すのが伝わりやすい
ようです。
・ 「好きな色の折り紙を2枚取ったら、お道具箱からのりとハサミを取って席に着く」
というような指示の時は、一番良いのはイラストに番号を付ける方法ですが、毎回
そこまでするのは大変なので、「1番、折り紙2枚。2番、のりとハサミ。3番、イスに座る」
という具合に、言葉だけでも番号を言う事で理解しやすいようです。
・ 質問するときは、答えを三択くらいにすると分かりやすいようです。
「さっきどうして泣いてたの?痛かったの?怒ってたの?悲しかったの?」など。
B対人関係
・ 大人相手だと大人の方が合わせることが出来るので、それなりのコミュニケーション
が取れますが、子供同士だと言葉のコミュニケーションは殆ど取れません。
●対策
・ その場その場の話題についていくのは困難だと思いますが、「仲間に入れて」
「貸して」や、「ごめんね」と言われたら「いいよ」など、お決まりのセリフは言えるように
なったので、その場に応じた決まり文句が増えていくと良いと思っています。
先生が間に立ってでも会話の機会が増えると嬉しいです。
・ 昨年は子供だけでドッヂボールなどやっていたようですが、先生が介入せずに
どこまで自分でお友達と遊べるのでしょうか。そのような遊びのレパートリーが増えると
嬉しいです。簡単なルールなら理解できると思いますので色んな遊びを経験させて
やって下さい。
Cパニック
きつく叱られたときなどにパニックを起こすことがあります。今までは、怒られたことに
納得がいかないとき、妹になにかされて反撃できないもどかしさ、誰かに怒られた後、
なだめてくれる人が居ないときなどにパニックを起こしました。
●対策
パニックの前には大抵、顔が引きつって瞬きが多くなります。パニックになりそうだな
と思ったら叱るのを止めて、抱いてやるようにしています。
パニックになってしまった場合は、抱きついてきた時は黙って抱いてやります。
床に倒れこんで手足をバタつかせているときは、物にぶつからないように周りを片付けて
放っておきます。体に触ったり、優しい口調でも声をかけると興奮が激しくなります。
治まるのを黙って見ています。落ち着き始めたら、好きな事で気を引くと
それで終わります。(好きなビデオを付けたり、普段触らせない物を出すなど)上手く
気を引けたら2〜3分で治まります。最長は30分です。
D不安
落ち着いた生活を送るためには、これから始まる事の予告と終わりの見通しを持たせる
ことが大きいようです。年少の頃、いつもと違う行事があるときにはアタフタして廊下を
走り回ったりしていたようです。
●対策
いつもと違う事が始まる時は、個別に予告してもらえるとありがたいです。
それはいつ終わるのかも伝えていただくと安心すると思います。「これから遊戯室で
みんなで集まって○○会があるよ。園長先生のお話があって、歌を歌ったら終わりだよ」
などです。最近はお友達を見て、いつもと違う事にもそれなりについていっている
ようですが、やはり顔が引きつっている事が多いようです。予告出来なかった場合は
時々様子を見て下さるとありがたいです。