事例 1 電劇症

 電撃事故は高電圧送電線、家庭・工場内の低電圧線による感電や落雷によって生じ、る。電劇症は電流が生体内を流れることによって生じる障害とそれに伴う副損傷をも創傷する。言い換えると、電流が流れることによる障害だけでなく、着火による熱傷や感電後の転落・転倒による骨折・外傷等も二次損傷に含まれます。電撃死は中枢神経系の呼吸麻痺と心筋通電による心停止・心室細動や転落等に伴う頭・頚部外傷が多いです。電流流入部の傷は軽症に見えても必ず救急病院で診察を受けるようにしてください。電気抵抗は骨>皮膚>筋肉>血管>神経の順に抵抗が小さくなりますので、電流は皮膚よりも深い部位(神経や血管の側)を流れやすいです。そのため、深い部位での障害(深部熱傷)と広範囲の挫滅損傷を合併しやすく、重篤な病態を引き起こしやすいです。心停止を免れて、運が良かったとは思わず、救急病院を受診するようにしてください。
 大切なことは、カーボン製の長い竿等を持って移動する時は周囲に目を向けるようにしてください。
 私たちの周りには思いもよらない危険がいっぱい潜んでいます。しっかりした意識を持って、行動して下さい。

 また、どこでも緊急連絡ができるものを持参していることはいざという時役に立ちます。

下図(上)は高電流が皮膚に入った場所です。ほとんど傷がありません。下図(下)は高電流が体から抜けた場所です。入った場所よりは、出口の方が傷は大きいです。


事例 2 熱傷
 水膨れですので、2度熱傷です。水膨れになって見てられないとの気持ちから、水ぶくれの場所をつぶしたりする人がいます。決して、つぶしたりはしないできれいなガーゼ等で覆って病院に行きましょう。つぶすと、感染を起こしやすくなります。大切なことは、火を消した後、速やかに冷やし、熱による皮膚深部への障害の拡がりを抑えることです。冷やせばよいということで氷水につけたり、長時間にわたって水をかけたりする人もいます。ここで注意するのは、冷やすことによって逆に体温が低下し、低体温になってしまうことがあります。10分以上の冷却は避け、早く病院で治療を行うのが良いと思います。

表熱傷の深さと皮膚の症状

障害部位(深さ) 症状 治療期間
I 表皮 発赤、灼熱感 数日
II 基底層 水泡、びらん、疼痛 10日〜14日
II 真皮 水泡、やや乾燥、疼痛鈍麻 4週間〜8週間
III 皮下組織 固い、疼痛なし、脱毛、褐色、黒色、灰白色 植皮が必要

注:II度熱傷は、深さによって、浅い(浅達性2度熱傷;SDB)と深い(深達性2度熱傷;DDB)2分類される。

 水泡があれば、II度熱傷で、痛みがなく、皮膚も灰白色〜褐色〜黒色で固い場合はIII度熱傷です。III度では、神経も障害を受けていますので、痛みがないですし、毛を抜いても痛みを感じません。

 大まかな熱傷の面積は体幹前面が18%(胸9%、腹9%)、後面が18%(胸背部9%、腹背部9%))、頭が9%、上肢が各々9%、下肢が各々18%(前面9%、後面9%)、会陰部が1%です。
 ちなみに、事例2のような背中全体の熱傷は18%ということになります。

熱傷センターでの治療が望ましい基準は、

  1. II度とIII度の合計面積が20%以上
  2. 10歳以下、又は50歳以上では、II度とIII度の合計面積10%以上
  3. III度熱傷面積が5%以上(年齢にかかわらず)
  4. 整容的、機能的な部位の熱傷
  5. 電劇症
  6. 気道熱傷
  7. 広範囲の化学熱傷
  8. 糖尿病、腎機能障害、心疾患、呼吸器疾患等の既往症を有する場合

 事例1は電撃症ですので、この基準に当てはまります。事例2は熱傷面積は18%ですが、年齢が10歳でありますので、この基準に当てはまります。

 熱傷の場合は、速やかに冷却し、病院に行くようにしましょう。もちろん状態が悪ければ、救急車で行きます。