新しい心肺蘇生法 (一般市民) G2005
AED
異物除去法

わが国の新しい心肺蘇生法のガイドラインに沿って、解説します。今回のガイドラインでは、特に胸骨圧迫法(心臓マッサージ)を速く、強く、中断なく行うことが強調されています。

図 一般市民のための心肺蘇生法の流れ

;成人(8歳以上)、乳児、小児(8歳未満)に対する心肺蘇生法の一連の流れは同じ。但し、一人の場合は成人(8歳以上)と8歳未満で、対応が異なる。8歳未満では、2分間(5サイクル)心肺蘇生法を行ってから、119番通報、AED(近くにあれば)を持ってくる。特に8歳未満の小児では、呼吸器系の障害によって、心停止になる事が多いので、AEDを使用する可能性は低い。そのため、まず酸素化を図る目的で、心肺蘇生法を2分間(5サイクル)実施、その後119番通報、AEDとなっている。


一般市民のための心肺蘇生法の説明

 下表に示すように、年齢(体格)によって、手技が異なっています。また、一般市民の方と医療従事者では、小児、成人の年齢区分が異なっています

年齢区分 一般市民 医療従事者
乳児 1歳未満 1歳未満
小児 1歳以上〜8歳未満 1歳以上〜思春期
成人 8歳以上 思春期以上

 ここでは、一般市民のための心肺蘇生法の解説をします。基本的な流れは成人も小児もほぼ同じと考えて下さい。

意識の確認
 発見したら、周囲の安全確認し、速やかに傷病者の所に行きます。安全が確保されなければ、近づかないで下さい。救助者の安全が第一です。
 声をかけながら、近づきます。それでも反応がなければ、大声で、呼びかけたり、肩を叩いたりして刺激を加え、反応を見ます。それでも反応がなければ、意識はありません。

大声で人を呼ぶ
 意識がなければ、直ぐに大声で人を呼び、119番通報とAEDを持ってきてもらいます。一人しか居ない場合は、119番通報し、AED(近くにあれば)持ってきます。但し、小児(8歳未満)の場合は、119番通報よりも心肺蘇生法を優先しますので、小児((8歳未満)の場合は、心肺蘇生法を5サイクル(2分間)行ってから、119番通報とAED(近くにあれば)取ってきます。
再度注意(一人の場合):8歳以上では、119番通報が先です。8歳未満では、まず心肺蘇生法を2分間行ってから、119番通報をします。但し、複数人が居るなら、心肺蘇生法と119番通報を同時進行です。

119番通報 
 患者の状態、場所、目印になる建物、電話番号、通報者氏名等を聞かれます。住所、電話番号、目標建物等が間違いなく答えられるように、電話口にメモを用意しておくのが良いと思います。通報者が一方的に話すよりも指令課の質問に答える形で話す方が良いと思います。救急車は場所さえ解れば、話が終わる前でも出動しています。早く電話を切らないといつまでも救急車が出動しないと思わないで下さい。むしろ救急車が到着する前に、多くの情報が解れば、指令課から救急車の方にその情報を伝えますので、救急隊は患者さんの側に行く前に大切な情報を得ることができます。

参考携帯電話での119番通報
  携帯電話からも地元の消防本部に接続できるようになりました。但し、消防本部管轄境界域等では、電波の関係で他消防本部に接続される場合もありえます。携帯電話から119番通報する時には、よその消防に接続されている可能性があることを念頭に入れ、住所を聞かれた時に市町村名も入れてください。当然ですが、他県に接続される地域もありえます。

気道確保(頭部後屈あご先挙上法)
 あご先の硬い骨の上に、指を置き、あご先を上方に上げ、頭部を後屈させます。あご先を目いっぱい上げるのか良いかというと、そうではありません。一度自分でやってみてください。呼吸しにくいはずです。ゆっくりあご先を後ろに反らしながら、どの程度反らしたら、呼吸しにくいか一度試してみてください。人形ではそのあたりの感覚はわかりません。
 一般の方には、外傷であっても、気道確保法は頭部後屈あご先挙上法を行ってください。医療従事者は外傷の場合は下顎挙上法を行います。

写真左から成人(8歳以上)、小児(8歳未満〜1歳以上)、乳児(1歳未満)の気道確保(頭部後屈あご先挙上法)です。

                             
額に手をあて、あご先を指(2本又は1本)で挙上して、頭部後屈あご先挙上を行います。

呼吸の確認

 気道確保(写真上図)した状態で、普段通りの呼吸があるかどうか、10秒以内に確認します。判断がつかない場合は呼吸なしです。

 注喘ぎ様の呼吸呼吸がないと考えて下さい。心臓が突然止まっても、まだ呼吸運動が残っている事があります。しかし、この呼吸は普段通りの呼吸とは違って、喘いでいるような呼吸になっています。このような呼吸を見たら、ちょっと前に心室細動(心臓が痙攣している状態)で、心臓が止まった可能性が高いと考えて下さい。最も救命の可能性が高い状態ですので、決して呼吸ありとは考えないで、胸骨圧迫等の心肺蘇生法を速やかに開始して下さい。

左から、成人、小児、乳児の呼吸確認の写真です。
気道確保をして、普段通りの呼吸をしているか10秒以内に確認します。
確認しやすいように、顔はできるだけ近づけます。

人工呼吸(2回)
 普段通りの呼吸がなければ、気道確保して、人工呼吸2回を行います。1回1秒かけて吹き込みます。吹き込む量は胸の上がりが見える程度です。口口人工呼吸は成人、小児(1歳以上)では同じ方法です。但し、乳児(1歳未満)では、口対口鼻人工呼吸ですが、口と鼻を口で覆えない場合もあります。その時は、口鼻人工呼吸をお勧めします。
 1回吹き込んでも胸の上がりが見えない場合は、気道確保が不十分で、胸に空気が入らなかった可能性があります。その場合は、再度気道確保をして、もう一度人工呼吸を行います。2回吹き込んで胸が上がっても上がらなくてもそれ以上は人工呼吸は行わず、直ちに胸骨圧迫法を行います。
 口口人工呼吸は感染の危険性もあり、躊躇するのであれば、人工呼吸を省略しても構いません。いざという時に備え、感染防止器具を準備しておくことは必要です。でも、手元になく、取りに行くのであれば、その時間は無駄です。その場合は、胸骨圧迫のみを実施しする方が効果的です。感染防止器具はいつも手元に置いておきましょう。


左写真はフェイスシールド(感染防止器具)を用いた人工呼吸です。
 あご先を上げて気道確保をし、鼻をつまみ、口を大きく開け、口と口を密着させ、息を1秒で吹き込みます。吹き込む量は胸が上がるのが見える程度です。吹き込んだ後は、鼻のつまみを解除し、口を離し、胸の入った空気が出やすいようにします。気道確保はそのまま続けて下さい。




左写真はポケットマスク(感染防止器具)を用いた人工呼吸です。
 ポケットマスクで口と鼻を多い、ポケットマスクの先端から息を吹き込みます。ポケットマスクを密着させることと気道確保を行うことが必要ですので、ポケットマスクを上手に保持するやり方を前もって練習しておくことが必要です。
 ポケットマスクには、一方向弁がありますので、吹き込む時のみポケットマスク先端に口をつけ、吹き込まない時はそこから呼気がでますので、口を離してください。フェイスシールドよりもお勧めします。

ポケットマスクの持ち方(1)
 左写真のように、親指と人差し指でポケットマスク(頭部側)を押さえ、他方の親指と人差し指でポケットマスク(下側)とあご先を密着させ、あご先を持ち上げます。この方法で、頭部後屈あご先挙上法という気道確保をしながら、ポケットマスクを用いた人工呼吸ができます。




ポケットマスクの持ち方(2

 左写真のように、両手の親指と人差し指でCの字をって、ポケットマスクの両サイドに親指と人差し指をおきます。残りの指はは下あごの骨の上で、できるだけあごの”えら”よりも耳寄りに置き、あごを引き上げます。こちらの方法は、下顎挙上法という気道確保をしながら、パケットマスクを保持し、人工呼吸を行うことができます。

 普段通りの呼吸がある場合、昏睡体位(回復体位)にして、救急車が来るまで観察を継続します。

左写真は昏睡体位(回復体位
 意識がなく、普段通りの呼吸をしている人を仰向けにしていると、万が一吐いた場合、吐物で窒息する可能性があります。そのため、口元を床に向け、体を横にして吐いても窒息しないように、昏睡体位(回復体位)にします。コツは下側の腕を体につけない事です。体に腕をつけて、横にしようとすると、腕が邪魔で横向きにするのが難しいです。
友人が酩酊している場合もこの方法は効果的です。

乳児(1歳未満)の人工呼吸 口口鼻人工呼吸(覆えなければ、口鼻人工呼吸をお勧めします)

 あご先を上げて、救助者の口で乳児の口と鼻を多い、1秒で吹き込みます。吹き込む量は胸が上がるのが見える程度です。





参考
 左写真は救助者の口と乳児の顔をです。口と鼻を覆うためには、救助者の口の横幅が乳児の口と鼻の長さよりも広くなければなりません。しかし、救助者の中には、鼻と口を覆うことができない人も居ます。その場合は口で乳児の鼻を覆い、鼻から息を吹き込む方が口から息を吹き込むよりも胸に空気が入りやすいと言われています。
 覆えない可能性も考えますと、鼻と口を覆うやり方を次のようにされるのが良いと思います。まず乳児の鼻の上部(目と目の間付近)に大きく開けた口の一方を当て、その後でもう一方を乳児の下口唇に当てるようにします。この方法でしたら、鼻と口を覆えなくても、鼻だけは覆えていますので、鼻口人工呼吸で吹き込むことができます。
 口鼻人工呼吸
新しいガイドラインでは、乳児の口鼻人工呼吸法の記載はありませんが(以前はあった)、個人的には口鼻人工呼吸の方が乳児の生理学的、解剖学的な特徴を考えても効果的と思っています。




胸骨圧迫法(心臓マッサージ) 以前は、循環サイン(呼吸、息、咳、動き)の確認をして、胸骨圧迫法を実施していましたが、新しい心肺蘇生法では、確認は無くなりました。普段通りの呼吸がなければ、人工呼吸(省略可)、胸骨圧迫法を行います。

 圧迫する位置(目安)は、乳頭と乳頭を結んだ線(想像上の線)の胸骨(胸の真ん中の骨)上か胸の真ん中です。必ずしも衣服を脱がせて、確認する必要はありません。
 圧迫方法は、手を重ね、100回/分のリズムで、30回胸骨が4〜5cm沈む程度に強く圧迫します。圧迫を解除する時は、手掌が胸から離れたり、浮き上がったりしないように注意し、胸が元に戻るまで充分に圧迫を解除することが大切です。また、圧迫時間と解除時間は等しくします(1:1)。

写真 胸骨圧迫位置
 
 1)乳頭と乳頭を結んだ線(想像線上)の胸骨上か
 2)胸の真ん中


 圧迫位置は、成人、小児(8歳未満1歳以上)では同じですが、乳児(1歳未満)では、乳頭を結んだ線よりは少し足側(尾側)です。



左写真 胸骨圧迫法(8歳以上)
 左写真のように、両肘を伸ばし、垂直に胸骨を圧迫します。圧迫は4〜5cm胸が沈む程度に圧迫します。
100回/分のリズムで、30回圧迫します。
圧迫の強さ:胸が4〜5cm沈む程度



小児(1歳以上8歳未満)、乳児(1歳未満)で、胸骨圧迫の手技、深さが異なります。下写真参照。
 左写真 胸骨圧迫法 小児(1歳から8歳以上
圧迫位置:成人(8歳以上)と同じ。乳頭と乳頭を結んだ線(想像上の線)の胸骨上か胸の真ん中。
 充分に圧迫できるように、体格に応じて、片腕又は両腕(成人と同様)で、肘を伸ばして胸の厚みの1/3まで圧迫する。
圧迫方法:約100回/分のリズムで、30回圧迫する。
圧迫の強さ胸の厚さの1/3まで沈む程度

 
 左写真 乳児(1歳未満)
圧迫位置:両乳頭線(想像上の線)よりも少し足側(尾側)の胸骨上。
圧迫方法:圧迫位置に指2本を置き、約100回/分のリズムで、30回圧迫する。
圧迫の強さ胸の厚さの1/3まで沈む程度。




胸骨圧迫と人工呼吸の回数の比は、30:2です。人工呼吸を省略する場合は、胸骨圧迫のみ行います。
 圧迫回数が以前よりも増え、胸骨圧迫は疲れます。疲れてくると、十分な胸骨圧迫ができなくなりますので、応援の人が居たら、交代を考えます。交代は5サイクル(2分毎)に行うのが望ましいです。また、交代する時、一時的に胸骨圧迫は中断されます。この中断時間を短くすることが重要です。できるなら交代は5秒以内で行ってください。

 人工呼吸と胸骨圧迫を行う場合は、5サイクル毎に、胸骨圧迫のみの場合は2分毎交代時間は5秒以内に交代することが望ましい。
    応援の人や救急隊に説明する時でも、胸骨圧迫を止めずに説明するようにします。
            速く、強く、絶え間ない胸骨圧迫を心がけてください。  

心肺蘇生法を中止するのは?
 何らかの応答があったり、目的のある仕草(例、嫌がるなどの体動がある)が見られたり、救急隊に引き継ぐまで、心肺蘇生法(胸骨圧迫30回と人工呼吸2回)を繰り返し行います。人工呼吸を行わない場合は、胸骨圧迫のみを続けて下さい。

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AED(自動体外式除細動器)
 成人が心停止を起こす原因はたくさんありますが、その中で最も多いのが心臓に原因のある心停止(心原性心停止)です。心原性心停止では、心室細動(心臓が細かく痙攣を起こしている状態)になっている事が多いです。この心室細動に最も有効な治療が電気ショックです。今までは、心電図を見て、心室細動かどうか判断して、電気ショックを行っていました。それを器械に電気ショックの適応かどうか判断させ、誰でも簡単に使用できるように開発されたのがAEDです。
 AEDの電源を入れ、音声指示に従って、実施すれば、電気ショックが簡単に行えます。ただ、心室細動は長くは続きませんので、速やかに電気ショックを行う必要があります。
 意識がなく、普段通りの呼吸をしていなければ、直ちに心肺蘇生法を開始し、AEDが着たら、速やかにAEDの電源を入れ、その音声指示に従い、実施します。
 AEDのプログラムも変更になりましたので、以前のAEDとは音声指示が異なっていますが、電源を入れ、音声指示に従うやり方は同じです。

下図は心肺蘇生法(CPR)とAEDの流れを新しいAEDプログラムと以前のAEDプログラムでの相違を簡単な図にしたものです。上段は新しいプログラムで、下段は以前のプログラムです。

上段
 AEDが来るまで、心肺蘇生法を行います。AEDが着たら、電源を入れ、電極パッドを装着します。その後、解析し、電気ショックの適応なら、充電し、電気ショック(通電ボタンを押す)を行います。電気ショック後、直ぐに心肺蘇生法胸骨圧迫と人工呼吸(省略可)を2分間行います。その後、AEDは再び解析を行います。
 解析の結果、除細動の適応がなければ、心肺蘇生法を2分間行います。その後、AEDは再び解析を行います。今後、こちらのやり方になっていきます。
下段
 AEDが来るまで、心肺蘇生法を行います。AEDが着たら、電源を入れ、電極パッドを装着します。その後、解析し、電気ショックの適応なら、充電し、電気ショックを行います。電気ショック後、解析を行い、電気ショックの適応なら、再度充電し、電気ショックを行います。これを連続最大3回まで繰り返します。連続最大3回電気ショック後、循環のサインを確認し、循環サインがなければ、心肺蘇生法を1分間行います。その後、AEDは再び解析を行い、適応があれば、充電、電気ショックを行います。
 解析の結果、適応がなければ、循環サインの確認し、なければ、心肺蘇生法を1分間行います。その後、再びAEDは解析を行います。
 参考;
 以前のプログラムのAEDでは、循環のサインを確認してくださいといった音声指示があります。一般市民の方が心肺蘇生を行う時、新しい心肺蘇生法では、循環サインの確認は必要ありません。従って、以前のプログラムのAEDが解析を行い、適応ありません、循環のサインを確認して、なければ、心肺蘇生法を行ってくださいとの指示があった場合、循環サインの確認はする必要はありません。直ぐに胸骨圧迫(と人工呼吸)を始めて下さい。

操作法へ戻る

注;
 
心肺蘇生法(CPR)は、胸骨圧迫法(心臓マッサージ)と人工呼吸を30対2で行うことですが、人工呼吸を躊躇する場合は胸骨圧迫法だけでも構いません。従って、心肺蘇生法には、胸骨圧迫法のみも含まれると考えて下さい。


AEDの対象
  意識がなく、かつ普段通りの呼吸がない。

AEDを使用する可能性が高い場合は?
 1) 運動中の突然死
 2) 心筋梗塞等の心臓疾患の既往のある人
 3) 心筋梗塞等を引き起こしやすい危険因子(喫煙、高脂血症、高血圧    、糖尿病,、肥満、飲酒等)を持っている人

AEDを使用する可能性が低い場合は?
  1) でき水、窒息等の非心原性の心停止
  2) 8歳未満の小児(大半は非心原性心停止である)

   野球のボール等が左胸に当った衝撃で希に、心停止を起こすことがあります。この場合は、AEDのよい適応です。これは心臓震盪という病気です。左胸にボール等が当った後、意識が無く、普段通りの呼吸をしていない場合は速やかに119番通報、AED、心肺蘇生法を行ってください。8歳未満の小児でもありえます。

AEDが電気ショックの適応がないと判断する場合
 1)心臓が動いている(非心停止)場合
    意識がある場合や意識はなくても普段通りの呼吸をしている場合
 2)心停止であるが、電気ショックの適応にならない心電図波形(非    心室細動)の場合
 
参考:

  心停止の心電図波形には心室細動、心室頻拍(無脈性)、無脈性電気活動(PEA)、心静止の4つがあります。このうち、電気ショックの適応は、心室細動と無脈性心室頻拍です。AEDはこれらの心電図波形から、電気ショックの適応があるかどうか自動解析し、判断します。その精度は非常に高いですので、安心してください。


AEDを安全に操作するために

実施対象

  1. 意識がなく、普段通りの呼吸のない成人(8歳以上)。
  2. 意識がなく、普段通りの呼吸のない小児(1歳以上~8歳未満)
      2006年わが国でも小児でのAED使用が行えるようになった。但し、1歳以上8歳未満の小児では、小児用電極パッド(エネルギー量を低くしている)を用いるのが望ましいが、やむを得ない場合は、成人用の電極パッドを代用しても構わない。1歳未満の乳児では使用しない(対象外)。

電極パッド装
 右上前胸部(右鎖骨下で、胸骨右縁)と左下側胸部(左乳頭部外側下方)に装着するのが一般的。小児に対して、小児用、成人用電極パッドを使用する場合、心尖部と上胸部背面に貼る方法もあります。
 電極パッドは服を脱がせ、直接胸壁に貼りますので、公衆の面前で、AEDを実施する場合(特に女性)は大勢の人の目に触れないようにする配慮も必要です。

左写真は電極パッドを左胸(鎖骨の下、胸骨右縁)と左乳頭外側下方)に装着している。
電極パッドはしっかり胸壁に密着させる。




装着時の注意事項

電気ショックj実施時の安全確認
 電気ショック時に感電をしないように、誰も接触していないことを確認してから、電気ショックを行う。
  1)自分が患者さんと接触していないか?
  2)あなたが患者さんと接触していないか?
  3)周囲の人が患者さんと接触していないか?
     1)、2)、3)そして通電ボタンを押します

電気ショックを行う時の心遣い
 AEDの電極パッドは必ず胸壁に密着させますので、たとえ公衆の面前であっても服を脱がせる必要があります。そのため、周りの人から見えないようにするといった心遣いは緊急事態であっても必要です。しかし、そのために、無駄な時間がかかってはいけません。


操作法(新しいプログラムと古いプログラムのAEDがあります)。

 1)AEDが着たら、まず電源を入れます
電源を入れる方法には、1)電源ボタンを押す。2)蓋を開ける。3)引っ張る。の3通りの方法があります。

 1.電源ボタンを押すと電源が入るAED

 2.蓋を開けると電源が入るAED


注意;右写真の機種では、全く知らない方でも使えるように、服を脱がせてくださいといった音声指示等が出ます。気にせず直ぐに電極パッドを貼ってください。

 3.引っ張ると電源が入るAED

PULLと書いてある取っ手を引っ張ると電源が入ります。

 注意;左写真の機種では、全く知らない方でも使えるように、服を脱がせてくださいといった音声指示等が出ます。気にせず直ぐに電極パッドを貼ってください。

  
2)電極パッドを貼る
   電極パッドを貼り、AEDが解析を開始するまでは少なくとも胸骨圧迫だけは中断せず行います。

3)解析
   電極パッドを貼ったら、自動で解析を開始しますので、離れて下さい。

4)電気ショック(除細動)
    電気ショックの適応があれば、AEDが自動で充電を開始、電気ショックを行うように指示が出ます。みんな離れているのを確認して、通電ボタンを押します。電気ショックを行ったら、速やかに胸骨圧迫法、人工呼吸(省略可)を開始します。
    古いプログラムでは、最初の電気ショック後、解析を行い、電気ショックの適応があれば、充電を開始します。これは最初の電気ショックは最大3回連続行うようになっていたためです(上図参照)。1回目の除細動後、2回目の除細動の適応があるか確認のため、自動解析を行います。その結果、適応があれば、充電、除細動となります。2回目の除細動後も同様に自動解析を行い、必要なら除細動を行うよう指示がでます。1回目の又は2回目の除細動後の解析結果で、適応がありませんといった音声メッセージが流れたら、呼吸とか脈の確認をせずに、速やかに胸骨圧迫法、人工呼吸(省略可)を開始します。

5)心肺蘇生法
    2分間心肺蘇生法(以前のプログラムは1分間)を行うと、自動で解析を行いますので、離れてください。

いつまで継続するか?
 AEDの電源を入れたら、原則電源は切らずに、AEDの指示に従います。 
 いつまで続けますか?
  1)救急隊が到着し、引き継ぎを行うまで、2) 心肺蘇生法を実施している時に、目的のある仕草(嫌がる等の体動)や何らかの応答が見られるまで継続します。

AEDはどこに設置するのが良いですか?
 いつどこで突然死をおこすか誰もわかりませんので、いつでも誰でも5分以内にAEDが使用できるように設置するのが望ましいと言われています。
 運動中の突然死は、心原性心停止が多いですので、学校、各種スポーツ大会会場には、是非とも設置していただければと思います。ただ、AEDを設置するだけでなく、早い連絡体制を構築することも必要です。

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異物除去法
 異物によって、息ができなくなった場合に、異物を取り出す方法が異物除去法です。
 異物によって、完全に気道が閉塞すると、声が出ません。一部開通している不完全な気道閉塞では声がでます。声が出るということは、空気の通り道が一部開通していることを意味します。開通していますので、少しは呼吸できている状態ですので、慌てないで下さい。全く声が出ないのは完全気道閉塞です。直ぐに異物を取り出すことが必要です。
 我々はわずかな時間水の中にもぐることができます。この間は息をしていませんので、完全気道閉塞と同じ状態です。この潜っておられる時間であれば、異物による窒息であっても意識はあります。
 窒息でまだ息のある間、異物除去法を行います。意識が無くなったら、心肺蘇生法です。胸骨圧迫(心臓マッサージ)によって、異物を除去できます。
 異物除去法
 1)強い咳ができる場合は、咳をさせます。咳ができるということは完全には閉塞していないです。
 2)反応はあるが、窒息していると判断したら、腹部突き上げ法、背部叩打法を行います。これは反応がなくなるまで続けます。腹部突き上げ法の方が背部叩打法より有効です。但し、妊婦や乳児では腹部突き上げ法は行わなわず、背部叩打法を行います。
 3)反応がなくなったら、直ちに心肺蘇生法を行います。
腹部突き上げ法(ハイムリック法)
 傷病者の後ろに回り、腰の辺りに手を回します。一方の手で握りこぶしを作り、親指側を傷病者の臍の上方で、みぞおちより十分下方に当てます(みぞおちの当りには剣状突起という骨があり、それを避けるためです)。もう一方の手で握りこぶしをに握り、すばやく手前上方に突き上げます。これを繰り返し行います。

ハイムリック法のやり方


上左;握りこぶしの親指側を腹部に当て、握りこぶしをもう一方の手で握り、上方へ突き上げます。握りこぶしを当てる位置は下図の水色円の辺りです。それより上には、剣状突起があります。その付を圧迫するのは危険です。
 注;乳児(1歳未満)にはこの方法は行いません。



背部叩打法

 左右の肩甲骨の間を手のひらの基部(手掌基部)で力強く何度も叩きます。


上図のように、背中(両肩甲骨の間)を叩きます。横向きに寝かせ、背中を叩いても構いません。

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