コンサートレポート

管理人の視点から書き残したコンサートの記録です。

 2005.7.9 万博会場 モリゾー・キッコロメッセにて

 万博会場で演奏できる・・・この夢のような話をベーシストの不破氏から聞いたのはこの年の5月で、正直私個人はこの時話半分で聞いていたのだが、まさか本当に実現するとは!
以前尾西市民オーケストラがパチンコ協会から表彰を受けたことがあり、その関係で来た話だという。当初は尾西市民オーケストラに来た話であったが、ステージが小さい為オーケストラではステージに乗れないということで、4人で活動している我々がこの依頼を引き受けることになった。B.B.Q.のこれまでの演奏活動は、依頼されたパーティのBGMや、発表会のゲスト出演のみであり、自分たちのコンサートという形での活動は、この万博での演奏が初めてとなる。
 私たちが演奏した「モリゾー・キッコロメッセ」というのは、建物自体は学校の体育館位の大きさだろうか。中はガランとした大きな一つの空間で、イベント毎にベニヤ板のパーテーションで仕切ってコーナーが分けられるという、フレキシブルなパビリオンだった。他のイベントを見ていないのでわからないが、おそらく主催者によって全く違う内装になるのだろう。私たちが演奏したステージも、やはりベニヤで作られていて、デパートなどでよく行われる催し物ステージと言えばわかりやすいだろうか。ピアノはアップライトしか置けず、これにドラムセットを置くと、ベースとサックスが立ったらそれ以上の人は乗らない・・・確かにこれではオーケストラでの出演は無理である。ステージと聴衆エリアを合わせると、モリゾー・キッコロメッセの1/3ぐらいのスペースだった。もちろん客席は用意されていたが、通りがかりの人も気楽に足を止めて聴ける所であった。

 前日の7月8日、楽器搬入と会場の下見、当日の打ち合わせの為に我々は会場に入った。入ってみてまず予想外だったのが、なんと会場の騒々しかったこと!パチンコ協会主催のイベントの為か、ステージ隣のコーナーにはパチンコ台がいくつもあり、常にジャラジャラと音と立て、そして、それに負けじとBGMがガンガン流れていた。関係者によれば、この会場は一日中こんな状態だという。私たちの演奏は、マイクを使わなければ、とても聞ける状態ではなかった。・・・しかし、個人的にこれがある意味私を安心させてくれた。万博会場で演奏できる光栄に喜びつつも、この貴重な機会に少なからずプレッシャーを感じていたのである。当時私は演奏面においてひどく調子を崩し、思い通りのコントロールが全くできない状態だったから・・・。しかし、これなら小さな失敗など気にせず、難しいことも考えず、楽に演奏すればいい。そう思うと、肩から力が抜ける思いだった。

 本番当日、予定通りに会場入りした私たちは、早速セッティングを済ませ、リハーサル開始。前日同様、会場は非常に騒々しかった。私たちが演奏しても、客席から聴こえるのはマイクを通した音のみ、生の音は全くといっていいほど聴こえなかった。この状態での演奏を、果たして聴衆はどう聴いてくれるのだろうか・・・?最悪の調子だった私自身は、その時の自分の演奏に満足していなかったのは言うまでもないことだが、そんな私の心配に反して、リハ時点での会場スタッフ達の好反応に、私は密かにいい手応えを感じていた。「これなら何とかなりそうだ!」

 本番は11時からの30分、そして12時半からの30分の、2ステージだった。全く同じプログラムで2ステージこなすというのは、私の音楽人生の中では初めての経験だった。不調からの不安もあり、私は相当緊張していたが、ライヴ活動を数多くこなしているピアニストの智子さんも同じように緊張していると聞いて、なんとなく安心できた。1回目は緊張のあまり、足をガクガク震わせながらの演奏で、後から話を聞くと硬い演奏だったらしいが、ミスは全くなく、その1回目のステージが成功したことに気を良くし、またその場の雰囲気にも慣れ、2回目は普段の練習のように、リラックスして演奏を楽しむ余裕があったと思う。・・・少々油断しすぎて小さな失敗があったが・・・。同じプログラムで2ステージ演奏できるというのは、なかなかいいものだと思った。

 私個人は、演奏中に聴衆の表情まで見るゆとりはなかったのだが、演奏を聴く聴衆の表情は、なかなかいいものだったそうだ。1回目、2回目共、通りがかりの人達も含め、40名ほどの方々が聴いてくださっていたと思う。中には音楽に合わせて首を動かしながら、楽しそうに聴いてくださった方もあったという。たった5曲のプログラムだったが、様々なジャンルの、耳馴染みの良い曲を選んだ事も良かったと思われる。まだまだ未熟な私たちだが、聴衆と共に楽しい時間を過ごせるようなライヴ活動を、今後も展開していきたいと思う。その足がかりとなった、万博会場でのライヴであった。

 万博でのイベントに出演することで、私たちは通常の入場者とは違うルートで万博会場に入った。スタッフ用の入場パスが支給され、通常入場ゲートでは持ち物検査等厳しく行われるが、従業員専用のゲートで入場パスを見せれば、ノーチェックで入場ができた。万博会場は、一般の入場客のエリアと、スタッフ専用エリアとが明確に分かれており、その出入り口は、会場内のあちこちにあった。会場内は全て禁煙だが、スタッフエリア内には喫煙スペースがあったようだ。スタッフ専用エリア内で私たちが手洗い、着替え等に使用した施設の入り口にはガードマンが立っており、私たちが通る度に「お疲れさまです!」と元気な声をかけてくれた。

 万博が日本で行われる事、そして万博に入場する事自体、一生に一度あるかないかの大イベントだが、そのような場所で演奏できたことはもちろん、万博会場の裏側にまで足を踏み入れるなど、一般の私たちには通常有り得ないことである。その意味でも、実に貴重な経験をさせてもらったと思う。

 本番終了後は、閉演近くまで万博会場を巡り歩いた。午後からはあいにくの雨だったが、逆に涼しくて良かったかもしれない。その半月ほど前、平日に家族で一度この会場を訪れた私だったが、さすがこの日は土曜日とあって、平日とは比べ物にならない混み様だった。どこへ行っても長蛇の列にウンザリしたが、メンバーと共におしゃべりしながらのパビリオン巡りは楽しく、そんな中イタリア館で味わったカプチーノは絶品だった。
 ・・・楽しい一日だった。