コンサートレポート
管理人の視点から書き残したコンサートの記録です。
2005.12.23 カフェ・ミュゼ・りぷるにて
記念すべき万博演奏の半年後に、このイベントは計画された。場所は、名鉄「大里駅」から歩いて5分ほどの場所にある、「カフェ・ミュゼ・りぷる」という喫茶店。オーナーがオルゴールに凝っておられ、店内にはオルゴール館にあるような、本格的なオルゴールがおいてある。雰囲気もとてもお洒落で落ち着いた、ステキなお店である。こんな店が近所にあったら、間違いなく私は常連客になるであろう。
その一角にちょっとしたステージと、アップライトのピアノが置いてあり、ピアニストの智子さんがそこで度々ライヴをやっているという。今回、そのライヴに私たちも参加させてもらい、B.B.Q.として出演することになった。
12月23日という時期柄、クリスマスを意識してプログラムを組んだ。さらに、ちょっと背伸びした曲にも挑戦した。「スターダスト」と、ピアソラの「リベルタンゴ」。スターダストは、私が学生時代に聴いたMALTA氏の演奏に憧れ、「いつか演奏してみたい」と思っていた曲、そしてリベルタンゴは、私と智子さんが知り合うきっかけとなったサックス奏者、須川展也氏がレパートリーとして、度々リサイタルで演奏する曲で、どちらも私にとって憧れの曲である。万博演奏後、演奏面での調子を少しずつ取り戻していた私は、思い切ってこの2曲に取り組む決心をした。本来ピアソラの音楽にドラムは使われていないが、智ちゃんのセンスのいいドラムが入ったことで、B.B.Q.独自のピアソラとなったのではないだろうか。
今回智子さんが、ご自身で作曲もするというマルチな才能を発揮し、オリジナル作品もプログラムに加えた。「子供達がクリスマスケーキ作りに奮闘する様子」という背景から作曲された、「クリスマスケーキ」という曲。とてもかわいらしく、楽しい曲である。メンバーのオリジナル作品・・・よそではどこでも聴くことができない曲を演奏できるなんて、夢にも思わなかった。今後もどんどんオリジナル作品を書いてほしいものである。
今回面白かったのが、ピアニカの投入である。本番前最後の練習日に「使ってみようかな〜」と智子さんが言い出したのがきっかけだが、智子さん自身2年前から習って練習しているとはいえ、一度も練習で合わせていない状態で本番に臨むのは無謀では? と普通は思うだろう。ところが本番当日、最終リハーサルで、智子さんはクリスマスメドレーでいきなりカッコよくピアニカを参入させたのである。学校の音楽の授業でしか聴いたことも使ったこともなかったこの楽器が、こんな魅力を秘めていたなんて! それは実に新鮮で感動的な驚きであった。しかも左手ではピアノを弾いた状態での、なんとも器用な演奏だった。
これに驚きながらも、一つひらめいた私。本来バンドネオンが主役となるべきピアソラの音楽。これに、音色の良く似たピアニカを入れてはどうだろう?
・・・と言ってみたものの、クリスマスメドレーはそのつもりである程度智子さん個人が練習してあったようだが、リベルタンゴはそんなつもりで練習していない。さすがの智子さんも、今日いきなりピアニカを入れるのは難しいだろう・・・と思いきや、なんと、まるで今までピアニカを使って練習してきたかのような演奏をやってのけたのである。ピアニカの入ったリベルタンゴは、今までとはガラリと雰囲気を変え、ピアソラの雰囲気が色濃く出た、非常に面白いものとなった。そして、無謀にもそのまま本番で演奏してしまったのである。
この冬は12月からよく雪が降り、この日は前の晩からの積雪で、辺り一面が雪国と化した。私の住む岐阜では40センチほど積もっただろうか。雪かきの進んでいない道では、立ち往生する車があった。しかし、そんな大雪でも中止を懸念して電話をかけてくるメンバーは誰一人いない。それがまた、このメンバーのいいところである。私が出て来られるか? と心配する智子さんのメールがあっただけで、お互い特に連絡を取り合うこともなく、昼近くには交通量の多い幹線道路はすっかり解け、全員予定通りに集合した。幸い店の方も、予約客からのキャンセルはなかったようだ。
コンサートは夜7時から。聴衆は全部で15名ぐらい。先に食事を済ませ、コンサートスペースまで移動して聴いていただき、前後20分ずつの私たちの演奏の間にオルゴールタイムを挟むというスタイルだった。ああいった本格的なオルゴールの生演奏など、普段聴く機会はほとんどないが、なんとも言えない深みがあり、心に染み入るいい音色であった。演奏の合間に、私たちもオルゴール演奏を楽しませていただいた。
本番の緊張感を伴うテンションの高さというのは、うまく働けば演奏上でのいいエッセンスとなるが、アマチュアの私たちは、その点がまだうまくコントロールできない。1曲目のきよしこの夜とジングルベルのメドレーにおいて、ジングルベルのテンポが速くなりすぎて、テンポに振り回される演奏になってしまった。私も楽器を組み立てた後、全く音が出せない状態から、セットしたリードの位置が悪く、最悪な音色。この1曲目は、次回以降に向けて反省する点の実に多い演奏だった。しかし、その後冷静に落ち着きを取り戻すのが、このメンバー達のすごいところである。2曲目以降は、普段の調子で演奏を楽しめたと私は思っている。いきなり取り入れたピアニカもゴキゲンな演奏だった。もう一つ、プログラム最後のクリスマスメドレーのエンディングを、本番直前に変更するという、これまた無謀な試みをしたのだが、ちょっと危なかったものの、なんとか成功した。私が初挑戦したシェイカーも、上手く入れられたようだ。今回は何と初の試みが多かったことだろう!
お客様の反応もいい様子だった。実に楽しげな表情で、お客様達はお帰りになった。演奏終了後の「あっという間だった」との言葉は、私たちにとっては最高の褒め言葉。何より聴衆の皆様が楽しんでくださるというのは、嬉しいものである。
・・・こうしてB.B.Q.2回目のコンサートも、成功に終わった。
コンサート終了後、お客様方が堪能した料理を、私たちも楽しませていただいた。思いがけずクリスマスの雰囲気を楽しむことができた。本番を成功させた後のこういう食事は、また格別である。
今回の収穫はなんといっても、ピアニカの魅力を知ったことである。通常「学校教材の楽器」というイメージが強いこの楽器が、このような魅力を秘めていたことを、私は今回のコンサートで初めて知った。とことん追求するならピアニカは非常に難しい楽器であるが、手頃な値段で入手でき、誰でも簡単に音が出せるこの楽器は、日頃音楽に馴染みのない人でも、気軽に楽しめるものではないだろうか?そんなピアニカを使ったレパートリーを増やすことで、より多くの人に音楽の楽しさを知ってもらえたら、そして、よそでは聴けない音楽を、私たち自身も楽しんでいけたらと思う。未熟な私たちの力で、どこまでできるかはわからないが、今回のコンサートは、今後の活動の一つの方向性を見出せた、非常に意義のあるものだったと私は思う。