コンサートレポート
管理人の視点から書き残したコンサートの記録です。
2007.11.10 博物館明治村 聖ザビエル天主堂にて
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今日は明治村の聖ザビエル天主堂という絶好の環境で演奏させてもらえる、またとない機会。明治村トリエンナーレの一環で、芸術・芸能の各方面からプロ・アマ問わず出演者・出展者を募集し、演奏者に関しては事前に送った音源により選考されるというもので、秋期は応募者が多く、選ばれたのが応募総数の1/3だったと聞いており、そんな中に我々の演奏が選ばれたという事が光栄で、明治村で演奏させてもらえるという事も嬉しく、張り切って準備に臨んでいた。といっても、相変わらず皆が忙しくなかなか練習日程が合わない中、10月14日の本番にも同じ曲をプログラムに組み、また新曲はなるべく避けて慣れた曲を中心に選曲するなど、8月のアンジェロでの反省もあって無理のない選曲に心がけた。明治村側からの依頼で良く知られている曲という観点にも留意したが、智子さんのオリジナル作品やピアニカ演奏もアピールしたく、また最後にはお客様が歌で参加できる曲も入れ、様々なジャンルを盛り込み変化に富んだいいプログラムであったと自負している。
朝は9時半の開村前に車で村内を移動し楽器を搬入しなければならない為、集合は8時50分とした。遅れてはならないと若干早めに出た私だったが予想以上に順調に到着した為、明治村正門に8時半前に着いてしまった。でもその5分ほど後に智子さんも到着し、2人でおしゃべりしながら残りのメンバーの到着を待った。まるで高原の朝のように朝モヤに包まれ紅葉が色づき始めたこの場所は、とても自宅から30分ほどで来られる場所とは思えず「まるで観光気分」と智子さんが言っていたがまさに私も同じ気分で、実は何日も前から色々と心配して緊張していたのだが、そんな気分など吹っ飛んでしまっていた。いい場所で演奏できるって素晴らしい!
集合時間の5分ほど前に不破家メンバーが到着。明治村スタッフが運転する車に先導されて村内を移動し聖ザビエル天主堂へ。誰もいない明治村内を自分たちの車で移動するなど通常できる事ではない。社内から村内の景色を眺めつつ、そんな思いも観光気分をさらに増大させてくれて、ワクワクしてきた私だった。
天主堂の音響の良さは下見に来て確認していたが、実際に楽器で音を出してその残響に改めて驚いた。なんと気持ち良く響くのだろう! 自分が急に上手くなった錯覚を起こす(笑)。やはりここではバッハなどの厳かな曲もやってみたいもの。試しにソプラノでバッハのアリオーソを少し吹いてみたら、すぐその場で智子さんがピアノで伴奏を付けてくれた。こんな事を即興でやってくれるのが智子さんのすごいところ。再びこういう場で演奏する機会があればそういう曲もプログラムの中でやってみたいもの。ピアニカもとてもいい感じで響いていた。ピアニカと天主堂がこれほど合うとは! 新鮮な驚きだった。
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事前打合せ時点でリハーサルは11時頃までという約束をしていたのを、心配だったのでもう30分延長してもらっていたが、それで正解だった。ピアノを移動させる人手が10時15分頃しか来ないとの事で、ピアノを動かさないとドラムの位置が決まらない。ドラムのセッティングにも思っていたより時間がかかり、リハーサルを始めたのが10時半頃だった。通常通りお客様が聖ザビエル天主堂見学に入ってこられる中でのリハーサル。客席に座ってじっと聴かれるお客様がだんだん増えてきた事で本番と同じ雰囲気でリハーサルができた事は自分にとってはよかった。何日も前から思い出す度に緊張していた私だったが朝の観光気分で緊張が吹っ飛び、そのままの気分で本番さながらのリハーサルに臨めた事が私の本番への恐怖感をほとんど消し去ってくれた。さらに7月の下見&打合せからお世話になり、当日も世話役を務めてくれていた明治村の女性スタッフが我々の演奏をすっかり気に入ってくれた様子で、演奏を依頼したらまた来てもらえるのか? など言ってくださったそうで、そんな言葉も嬉しく、本番に向けての自信とやる気がわいてきた。リハーサル終了後は智子さんと2人、キリスト像に向かって最後の神頼み(笑)。こういう場所で演奏させてもらうというのは、なんとなく神様に演奏を助けてもらえるような気がした。
そして本番。さすがに人が入るとリハに比べて音響効果は半減していたが、響き過ぎてモヤモヤしてしまうより良かったかもしれない。また私自身はリハと変わらない精神状態で演奏に臨み、ほとんど普段の練習と変わらない調子で演奏が進んでいった。「A列車で行こう」のピアノとベースのアドリブ時は中央から離れてメンバーの様子を見ていたが、智子さんがとても楽しげな表情で演奏する様子がとても印象的だった。実際後で聞くと彼女は今回全く緊張しなかったそうで、その楽しげな様子がそのままこの日の全ての演奏に現れており、あれなら聴く人を魅了するに違いないと、私もあの演奏に支えられて演奏できる事を頼もしく思い、そんな思いもさらに私の緊張感をほぐしてくれた。おかげで私が一番心配していた「羽を忘れた天使」も、アンジェロでのように緊張で手が震えたり頭が真っ白になる事なく終始自分の演奏ができて、智子さんのピアニカもさらに冴えて、今までで最高の演奏ができたのではないだろうか? この曲を無事終えた事で私の中から完全に緊張が消滅し、本番でありながら演奏を楽しむという、ここ最近の私では考えられない状態で演奏する事ができた。通常本番は普段度々ミスする箇所を気にして演奏が消極的になりがちなのに、不思議とミスを起こす気がしなかったし、ミスそのものを恐れる意識がなかったのかもしれない。今から思うと非常に不思議な状態だった。いつもこういう状態で本番をこなせたらいいのに・・・
いい気分で1部を終え、控え室で休憩しているところに明治村の所長さんが挨拶に来られた。我々の演奏をとても気に入ってくださった様子で、演奏ばかりでなく選曲やプログラム構成、不破氏のMCや作成したプログラムに至るまでお誉めの言葉をいただき、多くの演奏者を見てこられた所長さんにそこまで言われた事に大感激だった。「相当慣れておられる」とまで言われ、実際まだそれほどこういう本番を経験していないだけに、誉め言葉がくすぐったかった(苦笑)。
ほとんどミスなく終わった1部と違い、2部はちょっとしたハプニングがあった。リベルタンゴ、青春の輝きは何事もなく演奏が進んだが、フライ・ミー・トゥ・ザ・ムーンで智ちゃんがスティックを落とすという事故。しかしさすが智ちゃん、それでも落ち着いて演奏を途切れさせる事なく、後から聞くと聴いている人の中にはそんな事故など気付かなかった人が多く、多分私が演奏しながらそのスティックを拾わなければ、誰も気付かなかったのではないだろうか? 智ちゃん本人の悔しい気持ちはよくわかるけど、あのハプニングは聴衆から見たら本番ならではの演出的効果があって面白かったとか。演奏自体は前の週に何度も繰り返し練習しただけあって安定していた。あと1つの事故はラテン・フィエスタでエル・チョクロに切り替わる時。ピアノとドラムのタイミングが合わなかった。何度も本番をやってきてこんな事は初めてだったけど、私の合図の出し方がまずかったかも? 緊張せずに楽しく演奏できたのはいいけど、緊張感がなさすぎて集中力に欠けていたかもしれない。だとしたらごめんなさい。でもそこでも演奏や音楽が途切れる事なく、何事もなかったかのように演奏を進める事ができたのはさすがB.B.Q.のメンバー! この類のハプニングは私もいろんな本番で経験しているけど、案外エッセンス的な効果を出す事が多いもの。そう思って気にせず笑い飛ばせばいい。
プログラムを何枚準備したらよいかと事前に相談した時「100枚程度でいい」と言われていたのに、演奏開始時点で予想以上にお客様が入っていて、1部が終了する頃にはキャパが300名ほどの天主堂の座席がかなり埋まるほどのお客様が聴いてくださっていた。2部は1部に比べると若干少なかったようだが、それは同時刻に阿波踊りのイベントが外であったせいだとか。プログラムを余分に用意しておいてよかった。おそらく明治村スタッフにとっても予想外の集客だったのではないだろうか?
終演後、多くのお客様に「良かった」との言葉をいただいた。本当に楽しんだ様子で言ってくださったその言葉はとても嬉しかった。また、常連客と思われるお客様の中に「今日は当たりだった」とおっしゃる方もあったそうで、自分達も楽しみ、またお客様にも楽しんでいただけたという、理想的なコンサートとなった。
終了後は急いで片付け、閉村までの1時間半ほどをメンバーそれぞれが家族と過ごした。最初に帝国ホテルの喫茶店に入ったら、B.B.Q.メンバーとその家族がみんな来ていた。その後宮田家は私のたっての希望で「たません」を食べる為にレンガ通りへ(笑)。あまり時間がないからそこまで行く時間がないかと思っていたが歩いて15分ほどで到着。えびせんべいにソースとマヨネーズを塗り、半熟に焼いた卵をはさんだ「たません」を、以前から食べてみたいと思っていたのだが、本番を成功させ、最高に気分がいい状態で村内を巡りながら食べた「たません」はとてもおいしかった。この日はかわいがっている姪も来ており、短い時間だったけど両親・姪と共にとても楽しい時間を過ごさせてもらった。まだ小学3年生の姪にはこの一日は退屈かと思っていたが、後から「すごく楽しかった」と喜んでいたと聞いて嬉しかった。いい一日だった。
閉村後楽器搬出開始を待ちながら、今回素晴らしい場所で演奏させてもらえて本当によかったと、しみじみメンバーと話した。もちろん最後の神だのみを聞いてくれたキリスト像に感謝のお祈りを忘れなかった(笑)。明治村という素晴らしい場所で、天主堂という厳かな、しかも音響効果抜群の会場で、B.B.Q.としてこれまで演奏してきた中で最も多くのお客様に聴いていただけるコンサートができたという事は、とても大きな励みと今後への自信につながった。この日終日世話役を務め、我々の為に細々と動いてくださった女性スタッフの方が、我々と顔を合わせる度に演奏を誉めて「呼んだらまた来てくれますか」と何度も言ってくださって「いつでも呼んでください」と言ったら「本当に呼びますよ!」と言われたので「本当に呼んでくださいよ!」と言い返した(笑)。実際トリエンナーレ出演者の中で特に良かったグループをアンコールで招く企画があるそうで、3年後またトリエンナーレ開催時には応募するつもりでいたが、その前にまた明治村で演奏させてもらえるかも? その日に向けてさらに演奏に磨きをかけるべく頑張らなくては! 素晴らしい演奏機会を与えてくださった明治村、本当にありがとうございました!