コンサートレポート
管理人の視点から書き残したコンサートの記録です。
2010.4.3 水戸野シダレザクラにて
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今日は水戸野さくらまつりでの野外演奏。屋外での演奏はあまり経験がないけど、宴席での気楽に聴いてもらうスタイルの演奏はB.B.Q.時代に何度か経験しているし、選曲も難しい曲は一切なく、比較的気楽に臨んだ本番だった。とはいえ、新たに取り組む歌謡曲2曲は音を拾って楽譜にして・・・それなりに手間はかかっている。そこまで準備しないと人前では演奏できない、要は私が不器用なだけなんだけど。不器用な分時間と手間がかかるのはしかたのない事。準備しなくても人前で演奏できるぐらい器用なら、その場のリクエストにも応えられるのだろうけど、そんな演奏は一生かかっても私にはムリだろうな・・・
屋外での演奏に普段使っているゴールドプレートの楽器は使いたくない。だから今回は今の楽器を買う前まで使っていた古い楽器を使おうと、この1週間はこの楽器で練習した。最後の本番で使う直前に調整してあるので、出ない音がある等の不都合はなかったけど、やはり鳴りが悪い。低音をフワっとソフトに歌い込む等のニュアンスが付けづらいので最後までこの楽器を使うか否か迷ったけど、寒さでピッチに悩まされる事が予想された今回、ピッチが高く作られているSERIEUを使うのが賢明だという思いもあって1週間頑張って吹き込んだら、ちょっと鳴りが良くなってくれた。今使っているSERIEVは全体的にバランスのいいピッチで作られているものの、高めに吹きたい時に高めに吹きづらい難しさがある。サックスは高い音を低めに吹くのは易しいけどその逆は難しい。音程の悪さに苦しめられた暴れ馬のSERIEUだったけど、長く吹き込んで手懐けると高音域での演奏は実に気持ちよく吹ける。今のSERIEVはゴールドプレートならではの艶やかな音はいいのだけど、音程の融通が利かず、高くなり過ぎる高音域を低めに演奏する事に慣れた状態だった当初の私には非常に扱いづらい楽器で、慣れるまで2年ほどの間はひどいスランプに悩まされたものだった。今回久しぶりにSERIEUを吹くと、鳴りは悪いし細かいニュアンスも出しにくいけど、高音域の吹き心地の良さがとても懐かしかった。「ああそう、昔はこんな風に吹いていた」と・・・。スランプからほぼ抜け出し、問題なく吹けるようになってきた今だけど、今ひとつスランプに陥る前の状態に完全に戻れていない気がするのは、もしかしたら楽器のせいかも?
1時に緑山邸に集合してのリハーサル。緑山氏は既に会場で忙しく動き回っていて自宅には不在だった。ジャズ系3曲は前回選曲時にスタイルを決めておいたので軽く流し、意外に時間をかけたのがNew Cinema Paradise。ピアニストがこの映画をYouTubeで見て、この曲に対するイメージが大きく膨らんでいた様子で、私もYouTubeで映画を確認して曲に対するイメージを彼女に合わせる事に努めた。とてもいい曲なのに、転調して同じ旋律を繰り返すだけの単調なアレンジで、どう演奏するべきか私も困っていた曲だったので、彼女の提案に助けられた形となった。YouTubeでは7分ぐらいずつに細かく分割されていて見づらい。こんな有名な映画ならGyaoで配信してくれてもよさそうなものなのに・・・以前からこの映画は一度見てみたいと思っていた。YouTubeで根気よく見る時間はないけど、Gyaoで配信してくれたらipodで通勤時間に見られる。(現在通勤時間片道2時間半!・・・(ToT))以後気をつけてチェックしよう。
その他、歌謡曲は進行を確認した程度。「見上げてごらん夜の星を」が、前回選曲時と進行が大きく変わったので、本番忘れてしまわないか心配だったけど、まあなんとかなるだろうという感じ。ピアニストが演奏しながら見ていた楽譜・・・いや、あれは楽譜じゃない。本人にしか分からない記号やメモが書かれていただけのものだった。あんなメモ1枚であれだけ演奏できるなんて・・・あの器用さが本当に羨ましい。
曲順を決めようとしたところに新潟からのお客様が到着。毎年新潟から来られるそうで、緑山氏のmixiでの知り合いだとか。本業は高校の先生というこの人、ドラムはかなりの腕前で、But Not for Meをさらっと手合わせしてもらったけど、何の打ち合わせもウォームアップのない状態でいい感じに叩いてくれた。音楽とは関係ない仕事をしているこの手の達人の知人がなんと増えた事か。本番での曲順は、このライヴに慣れたピアニストに任せた。曲数が多く、いろんなジャンルが含まれる曲をどう並べるか、いつもならこの面倒に頭を悩ませるところだけど、ピアニストが慣れた様子でさっさと決めてくれて助かった。
そして会場へ・・・あのシダレザクラは個人の所有だそうで、会場はその持ち主のお宅が全面解放された形で、地元の人が屋台を切り盛りし、並べられたテーブルでは大勢の人が既にお酒が入って盛り上がっていた。近くで見ると本当に見事なシダレザクラ。ほぼ満開の状態がちょうどこの日程に合ってよかった。こういう桜の大木は薄墨桜しか見た事がなかったけど、それも満開の時期に見た事はないし、花の色が薄いのでイマイチきれいじゃない。その点このシダレザクラは満開でピンク色も思ったより濃くて綺麗。何より、ライトアップで暗闇に浮かび上がるあの姿は幽玄という言葉がピッタリの怖いような美しさだった。こんな桜の名所があったとは・・・
私たちの出番は8時頃だったけど、景気付けに2〜3曲ほど事前に演奏してほしいとの事。音出しもリード選びもできず、マイクも調整されておらず、ひどい状態で演奏しなければならなかったのだけど、ここで演奏させてもらって助かった。寒くてピッチが上がらないだろうという事は予想できていたけれど、寒さで冷え切った楽器がああまで鳴らないとは思わなかった。鳴らないを通し越して音が出ない。楽器が壊れたかと思ったぐらい。力任せに吹かないと音は鳴らないので、微妙なニュアンスなど出せないし、薄めのリードを選ばないと、あれだけの曲数を吹き切ることはできないかもしれない・・・それだけの事を事前に知る事ができて良かった。本番前は早めに楽器を準備し、入念にリードを選んで、低いピッチに備えてマウスピースをしっかり差し込んで、冷たい楽器を吹き込む事に少しでも慣れて・・・十分な準備をして本番に臨む事ができた。
そして本番。事前に2曲吹いた時は思ったほど寒くなかったけど、この本番の時は底冷えする寒さ。帰り道の国道にある電光表示の温度計は1℃となっていた。楽器が凍ったように冷えて、楽器に触れる指先が感覚を失ってしまう。1曲目が一番指を動かさなきゃいけない「But Not for Me」でよかった。こんな曲が後半にきたら演奏できなかったかもしれない。ピアノはもっと辛かっただろうに、少なくとも見た目は普段と変わらない様子で大したミスもせず演奏しているのには感心した。楽器の冷え方が事前に演奏した時よりさらに深刻で、ピッチの低さは想定内で低音域はどうしようもないと諦めつつ中・高音域は問題なかったが、とにかく音が出ないのでまともに音を出す事に必死。せっかく緑山邸でのリハーサルでYouTubeで映画まで確認して微妙なニュアンスにこだわって音楽を作り上げたのに、それを生かす事ができなかった。さらに暗くて楽譜が見づらいのも辛く、演奏の合間に譜面台を色々と動かしてみるのだけどマイクの影が邪魔になるし、その影を避けようとするとライトの光が譜面台に当たらなくなる・・・そうやって譜面台やマイクを動かす度にマイクへのベルの当て方も変わって終始落ち着かなかった。でも、本番前に駆けつけてくれた緑山軽音楽部のベーシストが今回PAを担当してくれたおかげで、スピーカーから聴こえてくる自分の音はとても心地良かった。曲によって演奏スタイルが変わったり、マイクに向けるベルの位置が変わったり・・・それに合わせて調整してくれているのがよくわかった。それにかなりマイクにベルを近づけても音が割れたり歪んだりしない。これまでほとんど生の音で演奏活動をしてきた私、PAを使うのは以前所属していた楽団の定演でポップスのソロを吹くときぐらいだったけど、ただマイクを当てて音を拡大するだけで何の調整もされず、マイクにベルを向けると音がひどく荒れるのでPAを使う事は大嫌いだったのだけど、調整されたPAがこんなにいいものだったとは・・・長く演奏活動をしてきて初めてPAの威力を知った私だった。体が痛くなるほどの寒さで、力任せに吹かないと音も鳴らなくて、とても辛かったのに、スピーカーから聴こえてくる音が心地良かったおかげで、響きのいいホールで吹くような気持ちよさを感じながら演奏する事ができた。もう一つ助けられたのはピアニストがやってくれたMC。「BGM的なライヴ」と事前に聞いていたのでMCは不要かと思っていたのに、他の団体はMCを入れながらの披露で、何もMCを準備していなくて焦っていたら、ピアニストがMCには慣れている様子で、やってくれるというので全て任せたのだけど、気の利いた話を織り交ぜながらの、とても楽しいMCだった。もし私がMCをやる場合、あれだけ話そうと思ったら事前に内容を考えてカンペを作って練習して・・・それだけの準備が必要なのに、何の準備もなくできてしまう彼女・・・客層を見ていきなり曲を変更し、全く準備していなかった曲をサラサラと弾き出す場面にも驚かされたけど、私とは違う経験を多く積んできているのだなぁ・・・と。聴衆に楽しい時間を過ごしてもらう術をとてもよく心得ているな・・・と、いい勉強をさせてもらった。
思えば2年ほど前から増え始めたソロでの本番、常に私主導で進める事が多かった。伴奏をお願いしての本番はやむを得ないにしても、特にMCは皆嫌がるもので、B.B.Q.では年配のメンバーに押し付けていたけど、基本的にフロントの私には嫌と言う事が許されない。一人でフロントに立ち続けるだけでも大変なのに・・・そういう事が当たり前でこれまでは活動してきたのだけど、今回ピアニストが何もかも慣れた様子でテキパキと進めてくれて、私はただ自分の演奏に専念さえすればよかった。パートナーにこれだけ頼って演奏した心強い本番は初めてかも? 逆に何もかもを任せてしまって申し訳なかったぐらい。話を聞くとこのピアニスト、学生時代は放送部に所属したりしてMCは嫌いじゃないそう。私が自分でMCをやると、常に吹きっぱなし・しゃべりっぱなしで口の休まる時がなくて辛いので、本番でのMCを、せいぜい多少話を振られる程度に留めてもらえるならとても助かる。演奏面でもグイグイ一人でひっぱる必要もなく、むしろ安定した演奏でがっちり支えてもらった中で吹けるだけでも頼もしく思っていたけど、ここでは何もかもを私一人で背負う負担からも開放され、何事も皆で協力して進めていけるんだな・・・と思ったら、心強くて嬉しくなった。
ライヴはとてもアットホームな感じだった。ピアノがソロで演奏する間、私は完全に聴衆の中に入り込み、地元の人とおしゃべりしながら楽しく演奏を聴いていた。事前に打ち合わせはあったものの、飛び入りのような形で地元の人が歌うというのも見ていて面白かった。・・・歌った人のお嬢さんはこの事実を知らされてなくて、自分の母親がいきなり出て歌い出すのを見て驚いていたけど(爆)。田舎の人々・・・という言い方は失礼かもしれないけど、皆気さくで話しやすくて、いいものだなぁ・・・と思った。私もそれほど都会に住んでいるわけじゃないけど、近所の人と話す機会などなく、同じ町内に住む人でもほとんど顔も名前も知らない。知らない人々の中に入り込んで歓談する事が日常ほとんどない中、田舎ならではの楽しい雰囲気を今日は味あわせてもらった。
ライヴ終了後、新潟からのお客様も交え、緑山軽音楽部メンバー皆でいつもの歓談タイム。今日の感想や今後の活動の相談、選曲の相談などの話で盛り上がった。今日の私は音を出すのに精一杯だったのだけど、それでもそれなりにニュアンスのある演奏ができていたと、PAをやってくれたベーシストや緑山氏に言ってもらえて嬉しかった。耳の確かな彼らにそう言われるのは嬉しい。日頃の練習の成果が出ていたのかな? 私の音はマイクに上手く乗っていたそうで、ケニーGみたいな瞬間もあったとか? 譜面台が見づらくてちょこちょことマイクを動かし、なかなか落ち着いてマイクをベルに当てられなかったけど、自分の音がマイクに乗ったと感じた瞬間は確かに心地良かった。その時にケニーGみたいに聴こえていたのだろうか? でもそれ以上に、何の準備もせずMCをこなし、あの極寒の中あれだけの演奏をこなしたピアニストの方がすごい。彼女も相当辛かったハズなのに、演奏する姿を見る限りそんな様子は微塵も見せず、とても楽しく演奏を聴けた。あのピアノとPAに支えられて今日はあの演奏ができた事に感謝しなければ。