コンサートレポート

管理人の視点から書き残したコンサートの記録です。

 2010.8.29 清見ウッドフォーラム 野外ステージにて

 
 

 今日は清見のウッドフォーラムでバンドフェスティバル出演。高山方面へ行くのは久しぶり。2時間ぐらいあれば十分間に合うだろうと思いつつ、もし高速道路が混んでいたら・・・と心配して、もう30分早く家を出た。朝早かったからか道は全く混んでおらず、ひるがのSAでのんびり30分近く休憩していたら結局到着したのは集合時間9時のちょっと前。しかし、あんな時間でもひるがのSAの駐車場はほぼ満車状態。みんなどこへ行くんだろう?

 これだけ北へ来ても日中の暑さは岐阜と変わらない。でも日陰に入れば少し風もあって、思ったほど辛くはなさそうな感じだった。前回の下呂のように爆音ではなかったから、他グループの演奏も鼓膜の損傷を心配せずリハも聴いていられた。これならなんとか一日過ごせるか? という感じ。

 そして我々のリハ。初めて使う買ったばかりのピンマイク。足元のモニターから返される自分の音は相変わらずひどい音だったけど、PAさんが前回の下呂と同じ人だったから、信じて任せようと気にせず吹いた。1曲目のMake Up in the Morningでソプラノからアルトに持ち替えるのに、マイクの付け替えなどスムーズにいくか心配したけど、なんとかギリギリ間に合って一安心。スタンドマイクと違ってピンマイクはマイクの存在を気にせず自由に動けるけど、ワイヤーがうっとうしい。ピアノソロの間ステージのセンターから移動するのに、足でひっかけないように気をつけなくては・・・まあ、演奏中身動き取れない辛さに比べたら、大した事ではないけれど。

 リハ終了後、スタッフが拍手してくれた。「リハで拍手する事はないんだけど・・・」って。そして何人もの人が「すごくいい音ですね」と声をかけてくれた。さらに高山でバンド活動をしている年配の人からセッションのオファーまで・・・まだリハーサルだというのに予想以上の周囲の好評にちょっとびっくり。私がクラシック専門だという事は微塵も感じていない周囲の様子に、私自身これまでこの世界を全く知らなくて、どんなに緑山のメンバーがいいと言ってくれても自分がこの世界でどういう評価を受けるのか自信がなかったのだけど、今のスタイルで堂々と吹いていればいいんだ・・・と、とても嬉しかった。セッションに誘ってくれた年配の人には、アドリブができない事を言ったのだけど、それでも構わないと言ってくれる。これまでジャズ系のプレイヤーとの関わりの中では常にアドリブが必須で片身の狭い思いをする事が多かった。無二の相棒であるハズのLa Vie en Roseピアニストでさえ私がアドリブ不可能な事を理解してくれなかったのに、こちらではアドリブができなくても歓迎してもらえる。音色と歌心を大事に音楽に取り組んでいれば、アドリブができないハンデを十分乗り越えられると確信できた事が、今日の最大の収穫かも。

 我々の出演予定は3時半。それまでは常時日陰に避難しつつ、他のバンドをずっと聴いていた。下呂での凄まじい爆音ではないものの、この暑さの中で傍の人との会話ができないほどの大音量の中にいるのはやはり体力を消耗する。出演バンドの大半がロックだったけど、ああいう音楽というのは迫力やノリの良さを求めるものなのか? そういう事を求めて演奏し、聴く人は楽しいのかもしれない。思いっきり叫んで、思いっきり音を出して、スッキリするというのも音楽の楽しみ方の一つであるという認識は持っているつもりだけど、こういう音楽に耳が慣れていない私には、バンド毎の違いが良くわからず、そんな中2バンドほど、しっとりといい声で歌を聴かせてくれた演奏は、素直に気持ち良く聴かせてもらった。本当に心地よい歌声だった。できれば涼しい静かな所で楽しみたかった(苦笑)。取り組む音楽の方向性が同じ演奏は、ジャンルを問わずいいと思う。

 
 

 ずっと日陰にいて、ジリジリした暑さの中にはいなかったのだけど、こんな長時間暑い外にいる事はここ何年もなく、暑さと大音量にどんどん体力を消耗する。立ち上がって歩くのもおっくうになってくる。会場でどう過ごすかわからなかったので何も食事を用意しなかったのだけど、おにぎりぐらい買っておけばよかったか。会場で売られている食べ物はどれも暑い中で食べる気がせず、食べたものはおすそわけしてもらったたこ焼き(肉が入ってた?)と小さなケーキぐらい。こんな中本番前に熱中症になっては大変と、スポーツドリンクばかり飲んでいた。そして本番前出番をそでで待つ間、前のバンドが本番中キーを間違えて最後の曲を何度もやり直し、それを聴いているうちにどんどん疲れてくる・・・こんなんでスペインが吹けるのか? すごく不安だった。

 そして本番。緊張はほとんどしていなかったけど、暑さで体力を消耗した状態が辛かった。十分水分を取っていたけど、ステージに上がると喉がくっつきそうなほど渇いてくる・・・やっぱり多少は緊張していたか? Make Up in the Morningの最初のソプラノが音量のコントロールが上手くいっていなかったか全然聴こえなかったけど、アルトに持ち替えてからはよく聴こえて、リバーブもいい感じでかかってて気持ちよく演奏できた。次のMy Loveも前半は楽に吹けるので気持ち良く吹いたけど、リハでもできなかった後半のフラジオがやはり今日は当たらなかった。フラジオを正しく当てるにはいろんなパワーが必要。今日のような暑さで体力を消耗した状態では無理だと半分諦めていたので、ミスは気にしないで他の上手く吹けるところを少しでも気分良く吹く事を心がけた。フラジオを外した以外は問題なく演奏できたと思う。前半2曲は比較的楽なアルトでの演奏。それでも既にかなり疲れた状態で、後半のハードな2曲を吹き切れるか・・・ここからの心配はそれだけだった。

 あとは気力と集中力を保つ事しか考えていなかった。そういう余計な事を考えられない状態が逆に良かったかもしれない。運指が難しくていつも不安な箇所など、とても冷静に演奏できたので、あんな状態だったわりにミスはしなかったし、息切れする事もなくスムーズに演奏は進んだ。・・・ただ、スペインのアドリブが終盤にさしかかって、面倒なところを全てクリアしてホっとした瞬間、一瞬気が抜けてちょっと指がモタモタしちゃったけど、普段から吹き込んであるフレーズは冷静に上手くごまかせるもの。そう、こういう瞬間の為に普段の120%の練習が必要なんだな・・・。スペインが最後まで無事演奏できた事で気力が戻り、気力が戻ると体力も復活し、情熱大陸はいつもの調子でパワフルに演奏できたと思う。元々不安要素のない情熱大陸。スペインという大仕事をこなした後に演奏するこの曲はいつも格別に楽しい。今日、本番前にピアニストが「曲順を変えようか?」と、情熱大陸を2曲目にしたいと言っていたのだけど、持ち替えを最小限にしたい事を理由に、いつも通りの曲順にしてもらったのだった。屋内の快適な環境での演奏なら持ち替えはあまり気にしないけど、今日のように体も楽器もコンディションを管理できない状態での本番では極力負担を軽くしてほしかったし、おそらく楽器が変わるとPAの調整も変わるだろうから、PAを使う本番は持ち替えは最小限にする事を心がけた方がいいだろうと思っての事だったけど、今日の演奏を終えて、最後の1曲を何の心配もなく純粋に楽しもうと思ったら、やっぱり情熱大陸は最後がいいな・・・というのは私の極めて個人的な希望。

 無事演奏する事だけに専念して音楽は二の次だったけど、最善を尽くした演奏はできたと思う。ただ、アルトは良く聴こえたけどソプラノは自分の音が良く聴こえなかったので音程が心配だった。でも録音を聴いて問題ない事を確認して一安心。音量バランスも、Make Up in the Morningの冒頭ソプラノのみ小さすぎて聴こえないけど、あとは上手くいっていたし、サックスの音は自分の音とは思えないようないい音で入っていた。プロのCDを聴いているみたい(笑)。前回の下呂でも思ったけど、PAを使うと私のクラシックの音が別人のようなフュージョンの音に変わる。セッティングも吹き方も変えていないのに・・・面白いもの。マイク購入時は緑山氏を巻き込んで散々悩んだけど、SHUREを買って正解だったかも。あんな音で吹けるなら今後もPAを使う本番が楽しそう。

 終了後、本当に多くの人から「良かった」「すごく感動した」と言ってもらえた。「緑山が一番良かった」と、4〜5人が言ってくれただろうか? 出演グループのレベルが高いと聞いていたこのバンドフェスティバル。希望しても断られるバンドも多いという中、初出場にしてこれほどの好評価を受けられるとは! 高山ではすごく有名なバンド「PJY」のボーカルさんが向こうから「良かった」と言いに来てくれて、ジョイントライヴをやりたいとまで言ってくれた。私が「いいなぁ」と聴き惚れていたバンドの一つ。本来ならこちらから挨拶に出向くべき相手なのにと緑山氏から聞いて、そんなすごい人からもジョイントの誘いがあるとは・・・この世界で自分たちの演奏がどれくらいのレベルにいるのか? と思ってきたけど、もちろん外に出ればもっと高いレベルのバンドは多くあるのだろうけど、結構自信持ってもいいのかな? と今日は思えた。

 私個人に「良かった」と言ってくれる人の言葉を聞いていると、やはり私の音が今日の聴衆には驚きだった様子というのが一番の印象。クラシック上がりのこの音は新鮮に聴こえるのかもしれない。クラシックからこういう世界に足を踏み入れる事を、アマチュアはあまりやらないものなのか? それとも、そもそもクラシックにちゃんと取り組む人がアマチュアにはいないのか? そして次に「自分はクラシックが専門だ」と言うとほとんどの人が驚いていた。中には「ジャズを教えているのか?」と言う人も・・・「クラシックを習いに行ってる」と言ったらさらに驚いていた。そして「アドリブができないから、音源をコピーして楽譜を起こして、楽譜を見て演奏している」と言う事にもびっくりしていて・・・こちらが言う事全てに驚く、この反応がなんだか楽しかった(笑)。こっちの世界の人って、演奏技術有=アドリブも可能って皆考えるみたいで、La Vie en Roseのピアニストも「あれだけ吹けるのだからアドリブもできるハズ」と言い張って譲らなかったが、こちらの世界の人たちは演奏する事に対する感覚が私と大きく違うのだろうか? アドリブもできないし、畑違いの世界で知識も経験も乏しいし・・・でもそれがいけないという人は、少なくともここにはいなかった。ジャズもフュージョンも誰かから学んだわけではなく、自己流で手当たり次第音源を聴きまくって猿マネしているだけなのだけど、そういう取り組み方でも聴衆にはいい形で伝わっている手応えを今日は十分感じる事ができた。

 こんな風に認めてもらう事は嬉しいのだけど・・・最後のゲストバンドが今日の参加者の中から管楽器プレイヤーをいきなり募り出して、「緑山のステキなお姉さん!」と、多分私の事だったんだろうけど、こういうのに呼び出されるのはちょっと・・・(-_-;)。幸い無理強いされる事なく、他のバンドからサックスの女の子が出てくれて助かったけど。そう、アドリブができないとこういう場面で対応できない。10年近く前、あの須川さんのバックで演奏する形でNHK番組に出演し、本番でアドリブ演奏中の須川さんが私にアドリブを振ってきた事に対応できず、バックバンドに合図を出す役目だった私はエンディングの合図を強引に出すしかなくて、その結果不完全燃焼で演奏に不満が残った須川さんに生放送中演奏をやり直しさせるハプニングを起こしたのも、私にアドリブができなかったせい。それでもアドリブ習得に時間を費やす余裕は全くないので、どんなに残念な目に遭ってもアドリブに取り組む事なく今日に至るのだけど、アドリブを強要せず、このままの私を認めてくれる緑山は、本当に居心地のいいバンドだと思っている。「よかった」と言ってくれる人たちに対して「サックスのおかげでいい演奏をさせてもらっている」と言っていた緑山氏だけど、そうじゃない。みんながいい演奏で支えてくれるからこそ、自力では引き出せない力を皆に引き出してもらって、私の演奏は成り立っているのだから。

 暑くて辛い一日だったけど、とてもいい一日だった。「また来年もぜひ」との事。そう言ってもらえるのは嬉しいし、演奏しに来る事自体はいいのだけど・・・問題はこの暑さ。次に出演するなら早い順番で出させてほしい・・・かも。