撮影終了後、春香は満面の笑みを浮かべての所へ戻ってきた。撮影は若干のアクシデントがあったものの、順調に進み、番組はスタッフからも出来が言いと賞賛の声があがった。
はディレクターと挨拶を交わした後、撮影スタッフが手早く片付けをしている中、春香を連れてホテルへ戻ろうとしたとき、一人の男性が二人のところへやってきた。
プロデューサーさん!」
撮影中、陽気な性格が(にとって)印象的だったスポンサーが駆け足で向かってきた。
「お疲れ様でした!いやー、今日は最高でしたよ!」
そういうとスポンサーは、懐から一つの封筒を春香に差し出した。
「それで、ちょっとした御礼です」
「え……?」
「それでは、また宜しくお願いしますね」
と言い残し、に一言も返す間も無くスポンサーは去っていった。
「何だ?一体…」
「プロデューサーさん…こんなのが入ってました」
いつのまにか封筒を開けていた春香は一つのチケットをに見せた。
「ん…?」
はそのチケットを春香から渡されてそれをよく見る。
「何かちょっとやってみたいなぁ…って思ってたんですけど、明日帰るんですし、ちょっと無理ですよね。これは…あはは」
春香はそういいながら笑う。春香を見たは再びそのチケットを返した。
「へ?」
「…まあ、明日は事務所に帰って報告するだけだから少し遅くなっても構わないし…別に構わないぞ」
「ほ、本当ですか!?」
春香の問いには頷く。それを見た春香はうわーっ!と叫んだ後、はっと気づきプロデューサーにお辞儀をした。


その翌日。
「えへへ…」
(完全に浮かれてるな…春香)
帰りの新幹線の中、春香はデジカメのモニターを見ては一人にやにやしていた。
「プロデューサーさん、これ後でもらってもいいですか?」
「え?ああ、いいよ。事務所にはパソコンとプリンタもあるから事務所についたらやってみようか?」
「はい!お願いします!」
春香はそう言って、再びデジカメを操作して再びにやけていた。
「ただいま戻りまし……た?」
と春香が765プロダクションへ戻り、事務室へ入った瞬間その光景を見て動きを止めた。時刻は7時を過ぎているにもかかわらず、事務室には千早、雪歩、律子、伊織、あずさ、やよい、亜美、真美、真がいたからだ。
『二人とも、お帰りなさい!』
全員の声に、2人は驚く。
「ど、どうしたんだ一体?」
「み、皆何して―――」
「何って…決まっているじゃない?」
春香の言葉を伊織がさえぎる。
「旅行には、外せないものがあるじゃないですか!」
「そうそう」
と、やよいと真。
「え、え……?」
『お、み、や、げ!忘れたとは言わせないからね!』
「…………」
亜美真美のハモリに春香は軽く口を引きつる。
「まあ、そんなに期待してないけどね…春香も忙しかったんだろうし。でも、何かしらあるんじゃないかなって」
その律子の声に春香ははっとして慌ててデジカメを取り出した。
「え、う…うん!一応ある事はあるんだけどね…」
『どれどれ……?』
デジカメを渡された律子は、電源を入れて亜美、真美、伊織と共にモニターを覗く。
「……」
「……」
「……」
「……」
四人は固まったまま、デジカメを凝視していたが、ゆっくりと伊織が春香の方を振り向く。
「はぁ〜るぅ〜かぁ〜?」
顔は笑顔。声は殺気立った状態で。
「これはお土産って言わないんじゃないの〜っ!?」
そして、ゆらりと春香のところへ近寄った後、伊織は後ろへ回って春香の首を締める。
「く、苦しいよぉ〜!伊織〜っ!」
「ま、こんなこととは思ったわ…」
そんな二人の光景を見て、律子はデジカメの電源を切りながら言い、テーブルにデジカメを置く。
「…?」
雪歩は、デジカメを手にとって電源を入れる。それを亜美真美たちと同じようにモニターを覗いたあずさは、あら、と声を出した。
「まぁ〜春香ちゃんの舞妓姿ですね〜」
モニターには祇園の街をバックに着物に花かんざし、そしてメイクを施して舞妓に変身した春香が写っていた。
「うわーっ!すっごく綺麗ですね!」
「素敵ですねぇ…はぁ…見とれちゃいますぅ…」
「へぇ…羨ましいなぁ…」
「ぎ、ギブギブギブ!」
やよい、雪歩、真、千早がその春香の写真に見とれている中、まだ伊織は春香の首を締め続けていて、そして、その傍らで亜美と真美がに対してブーイング。は慌てふためいていた。

そんな765プロダクションの夜はゆっくりと更けていったのでした。

THE IDOLM@STER Side Story
LOCATION PARADICE -Haruka"Kyoto"-
THE END