躰による拒否


【遊戯王 ハトカイ】




大きな手だ。
成人を間近に控えたカイトよりも尚、歳を重ねた男の掌は同じ男の身体とは言え天地ほどの体格差がある。
その大きな手に掴まれた自分の細い腕などでは、到底その力に抗うことなど出来ない。
抵抗すれば容赦なく手折られるだろうことは想像に難くない。
しかし、その僅かな抵抗の自由すらもカイトには与えられていなかった。
──抵抗すれば、どうなるか……わかっているね?
弱みをちらつかせてなお僅かな抵抗すら許さないとばかりに強く掴まれた手首は早々にベッドへ縫い止められた。
耳にささやく掠れた声音の生暖かさに総毛立つ。
肌を這いまわる湿った感覚に凍りつく。
胸への愛撫も性器への直接的な刺激さえも、快感ではなく嫌悪に直結してしまっていた。
唇を食まれても歯列をなぞられても、生暖かい舌に口内を蹂躙されても感じるのは不快感だけ。
どろどろと垂らされたローションが卑猥な水音を立てる。
十分に解されたそこが男を受け入れても、気持の悪さが消えることはなかった。
自分勝手に動いて、自分だけ快楽を追って。
生暖かい精液をカイトの中へ放って、男はそのまま自分一人身なりを整えカイトの部屋を出ていった。
後始末なんてして欲しくない。
用が済んだらさっさと消えて欲しい。
不意に意識を取り戻しよろよろと身体を起こした頃には身体に張り付いた精液やローションがぴりぴりとこびり付くほどに乾いていた。
身体を洗わなければ……。
あの男はあと数時間も経たないうちに、深夜のことなどお構いなしに、今度はナンバーズを集めるよう催促に来るだろう。
漸く洗面所へたどり着いたカイトは、不意に昨夜の感覚を思い出してしまい、弾かれたように身体を前方へ折った。
喉の奥から、もしかすると胃さえ通り越して体中のあらゆるところから男の感覚が出て行っているのかもしれない。
そうだ、このまま全部吐き出せばいい。
引き攣るような喉の痛みと、胃酸の饐えたような臭いにじわりと涙が滲む。
胃の中の物を全て吐き出して、胃に入っていないものまで全て吐き出して、それでも全て吐き出せないことに、涙ではない何かが零れ落ちた。