ごめんとかもうしないとか 容易く騙さないで
【遊戯王 Vカイ】
貴方が苦しむのは見たくないから。
貴方が求めるのなら、与えたいから。
「カイト……」
いつも俺を気遣ってくれる貴方の優しさに少しでも報いたくて。
俺に助けを求めるように伸ばされた白い腕に応えたくて。
貴方を愛しているから。
愛しているからこそ、俺は今日もまた、本当の言葉を飲み込むのだ。
「…っ……ひ、ぅア…ッ」
抉るように内壁を突き上げられ、自制の及ばないそこはカイトの意志とは無関係に打ち震える。
はじめこそそれは快楽故の反応だったのかもしれないが、今となっては快楽などという生易しいものではなく、ただ泥のように全身を蝕む苦痛でしかなかった。
強すぎる快楽はむしろ責苦でしかない。
ぎりぎりと真綿で首を絞められているかのように、ゆるやかにしかし確実に気道と血管を締め付けるような感覚。
文字通り気が狂う程突き上げられ揺さぶられ続け、爪先は丸まり、腰が震えた。
身体の内側からも外側からも灼熱の業火で焼きつくされるかのような熱はカイトの身体をじりじりと蝕み全身を焼きつくしていくのだろう。
一方的かつ永遠に与えられる快楽は、例えそれがどんなに愛しい人から与えられるものであっても地獄に等しい。
身体も心もぐずぐずになって形を失ってしまえれば楽になれる。
それなのに、意識を手放すその寸前で、カイトの耳元で彼が囁くのだ。
「ふ……浅ましいなカイト……」
「……ふ、ぁ……」
耳元に吹きこまれた吐息と、一層深く挿入された圧迫感にカイトは頼りなく声をもらす。
慣らされもせず捩じ込まれたそこが引き攣るような痛みを伝えてきたのも最初だけ。
散々クリスによって慣らされた内壁は、最早どちらのものとも判断つかない体液によって十分な潤いに満ちていた。
ぐちぐちと湿り気を帯びた肉同士の擦れる音が耳を打ち、クリスの昂りがカイトの最奥を穿つ。
思わず逃げを打つ細腰を両手で掴み引き寄せながら、カイトはあまりの衝動にこのままクリスの怒張に引き裂かれてしまうのではないかと全身を戦慄かせた。
やがて、一方的な快楽だけを無心に追って、クリスは引き寄せたカイトの中に熱い精液を叩きつけた。
「……い、あ……ァ……」
クリスが射精し律動が収まったことで、カイトの身体が弛緩した。
恐怖で凝り固まった身体から力が抜けるに従って、一呼吸分遅れるようにカイトの性器の先端から白濁が溢れる。
快感か、それとも前立腺を刺激されたことによる生理的な反応か。
カイトは達した感覚を拾いきれぬまま、ぐったりとベッドへ身を沈めた。
「まるで一滴残らず搾り取ろうとしているようだぞ…」
カイトの中へ己を沈めたまま、クリスはカイトを見下ろして口端を吊り上げる。
射精を終えた後も反動でひくひくと収縮を繰り返した内壁がクリスを締め付けているのがカイトにもわかった。
溢れた精液がどろりと溢れ双丘を伝い落ちる感覚に、カイトは最早身を震わせる余力さえ無かった。
ずるりとカイトの中からクリスの性器が引き抜かれていく。
泥のような身体と意識を捨て去るようにカイトは意識を失った。
力なく伏せた瞳からつうと涙が伝い落ちる。
その涙を見たクリスが、蒼白としたカイトの表情を見下ろしてはっと息を呑んだ。
「カイト……」
呼びかけにぴくりとも反応しないカイトの背に手を回し、クリスはその薄い身体を愛おしそうに抱きしめ声を震わせた。
「カイト……すまない。私が悪かった」
噛み殺した嗚咽と一緒に、カイトの唇にクリスの薄い唇が重なる。
「もうしない。もう二度と、君にこんなことは……」
ゆっくりと抱きしめられながらカイトは静かに泣いた。
悪いのは俺だ。Dr.フェイカーによって人生を狂わされたクリスが、息子であるカイトを恨むのは当然だ。
だから、どうか謝らないで。
もう二度としないとか、そんな言葉を軽く伝えないで。
俺に期待をさせないでくれ──。
何度も囁かれた謝罪の言葉に、それでも縋り付こうとしてしまう自分の心が憎かった。
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フェイカーとトロンのことが解決したあとも【V】という人格が消えずにたまに出てくるっていう二重人格設定。