目薬のさし方



春、桜満開。

この時期はマンションのリビングからでも、桜の景観が楽しめる。



うっ・・・また目が痒い・・・。

ああ、花粉症じゃないぜ。

和也さんと食料の買い出しに行ったショッピングセンターで、ゴミ・・・っていうかホコリ?が目に入って、あれって最初は痛痒いよな。

思わず目をゴシゴシ擦ってしまった。

帰ってから、すぐ目薬さしたんだけどな。

まだ充血してるっぽい感じだ・・・目薬、目薬っと・・・。

あれ?無い、おかしいな。ちゃんと戻しておいたのに。


「和也さーん!目薬が無いぜ!」

キッチンにいる和也さんを呼びつける。


・・・その手に持っているのは何だ。

「使ったら戻しとけよ。オレにはいつも言ってるくせに」

「使っていません」

「使ってねぇんだったら、何で持ってんだよ」

いつもオレに煩く言ってるもんだから、戻し忘れたって言えないんだぜ。

ここは一気に日頃の仕返しをすべく、イヤミたっぷりな決定打をお見舞いしてやる。

「料理の隠し味にでも使うつもりかよ」

フフンと言い負かせた気分で和也さんを見たら、いきなり手をはらわれた。

痒いので無意識のうちに目を擦っていたようだった。

「汚い手で擦らないの。見てごらん、君が使った目薬。料理の隠し味に使っても、こんなに減ることはないよ」

はあ・・・?普段から細かいけど、ここまで細かいとは思わなかったぜ。

「いちいち目薬の量までチェックすんなっ!」

と、呆れ顔で叫んだら、何故か和也さんも呆れ顔だった。

「まだわからないの?量じゃなくて、君の目薬の使い方を言っているんでしょう。
さっき黙って見ていたけど、何度もさしてその度にテッシュで拭いて・・・」

何で?一回や二回さしただけじゃ痒み取れねぇし。

それに、テッシュで拭かないと流れるじゃんか。

「案の定、目薬を確認したら半分以上減っていたよ。
君の使い方が正しいのなら、目薬がこんな小さい容器なわけがないでしょう」

うっせぇな。だったら、その正しいさし方ってのを教えろよ。

和也さんがオレの腕を掴んで、リビングに向かう・・・ちょっと?

何でソファに座る必要があんだよ!

これって、まさか・・・

膝の上をポン、ポン、と叩いて、

「明良君、さしてあげる」


やっぱりっ!!


「どうしたの?おいで、さし方も教えてあげるから」





※後書き

どうやら最近の明良は尻を叩かれるよりも、構い倒してくる和也さんに神経質なようです。

うっざーっ!!・・・みたいな(笑)

ちなみに和也が膝の上をポン、ポンと叩いているのは、耳掃除のときと同じく〝ここに頭を乗せなさい〟と促しているのです。
Luckyが子供の頃は、そうしてさして貰っていました。
しかも液が落ちるタイミングで目を閉じてしまうので、親が瞼を指で開けて固定^^;
たぶん明良のところも、同じシュチエーションが繰り広げられていると思います(笑)


目薬のさし方(普通の)は、一滴もしくは多くても二滴をさした後、瞼を暫く閉じます。
テッシュは瞼を閉じて頬に流れた分、つまり溢れた分のみを拭き取ります。

Luckyの周囲だけでしょうか、意外とドバドバ目薬をさす人が多くて・・・かく言うLuckyも昔は三滴、四滴さしてはテッシュで・・・自分のことかーい!(笑)


2012.4.17







まだまだ冷房



もう九月も二周を過ぎるってのに、いつまでも暑いよな。

和也さんが出掛けた後、リビングのソファに寝っ転がって汗だくの体を擦りつける。

ゴシ、ゴシ、ゴシ、っと。

へへっ、オレのささやかな仕返し♪

それからエアコンを20℃にする。

あー、気持ちいい。快適、快適、うるさいのもいねぇから、尚更快適。

の、はずだったんだけど、ソファに寝っ転がったのが運の尽きだったぜ・・・。



バシッ!! ベシツ!! バチーンッ!!

「ふわあぁっ!!いっ・・!?痛ってぇ!!何しやがんだ!!このヤロー!!」

突然の尻の痛みに飛び起きると、もう条件反射で言わずと知れた人物に掴み掛かる。

しかしまだ半分寝ぼけていたようで、あっさり避けられたあげくべしゃっとカエルのように床に両手をついてしまった。

格好悪りぃ・・・。

「何じゃないでしょう、こんなに部屋の温度下げて。しかもそんな中で寝ているなんて、風邪引くよ」

「まだ全然真夏並みの暑さじゃん!それなのにオレの部屋エアコンねぇし!
心配してくれんなら、風邪よか熱中症だろ!」

一気に捲くし立てて、スカを食らった体を起こそうとしたら・・・起こせない??

「明良君・・・汗くさい。君、また汗だくのままソファに寝たね。
いつも言っているでしょう、汗をかいたら先にシャワーを浴びなさい」

「そうだよな。そうするから、離せ」

オレ、片腕捻じり上げられてんだけど・・・何で?

「懲りないからでしょう」

パチ〜ンッ!!

「いーたーいぃっ!!」

手を離されたはいいけど、叩かれた反動で再びカエル状態に。

ああ尻痛てぇ・・・何?私は手が痛い・・・?

ふぅ?気が済んだみたいなため息つきやがって!!

オレのは、ささやかなのに!これじゃ割が合わねぇ・・・。

くそぅっ!!これもみんな、オレの部屋にエアコンがないからだー!!


こうなったら実力行使あるのみ。

自分の部屋に戻って、親父に電話を掛ける。

「もしもし!オレ!」

[ 明良、どうした? ]

「和也さんとこのオレの部屋に、エアコン付けてくれよ!」

[ エアコン?そう言えば付いていないって言っていたな。まだ付けてもらってないのか! ]

「ケチだからさ。親父、一刻も早く頼むぜ!」

[ それだったら、こっちに帰って来たらどうだ!?母さんにとられたお前の部屋、新しいの用意しておくから ]

「はぁ・・・?何言ってんの、親父・・・」

[ 母さんも最近はあまり家に居ないし、父さん食事の時も一人で寂しいしな ]

・・・よく言うぜ、今頃になって。

「オレを和也さんのところにやったのは、親父じゃん」

[ もういいぞ!明良、帰って来い!父さん家で一人ぼっち・・・ブッ!・・・ん?もしもし?・・・明良?明良ー!? ]

そう言や、そろそろ晩メシの時間なんだよね。

携帯を放り捨ててリビングへ行ったら、キッチンからいい匂い。

「ああ、ちょうど良かった。明良君、もうすぐご飯だよ。お皿並べて、深皿ね」

「この匂いは、ミネストローネだっ!」

「野菜と豆、キノコもたっぷり入っているよ。もちろん、君の好きなショートパスタもね」


俄然、腹減ったー!





※後書き

帰って来い!の、明良父。さて、本心でしょうか^^
何となく、話を逸らした感がしないでもありません(笑)
明良自身は、もうすっかり家に帰るという選択肢はなくなっているようです。

一票入っているのを見て、まず和也の話が短編で思い浮かびました。
和也の方についてはもう少し時間が必要ですので、書けましたら番外4としてアップしたいと思います。
短編なので、話の長さとしては番外3くらいになると思います。
こちらはその短編の後に続く話で、明良側から書きました。
後先逆になりますが、内容的には差し支えはありません。

短い話ですが、まず明良をお楽しみいただけたらと思います。


2012.9.14







チャンネル争い


enqueteより

・ あの兄弟がたまらなく好きです。日常もお仕置きも。



11月中旬、木枯らし1号が吹いてぐっと秋が深まった日曜日。


休みの日でも起きる時間は同じだから、何も用事のない休日はやたら一日が長い。

もう昔みたいに直人たちと遊び歩くこともないし、第一そういうのからは俺も直人も卒業。

昔っていっても一年前くらいのことだけど、オレなんか生活がガラッと変わったからすっごく昔に感じる。



「もうすぐ期末考査なのに、そんなにダラダラTVばかり見ていて間に合うの。
それでなくても君は同学年の平均より随分遅れていたんだから」

台所で晩飯の下ごしらえをしている和也さんが、リビングで優雅にTVを見ているオレに難癖をつけてくる。

間に合うのかっていうのは、勉強のことだ。で、随分遅れていたっていうのも勉強のことを言ってんだよ。

「とか!解説しなきゃなんねぇくらい持って回った言い方すんな!それにオレにはオレのペースがあんだよ!」

「誰に解説しているのかは知らないけど、いままで君のペースでしていたから分数の割り算も出来なかったんでしょう」

いつの話してんだ?オレの一年に渡る努力の成果を全然わかってくれてねぇ!

「それは去年の話だー!」

「そう?この間の国語、漢字の書き取りほとんど×ばっかりだったでしょう。
文章問題はまるっきり解釈不足だし、数学ばかりが勉強じゃないよ」

ピッ!

おろっ!?

台所から出て来た和也さんが、勝手にチャンネルを変えた。

「オレ見てんじゃん!」

「ニュースの時間だから」

・・・いや、それ24時間ニュース専門チャンネルだし。

ピッ!

「晩飯作ってるくせに!」

ピッ!

「まだ夕食には早いよ」

じゃ、何でエプロン着けて穴あきお玉持ってんだよ!

てか、リモコン放せ!

「和也さん、自分の部屋にTVあるだろ!」

「昼間は用事しながらだから、出たり入ったりが多くて便利が悪いんだよ」

「それだったら、オレが和也さんの部屋で見りゃいいってことだよな」

「私の部屋は立ち入り禁止です」


ぶちっ!! 堪忍袋の緒が切れた。


乱闘に突入。

明良、お玉とリモコンを持った和也に飛び掛かる。

和也、躊躇いなくリモコンの方を投げ捨てる。

二人組み合うも、穴あきお玉を持ったままの和也はやや不利な体勢となる。

明良、押せ押せ。

和也、バランスを崩しながらも、穴あきお玉は放さず。

明良、しゃあっ!掛け声一発、蹴りを繰り出す。

が、しかし、蹴りが入るコンマ何秒か手前で、和也に軸足を払われて倒される。

和也、すかさず明良の尻を一発、バチーンッ!



これって何かおかしくね?

乱闘後、部屋に戻って親父に電話を掛ける。

もちろん実力行使でオレの部屋にもTVつけんだよ!


「もしもしー!オレ!」


[ 明良!今度はTV?ふん、ふん、何だそれは!理不尽だな!
エアコンやTVぐらい揃えてやるから、すぐ帰っ・・・プープー・・・明良?明良ー!? ]




「理不尽か・・・。何となくわかるんだけどな」

言葉の意味を検索してみた。

【物事の筋道が通らないこと。道理にあわないこと】


これだよ!これ! 理不尽!

言葉の意味がはっきりわかると、よけい腹が立った。

このままオメオメと引き下がれるか!


もう一回乱闘覚悟で、リビングに戻る。

「おい!和也さん!・・・あれっ?また台所かよ」

「呼んだ?ちょうど良かった、呼びに行こうかと思っていたんだよ」

何やら和也さんが湯気の立った深皿を、いそいそとテーブルに置いた。


「あーっ!栗だ!」

「今年初めてだね、今日はリビングの方で食べようか。明良君、小皿持って来て」

栗を茹でてたのか。

和也さんは湯がきたての栗をナイフで器用に剥くと、小皿に乗せてオレの前に差し出した。

「どうぞ」

丸ごと一個。手づかみで口に入れる。

「うまーっ!!ホックホク!!うーまーいっ!!」

「美味しい?良かった」


TVは経済ニュースの特集をしていて、有名ホテルの景気動向が流れていた。

「うおっ!?ホテル森之宮の名前が出てる!!」

「一流ホテルといえども、今年は全般的に厳しいみたいだね。私たちの店舗にも影響することを忘れてはいけないよ」

そうか、'lumiere' (リュミエール)は森之宮に入ってんだもんな。

'soleil'(ソレイユ)みたいに単独の店舗じゃないから、ホテルの景気と連動するところが大きいんだな。

そんなこと今まで考えたこともなかった。


小皿にまた一個、頃合いを見計らったように栗が置かれる。

パクッと、ひと口。

「美味い〜!」

「ところで、さっき何か用があったんじゃないの」

「さっき?ああ・・・何だっけ。たぶん腹減ったってくらいのことだよ」

「そう・・・」

「あっ、森之宮だ!やっぱ、あのシャンデリアは凄いよなぁ!'lumiere' (リュミエール)も映んねぇかな!」

「映るといいね」

和也さんは栗を剥きながら、嬉しそうに言った。

・・・どっちが嬉しいのかな。

'lumiere' (リュミエール)が映るのと、栗が美味いのと。

まっ、どっちでもいいけど。

とにかく和也さんの理不尽な行為は、栗で許してやることにした。





※後書き

最終的にホクホクの栗で和也の理不尽さを許した明良ですが、
それが栗だけにあらずということころに明良の成長を感じていただければ嬉しいです^^

そしてここでも登場、明良父。
会社では「右!」と言えば全員が右を向くワンマン社長も、明良にはカラブリ、カタナシ、カラッキシの三K^^

和也はナンダカンダで、やっぱり明良に構い倒し。
明良の食べるペースに合わせて、1個1個栗の皮を剥いてやる和也さん^^


和也が一番嬉しかったのは、明良が少なくとも自分に関わるニュースに興味を示してくれたことだと思います^^
そしてあらかじめ、ニュース番組にホテル森之宮が出るのを知っていたとも思われます。

結局明良は、和也さんと仲良くTVを見ました(笑)


多少の理不尽さも、兄弟ならではというところでしょうか^^


日常の明良と和也です。
また〝お仕置き〟についてですが、ちょうど良い機会なので少しお話しておきたいと思います。
最近では(二部Roundから)明良も成長し、ほとんど〝お仕置き〟という言葉が当てはまるような出来事はないと思います。
物足りないと思われている方も多くいらっしゃることと思います。
しかし話の方向性として、どうしてもそうならざるを得ません。
ただ自分でも自覚していることなので、Luckyとしては出来るだけスパとして物足りない部分を、
二人の色々なエビソードで補って行くことが出来ればと思いながら書いています。

今後ともこんな感じで二人の日常は続いて行きますが、ご賛同いただければ嬉しく思います。


2012.11.13







優しさの値(あたい)


enqueteより

・明良君の成長が楽しみ♪秋月さんの厳しい様で優しさが大好き(^^)



〝優しい?〟

ケッ、どこが優しいんだよ。

いいか、よく聞いてろよ。


「おーい、和也さん!」

「何?」

オレが呼んでんだぜ!?

鍋の火を止めて、オレの前に来るのが筋じゃね。

ま、いいや。今日は勘弁してやる。

「なぁ、正月温泉行くんだろ?」

「行くよ」

「じゃ、オレも・・・」

「嫌」

うがっ!

なっ!なっ!いっつも、こんななんだぜ!


「誰が連れてってくれって言ったよ!へっ、オレも直人と行くんだ!お・ん・せ・んーっ!!」


「・・・君たちだけで?」

「まさかぁ!オレが正月どっこも行くところないって言ったら、直人の兄ちゃんが一緒に行くかってさ。優しいよなぁ!」

直人の兄ちゃんは、向こうから言ってくれる。こういうのを、優しいって言うんだよ。


「そう、良かったね」

何だよ、一言だけかよ・・。

和也さんはまるで興味がないみたいに、すぐ鍋の方に目を向けた。

自分が休暇取ってる時は、オレが誰とどこに行こうが関係ないんだよ。

ま、オレもその方が、うざったくなくていいけどね。


・・・TVもつまんねぇし、晩飯まで試験勉強の続きでもするか。

部屋に戻って勉強していると、直人から電話が入った。


[ もしもしーっ!!明良!?明良ぁ!! ]

何だか直人が興奮している。

[ さっき、兄ちゃんに和也さんから電話があってさ! ]

和也さんから?・・・そういえば直人の兄ちゃんとは、何度か電話で話したことあるって言ってたな。


[ 正月、よかったら車使って下さいって、外車だろ!!プジョーだろ!!
傷でもつけたら大変だからって断ったらしいんだけど、気にしなくていいからって言われたって!兄ちゃん舞い上がってんだよ!! ]

直人の兄ちゃんの車は、中古の軽だもんな・・・。

てか、いっつも勝手に余計なことするんだ。電話が終わったら文句言ってやる。


[ 俺もまたあの車乗れると思うと嬉しくてさ!
正月いろんなところ連れてってやるからなって兄ちゃん言ってたし、んでその後に風呂だ!!楽しみだな!!明良!! ]

言うだけ言って電話切りやがった。単純な奴。




夕食はポトフ!

じゃがいもやブロッコリーやソーセージや・・・ま、ごった煮のことだ。

熱々のじゃがいもを、はふ、はふ、はふう・・・美味い!

ソーセージは歯を立てて、パキュッといい音!うま・・・はっ!?忘れるとこだった!

「おい!和也さん!」

「はい?」

「直人の兄ちゃんに電話しただろ!余計なことすんなよ!」

「君が私のところで生活している限り、私には責任があるからね」

「正月は、オレは自分家だ!和也さん関係ねぇじゃん!」

「社長は大晦日から三が日まで、ハワイで接待ゴルフの予定です。
夫人はお仲間の方たちと、三が日は陶芸の里で泊まりでしょう」

えっ!お袋の予定は知ってたけど、親父もかよ!

信じられねぇ!オレ、最悪・・・。


「お正月はご夫妻が不在だから、君のことは圭一君(直人の兄ちゃん)によくお願いしておいたからね」


くそっ!文句言うつもりが、親父たちのせいで反対に恩着せがましく言われたじゃねぇか!


「あ、そうそう。圭一君が言っていたけど、温泉って彼の家の近くの温泉風呂なんだってね。近くに温泉があるって良いね」

直人の兄ちゃんも、ペラペラ余計なこと言い過ぎなんだよなぁ。

温泉っていっても、いわゆる温泉銭湯風呂ってやつだ。

オレが見栄張ったのバレバレじゃん・・・。

しかも近くて良いなんて、あきらかに自分の行く温泉と比べて馬鹿にしてんだぜ。


「それから車に乗るときは、直人君と助手席の取り合いをしないようにね」

いちいち、うるせぇんだよ。

「君たちはすぐケンカするから、くれぐれも圭一君の運転の邪魔をしないように・・・」

・・・黙れ。

「気が散ると運転中は本当に危ないから・・・」

うがーっ!!

皿の中身をガガガーッと、かき込んで!

「お代わりーっ!!」


〝うざい〟の間違いじゃねぇの?





※後書き

お正月どこにも行くところのなかった明良ですが、
ようやく楽しいお正月を迎えられそうです^^

和也は直人の兄の圭一から話を聞いて、とてもありがたく思ったことでしょう。
明良だけでなく、彼らにも喜んでもらいたい。
そこで、以前直人が乗った時にとても喜んでいたことを思い出し、
自分の愛車を使ってもらうことを考えたのだと思います。

もちろん直人兄弟は大喜びで、その余波はちゃんと明良にも。
お正月三が日はドライブ三昧。
そして一日の汗を、温泉銭湯風呂で流すと^^

コメントを早くに頂いていたのに、お返事が遅くなりました^^;
こんな感じの小話は、いくら書いても楽しいです。


2012.11.25







どっちもどっち


enqueteより

・ 明良を和也さんが叱る、という明らかな上下構図とどっちもどっちの喧嘩構図の存在のバランスが大好きです。



今年の冬は、高校受験なんだよね。

オレは私学が嫌いだから和也さんと相談して公立の進学校にしたんだけど、今んところ偏差値はギリギリ。

これからの追い上げに掛かってるのは、和也さんが一番よくわかってんじゃね。

何っても、オレの教育係だろ?



「明良君、まだ掃除してないの?いつまで掃除機置きっ放しにしているつもり」

「見てわかんねぇのかよ、オレ勉強してんの。今度の期末で粗方受験校決まるって言ったのは和也さんだろ。
それに掃除機勝手に置いてったのは、そっちじゃん」

「掃除機を掛けるくらい10分もかからないでしょう。今まで散々勉強の手を休めていても何とか学力を取り戻せたんだから、
今さら10分くらい勉強の手を休めてもどうってことないんじゃないの」

ん?・・・これは褒めてんのか?

嫌味はしょっちゅうだけど、褒められるなんてことはないから一瞬戸惑ってしまった。


「褒めたつもりはないんだけど、もし勘違いしたなら国語の文章問題の解釈不足も頷けるね」

頷けるかーっ!!

「ワザと勘違いさせるような言い回ししやがって!!」

「やっぱり」

んがっ!!←注:何故か明良の頬が赤い。

余計なト書き入れんな!!

くそったれ!シャーペンを投げ捨て飛び掛かる、うおりゃあーっ!!


カツッ。


あ!?あぁ・・・いっ!

「い!い!いー!痛てえぇぇーっ!!!」

転げまわる痛さ。

掃除機に足の小指が当たってしまった。

経験ある人にはわかるだろうけど、痛さ半端ねぇから。


気が付いたら和也さんの足元に蹲っていた・・・よりにもよって。

「さっさとしないからそんなことになるんでしょう、自業自得だね」

これは自業自得なのか・・・?てか、笑ってやがる。

ちょうどオレの鼻先に和也さんの足。へっ、勝負はまだついてないぜ・・・。


「足、臭せぇぞ」


ちょっ!

電光石火、明良のスウェットパンツが引き摺り下ろされ(力任せに)

まっ!

問答無用、パーンッ!! 半ケツ状態の明良の生尻に和也の捺印(手形)

ふぎゃあ!


「君と一緒にしないでくれる」


冷静な振りして(言動が)、メチャクチャ冷静さを欠いてないか(行動が)!?

けどこの勝負、オレの勝ちだよな?

〝肉を切らせて骨を断つ〟

苦手な国語もちゃんと勉強してるだろ♪ 満点だぜ!

秘書課の奴らって、こういう言葉に弱いんだよ。

高田さんは吉川さんに〝鼻くそ〟って言われて悲鳴上げてたし、進藤さんは〝目くそ〟で半狂乱だし。

そうそう、進藤さんにはカッパも効果的!ぎゃははっ・・・あひゃ!?いひゃい・・・。

ぎゅうぅっ!・・・抱っこのぎゅうぅっ!じゃないぜ。

頬っぺたっ!両方から引っ張んなーっ!


「くだらない時間潰している暇ないでしょう。それでなくても偏差値ギリギリなのに、全く・・・。
とにかく掃除機使い終わったらリビングに持って来てね、10分以内に」

先にリビングすりゃあいいじゃん。

とは思うものの、これ以上逆らうには足の小指、尻、頬っぺたの負傷は致命的・・・。

仕方なく適当に掃除機を掛けて、5分でリビングに投げ返してやった。


はあっ・・・年末が近くなると掃除、掃除ってうるせぇんだよな・・・と、携帯、携帯。

「もしもし、オレ!正月のハワイ和也さんから・・・すまん、すまんじゃねえよ・・・え?
・・・そうそう、勉強してんのにさ・・・掃除・・・・・・へぇ、そんな物あんの・・・うん、わかった」


うほっ、楽しみ〜、やっぱさすが親父だな。







翌週―。

「明良君、部屋の掃除まだでしょう。掃除機持って来てあげたから・・・」

「掃除機?要らね。どこが汚れてんだよ、よーく見てみろ。ちゃーんと掃除してくれてんだろ」


へへへ、オレの部屋は掃除ロボットの 〝お掃除サンバ〟が仕事中。


「どうしたの、これ」

「親父が買ってくれたんだよ」


和也さんが、じーっと 〝お掃除サンバ〟を見ている。

これがなかなかの仕事振りで、あきらかに和也さん好みなんだよね。

「いいだろ、便利だし。和也さんも使うときは貸して下さいって言ったら、いつでも貸してやるぜ」

「そう、ありがとう。部屋の掃除も出来ているんだったら、リビングにおやつ置いてあるから冷めないうちに食べて」

和也さんはそのまま掃除機を持って出て行った。

あれ?意外とあっさり引っ込んだ。

ひと言貸して下さいって、言やぁいいのにさ。

ま、言わねぇってわかってるけど。

さて、おやつ、おやつ♪


「うおーっ!!焼きイモだ!!」

丸ごと一本。ちょっと皮が焦げてて、まだぬくぬく!

皮をペラ、ペラ、あちっ、ペロ〜ン、ペラ、と剥いて。

「いっただきま〜す!!」

ほふっ、ほふっ、ほふうぅ・・・甘いー!柔らかーい!美味ーい!


「美味しい?今年は冬が早く来たから風邪を引かないように、体の温まるものがいいね」

ダイニングで和也さんがオレに言っているんだと思うんだけど・・・何故か顔は下を向いている。

ん?同じく視線を落とすと・・・ 〝お掃除サンバ〟がっ!


「それ!オレのサンバじゃん!」

「明良君、部屋のドア開けっ放しだったでしょう、勝手に出て来たみたいだよ。
でも、本当に便利だね。小さなゴミも吸い取ってるし、これなら時間の活用も広がるね」

何、嬉しそうな顔して言ってんだよ。

そんだけ絶賛するなら、貸して下さいって言え。

「貸して下さいって言ったら、いつでも貸してやるぜ」

すでにダイニング、掃除してるけど。

「・・・あ、ほら、そっちに行ったよ。君のボロボロこぼした焼きイモの皮くず・・・綺麗に掃除してくれて、助かるよ。
また掃除しなくちゃいけないところだったからね」

貸して下さいとは口が裂けても言わないまま、和也さんは台所の方へ行った。


〝お掃除サンバ〟が、オレの足元でクルクルクルクル回っている。

要するに共有部分はオレのゴミもあるから、お互い様でしょってことを言いたいわけだ。

「イモ、美味い・・・」

時間の活用か・・・。

丸ごとをこれだけ柔らかく焼くのってどれだけ時間掛かんのかなと、ふと思ってしまった。

仕方ねぇな・・・。

これからも手を抜かずに美味いものを食わせてくれんなら 〝お掃除サンバ〟使わせてやるか。


〝お掃除サンバ〟はオレの周囲を掃除すると、また方向を変えて行った。


働き物だなぁ、今度はどこ行くんだろ。

廊下か・・・・・・へ?

あろうことか 〝お掃除サンバ〟が和也さんの部屋に入って行った。

それもさっきまで台所にいた本人が、やっぱり嬉しそうな顔をして思いっきりドアを全開している。

共有部分はともかく自分の部屋って、おかしくね?

しかもその部屋、オレ立ち入り禁止だし・・・。



前方に悪の巣窟発見!!

足の小指も!尻も!頬っぺたも!今日は万全!

焼きイモ最後のひと欠けを口に放り込んで、いざ奪還突撃ー!

オレの 〝お掃除サンバ〟!だぜ!


「貸して下さいって言えー!!」





※後書き

上下構図は教育係1部、そしてどっちもどっちの構図が2部のRoundです。

HPの方でも書いていますが、Roundは1部より約一年後です。

『 明良が和也と長く生活を共にすればする程、明良は和也の行動や思考、性格を突いて来るようになります。
もちろん教える側の一方的な力関係はそう覆ることはありませんが、
今まで見えていなかった和也の理性(感情)の部分も、明良に見えて来るようになります 』

Luckyは秋月和也を完璧な人物だと思って書いているつもりは毛頭ありませんので、当然どっちもどっちの構図が生まれるわけです。
この部分はLucky自身書いていて、もっとも楽しいところです^^
同じところを共有出来る喜び、これからも益々力が入ります!

ということで、またもや〝お掃除サンバ〟を巡って揉める二人^^
「貸して下さい」と言わせたい明良と、言わない和也。

和也のささやかな〝兄貴〟の意地を、感じて下されば嬉しく思います。
これがいわゆる〝どっちもどっちの喧嘩構図〟の下地です^^

和也さん、明良以上に 〝お掃除サンバ〟が気に入ったようです(笑)


2012.12.8







どっちもどっち その2


〝お掃除サンバ〟揉めるのも最初のうちだけで、元々が掃除をするだけの家事ロボット。

明良もすぐどうでもよくなって、結局は二人の共有物に・・・いや、むしろ和也さん主導に(笑)



勉強中の明良の部屋に、サンバをセットして出て行った和也さん。

おりこうに掃除するサンバ。

ウィン、ウィン、クルクルクルクル・・・。


「あー、腹減った!ちょっと休憩、おやつまだかな・・・っ!?イテッ!サンバに足、当たった!・・・っとに、邪魔なんだよ!」


明良に喜ばれたのも束の間、やっぱり三Kの明良父^^;


さらに和也に文句を言う明良。

「和也さん!サンバ、オレのいないときに這わせろよ!部屋狭いのに邪魔だろ、足に当たったじゃん!」

「普通はセンサーで避けるんだけど・・・サンバは性能が良いからね、君のこと吸い取ろうとしたんじゃないの」


「・・・!!!オレはゴミかー!!」





※後書き

あら?収まるどころか、ますますヒートアップ^^;

どっちもどっちですから(笑)


2012.12.12







優しさの値(あたい) その2


enqueteより

・今後の明良くんの成長が楽しみ♪




夏休みが終わって早一ヶ月、実力テストの答案用紙が返ってきたので和也さんに見せる。

「国語45点、理科82点、英語74点、数学87点・・・、国語は何点満点?」

100点満点に決まってんじゃん。わかってて聞くんだ、相変わらずイヤミだぜ。

てか、どっかで聞いたことあるようなセリフだな・・・。

「漫画の本はせっせと読んでいるのに、一向に国語はましにならないね」

これも似たようなこと言われた気がする・・・どこでだ?


「漫画が悪いとは言わないけれど、文章を読むことも大切だよ。
小説に限らず漫画以外の本を、何か一冊でも探して読む練習をしてごらん。さてと、夕食の支度しなくちゃ・・・」

和也さんはそう言うと、ダイニングのキャビネットからエプロンを取り出して・・・あ、思い出した!

首掛け式の緑ベースオフ白のタータンチェック柄、秋仕様のマイエプロン。

一年前の実力テストん時だ!

国語だけが、あの頃の点数とあまり変わっていない。

けど、他のあれだけ酷かった教科の点数は、ほら?一年後はこうだぜ!?

普通は褒めるだろ!?何でそこを言わねぇんだよ!?

国語なんて読み書きが出来りゃいいんだよ!

言わせてやるぜ!!



前方!!鍋をかき回している後ろ姿発見!!


「和也さんさぁ!一年前は国語がましって言ってただろ!だからオレは、他を頑張ったんじゃん!」

「前にも言ったはずだよ、他の悪すぎる教科と比較しての〝まし〟でしょう。本当に国語は一年経っても良くならないね」

「んじゃ、他の教科は?」

へへへ、数学なんて87点だぜ!

褒めるしかねぇんじゃね?

鍋をかき回す手が止まって、和也さんがオレの方に振り向いた。

嬉しそうに目を細めて・・・


「ようやく学力が追いついたね」


そこかよっ!!

と、一瞬思ったけど。

いつものイヤミっぽい言い方なんかじゃなくて、ちゃんと認めてくれている言い方だったから・・・褒め言葉じゃなくても許してやることにした。




明良は褒められるよりも認められたことの方が、より嬉しいと感じたようです^^

褒められるというのは出来ていなくても頑張れば褒めてもらえますが、認められるというのは出来ていなくては認めてもらえません。

認めてもらえてこそ、明良は和也との距離を縮めることが出来るのです。

もっとも明良はまだそこまで、理屈としてはわかっていませんが^^;

言うなれば〝肌で感じる〟というところでしょうか。




「どうしたの?ぼうっとしているなら、手伝って。それでなくても夕食遅れているんだから」

「いつまでも鍋かき回してっからだろ!オレは受験生だぜ!?手伝ってる暇なんてねぇの。勉強、勉強っと。苦手な国語でもすっかな〜?」

「今日はスペシャルビーフシチューだよ」

「スペシャル!?うおっ!?ビーフシチューのスペシャル版!!皿は!?どれにすんの!?」

「渦巻き模様の深皿と、サラダ用に白の八角皿を用意しておいて」





※後書き

伝家の宝刀(ビーフシチューしかもスペシャル版)に、イチコロで夕食の準備を手伝う明良(笑)

和也さんは明良の好きなものばかり作る。
スペシャルビーフシチューが数学87点の(学力が追いついた)ご褒美だということに、果たして明良は気付くでしょうか^^


明良の成長を楽しみにして下さって、ありがとうございます!


2013.9.30







読書



この間の実力テストの結果が返ってきて、国語だけが一年前とあまり変わらない。

和也さんは漫画以外の本も読めって言うけど。

漫画以外の本だって、読んでるぜ?ゲームの攻略本とか。

何だよ・・・本は本じゃん!

てか、読み物系はすぐ眠たくなるんだよね。

教科書に載ってる話でさえ、オレ的には十分長ったらしい。

国語なんて読み書きが出来りゃいいんだよ・・・。


「もしもし、直人?オレ!」

[ おっ、明良。何? ]

「お前さぁ、何か本読んでる?」

[ 本?読んでるけど・・・それがどうしたんだよ ]

「えっ!?どんな本!?」

まさかっ!!直人が本を読んでいる!?

[ どんなって、お前も毎月同じの読んでんじゃん。何驚いてんだよ ]

・・・まさかとは思ったけど、やっぱまさかだったな。

こいつの発想も、本=漫画しかない。


「漫画以外の本のこと聞いてんだろ」

[ 漫画以外?ダメダメ!ハードカバーの小説なんて二、三行読んだら眠くなるし。
なんつっても、国語の教科書に載ってる話だって読み切れねぇし!ぎゃははっ・・・ ]

「・・・・・・・・・・・・」

[ でも・・・そうだなぁ、雑誌くらいなら読んでるぜ!? ]

雑誌!?そういや、和也さんもよく読んでる。

やたら小難しいタイトルで、日本語なのに全然内容わかんねぇけど。

[ 月刊アニメデ・・・(ブチッ!!) ]



・・・晩メシまだかな。

どっと疲れを感じるのは、たぶん腹が減ってるからだよな。

携帯を放り捨てて、ダイニングへ行く。

「腹減った。メシ、まだ?」

忙しそうに食事の支度をする和也さんをさらに急かせて、リビングへ。

TVのリモコンを取ろうとして、テーブルの足元に置かれた紙の手さげ袋が目に入った。

「何だ、これ?・・・本?」

手さげ袋の中には、5〜6冊の絵本が入っていた。

「ああ、それね」

キッチンにいる和也さんが、気付いてこっちにやって来た。

「今日立ち寄った本屋で、絵本の挿絵画家フェアをしていたんだよ。
昔好きだった絵本がたくさんあって、陽仁君にちょうどいいと思ってね」

本屋で絵本・・・メシが遅い理由は寄り道かよ。

「明日橋本さんに渡すからそこに置いているんだけど、読むなら読んでいいよ」

言うだけ言うと、またキッチンに引っ込んで行った。


何でオレがハルの絵本なんか読むんだよ・・・とか思いながらも暇なので一冊手に取って見る。

絵本か・・・絵本はおふくろが読んでくれてたなぁ・・・。

いちいちオーバーアクションすぎて、話の内容なんて全然わかんなかったけど。

「けっこう文字数多いな・・・」

対象年齢が高めということもあってか物語もしっかり構成されていて、これが意外にも面白い。

・・・二冊目。

・・・・・・・三冊目、ちょっと潤っときた。

・・・・・・・・・四冊目・・・・・・五冊目・・・。

結局、手さげ袋の中の絵本を全部読破していた。

まっ、そりゃハルが読むくらいの本だから、いくら本を読まないオレでも容易い。




晩メシは久々のオムライス!やった!待ってたかいがあった!

「いっただきまーすっ!」

オムライスのど真ん中をバスッ!と割って、とろりと流れ出た半熟卵の黄身をチキンライスと絡めて口いっぱいに頬張る。

美味いっ!!


「絵本、読んでみた?私も懐かしくてまた読み直したけど、何度読んでも面白いね」

「和也さんでも読むの・・・今さら?絵本だぜ?」

「今だからまた違う趣(おもむき=あじわい、感じ)で読む楽しさがあるんだよ。
たとえ絵本であっても、心に残る本っていうのはね」

ふ〜ん・・・そんなもんなのかな・・・。

「オレはキツネの話が面白かった。二冊あったけど、子キツネの手ぶくろの方の話が好きだな」

「私も子供の頃はそっちの方が好きだったよ。でも今はどちらも好きかな」

「え〜っ!?オレは絵本で可哀そうなのは、反則みたいで嫌だ。ハルだったら泣くと思うぜ」

「・・・そうだね、泣くかも知れないね。じゃあ橋本さんに君からの伝言として、
キツネのもうひとつの話の方は、陽仁君には要注意だって伝えおくよ」

そう言って、嬉しそうに和也さんは目を細めた。



ひとしきり絵本談義に花が咲いた夕食が終わって、部屋に戻る。

机の上に放り捨てた携帯を見ると、直人からの着信でいっぱいだった。

あ、そっか・・・ピッ、ピッ、ピッ、と。

「もしも・・・」

[ 明良っ!!何で途中で切んだよ!! ]

すごい剣幕で直人が出た。

「ごめん、ごめん、そんな怒んなよ」

[ 怒るだろ!!普通!!それもいきなり本がどうとか、わけわかんねぇこと聞いて来るし!! ]

「・・・・・・・・・・・・」


・・・よし!決めた!


「おい、直人、直人ってば」

[ 何だよっ!! ]

「お前も、本読めよ」

[ ・・・はあっ? ]

「今度、本屋に行こうぜ」

[ ちょ・・・明良? ]

「お前が読めそうな本、オレが選んでやるよ」

[ ・・・うわあぁぁっ!!兄ちゃんっ!!明良が勉強のしすぎで変になったあーっ!!兄ちゃーんっ!! ]


直人の面倒は、オレが一生見てやるぜ!





※後書き

絵本でも対等に和也と話し合えたことで〝本を読む〟面白さに気付いた明良^^
和也もそんな明良に嬉しさを隠しません。
すっかり読書をした気になって直人に上から目線の明良ですが、二人に差はほとんどありません(笑)

絵本のくだりは、この間行った黒井健原画展フェアを参考にしています。
キツネの話は「手ぶくろを買いに」と「ごんきつね」からです。


またもや連載のようになっていますが^^;
背景が日常なので、ボコボコ切り取って書けるのが本当に楽しいです^^
話を読んで頂く中に、その楽しさが伝わっていれば幸いです。


2013.10.6







年賀状の書き方(二人羽織)



今年も残すところ後一週間。

クリスマスも終わって、TVは正月ムード一色。

けど、オレはそんな気分に浸っている暇はねぇの。受験だからさ。



「明良君、のん気にTVなんて見ている暇あるの?」

ほら、またこれだよ・・・。

「和也さんだって会社で休憩時間あるだろ!オレだって朝からずっと勉強してんだぜ!?休憩中!!」

「ずっと?今まで散々休憩していたのに?」

・・・もう無視、無視。

毎度毎度、和也さんの嫌味に付き合ってる暇ねぇっつの。

年末はスペシャル番組が多いから、適当にチャンネル流し見で休憩にはちょうどいい。

コマーシャルも、プリンターの宣伝は年賀はがきばっかり。

へぇ〜、たかが年賀状のためにこんなの買う奴いるのかな・・・てか、いちいち年賀状なんか書かねぇし。


「ところで明良君、年賀状は書いたの?」

こういうタイミングだけは、いつも外さねぇよな・・・うざいってことだ!

「オレらの間じゃ年賀状なんて書かねぇの。メール」

「友達同士ならなにも言わないけど、君は少なくとも会社にも顔を出しているでしょう。
せめて身近な人たちには年賀状を出しなさい」

「身近って橋本さんたちだろ、正月開けたらすぐ会うじゃん。何でいちいち出さなきゃなんねぇんだよ」

受付の姉ちゃんたちならまだしも、秘書課の奴らなんて時間の無駄・・・まっ、杉野さんは別だけどさ。

「いずれ年賀状を書くことが必要になるんだから、今から少しずつ練習しておきなさい。
それに社長ご夫妻も、君から年賀状が届いたらとてもお喜びになるよ」

「はぁっ?ご夫妻!?冗談!だいたい親父もおふくろも、正月いねぇっての!」

「今ならまだ、元旦過ぎには着くよ。社長ご夫妻が出掛けていてよかったね」


よかねぇよ!!



結局ナンダカンダで年賀状を書く・・・てか、書かされている。

和也さん監修の元、ダイニングテーブルで白紙の用紙に筆ペンの練習から。

『明けまして おめでとうございます』

「字のバランスを考えて、明けましての〝明〟の漢字がひらがなの二倍も大きいでしょう」

何回も書く・・・いや、書かされる。

『本年も よろしくお願いします』

「お願いしますの〝願〟は、中の線が潰れてしまってほとんど原型を留めていないし・・・」

何十回も・・・書かされる!!

筆ペンは先が柔らかすぎて、力の入れ方がわからない。

腕が疲れた・・・筆を握っている指も痛い。

『本年も よろしくお願いします』の〝す〟を勢いのままに筆先を払ったら、のぞき込んでいた和也さんの顔を掠めた。

腕が疲れているので止めが利かないんだな。

スパーッと鼻と口の間、つまりドロボーひげが真一文字に!

「ぎゃはははっ!!」

偶然とはいえ、めっちゃナイスな筆さばきだぜ!オレ!

和也さんは咄嗟に口元を手で覆って、洗面所に駆け込んで行った。

あの辺がやっぱ秘書課だな。

あー、笑い過ぎて腹痛ぇ。


何事もなかったかのように、澄ました顔で和也さんが戻ってきた。

「わざとじゃないぜ?筆ペンって力の入れ具合が難しいよな」

「そうだね、筆の使い方から説明するべきだったね」

和也さんは怒るどころか、自分の方から非を認めた。

へぇ、案外わかってんじゃん。


「さあ、もう一度〝明けまして〟から書いてみようか。
今度は私も一緒に書くから、注意点をしっかり覚えるんだよ」

そう言うと和也さんはオレの後ろに回って、筆を握るオレの手に自分の手を添えた。

『明けまして』

「力が入りすぎ、もっと力を抜いて。そう・・ぐっと下に引いてそこは力強く・・・はい、力を抜いて・・・」

・・・何か凄い鬱陶しいもの背負ってる感じがする。

しかもオレの力が制御されてるみたいに、思うところに手がいかねぇっ!

「また、力が入りすぎ。もっと力を抜い・・・あっ」

筆を持ち上げたところで、筆先がオレの鼻の頭を掠めた。

・・・・・・あきらかにワザとだよな。

二人羽織だからさ、たいていそういうのは後ろの奴の仕業なんだよ。

「ごめんね、わざとじゃないんだよ。君の力の配分が極端過ぎるから・・・」

「どこがっ!!さもワザとらしく〝あっ〟とか言いやがって!!」

和也さんの手を振り解いて、高々に振り上げた手に筆ペンを握り直す!!

もう一回、ドロボーひげ書いてやるぜ!!

うおりゃあぁぁっ!!果敢に突っ込もうと思ったんだけど、これってオレの体勢最初から不利だったんだよね。

振り向き様、高々に振り上げた手を背中に捻じり上げられて、一発パーンッ!

尻を叩かれる・・・おかしくね?


「やーめた!年賀状なんて手書き風に書けるプリンターがあるんだから、それ使えばいいじゃんか!もしもしー!オレ!」

和也さんの目の前で親父に電話してやる。

さっきTVで見た年賀状作成バッチリのプリンター〝カラリコ〟

プリンターくらい、親父に言ったらすぐ買ってくれんだよ。

たかが年賀状のためにこんなの買う奴いるのかなって思ってたけど・・・いたよ、オレだよ。


[ 明良!どうした!? ]

「親父!和也さんがさぁ!」

[ また、か・・秋月か! ]

「年賀状書かされてんだけど・・・」

[ 何!?年賀状!?明良!父さんにもくれるのかっ! ]

「いや・・・だからその年賀状を書く・・・」

[ 何だ!!・・・うるさいっ!!今行く!! ]

「親父っ!?誰としゃべってんだよ!?」

[ ああ、すまんな、明良!父さん、まだ仕事中なんだ。それじゃ、楽しみにしているからな! ]

「ちょっ、親父!?親父―っ!」

くそったれ!人の話聞けよ!

こうなりゃ、あんまり頼みたくないけど仕方ない。

「もしもし・・・」

[ あらっ!?明良ちゃん!どうしたの?珍しいわね、明良ちゃんから電話して来るなんて ]

おふくろには年賀状がどうとか説明しても長引くだけだから、単刀直入に言うことにする。

「プリンターの〝カラリコ〟買ってくれよ」

[ まあ、明良ちゃんがおねだり!?いつもはお父さんなのに!? ]

「たまにはおふくろでいいじゃん」

[ そうね。それならお母さんが買ってあげてもいいけど〝カラリコ〟って何? ]

「プリンターって言っただろ!」

[ 何するの? ]

「年賀状書くんだよ!」

[ 明良ちゃんが!? ]

「オレの代わりに〝カラリコ〟が書くんだよ!」

[ まあ!凄い!〝カラリコ〟って、プリンターのロボットだったのね ]

「ロボット!?まあ・・・ロボットっていやあ、ロボットだけど・・・」

だけど・・・激しく嫌な予感。

おふくろのイメージしているロボットは違う気がする。

ひょっとして、人型のロボットが年賀状を書くとか思ってる・・・。

[ 明良ちゃん昔はロボットのおもちゃ好きだったけど、今でもまだ好きだったのね。あ、はーい。今行きまーす ]

「やっぱり!ちょっと!おふくろ!すげー勘違いして・・・」

[ 明良ちゃん、ごめんねぇ!お母さん今陶芸教室で勉強中なのよ。ロボットの件はわかったわ。
明日にでもおもちゃ屋さんで聞いてみるから!じゃあね! ]

全然わかってねぇよ!!

おふくろは親父以上に、話どころか内容すら通じなかった。



「明良君、これが出す人の住所と名前。今日中に書き上げてね。
明日朝一番でポストに投函するから・・・鼻の頭、墨ついたままだよ」


精根尽き果てて、怒る気も失せた。

和也さんから渡されたリストを見る。

社長ご夫妻・・・自分の親だっつの。

秘書課メンバー・・・杉野さんも入ってる。杉野さんのだけはちゃんと書こう。

それから・・・ん?

秋月 和也???


ふざけんなーっ!!

何で和也さんまで入ってんだー!!!





※後書き

どうやら和也も、明良の年賀状が欲しいようです^^

そして明良父と明良母、こちらもまだまだ親の方が一枚も二枚も上手です。

一票頂いて、久々に楽しく書けました。

書いていて一番楽しかったところは、明良と和也の二人羽織で(違う/笑)筆ペンの練習をする場面です。


この年末は寒さの厳しい日が続いていますが、皆様お体に気を付けてどうかお健やかに年末年始をお過ごし下さい。


2013.12.26







お兄ちゃん和也とツンデレ明良


enqueteより

・本条先生と生徒たちの関わりも大好きなので悩みましたが、お兄ちゃん色をかもし出してる和也さんが好きです

・明良君かわいすぎます♪本人気付いてか、気づいてないかで和也さんになついてる所がまたかわいいです。



直人の家で過ごした正月三が日も、あっという間に終わった。

もうすぐ和也さんが迎えに来る。

楽しい時間はすぐ過ぎるけど、見たくない顔はすぐ来るんだよね。



「明良!掃除サボんなよ!綺麗にして返すのが礼儀ってもんだぜ!」

リビングのソファでTV見ていたら、直人が雑巾握り締めてオレを呼びに来た。

オレが正月直人の家に世話になるからっていうので、和也さんが圭一兄ちゃん(直人の兄)に車を貸したんだけど。

オレからすればホント余計なことすんなって感じ。

「向こうが勝手に言ったんだから、そんなに気をつかう必要ないぜ。てか、二、三日乗り回したくらいで汚れてねぇって」

「そんな問題じゃねぇだろ!せっかくの和也さんの好意なんだからさ!」

直人の奴、完全に和也さんビイキになってる・・・。

圭一兄ちゃんは、今回憧れの外車を貸してもらったことですっかり和也さん崇拝状態だし。


そうこうしているうちに、玄関先から圭一兄ちゃんのどデカイ声が聞こえてきた。

「和也さん!!明けましておめでとうございます!!」

「和也さん!?うおおおっ、明けましておめでとうございますーっ!!」

直人も兄ちゃんに負けず劣らずのデカイ声で、出迎えにすっ飛んで行った。

・・・何か二人とも、ちょっとうざくね?




「この度は一谷がお世話になり、ありがとうございました」

リビングに通された和也さんは、改めて直人の両親に礼を言った。

オレのこと一谷だって・・・。

会社とは関係ないんだから、いつもの呼び方でいいんじゃねぇのとか思ったけど。

和也さんからすれば、オレのことは会社の仕事のひとつなんだよね。


「いや、いや、こっちこそ!明良のおかげで、私たちまで正月料理のご相伴に預かることが出来ました」

「明良君から大晦日に重箱が届くって聞いていましたけど、
まさかあんな豪華絢爛な御節!本当に驚いてしまって。ねぇ、お父さん」

「明良の親父さんって凄いよな。俺、ふつーにおっちゃんって言ってっけど」

おっちゃんもおばちゃんもやたら驚いてたけど、そんなに驚くことなのかな?

料理だって杉野さんの時もそうだったし、オレの親父もふつーにおっちゃんだけどな。


「社長はただの親ばかですから。それに一谷のところは食を生業としていますので、
その辺りのところはどうかお気になさらずお願いいたします」


ただの親ばか・・・オレの!親父だぜ!?

息子のオレが言うならともかく、何でアカの他人の和也さんが言うんだよ。

いや、まだアカの他人の方がましだな。親父は社長で、和也さんは部下だぜ!?

それに正月料理のこともさ!和也さんが金出したわけじゃねぇくせに!

腹立って文句言おうとしたら、直人のバカがオレを押し退けて先に話し掛けるしさ。

クソッ・・・後で親父に言いつけてやる。


「・・・でさぁ、兄ちゃん車に傷付けたら大変だって、もうビビッちゃって超安全運転なんだぜ!
後ろの車にバンバン抜かされてんだよ」

「圭一君には、かえって気を遣わせてしまったね・・・」

「いいえ!そんなことないです!夢のような乗り心地でした。
僕もいつか必ず外車に乗るっていう目標が出来ました。その時は直人、お前はもう乗せない」

「ええっ!?兄ちゃんっ!ごめん!うそ、うそ!冗談だってっ!」


「ははははっ・・・!!」×4人+1人。


和也さんを囲んで沸き起こる吉田一家の笑い声と笑顔・・・オレは?


オレ、直人の家族みんな大好きだけど、和也さんが混じると何か疲れる・・・。

「・・・そろそろ帰ろうぜ、和也さ・・・ん?あ、電子音!院内携帯が鳴ってる!」

ピピピッ、ピピピッ・・・。

「もしもしっ!」

おばちゃんが素早く出る。

「あなたっ!産まれそうですって!分娩室に入ったそうよ!」

「おうっ!そうか!秋月さん、申し訳ない!私たちはこれで!」

「いえ、どうぞ。早く行ってあげて下さい」

直人の家は産婦人科病院で、産科もあるから正月でも関係ない。

いつだってこうして臨戦態勢だもんな・・・直人の親父さんたちのが凄いぜ。

おっちゃんとおばちゃんは、慌ただしく院内へ戻って行った。


「すみません、いつもばたばたしていて・・・。両親が忙しい分、出来るだけ僕が直人をみているんですけど・・・。
思うほど構ってやれず、明良がいてくれて本当に助かっています」

「仕事に対する姿勢に頭が下がります、素晴らしいご両親だね。
それはお互い様です、こちらこそ宜しくしてやってください」

お互い様・・・?してやってください・・・?

この耳障りな言い方も、後で親父に言いつけてやることにする。


「そうそう、帰る前にこれを、直人君と圭一君。それから、はい、明良君も」

和也さんはセカンドバッグから小袋を取り出して、ひとつずつオレたちに手渡した。

お年玉・・・じゃない、お守り!?

オレと直人のは色違いで、直人と圭一兄ちゃんのは同系色だ・・・。


「うわぁ!北野天満宮のお守りだ!良かったな、直人!すみません、和也さん!僕にまで・・・!」

「途中京都に寄ったので、彼らの受験祈願のお参りをして来ました。
圭一君には学業より、交通安全のお守りの方が必要でしょう」

キタノテンマングウ?寺ってことだけは、わかる。

直人は知ってんのかなと思ったら、やっぱ知らなくて圭一兄ちゃんに頭はたかれてた。

「北野天満宮は学問の神様菅原道真を祭っている神社だろ!そのくらい覚えとけ!」

「元々は大宰府に流された道真公の怨霊を鎮めるために都で祭っていたんだけど、
後々無実が証明されるとその明晰さに厚い信仰が寄せられるようになったんだよ」

・・・説明聞いたって、菅原道真がそもそもわかんね。

要するに、有名でご利益があるってことだよな。

でもオレにはそんなこと、どうでもいいんだよ。

全然興味ねぇもん。そんなので合格するんだったら、苦労しねぇっての。

直人は圭一兄ちゃんと同じ寺のお守りってだけで喜んでる・・・意味もわかってねぇのにさ、単純な奴!


「和也さん、ありがと!明良とこのお守りで、受験頑張るよ!」

「どういたしまして。お守りが合格させてくれるわけじゃないけど、その気持ちが大切だからね。
さあ、行こうか明良君。それではお邪魔しました」



お守りはズボンのポケットに押し込んで、車に乗り込む。

・・・あれっ?

和也さんの車内は実にシンプル。

飾りものは言うに及ばずお守りの類も、いままで見たこともなかったけど。

ハンドルの下に、圭一兄ちゃんと同じ交通安全のお守りが引っ掛けてあった。

和也さんも買ってたんだ。

この色柄・・・ポケットからごそごそと取り出して見比べてみる。

オレのと同じだ!

色は同系色で、柄は同じ花の模様がある。

「明良君、そのお守りの花、何の花か知ってる?」

運転中の和也さんが聞いてきた。

うおっ、ビックリした!前見てると思ってたのに・・・よそ見すんなよ。

「う〜ん・・・こんな感じの絵柄よく見るんだけどな・・・桜?」

「桜は花びらが丸まってないでしょう」

「あ!わかった!梅だっ!」

「当たり。柄も同じ梅の花で、お揃いだね」

学業成就と交通安全、同系色にお揃いの梅の花が描かれた北野天満宮のお守り。

「お守りなんて飾ってたことなかったのに、何で急に?」

「・・・せっかく行ったからね。私もついでに・・・かな」

ついでって、そんなんでご利益あんのかよ。

・・・でも?

ふと、さっきの和也さんの言葉を思い返す。


でも、お揃いって言ったよな?


オレがそう思った直後、車が大きく左にカーブした。

和也さんのお守りも大きく揺れている。

「うわっ!急にハンドル切んなよ!危ねぇなっ!ついでに買ったようなお守りに、ご利益なんかねぇんだからさ!」


オレのお守り?

オレのお守りは、ほらここだよ。

がっしりと、オレの手の中!

オレも直人とこのお守りで、受験頑張るぜ!





※ 後書き

要するに、明良は直人が羨ましかったんですね^^

明良は直人と同じシチュエーション(無意識に求めていた)が叶って、
一気にお守りが身近なもの大切なものに感じました。
お守りの意味は、追々勉強するとして(笑)

和也は言わずもがな、明良と同じものを持ちたかったのがまるわかりです。
しかし、おおっぴらに兄の部分を見せるわけにはいきません。
ふと明良が黙ったところで、自分の失言に気が付きました。

〝お揃い〟という言葉を使ってしまったことです。

しまった、しゃべり過ぎた・・・焦って大きくハンドルを切る和也さん^^;
高速道路のトライブの時も、似たようなことがあったような(笑)



ここで使った北野天満宮のお守りですが、学業成就と交通安全、お揃いの色というのはありません。
でも近い色はあるので、同系色と表現しました。
柄については北野天満宮は梅が神紋ですので、お揃いといってもほとんど梅の花が使われています^^


倍返しにお守りネタはちょっと地味だったかなとも思いましたが、書いているうちにやめられなくなりました^^;

・本人気付いてか気付いてないかで和也になついている明良と、
・お兄ちゃん色をかもし出してる和也さん 

この二つの要素を感じて頂けましたなら、嬉しく思います。


2014.1.9







とっとと冷房


enqueteより

・キーくんがかわいい(≧∇≦)



キーくん!?そうでした!!明良くんはキーくん!!^^




ここんとこ、暑いよな?

もうすぐ六月とはいえ、まだ五月だぜ?


日曜日、昼飯食った後しばらくTV見てたんだけど。

あんまり暑くてクーラーつけようとしたら、

「まだ五月でしょう」

和也さんにリモコンを奪い取られた。

五月でも暑けりゃクーラーだろ!

「早すぎます」

さっきのニュースで七月並みの暑さって言ってたぞ!

「日中の数時間だけだよ。シャワー浴びれば十分凌げます」

いちいち汗かくたびにシャワー浴びるって面倒だろ!

・・・って、おいっ!?

リモコン持って自分の部屋へ行きやがったー!!

くそーっ!! 直接スイッチ入れてやる!!

・・・が、エアコンの位置が高すぎて、手が届かない。

どっかに踏み台・・・ダイニングの椅子は回転式だから立ち乗りは危ないし、脚立は・・・。

と、あちこち適当な踏み台を探し回っているうちに、体中から滝のように汗が流れ落ちていく。

暑いぃぃーーー!!

そもそもリモコンがあんのに、何でこんな労力使わなきゃなんねぇんだよ!


ばかばかしくなって、TVの続きを見ることにする。

TVのリモコンはあるからさ。

けど、日曜の昼間って面白い番組ないんだよね。

・・・つまんね。シャワーでも浴びて、勉強しょ。


風呂場でぬるま湯を頭から浴びて、汗を洗い流す。

チャッ、チャッ、チャッ、と5分。

体が乾くまで大判のバスタオルを腰に巻き付けて、と。


「あー、冷える~ぅ!やっぱ気持ちいい!」

「冷蔵庫で涼まないでくれる?」

いきなり後ろから手が伸びて、冷蔵庫の扉を閉められた。

驚かすなよ、また二人羽織かと思ったぜ。


「ジュース取りに来ただけだろ!」

「それだけでそこら中水浸しにされたんじゃ、すごい迷惑なんだけど」

あ!ちょっと・・・!!

いきなり腰に巻いていたバスタオルを剥ぎ取られて、頭からスッポリ被せられた。

そのままガシガシと拭かれる!!あの・・・やめ・・・っ!!

「どうしてちゃんと拭かないの。こんなに滴だらけで」

必死でバスタオルの端を掴んで、自分の方に引き寄せる!!

オレ素っ裸なんだけど・・・。

「背中も・・・ほら、引っ張らないの」

バチンッ!

「痛っ!!」

尻・・・剥き出しの尻を叩かれる。

「ちゃんと拭けないでしょう」

いやっ!拭かなくていいからっ!!

「ちょっ・・・やめろって!!和也さんっ!!オレ素っ裸・・・」

「裸で冷蔵庫漁るって、子供以下だね。行儀も悪い」

一応背中もザザッっと拭かれたら、尻を二発叩かれるオマケつきでバスタオルを投げ返された。

「痛てぇなっ!無防備なオレの尻に卑怯だろ!」

「そう?それじゃ次からしっかり防備してくれたら、私も助かります。まったく・・・床の拭き掃除、君も手伝うんだよ」


今度からパンツだけは穿いとこぅ・・・。

オレの尻の保護のために。


※後書き

Luckyの中では、かわいい明良をてんこ盛り書いたつもりです^^
そして、相変わらず構いたがりの和也さん(笑)

スパ話というには、ぬるいかも知れません。
スパ要素を含む教育係明良と和也二人の話として、
楽しんでいただければと思います。


2014.5.27







ハロウィン


enqueteより

akirakunniaitaina



今日はハロウィンなんだってさ。

オレはちっとも興味ないんだけどね。

カボチャのお化け?とか、お菓子をくれなきゃイタズラするぞ?とか。

お化けは松本のおばちゃん(A&K営業部)がいるし、それにお菓子程度でイタズラってハイリスク過ぎだし。

ハイリスク・・・?何が・・・?もうっ!尻がヤバいってこと!

オレんところには(A&K=社風尻叩き)危ねぇ奴らばっか、揃ってんだから。

ま、それはともかく・・・何だコレ?

オレはフツーの晩メシでいいのにさ。

テーブルには前菜、スープ、メイン、デザート、カボチャ料理のフルコース。

エプロンまでカボチャと魔法使いの柄で、妙に気合入ってんだよね・・・。


「このカボチャのスープ!!とろ~りとしてて、めちゃ美味えぇ!!んで、こっちはカボチャチップのサラダー!!
あっちあちのグラタンに・・・これはっ!フォークで巻き々々・・・もぐぅっ!もぐもぐ・・・ピャスタ(パスタ)最高ー!!」

「そう?ありがとう。今日はハロウィンだからね、カボチャ尽くしも一興でしょう」

・・・そっか。和也さんの気合が入っている原因は、こいつか。

「明良ぁ!俺ハロウィンでお祝いなんて初めてだ!呼んでくれてありがとなっ!」

オレは呼んだ覚えはないけどな。

「もうすぐ実力考査でしょう、直人君も頑張っていると圭一君から聞いていたからね。及ばずながら、私も料理で応援させてもらいます」

「うおおぉっ!!和也さんの料理で応援されたら百人・・いや千人力だぜ!!俺もっともっと頑張るー!!」

そういうことか・・・。

てか、いちいちオーバーなんだよ、バカ直人。

「そう言ってもらえると、私も嬉しいよ。カボチャのムースは後で切り分けておくから、圭一君とご両親にも持って帰ってあげてね」

「うわあぁっ!!兄ちゃんたち絶対喜ぶよ!!和也さん、ありがとー!!」

和也さんの奴、いつの間にかオレ抜きで直人の家族とつるんでやがる・・・。

・・・・・・てか!相変わらず食い物に釣られてんじゃねぇや!バカ直人!


「直人、な~おと」

「あん?」

「そらよっ!!Trick or Treat!!」

「明っ・・・ぷふっ!!」

「残念だったな!オレはお菓子なんかいらねぇんだよ!!」

直人の顔面に思いっきりカボチャムースをぶつけてやった。

「っ・・・うえぇっ!!ごほ、ごぼ・・・っ、兄ちゃんたちのお土産のムースがあぁっ!!明良ーっ!!こんのやろうっ!!」

「明良君!何てことを・・・カボチャムースが・・・」

ふふん、直人よりムースか。

やっぱ人間って、いざって時には本性が出るもんなんだな。

「直人!!聞いたろ!?お前よりムースってこれが和也さんの本性だぜ!!目を覚ませ!!」

「明良・・・」

直人がムースだらけの顔で呆然としている。

まっ、当然だよな。今度は圭一兄ちゃんにも和也さんの本性を・・・

「・・・美味ぇ」

「へっ?」

「美味すぎるぅぅ・・ううっ!!明良ー!てめぇ!こんなに美味い物台無しにしやがってぇー!!
こんちきしょうー!!これでも喰らえーっ!!」

「ぐああっ・・・!!」

顔面にカボチャパスタが直撃。

「直人君!・・・はぁ~・・・カボチャバスタが・・・」


人間の本性ってそうそう変わるもんじゃねぇんだよ、わかってんだけどさ。

くそったれーっ!!オレよりパスタかよっ!!




※後書き

自分の知らないところで吉田一家と仲良くする和也が、どうにも気に入らない明良です^^
しかも和也の中における自分の位置が、とても気になる様子(笑)


akiraniattekudasattearigatou!!


2015.10.1







お正月 後日譚

enqueteより

・真っ直ぐで元気なあきらくんが好き &


      ポチポチありがとうございます^^ 



今年の正月は三が日を直人の家で過ごした。

親父はハワイで接待ゴルフ。

おふくろは陶芸仲間と陶芸の里で陶芸三昧。

和也さんは彼女と温泉。

〝オレだけ何処にも行くところがない!!〟

と焦ったけど、直人の兄ちゃんが誘ってくれたおかげで、オレも楽しい正月を送ることが出来た。


こういうのどう言うか知ってる?

遠くの親戚より近くの他人っつうんだよ。





「本当に、直人君のご家族には感謝を忘れないようにね。社長ご夫妻もたいそう喜んでおられたし」


キッチンでバタバタと忙しそうにしていたはずの和也さんが、しれっと口を挟む。

ケッ、こうやってしゃしゃり出て来るタイミングは外さねぇんだよなぁ。


こういうのどう言うか知ってる?

うざい!!っつうんだよ。





取りあえずそんな和也さんはスルーして、TVでも見ようかなっ・・・と。

明日から学校だし、それにいよいよ受験だしね。

なんてことを思いつつ、リモコンをピコピコ押しまくる。

・・・ふわぁ~っ!・・あがぁ~っ!

ものの十秒もしないうちに大あくび連発。

ぽかぽかと春の陽気のようなリビングは、つまんねぇ番組との相乗効果でうつらうつらと心地よい眠りに引きずりこまれていく。





「どう?TVとエアコン、社長からのお年玉なんだってね。良かったね」


まただ!せっかく気持ち良く寝てんのに!くそっ、目が覚めちまったじゃねぇか!

それに良かったのは自分の方じゃん!ホント、思い出すと腹が立つぜ!





去年の暮、親父がオレにお年玉は何がいいかって聞くからさ。

「明良!お年玉は何が欲しい!?父さん、何でも買ってやるぞ!」

「う~ん・・・んじゃ、TVとエアコン。オレの部屋にないから」

「何っ!?まだ付けてもらっていないのかっ!よしっ!正月明けにはちゃんと着くように手配しておくからなっ!」


親父の言葉通り、TVもエアコンも正月明け6日に設置の連絡が入ったので、
和也さんが会社に行ってる間に、一泡吹かせるつもりでウキウキして待ってたんだけど。


「TVお届けに上がりました!え~っと、こちらですね。はいはい、すぐ見れますよ!」

「えっ!?こっちだぜ!こっち!リビングじゃなくて、オレの部屋!」

「こっち?・・・あ、無理です、入りません。ほら、どう見てもリビングサイズでしょう」


そういって業者が設置したTVは、ホームシアター並みのデカさ。


「じゃ、古いのは回収料金頂いているので、持って帰りますね。ありがとうございましたぁ~!」


オレのだぜ?何で回収料金まで払ってんだよ!

サイズはデカ過ぎだし、そりゃ業者も勘違いするぜ。

ったく・・・親父、わかってんのかな。


「エアコン設置に参りましたぁ~。あ、おめでとうございますぅ。はいはい、すぐ交換しますね~」

「えっ!?交換じゃなくて、こっちだぜ!こっち!リビングじゃなくて、オレの部屋!」

「こっち?・・・あ~ぁ、無謀です。家電は適正な場所で適正に使用してこそ、最大限に機能を引き出せるんですよぉ~。
はい、これ。説明書読んで下さいねぇ~」


『乾燥を防ぎ足元から暖めるハイスペックエアコン20畳用』って、前のオレの部屋ならピッタリだな。


「じゃ、古いのは回収料金頂いているので、持って帰りますね。ありがとうございましたぁ~!」


予想通りの言葉を残して、無事エアコンも設置完了。

新年、リビングには最新式のTVとエアコンが。

でもそこは、主に秋月和也の陣地なんだけどな。

ったく・・・親父、誰の?誰のお年玉?


ちっとも得した気分にならねぇんだけど!





「明良君、ソファに寝ころばない、いつも言っているよね。
そんな暇があるなら、自分の部屋でも掃除しなさい。明日から学校でしょう」


あぁもう、うるせぇなぁ・・・。

だから学校始まるとすぐ受験じゃん!

束の間の休憩くらいさせろよ!

しかも今度はオレが無視出来ないように、指示に変えてきやがった。

いつまでも寝ころんでたら、確実に尻叩きに来るからさ。

もちろんオレだって意地があるから、向こうがシビレを切らしたところを見計らってダッシュで逃げる!!

へへへ、最近の成功率100%、和也さんの動き読み切ってるぜ!

【逃げるは恥だが役に立つ】って、このことだな。

あ、観てた?

本家のは胸キュンだけど、オレのは尻キュンだな。





さてと、部屋の掃除っつても掃除ロボット這わすだけなんだけどね。

どれにするかな・・・と、考えるくらい台数が増えている。

これも親父が、新しいのが出るたび次々送って来るんだよね。


一台目〝〇・サンバ〟 二台目〝△・レーロ〟 三台目〝ロ・ブラーボ〟


全部〝オレの〟なんだけど、たかが掃除するだけのロボットこんなに要らねぇし。

管理も面倒だから、無許可で!和也さんに貸してやることにした。

毎日嬉しそうに這わせてるぜ。

この前なんか性能確認とか言って三台同時に這わせてたけど、〇△ロがリビングや廊下をクルクル、ウィンウィン・・・。


すっかり和也さんのおもちゃじゃねぇか!





「掃除終わったの?使い終わったら、ちゃんと充電場所に戻すんだよ」


だぁかぁらぁ、いちいち指示すんな、自分のでもないくせに。

それより料理に集中しろよ、オレ腹減ってんだけど。

今日は何かな?

ずっと正月料理ばっかだったから、オムライスとかカレーとか食べたい。

リビングに行くと、和也さんがお玉持ったままTV見てやがる。


「晩メシまだーっ!?腹減ったーっ!!」


「 ・・・・・・・・ 」


あれっ、応答なし? 無視かよ!


「和也さん!聞こえねぇのかよ!メシは!?」


「聞こえてないのはそっちでしょう。さっきから何を言っても返事が返ってこないし」


あ、やっぱり無視されてんの、気にしてたんだな。

ちょっといい気分。


「和也さんのは小言、オレのは質問。小言にいちいち返事してたら、日が暮れちまうぜ」


「・・・そう、小言と質問の違いね。なるほど、少しは知恵がついたみたいだね」

やった!言い負かしてやったぜ!

めちゃいい気分!!!


「さあ!質問に答えろ!今日の晩メシは!?」


「バナナ」


「へっ?」


「バナナです」


「ふざけんなよ」


「知恵は知恵でもしょせんサルの浅知恵、屁理屈にもならないね。大好物でしょ、バナナ」


ブチッ!!


オレの堪忍袋の緒が切れる音が、乱闘の合図。


前方、人間の皮を被った悪の化身に突進!


うおぉぉぉっ!!

許さねぇぇぇっ!!!


間髪入れずの回し蹴りが和也さんの・・・いや、悪の化身の腕にヒット!

お玉落とす!!しゃぁーっ!!

初めてお玉落としに成功!!

明らかに焦ってるぜ!!

しかも放っときゃいいのに、拾おうとして屈みやがった!!

チャンスだ!!大チャーンス!!

どりゃーっ!!決定的な一打を尻に与えるべく踏み込んだ!

・・・はずなんだけど!?

ズルーッと片足を持っていかれる。

そのまま仰向けに全身を強打っっっ!!!


「うがーっ!!痛ってぇぇぇ!!」


・・・何で?


真上に悪の化身の顔が。


「だからちゃんと充電場所に戻しておきなさいって、言ったでしょう。
君のこと吸い取ろうとしたのかな。ずっとついて来てたみたいだね」


和也さんの嫌味にも、すでに戦闘モードは消滅。

オレの足元で、二台目〝△・レーロ〟がウロウロと這っている。

こいつを踏んづけたのか・・・。

掃除ロボットまで、和也さんの手先かよ。

親父に、これ以上送ってくんなって電話しておかなきゃな。





「さぁ、いつまで床に寝てるの。お腹空いているんでしょう」

「・・・減ってるけど。・・・オレ、バナナいらねぇもん」

「今日はカレーだよ。中辛スペシャルバージョン、バナナは隠し味に入れてみました」

「おわっ!!カレー!?しかも中辛スペシャルバージョン!!やったぁ!!オレ、深皿で大盛!!」

「承知しました」







※後書き

真っ直ぐで元気な明良は、いかがだったでしょうか^^

今回のポイントは3つ。

一つ目は、ミーハー時事ネタ。

時事はオーバーかも知れませんが、社会現象にまでなった【逃げるは恥だが役に立つ】

漫画の方は全然知らないのですが、ドラマの方はLuckyも観ていました。

タイトルが気になったのでちょっとその意味を調べたら、胸キュンよりも尻キュン来たー!って感じに(笑)

元はハンガリーの諺だそうですが、いろいろな和訳がなされているうちのこれがヒット!

『恥ずかしい逃げ方だったとしても生き抜くことが大切』

和也から逃げるという方法(恥)を選んだとしても、尻を叩かれない(スカをくらわす/笑)ということが大切。



二つ目は、やっぱりここでも明良父(和也の父でもありますが)。

明良にはストレートに愛情表現(親ばか)が出来るのに、和也には全くもって不器用このうえなし(笑)

和也が子供の頃は母の由紀子が二人のワンクッションになり、現在は明良が二人のワンクッションという感じでしょうか^^



三つ目は、大人気ない和也さん。

明良に言い返されて、バナナで反撃の和也。

どう見ても子供のケンカ(笑)

ここでは、いつの間にか増えているお掃除ロボットが大活躍。

〇△ロの形って、ウソのようなホントの話。家電製品の進化の素晴らしいこと。ネタに不自由しません(笑)

最後はお約束通り、明良の食べたい物を用意している和也と、大喜びの(丸め込まれるともいう)明良でした^^


2017.1.25