この人にこれほどぴったりの花があるだろうか・・

この時代に誕生花なんて関係ないのかもしれないけど・・

私はあまりにぴったりすぎて・・思わず苦笑する。

・・あなたのその心は、生まれながらのものなのかしら・・。




カルミア(花笠石楠花)
 〜弁慶 Happy Birthday〜




「あっ、この世界にもあるんだカルミア。」

弁慶さんと一緒に暮らすようになってから
一つ目の春が巡ってきた。外はとても暖かい。
冬に比べて薬草を取りに行くのも楽になった。

その弁慶さんと薬草を取りに行く途中、
私は山の中でその花の姿を見た。

「『かるみあ』ってなんですか?」

「ほら、そこに咲いている白い花のことですよ。」

「これは・・『花笠石楠花』ですね。
これをさんの世界では『かるみあ』というのですか?」

「そうだよ♪綺麗な色の花だよね。」

「そうですね。」

「でも・・・。」


この花の花言葉って・・・


「でも?なにかあるのですか?」

「花言葉がねぇ・・なんというかさ・・。」

「花言葉ですか?さんの世界では花にも言の葉があるのですか?」

「うん、あるよ。それに誕生花っていって、
お誕生日にちなんだお花も決まってるんだよ。」

「和歌などで季節を花に読み込むことはありますけど、
それとは違うんですよね?」

「うん違うよ。例えば・・そうだなぁ。
『朝顔』これなら弁慶さんも知ってるよね?」

「ええ。」

「『朝顔』はね・・冷静とか慕う心って
花言葉だったと思うよ。」

「なるほど、季節などには関係なく
その花事態に言の葉が付いているんですね。
なかなか面白いですね。」

「でしょ?あ・・そういえば私、弁慶さんの
お誕生日って聞いたことないな・・
ついこの間まで平家と戦っていたから、
忙しくてそれどころじゃなかったし。」

「僕の生まれ月ですか?」

「うん!そう!
さっきも話したけどお誕生日によって
お花が決められてるの。私結構そういうの好きで
大体は覚えているんだぁ♪」

「そうなんですか。
僕は2月11日生まれなんですが。」

「え・・・弁慶さん、2月11日なの?」

「ええ、そうですよ。」

「・・・ちょっと納得かも。」

私は思わず苦笑いした。
そう・・2月11日の花は今まさに
目の前で咲いている「カルミア」

この花の花言葉は『野心・野望』
・・・弁慶さんが源氏に組して戦ってきたのも・・
少しだけわかったような気がした。
この花に守られた弁慶さんが目指したものは
とても大きかった。・・だからなのかなぁ・・。
なんでも一人でやろうとしたりするの・・・。

「何が納得なんですか?さん。
僕の誕生花というのがなにかあるんですか?」

「・・・知らないほうがいいかも。」

私は親切のつもりでそういって笑顔を返したのだけれど・・
私の先ほどの苦笑いが伝わっていたのか・・

さん、僕たちの間に隠し事はなしですよ。
あなたの笑顔はとてもかわいらしいですが、
笑ってごまかしても駄目です。」

・・顔を捕まえられて・・弁慶さんを見上げるように
顔を向けられて・・弁慶さんの右手は私の頤に・・

ちょ・・ちょっとこれじゃぁ・・逃げるどころか・・。

「ほら、きちんと話さないとこのままここで、
頑ななここにお仕置きしますよ。」

といって・・空いている左手で私の唇に触れる・・。

拒否権・・なし??

はぁ・・花言葉の話しなければよかったかなぁ・・。

「・・・どうやら、本気でして欲しいようですね。」

私が考えている間に・・弁慶さんはそう勝手に解釈して・・

「あ・・ま・・まって・・言うか・・んっ!!」

あっというまに唇を塞がれてしまった。

「ん・・・あっ・・べ・・弁慶・・さっ・・ん!!」

そのまま深く口付けされて・・だんだん何の話を
していたのか・・そしてここが外であることでさえ忘れそうになる・・

「さぁ・・教えてください。僕の誕生花とその言の葉を。
そしてさんの苦笑いの理由もね。」

まったくもって適わない。
私は両手万歳、お腹見せ見せの犬状態だった。

「・・苦笑いの理由もですかぁ・・。」

「もう一度お仕置きして欲しいですか?」

「い・・いいです。遠慮します。
弁慶さんの誕生花はこれなんです。」

そういって私は先ほど見つけた「カルミア」を指差した。

「花笠石楠花ですか?良い花ですよ?」

「・・花はね。ねぇ・・花言葉聞いても怒らない?」

「怒ったりしませんよ。」

「『野心・野望』」

「・・・野心ですか。少なからずはあるでしょうね。
そうでなければ・・・。」

そういうと私をふわっと抱きしめて・・

「僕の思いは達成できなかったでしょう。
この街が平和を取り戻して欲しい・・というのは表向きの理由。
僕が僕の罪のために源氏についていたことは、さんご存知でしょう?
そんな心で動いていた僕を僕は正しいとは思いません。
それに・・野心も野望もなければ・・
さんを僕だけのものにしようとは・・考えないでしょう。
あながち間違いではない言の葉ですね。
でも僕は・・その心が僕にあったことを
うれしいとさえ思ってしまいます。
この心がなければ、さんをここへ留めて
置けなかったでしょうから。」

「弁慶さん・・・。」

さん、言の葉に苦笑されたということは・・
僕が野心を抱くのは別におかしくないと
お思いなんですよね?」

そう言って私の体を少し離した弁慶さんの
顔は・・何か考えを含んだ微笑になっている・・。

「え・・え〜っと。」

「なら話は早いですね♪
さんに抱いている野心は沢山ありますからね。
それを実行してもさんは承知の上♪
心置きなく実行させて頂きますね。」

にっこり微笑んでいる!?
な・・なに!?私への野心って!!!

「べ・・弁慶さん!?わ・・私への野心って・・。」

「それは家へ戻ったら教えて差し上げますよ。・・・嫌というほどね。」

そういうと弁慶さんは山道をまた歩き始めた。


・・・薬草を積み終えて帰宅した私は・・
花言葉の話をしたことを・・さらに後悔した。

私がこの後、慢性的な睡眠不足になることは・・
言うまでもない話だと・・思う。


Fin 


<後書きと書いて言い訳と読む>

この小説を読んでくださってありがとうございます。
こちらは『弁慶お誕生日企画 春黄金花の宴』さまに
投稿させて頂きました作品です。
企画サイトさまから直接リンクして頂いております。

弁慶さんのお誕生日である2月11日の誕生花は
沢山あるのですが、お花自体が割りと綺麗なものを・・と
思い選んだお花がこの『カルミア』でした。
皆様はカルミアをご存知でしょうか?
樹の枝に直接咲くタイプの白い綺麗な花です。
別名を『花笠石楠花(はながさしゃくなげ)』といいます。
選んだ花の花言葉が『野心・野望』だったので・・
こんな創作になりました。楽しんで頂けたら幸いです。

皆様のお声がなによりもの活力です。
読んだよ〜の一言で充分ですので、
メッセージを頂けるとうれしいです。

最後まで読んでいただき、本当にありがとうございました。
企画に参加できたこと、とてもうれしいです。
企画を考えてくださった管理人さまに心から感謝いたします。


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