比叡の氷
治療を終えて奥の部屋へ戻ってみると・・
連日の暑さにぐったりとして・・うなされながら眠っているさんの姿が目に入る。
「まぁ・・暑い・・というお気持ちはわかりますが・・・。」
綺麗な足を思いっきりさらけ出して・・・どこぞの誰かが見たら・・即、お持ち帰りしそうな
そんな無防備な姿で寝ているなんて・・・犯罪ですよ・・さん。
「お土産を・・差し上げるしかありませんね。」
そう、今日頂いてきた貴重なお土産。
僕はその小さくて丸い冷たい『お土産』を口に入れて、
起きないようにさんをそっと抱き起こして・・
頤に添えた手で軽く開けた唇に・・・そのまま深く口付けた。
「・・ん・・つ・・つめふぁい。(冷たい)」
口に『お土産』を含まされたさんは、そのお土産で呂律が上手く回っていない。
「如何ですか?今日の特別なお土産は。」
「へんけいふぁん!?(弁慶さん)」
口の中の冷たい物に気を取られているさんは
考えを言葉に出来ず・・困っている。
その困っている顔ですら・・可愛いと思ってしまう僕は・・
もはやどうにもならないようですね・・。
口をもごもごさせながら、何か喋ろうとしている
さんに・・もう一度、軽く口付けて・・。
「!?」
「比叡の古い知人にお会いしてきたんですよ。
この時期でも比叡の山奥深くには、残っているんです。
これで少しは涼しくなりましたか?さん。」
「・・氷、ですよね?もう・・寝てるところに
口に氷を入れられて驚かない人はいません!」
「連日の暑さにすっかり参っているようでしたので
知人に頼んで取ってきてもらったんですよ。
労働者に報酬を与えるのは・・基本ですよね?」
「う〜〜〜。」
「涼しくなりましたよね?さん。」
「まぁ・・ね。京じゃ氷は貴重品・・だしねぇ。」
「それじゃぁ、やっぱり功労者には褒美ですよね♪」
「え・・ええ!!」
僕はそのままさんを抱きかかえ、奥の寝室へと運び込んだ。
今日は暑さは言い訳にはさせません。
ご褒美はしっかり頂かないといけませんよね♪
僕は鼻歌まじりで、さんを運びながら
わざわざ比叡まで行ったかいがあったと・・こっそり思っていた。
(野々宮の『後書きと書いて言い訳と読む』)
この作品は旧サイトにてWeb拍手の際、弁慶さんからのお礼
という形で掲載していた作品です。
この時期のWeb拍手のお礼はテーマを『氷』に統一してあります(^^)