花火
「『はなび』ですか?」
「うん!ほら、景時さんが勝浦で見せてくれたでしょ?」
「ああ、鉄砲から打ち上げたあれですね。」
「こっちは鉄砲ではやらないんだけど・・
とっても綺麗だよ!夏はやっぱりこれ見なくっちゃ!!
ね、見に行こう!江ノ島であるからさ。」
「いいですよ、さんが見たいなら。」
・・・と言って、花火大会に来たまではよかったんだけど・・
「なんでこんなに人多いのよぉ〜」
うっかり弁慶さんとはぐれてしまい・・途方にくれてしまった。
「しかたない・・とりあえずこの人ごみから抜けよう。」
出店などが立ち並ぶところから少し離れた
木陰にとりあえずもたれて休む。
「どうしよう・・。弁慶さん、携帯持ってないし・・。」
こちらの世界に来てそれほど経っていない弁慶さんは、
携帯をまだ持っていない。
『無作法な気がして・・慣れないんですよ。』
そういって持つことをためらっていた。
でも・・こういう時は持っていて欲しいってちょっと思ってしまう。
「あれ?君ひとりぃ〜?」
「え・・。」
木陰で休んでいるところに、見知らぬ男がやってきた。
これはまずい・・なんとなくやばい展開・・。
「あの・・私に声掛けない方が・・。」
言うか言わないかのところで・・
『ドス!』
鈍い音が辺りに木霊する。
「探しましたよ?さん。」
ほらね・・・・・だから言ったのにぃ・・。
そう、見知らぬ男が倒れたその後ろには、
・・小さい子なら絶対逃げてるぅ〜〜って
オーラを漂わせながら、私の探し人が立っていた。
弁慶さんって向こうにいる時から
只者じゃなかったけど・・携帯よりよっぽど
性能のいいレーダーついてるって。
だから携帯がいらないっていうのも・・わからなくはないんだけど・・
「痛ってぇ!てめぇ、何を・・・。」
弁慶さんに叩きのめされた
さっきの可愛そうな人がようやく起きたようだけど・・
「・・何か?」
ものすっごい形相で睨み付けられちゃって・・
すごすごと去っていく・・。
あ・・ねぇ、ちょっとくらい役に立ってから
去っていってよぉ〜。この後私が大変じゃない!
「さて、邪魔者もいなくなりましたね。
さん、この後どうなるかはもうお分かりですね?」
そういうと・・私の手を掴んで、花火とは逆方向へ・・。
『・・やっぱり。』
この後の私はと言えば・・『嫉妬』と言う名前の
『お仕置き』・・をたっぷり朝まで受ける羽目に・・。
迷子になったときから、なんとなくやばいと思ってたけど・・
もう・・花火は・・当分いらないかも・・。
ちょっとそう思ってしまった。
Fin
(野々宮の『後書きと書いて言い訳と読む』)
この作品はWeb拍手の際、弁慶さんからのお礼
という形で掲載していた作品です。
この時期のWeb拍手のお礼はテーマを『花火』に統一してあります(^^)