『この花をどうぞ、南斗宮の池に咲いた天上の蓮の花です。
あなたが来たら真っ先に渡そうと思って。』
・・・・・においが混ざるから両方を受け取るわけには
『だったら蓮の花のほうをどうぞ。
蓮の花は昔から恋心を託す花なんです。』
・・・・・・このとき、蓮の花を・・・
・・受け取っておけばよかったんだ。
私が誰に会いたくて・・夢浮橋を渡ったのか・・
ちゃんと自覚してなかったから・・・・・
大団円のそのあとに・・from:南斗
『さて・・・怨霊は片付きましたね。』
壮大な兄弟げんかの末・・大量に発生した怨霊は・・
神様総力戦にて・・決着。
・・いったい私は何しに来たんだか・・・。
まさか兄弟げんかでこんなことになるなんて・・
『で・・先ほどのお話には決着がついていませんが?』
『どちらの花を受け取るか?・・神子、そなたの返事がまだだな。』
え・・えっと・・。まだほんの少し迷っていた私。
でも蓮の花がとてもきれいで・・香りが知りたくて
・・思わず、蓮の花を手に取り、鼻を近づける。
『・・・ふふ、そうでなくちゃ・・・ね。』
南斗さまが何か言われたような気がしたけれど・・
・・・・私の記憶はそこで途絶えた。
『・・気がつきましたか?』
ぼんやりと見えてくる世界。むせ返るほど匂う蓮の花の香り。
『おや?花の香に酔ってしまいましたか?』
『え・・っと・・ここは・・。』
『南斗宮の僕の私室です。ご気分は如何ですか?神子。』
『・・南斗宮・・あ・・あの・・私はいったい・・。』
『急に倒れこんだんですよ。・・まぁ、無理はないんですが。』
『え?』
・・そう言えば・・北斗さまの姿もないし・・いったいどうなって・・。
私が身体を起こせぬまま考え込んでいると・・
『・・今、兄上のこと、考えましたね?』
『え?あ・・えっと・・どうしたのかなぁって・・だってさっきまで
喧嘩してたし・・えっと・・。』
『・・すぐに考えられないようにして差し上げますよ。』
そういってベッドの端に腰掛けていた南斗さまは
そのまま私の上にふわっと倒れこんでくる。
存在感はものすごく大きいのに・・不思議と重くはない。
え・・あ・・・あの・・ちょっと・・
『ずっと・・ずっと待っていたんです。
僕のところにあなたが戻ってくる日を。
・・多くの運命を乗り越えていく姿・・
強いと思うのと同時に・・全身に火傷したかと思うほど・・
・・ピリピリと痛くて・・八葉全員に嫉妬しましたよ。
・・あなたと同じ時を生きている彼らに・・ね。』
身体をそのままに、驚くほど冷たい手が、私の頬をなでていく。
『蓮の花を手に取ったとき・・運命は決まったのですよ。
・・僕に・・堕ちて下さい・・望美。』
『南斗さま・・。』
『あなたを縛ることは簡単です。僕は神ですし。
でもそれでは本当に手に入れたことにはならない。
・・僕は、とてもわがままなんですよ。』
そういいながら、私の唇を冷たい指先がなぞっていく。
『・・・僕を・・選んでください。』
南斗さまの・・切なげな目が・・身体に突き刺さる。
・・そう、本当は決まっていた、私の心なんて。
あの時空から夢浮橋を渡ってきた時点で・・
本当は決まっていたんだ・・。
誰を求めてきていたのか・・って。
あれだけの運命をともにしてきた仲間を誰も選べなかった。
・・それは、ここにおいてきた忘れ物に・・
気がついていたから・・・でも・・あなたは神様で・・・。
『その瞳・・答えと受け取っていいですね?』
・・読まれてる!?
『ああ、一つ教えておきましょうか?
僕は神様ですから、どうにだって出来てしまいます。
あなたが僕を選んでくれたなら、ともに生きることは
造作もないことです。ふふっ、安心できましたか?』
そういって悪戯っぽく笑う南斗さまは・・何だかいつもどおり。
さっきまでのあの瞳は???
そう思った瞬間・・・
『ん!?』
深く・・唇を奪われた・・。
『・・油断大敵ですね。残念ですが、僕は本気です。
蓮の花の香りに・・ちょっと悪戯するほどに・・ね。』
『・・香りに悪戯・・まさか・・』
蓮の花の香りを嗅いだとたん記憶が途切れたのは・・
考えようとすると・・また降ってくる深いキス・・
・・もう・・考えられなくなっちゃう・・。
『兄上を出し抜くには、少々手荒なこともしなければ。
あなたを手に入れるためなら・・ね。』
『南斗さま・・。』
・・・香りに悪戯をしたのは事実だとしても・・
結局、蓮の花を選んだのは・・私。
・・この優しい腕の中に・・堕ちてしまおう・・。
きっとそれが・・私の・・答えだから。
再び夢浮橋を渡った・・答えだから・・・・・。
『どうやら、お答えは決まったようですね。』
私の表情から察したように、言葉を紡いだ南斗さまは・・
突然、私の陣羽織の紐を解き始めて・・
『え・・な・・南斗さま!?』
『おや?お気づきになりませんでしたか?
ここは僕の寝所なんですよ。南斗宮の最奥の地。
僕以外は誰も入ってくることは出来ませんよ?』
『え!?あ・・えっと。』
『時間はた〜くさんありますよ。
据え膳食わぬは男の恥です。
ゆ〜っくり頂きますよ。』
そういって南斗さまは『頂きます』と言わんばかりに
胸の前で手を合わせてる・・。
いや・・あの・・だから・・そうじゃなくって・・。
展開が速すぎて・・ついていけない・・。
『せっかく蓮の花に酔ってくれてるんですから、このまま・・ね。
望美の答えは・・ここにゆっくり聞いてみますよ。』
再び深く・・深く落ちてくるキス。
・・・私がはっきり気持ちを言葉に出来たのは・・。
空が軽く明るくなってから・・でした。
『大好きです・・南斗さま・・。』
fin
<後書きと書いて言い訳と読む>
読んで頂きありがとうございます。
このお話は、梓ちゃんから勝手のにリクエストを強奪して書いたプレゼント品です。
頂いたご希望が『夢浮橋の大団円で南斗さまを選んだ続きを』
みたいな感じだったので、エンディングを壊さずにそのまま使用して、
続きを書いてみました。・・なんか南斗さまが暴走してますが(笑)
表に置くには、これ以上書けませんので、続きは脳内で完結くださいませ(^^;
梓ちゃん、駄文になっちゃったけど、お誕生日お祝いをかねて、
ごそっと持って帰ってくださいませ。
ご感想など頂けるとありがたいです(^^)