クリスマスに奇跡を!  選択肢〜焼き立てのパンプキンクッキー〜



綺麗な焼き色がついた小ぶりのクッキー。
・・まだ暖かい、焼きたてみたい。
お料理・・得意だよね。
いつもおいしいクッキーを私に食べさせてくれたよね。
・・最近は全然会っていないけど・・
どうしてるのかな・・受験で忙しいのかな・・。

たまに帰り道で・・見かけることもあるんだけど・・
・・やっぱり声は掛けられない。

近いようで遠い・・・
・・そんな存在になってしまった・・詩紋くん。

京で私を好きだって言ってくれたよね・・
でもそのときは、私はまだ・・気づいていなくて・・

「無理しなくていいよ、あかねちゃん。」

そういって詩紋くんは笑ってくれた。
・・私が返事が出来ないこと・・知っていたみたいに・・。

でも今は・・とても後悔しているの・・

・・私、詩紋くんのこと・・・。


「あかねちゃん・・なの?」

突然の声に私は振り返った。

「詩紋・・くん?」

後ろに立ってたのは、今、私の心を
占めている詩紋くん・・その人だった。


「まさか・・あかねちゃんに今日会えるなんて
思ってなかった・・。あかねちゃん、どうしてこの店に?」

「詩紋くんこそ・・。」

「僕は・・さっきまで自宅のキッチンでケーキを
作っていたはずなんだけど・・・あかねちゃんこそ、
今日は駅前に買い物に行くんだって・・・
僕、天真先輩に聞いていたんだけど・・。」

「・・うん。それが、駅前を歩いていて・・
誰かに呼ばれたような気がして・・
振り向いて見たら・・ここにいたの。」

「・・僕と同じ。僕も誰かに呼ばれたような・・
そんな気がして・・。それにしても・・随分
明るいお店だね。お菓子屋さんの割りに・・
ちょっと派手だなぁ・・って。
それに・・ちょっと不思議な感じがする。」

「そうだね。」


最近は・・話すどころか、滅多に会わなかった。
中学校と高校じゃ・・やっぱり時間にすれ違いがあるし、
詩紋くんは・・受験生だし・・。


「ねぇ、あかねちゃんが持っているそれって、
クッキーだよね?色が黄色いから
パンプキンクッキーかな?おいしいよね。」

「そうみたい。綺麗な焼き色がついたクッキーだなって・・
これ、焼き立てみたい。詩紋くんがよく焼いてくれた
クッキーに似ているなって・・思ってたの。」

「似ているだろうね。僕がいつも焼いていたのも
パンプキンクッキーだもん。自然の甘さでおいしくて・・
甘すぎないし、砂糖をあまり使わなくてすむから、
女の子には・・ちょうどいいなって思って・・。」

「え・・じゃぁ詩紋くん・・
ただ好きで焼いていたんじゃないの?
・・女の子にはちょうどいいって・・。」

「僕は・・あかねちゃんの喜ぶ顔が見たくて・・
あかねちゃん、甘いクッキー好きだから・・
好きな女の子を喜ばせたいって、誰だって思うよ・・。
今だって・・僕の作ったクッキー食べて欲しいって
思っている。・・気持ちは簡単に変わらないから・・。」


詩紋くん・・今、なんていった?
ねぇ・・ひょっとして・・まだ間に合うの?
私、気持ち伝えてもいいの?


‐‐‐‐龍神さま・・お願い、私に少しだけ勇気を!


『その願い、叶えよう。我が神子のために』


急に頭に響く低い声が聞こえた・・。
そのとたん・・お店の中全体が・・きらきらと
赤色に・・美しく光りだして・・


「こ・・この光は・・あかねちゃん!?」

赤い光に包まれそうになる私を・・
詩紋くんは私の腕を引っ張り・・私を引き寄せる。


「嫌だ!あかねちゃんを連れて行かないで!!
もう離れたくなんてないよ・・そんなの嫌だ!!
僕は今でもあかねちゃんが大事だよ!
気持ちは変わらない、僕の大切な人を連れて行かないで!」


あかね・・今言わないで、いつ言うの?
今度こそ・・ちゃんと伝えなきゃ。
大切な人の・・側にいるために!


「どこにも行かない。
私が好きなのは・・誰よりも大切なのは・・
詩紋くんだけ。・・・大好き、詩紋くん。」


私が思いを告げたとたん・・私を包んでいた
赤い光は・・うそのように消えていった。


『今の光は、その八葉を守護した『朱雀』からの伝言。
われらは、神子と八葉が幸せになることを心から祈っている。』


また低い声が聞こえた・・。これは龍神さまの声・・。


「消えた・・。よかった、あかねちゃんが無事で。」


赤い色の光が消えても、
詩紋くんは私を抱きしめたままそう言った。

「ごめんね、詩紋くん。私やっと気がついたの。
・・遠回り、しちゃったね・・。
こんなに近くに・・いたはずなのに。」

「いいよ。今までの分も、ずっと一緒だからね。
嫌だって言っても、もう離してあげない。」

「うん。いいよ。もう大丈夫だもん。
迷ったりしないもん。」

「クリスマスのやり直し・・しない?」

「やり直し?」

「もう一度二人でやり直し。あかねちゃん買い物の途中でしょ?」

「う・・うん。」

「だったら二人で行こう?
・・でもこのお店・・出られるかなぁ・・。」

「多分、大丈夫。朱雀と龍神さまの力だもん。」

「そうだね!」

そういって私は、この不思議な洋菓子店の扉を開けた。
大切な人・・詩紋くんとこれからを過ごすために・・。

これも不思議なんだけど・・店から出た先は、
駅前の大通りだった。

そして・・後日、その店を2人で探したんだけど・・・
いくら探しても・・二度と見つかることはなかった。


これはきっとクリスマスがくれた『奇跡』だったんだと・・
今ならそう思う・・。


メリークリスマス!


Fin


詩紋EDでした(^^)
後書きは後日掲載します。
読んでくださって本当にありがとうございました。
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