クリスマスに奇跡を!  選択肢〜『仕事の探し方』なんて書いてあるハードカバーの本〜



深い緑色をしたハードカバーの本。
『仕事の探し方』なんて・・私にはまだちょっと
早いような気がする・・・。
でも・・あの人ならこう言うかな・・

『知識を得るのに、早いとか遅いとかは
必要ないと思いますよ。勉学は励んだほうが良いのです。』

いつだって私に丁寧に教えてくれた。
私がわかるまで、何度でもわかりやすく・・。
そして・・知識だけじゃなくて・・・
苦手なはずの武芸すらも・・私のためにがんばってくれた。
いつも私の側で・・私を守ってくれたよね・・。

まるでこの本の色のように・・・
・・・深く私を理解しようとしてくれた人。


私を好きだって言ってくれたよね・・
誰よりも大切だ・・って・・側に居たいって・・。
でも・・あの時私はまだ気がついていなかった。
一番大切だったのは・・他の誰でもないあなただってことに・・

・・だからあの人が止めるのも聞かず・・
私は一人現代に戻ってきた。
・・京を離れたら・・もう二度と会えなくなるって・・
どうしてそんな簡単なことに気付かなかったんだろう・・。


異世界で出会った・・誠実で知識豊富な賢い人。
一見硬そうで近寄りがたそうだけど・・
私には・・とても・・とても優しかった・・。
いつも笑顔でいろいろ教えてくれた・・。
鷹通さん・・私・・あなたに・・会いたい・・。

今とても後悔しているの・・京に残らなかったこと・・
あなたが大切だって・・気付かなかったこと・・
・・私・・・鷹通さんのこと・・・


「そこにおられるのは・・神子殿・・ではありませんか?」

突然の声に私は振り返った。

「た・・鷹通さん?」

後ろに立ってたのは、今、私の心を
占めている・・鷹通さんだった。

「ほ・・本当に鷹通さん・・なの?
どうして・・どうしてこっちの世界にいるの!?」

「それが・・いつも通り、内裏の治部省で
書棚を整理していたはず・・なのですが・・。」

鷹通さんがここにいることが信じられなくて・・
私は思わず鷹通さんに近づき・・・
夢でないことを確かめようと・・彼の手首を掴んで
自分の胸元に引き寄せた。


「み・・神子殿・・。」

「暖かい・・本物・・だね。
また会えるなんて・・夢みたい。」

「私もとても驚いています。
どうしてこんなところにいるのか・・不思議です。」

「私もね・・駅前にいたはずなのに・・気がついたら
ここに立っていたの。・・不思議・・だよね。」

本当に不思議・・夢の中にいるんじゃないかって・・
そう思うくらい。・・でも私はさっきまで大通りを
歩いていた・・。だとしたら・・これは『白昼夢?』
でも・・そしたら、この暖かい手は?


「神子殿、お手元に取られているのは
そちらの世界の書物ですか?」

「そうだよ。『仕事の探し方』なんていうタイトルが
ついてるの。私はまだ学生だから・・あんまり
関係ない本だとは思うんだけど・・。
京に居た時も・・知らない巻物、結構読んだなぁって
思って・・。」

「神子殿、知識を得るのに、早いとか遅いとかは
必要ないと思いますよ。勉学は励んだほうが良いのです。
心のどこかで・・それを思われたからお手にとられたのでは
ないでしょうか?・・私と共に書物を読んだことは、
決して無駄では無いと思います・・。」

「やっぱり・・。」

「いかがされたのですか?」

「鷹通さんなら、そういうと思っていたの。
この本を手に取ったとき、勉学に励むのは良いことだって
鷹通さんなら絶対に言うだろうな・・って思ってたの。」

「では・・私の思いが通じていたのかもしれません。」

「鷹通さんの・・思い?」

「神子殿が私のことを考えてくださったのは、
私が神子殿のことを考え続けていたから・・
かもしれない。私は、神子殿が京を離れた後も
神子殿のことを忘れたことはありません。
あなたは京を救ってくださったばかりでなく、
私の話をよく聞いてくださり、私にとても
優しく接してくださった。
だから私は・・あたなをお慕いしていました。
・・・そしてそれは・・今も変わりありません。」

鷹通さん・・今、なんていった?
ねぇ・・ひょっとして・・まだ間に合うの?
私、気持ち伝えてもいいの?


‐‐‐‐龍神さま・・お願い、私に少しだけ勇気を!


『その願い、叶えよう。我が神子のために』


急に頭に響く低い声が聞こえた・・。
そのとたん・・お店の中が真っ白に・・光りだす・・
それは外の白い妖精たちのように・・
きらきらと・・美しく光りだして・・・


「こ・・この白い光は・・神子殿!!」


白い色の光に包まれそうになる私を・・
鷹通さんは私の腕を強く引き寄せて・・
・・鷹通さんの胸元へ私自身を引き寄せる。


「連れて・・連れて行かないで下さい。
やっと・・やっとお会いできたのに・・・
もうあんな悲しい思いはたくさんです。
大切な人を・・私から奪わないで下さい!!
・・行かせません、神子殿への思いは変わらない。
どうか私のお側に・・・。」


あかね・・今言わないで、いつ言うの?
今度こそ・・ちゃんと伝えなきゃ。
大切な人の・・側にいるために!


「どこにも行かない。
私が好きなのは・・誰よりも大切なのは・・
鷹通さんだけ。・・・大好きです、鷹通さん。」


私が思いを告げたとたん・・私を包んでいた
真っ白い光は・・うそのように消えていった。


『今の光は、その八葉を守護した『白虎』からの伝言。
われらは、神子と八葉が幸せになることを心から祈っている。』


また低い声が聞こえた・・。これは龍神さまの声・・。


「・・よかった。神子殿がご無事で・・。」

白い光が消えても、
鷹通さんは私を抱きしめたまま・・そう言った。

「た・・鷹通さん・・その格好・・。」

私が目を開けて鷹通さんを見ると・・
店が白く光るまでは、京にいたときのまま・・
黄色い直衣姿のままだったのに・・
今はとても現代的な深い緑色のカッターに
黒いシンプルなシングルタッグのズボン、
それに白いロングコートを上に羽織っている。


「龍神と白虎の計らいのようですね。」

「どういうこと?」

「先ほどの白い光が消える寸前に、私の頭の中に
大量の情報が流れ込んできました。

『神子と共に神子の世界で生きよ。』

情報の最後に聞いた言葉です。
あたなと共に生きていくために必要な情報を
白虎と龍神が私にくれたようなのです。
こちらの世界で言う『クリスマスプレゼント』
ではないでしょうか。」

「クリスマスプレゼント!?」

「こちらの世界では今日は『クリスマス』
というのでしょう?先ほど頭に流れてきた情報の
一つにそのことがありました。」

「そっか。クリスマスプレゼントか。
・・じゃぁ大事にしなきゃだめだよね。
鷹通さん、私やっと気がついたの。
私が側にいたい人は・・・大好きな人は・・
鷹通さんだってこと。」

「ありがとうございます、あかね。」

「鷹通さん・・今、私のこと『あかね』って・・。」

「この世界には神子殿はいません。だからあなたを呼ぶのは、
お名前を呼ぶのが一番ふさわしいと・・そう思いましたから。」

「うれしいです。これからは・・ずっと一緒ですね。」

「ええ。あかね、せっかくですから、
『クリスマス』のやり直し、致しましょうか?」

「やり直し?」

「もう一度、二人でクリスマスを過ごしませんか?
あかねは確か駅前にいたのですよね?」

「はい、買い物をしようと思って。」

「ではまず買い物の続きからしましょう。・・ですが、
この不思議なお店、普通に出られるでしょうか?」

「多分、大丈夫。白虎と龍神さまの力だもん。」


そういって私は、この不思議な本屋さんの扉を開けた。
大切な人・・鷹通さんとこれからを過ごすために・・。

これも不思議なんだけど・・店から出た先は、
駅前の大通りだった。

そして・・後日、その店を2人で探したんだけど・・・
いくら探しても・・二度と見つかることはなかった。


これはきっとクリスマスがくれた『奇跡』だったんだと・・
今ならそう思う・・。


メリークリスマス!




Fin


鷹通EDでした(^^)
後書きは後日掲載します。
読んでくださって本当にありがとうございました。
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